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49 神遣騎士(トアテラ)

「これは言霊と言われる力でしょうね、発言した言葉に魔力を込めて相手を強制的に従わせる能力です」


「なるほどね……」


 武器を破壊され意気消沈したヒロリィを連れて掘建て小屋へ移動していた。

 ラピスが言うにはこいつの『有言実行』の加護は言霊という類の能力だったらしい。


 結局は魔力による能力だから俺には効果がなかったけどな。


 もしヒロリィが俺がいないときに来てたとしたら全滅だっただろうな……



 念のためヒロリィはロープで拘束された。

 トカッツさんは落ち着いた口調で話しかける。


「ヒロリィ……君のように優秀で博識な騎士がなぜこのようなことをしたんだ?」


 ヒロリィは俯いたまま、話そうとしない。


「トカッツさん、ヒロリィとはどんな面識があるんですか?」


 同じ青騎士だったいう以上に知ってそうな感じがあるみたいだけど。


「ヒロリィは青騎士になりたての頃に私が指導していたのだ」


「だから加護のことまで知ってたんですね」


「昔から思い込んだら止まらないところはあったが、聖騎士にまでなってこういう形で会うとはな、残念だ……」


 トカッツさんのヒロリィを見る目が苦しそうだ。


「テメェ! 本当にトカッツさんに教えてもらってたのかよ!」


 ギルドメンバーのバラザンが興奮してヒロリィに突っかかっていった。

 「おちつけ!」といいながら他のメンバーが慌てて取り押さえるがバラザンは罵声を飛ばし続けていた。


「一番大事なものがわかってないじゃねぇか! 心がねぇテメェなんてトカッツさんの弟子じゃねぇ!」


 心ね……トカッツさんはこいつらに真先にそれを指導したのか、元々の性格もあるんだろうけどその成果でこんな素直な奴らに急変したんだな。


「そう言うなバラザン……ヒロリィは心の正直な素晴らしい騎士だ、それは今も変わらないはず。誰よりも騎士に誇りを持つ者だからこそ思うところがあったのだろう……」


「でも許せねぇよ! 俺達はともかくトカッツさんを殺そうとしてきたんだぞ! ふざけるんじゃねぇぞコラァ!!」


 すごいな……どれだけトカッツさんに心酔してるんだよ。


「殺せ……私に生きている価値はない……」


 塞ぎ込んだヒロリィがボソッと呟いたときだった。


ダンッ!


 大きく足を踏み込む音がした。

 トカッツさんがものすごい形相でヒロリィに掴みかかった。

 襟を強く握りしめ今にも殴りかかりそうな勢いだ。

 あまりの迫力に誰も近づけない……


「二度と命を捨てるなんてことを軽々しく口にするな! それだけは絶対に許さん!」


 ヒロリィの唇が震えだし、床にポタポタと滴が落ちていった。


「すみません……トカッツ様……」







 少し落ち着いてからヒロリィは少しずつ話をしてくれるようになってきた。


 要はヒロリィはオスリーに選ばれた『トアテラ』と呼ばれる騎士達の一人になったらしい。

 そこでオスリーから直々に命令を受けて俺達を殺しにきた。



「何で俺達が殺されなきゃいけないんだ?」


「腐敗した今の騎士団を治療するためには腐敗した箇所は切り離さなければならないと言われた……」


「腐敗させているのが騎士団総長自身なんじゃ……」


「わからない……私は今後の騎士団のためになるならと必死で命令に従っているはずだった……」


「同じ仲間を殺そうとしてるんだぞ! 命令でもおかしいと思うだろ!」


 落ち着きを取り戻したバラザンだったが、未だ口調は喧嘩ごしで割り込んできた。


 ヒロリィは俯いて口をつむいだ。


 それをみたトカッツさんが代わりに口を開いた。


「騎士団総長からの命令だ、聖騎士とはいえそうそう受けれるのないことだからな、疑問を持とうが従ってしまう気持ちはわからんでもない……」


「トカッツさんでもそうしたのか!? 俺はそうは思わねぇ! アンタならビシッと断るだろ! 仲間を殺したりできないだろ!?」

 

 熱いなバラザン……トカッツさんへの憧れもあるんだろうな。


「騎士がそれぞれ意思を持っていたらいざという時まとまらない、ひとつの団体としてみたとき、絶対的な命令権者は必要だ」


「はぁ? じゃあトカッツさんも命令されたらコイツみたいに殺しに来るってのかよ!?」


「その命令に騎士の魂が込められているのならな……」


 ヒロリィとは違う……

 トカッツさんの目はまっすぐだった。


 バラザンも何も言い返さなくなった、『騎士の魂』か……前に言っていた『騎士の目』っていうのに通じるところがなるのかもな。



「うう…………っ」


 ヒロリィがその場でうずくまり泣き出した。


「どうしたらいいですか……? 私……ここままじゃ……」


「進む道は自分で決めろ、聖騎士まで登り詰めた自分の力を信じて進め」


 トカッツさんが厳しくも優しい瞳で泣き崩れるヒロリィを励ました。






「ひとつだけ教えてくれないか?」


 落ち着いてきたヒロリィに尋ねたいことがあった。


「騎士団総長オスリーは騎士を変えてどうしたいんだ?」


 そのせいで今の騎士はめちゃくちゃになってるのに……


「聖剣騎士……」


 はぁ……?

 聖騎士じゃなくて、聖剣騎士?


 なんだそりゃ。



「オスリー様は強く特殊な加護を受けた騎士を独自に集めている、私を含めてそれを『聖剣騎士』と呼んでいた。そしてそれを引き連れた『トアテラ』で国を強化するおつもりだそうだ」


「それがオスリーの目指す新しい騎士団の形なのか?」


「オスリー様は騎士団を他国に負けない最強の軍団にさせることが目的だとおっしゃっていた」


 他国に負けないって……

 オスリーは戦争でもしようとしてるのか?

ここまでお読みいただきありがとうございます。


今後の励みになるので少しでも先が気になったようであれば、ブクマや下の☆を選択し評価を入れていただけるとありがたいです。


感想もお待ちしてますのでぜひよろしくお願いします。

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