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46 変われば変わるもんだ

 すっきりしない……するはずがない……


 グレンは大丈夫なのか?

 無茶なこと絶対やってるだろうし、心配はとにかく尽きない……


 グレン自身の無事はもちろんだけど、怒りに任せて他の騎士を怪我させてないかも心配だ……熱血漢でもそんなことはしないとは思ってても大事な部下をやられて頭に血が上ってるからな……何するかわからない。


「静かだな……」


 家に戻ってたものの、落ち着かない……


 城のバタバタがウソみたいに外は静かだ。


 これだけ違うものなのか外と城の中ってのは。



 ラピスか城を眺めながら呟いた。


「なんで自分の仲間を殺さなきゃいけないんでしょうね……」


「本当にそうだよな、何も得することがない」


 騎士団総長……この人が命令をしてる……のか?


 ああぁぁ! はがゆいな。

 何もできないなんて……


 騎士だったら中のこと、もう少し分かったのに……


 微妙に知ってしまったから後味が悪い……

 騎士始まって以来の事態なんじゃないか……騎士が騎士を殺すなんて前代未聞のことだ……


 どうする……

 

「悩んでますね……サレムさん」


「うーん……どうするべきなんだろうなぁ、俺に関わる必要はないにしても、このまま騎士団がおかしくなっていってしまうのは見たくないんだよな……」


「トカッツさんに相談してみたらどうですか? サレムさんの知らないことを知っているかもしれませんよ」


「やっぱりそうだよな」


 巻き込んでしまったら申し訳ないような気もするけど……話だけ聞いてみるかな。






 前に行ったことのある、トカッツさんの所属するギルドの集まっていた掘建て小屋まで来てしまった。


 まだここを拠点に活動してるのかな。


 案外もっといいギルドに移り変わってたりするかもな。


「「えいっ!」」


 んっ? なんか外から威勢のいい掛け声が聞こえてきた。


「常に気を引き締めろ! 疲れてからの一振りに強さは籠もるんだ!」


 この声はトカッツさん!


 声がするのは掘建て小屋の裏側だ。



 声の方向へ進んでいくと20人くらいの若者達が重そうな鉄の棒を持って汗だくになりながら素振りしていた。

 もちろんそれ指導してるのはトカッツさんだ。


「なぁラピス……俺の記憶に間違いなければこいつらあのクズのギルドメンバーだよな?」


「はい……間違いないと思います……みなさんずいぶん体がしまって良い表情をしていますね」


 なんだこれは……まさか、ギルドをやめて剣術道場でも始めたっていうのか?


「よし! やめだ! みんなすばらしいぞ、随分と気持ちの入った剣を触れるようになったきた!」


 トカッツさんの声を受け、ギルドメンバー達はその場で倒れ込んだ。


「「きっつぅーー!」」


「毎回訓練が厳しすぎますよ、トカッツさん!」


 ギルドの奴らをコテコテに絞ってるみたいだなトカッツさん……


 あちこちから愚痴のような声があがる。

 それを見てトカッツさんは何故だか誇らしげだ。


「当たり前だ、騎士でもここまでの訓練はしない、見込みはあるのに心がたるんでいた君達を叩き直すためにここまでやってるんだ」


 おお……トカッツさんもすごいことを本人に言うなぁ……


 でもお互い結構なことを言いあっているのに前みたいな変な空気になってない……


「はぁー、なんか気持ちいいな! すげえ疲れたけど」


 ギルドメンバーのひとりがそう言うと他のメンバー達もウンウンとうなづいた。


「楽しいだろ? 訓練は……」


「へへへ……うんって言ったらもっと厳しくされそうだから言いたくないな」




 前と全然違うじゃないか。


 みんながトカッツさんを慕ってる。

 あのギルドがこんなことになってるなんて驚きだ……



「おお! 誰かと思えばサレム君じゃないか!」


 トカッツさんに気付かれた。

 ギルドメンバーだけじゃなくて、トカッツさんも前よりずいぶんと清々しい表情になったな。


「お久しぶりです、ずいぶん変わりましたねこのギルド」


 前の面影なんてほとんどないくらい爽やかになったもんだ。


「そうか? 私的には何一つ変わってるとは思ってないんだがな」


「ちょっとトカッツさん! そりゃないでしょ、俺達すげえ鍛えてだいぶ変わったはずだ!」


「フッ、そんな軽口を叩けるうちはまだまだ変わったとは言えんな」


 厳しいなぁ、しっかり礼儀から鍛えててここの奴ら全員見違えるように見えるけどな。


「ああ! アンタは前にトカッツさんと一緒にいた奴だよな!?」


 ギルドのひとりが俺に話しかけてきた。


「こらバラザン! この方は私の恩人だ、失礼な話し方は許さんぞ!」


 バラザンと呼ばれた男はトカッツさんの一喝を受けて、慌てて姿勢を正して「す、すみません」と俺に謝ってきた。


 すごいしつけ具合だ……どれだけ厳しくしたらあのギルドメンバー達をここまでできるんだよ……


 トカッツさんの恩人と聞いてギルドメンバー達が綺麗に整列をして俺の前に並んだ。


「うぉっ!!」


 慣れない状態に思わず唸ってしまった。

 恩人だなんて……ただトカッツさんの娘ノーナちゃんの依頼を受けただけだってのに。


「ここに来たからには何か用あるんだろ? 顔にもそう書いてあるぞ、君のためならなんでも協力する、言ってくれ!」


 頼りになる……顔を見ただけで俺の悩みを察してくれるなんて。


「俺達もいますよ! 恩人のためならなんでもやるぞ!」


「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」


 何にも言ってないのにギルドの奴らも以上に張り切ってる……


 こいつらこんな奴らだったのか……

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