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えっ、そんなにお兄様が怖いの…?

 六歳の頃にループしている……?


 でも、これは神様がくれたチャンスなのかもしれない。

 お兄様が闇落ちしなければ、大戦は回避される。

 そうすれば、お兄様は救われるし多くの者達も救われるもの。


 お兄様が闇落ちをするのは二十四歳の頃よね?

 今のお兄様の年齢が十三歳だから、まだまだ時間に余裕があるわ。


「なんとしても『お兄様の闇落ちを阻止』しなきゃ!」

 闇魔法はメンタルの安定が重要。

 メンタルが安定していれば闇落ちすることはないはず。

 過去に闇落ちした人々は強い孤独が原因。

 ということは、お兄様の傍でサポートすれば問題解決。


「あっ! でも、私が王都の神殿にいられるのは十四歳までだったわ。十五歳からは歴代聖女のようにファーレン共和国のベリエ大聖堂に居を移して暮らさなきゃならないもの。……ということは、実質的なタイムリミットはあと八年ね」

 大聖堂に行かずにも済む方法はある。

 特例として認められているのは、『結婚』したとき。


 聖女の結婚は世界のパワーバランスを崩す可能性があるためかなり難しく、千年間の間で結婚したのは二人しかいない。

 二人とも、『竜王』との結婚だったし。


「とりあえず、お兄様とお話がしたいわ。私、神殿に入ってからお兄様とお会いしていないので、状況がわからないもの」

 でも、大きな問題がある。

 私はここから出られないのよね。聖女だから。


 んー。ダメもとで教皇様にお願いしてみようかしら?


 私はまだ子供。

 だから、大教皇様の保護下にあるため、まだ許可が必要なのだ。


「お兄様、忙しいわよね……お父様の件があるから」

 私はため息を吐きながら窓を開けて外を眺める。

 数キロ先には大きな城が見えるんだけど、そこに大きな問題があった。


 この国は複雑だ――


 本来ならば国王であるお父様が国を動かさなきゃならない。

 でも、私が生まれるちょっと前……六年くらい前からどこからか連れて来たエリセとその子供・ニヒルの二人と一緒に離宮で遊んで暮らしている。

 最悪なことに国庫にまで手を出して。


 国王は病気療養ということにし、その穴埋めは王妃であるお母様が行っていた。でも、去年お母様は病気で亡くなってしまった。


 それでもお父様は執務に戻ることなく、あろうことかエリセを王妃にし、ニヒルを後継者にすると宣言。

 さすがに重鎮達が大反対。全員職を辞するという勢いだったため、結果的にその話は無くなった。


 こんなことが明るみに出れば、この国は終わりだ。

 重鎮達がひた隠しにしていたけど、諸外国に明るみになってしまった。


 その結果はいわずもがな。

 他国からしてみてれば、新たな領土を手に入れる絶好のチャンス到来。

 しかも、跡継ぎであるお兄様はまだ十三歳。

 勝ち戦だと同盟国まで裏切り、戦争を起こした。


 でも、お兄様とお兄様の側近のフレッド様が敵を叩き潰し、今はお兄様が皇帝代理として執務を行なっている。

 闇魔法使いの上に、わずか十三で戦に勝利。

 その結果、まだ即位していないのに、『絶対零度の皇帝』と恐れられている。


 一応、お父様がまだ皇帝なんだけど、お兄様が皇帝の役割を担っているので臣下達に「陛下」「皇帝」と呼ばれているのだ。


 お父様、皇帝を辞めてくれないかしら……?


「今はとにかくお兄様のことよ。とりあえずお手紙出してみようかしら? 外に出られないし」

 ため息交じりでそう言った時だった。

 タイミングで部屋をノックする音が届いたのは。


 もしかしたら、侍女達かもしれない。

 そろそろ、朝の身支度の時間だし。


 私が返事をすると扉が開き、「おはようございます、聖女様」と侍女たちが入ってきた。

 にこやかな笑顔を浮かべている彼女たちは、白の丸襟のベージュ色のワンピースを着ている。


 朝の支度よりも、お兄様の闇落ち回避が先決!

 お兄様にお会いしないと。

 もしかしたら、話せばなんとかなるかも?


 淡い希望を抱きつつ、私は侍女達に声をかけた。


「ねぇ、ジルお兄様にお会いしたいの。なんとかならないかしら?」

「えっ!?」

 お兄様の名前を出した途端、侍女達は笑顔を引っ込めて顔を真っ青にしてしまう。

 カタカタと奥歯を鳴らしながら、両腕で自分を抱きしめるようにして小刻みに震えている。


 ――そんなにお兄様が怖いの!? たしかに絶対零度の皇帝と呼ばれて畏怖されているけど。


 ずっと神殿の中で暮らしていたから知らなかった。


 えっ、この状況ではお兄様の話題すら出来ない状況では?

 どうしよう。もう、神殿から抜け出すしかないのかな。


 呆然としていると、また扉からノックする音が届いた。








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