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満ち欠け

作者: 金狐 秋水

 私は現状に満足しているのだと思う。

 特に何の問題もなく日々をのうのうと過ごし多少の陰鬱に溺れながらも天寿の全うに向けて日々歩んでいる。これといった目標や目的もなく、生きる理由なんてものもたいしてないが逆に死ぬ理由というものもないと言える。

 


 最近になって実感したのは時の流れる速さだ。

 小学生だとか中学生の頃は一年という時が流れるのはとてもゆっくりに思えて早く席替えの時期が来ないかな、だとかクラス替えしたいなだとかそんなものを考えながら頑張って一年を過ごしていた。

 

 しかし、今は違うと日々感じる。

 一日が短すぎるし一年が早すぎる。幼少の時分に大人たちが言っていた時間が足りないというのはこういう事なのかと痛感している。日々はまたたきの間に流れ、こうして過ごしている間にもまた少しずつ年を取る。そうしてその工程の中でさらに時間の感覚は鈍くなり今の倍の年齢になるころにはさらに時の流れは速く感じることになるのだろう。


 時が早く流れすぎる事の問題が何かと問われれば「何もしない時間」が増える事だ。

 アホ面をさらしてぼーっとしているだけで日々は経過し寿命を消費する。そんなことをしているとふと何かをしたくなるが、することを考えている間にその暇な時間はなくなっていく。最悪の循環であり、嫌悪を抱きはするのだがそうしたところで何かが変わるわけでもなく日々は消費される。




 最初に満たされているのだろうと書いたわけだが、そうではないのだろうとも思う。私にも人並みに欲はあり、大金持ちになりたいだとかめっちゃ好みの女とセックスしたいだとかそういうものはあるがそうしたところで何になるのだという考えも常に頭の片隅に存在している。

 そんななかで今この駄文を製造しているわけだが本当に何がしたいのか自分でもわからない。


 満たされるというのはすべての欲望をかなえる事を言うのだろうか、とふと思う時がある。

 しかししばらく考えるとそれはまた違うのだろうと思いいたる。なぜならばすべての欲望をかなえるなど歴史上の王族たちでもついぞ達成する事は叶っていないからだ。

 欲というのは叶うたびに増えていく魔物だ。

 人間はその魔物と自分との折り合いをつけ、どこかで満足しなければならないのだろう。

 私にはそれが出来ない。私のような不出来な人間は折り合いをつけ人並みの道を歩むように軌道修正しなければならないのだろうが私は英雄たちのように多くの欲望を抱えたままでいる。


 

 欲を叶える為には力と勇気が必要だと思っているが、そのどちらも私にはない。

 気になる女の子に声をかける事も苦手だし、金や権力はそもそもない。だが、それらをすべて自らのものとしたいという欲望だけは常に抱えているのだ。

 



 満ち欠けという表題ではあるが私はどちらかといえば欠けた状態で満ちている。

 もっとも、その状態の自分と理想の自分の折り合いをつけることが出来れば、だが。

 

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