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3 依頼第一号!

「ここでいいなら使っとくれ。君も大変だろうからな」


「ありがとうございます! いきなりすいません、助かります」


 人の良さそうな爺さんはそう言って部屋から出ていった。


 出だしは順調だ!


 街の爺さんに事情を説明したらボロ屋を格安で使わせてくれることになった。


 城の直近でちょっと立地的に気まずさはあるけど、ある意味目立っていいのかもしれない。


 なにより、これで住む場所は確保できた。人としての生活ができなきゃどうしようもないからな。


 俺がほっと一息ついたところを見て、ラピスは嬉しそうに微笑んだ。


「やっぱりサレムさんは慕われてるんですね! よかった」


「白騎士団は街を守る役目だから一応な。今の爺さんも白騎士団が好きでよく差し入れしてくれたりしてたから頼んでみたんだ」


「それでもサレムさんだから貸してくれたんですよ! すごいです!」


 やけに嬉しそうだな……これから一緒にいる相手としては前向きな女神様と一緒ってのは悪い気はしないけど。

 

「でもこれからだ。これからは自分で生きてくために稼いでいかなきゃいけないんだ」


「そうですよね……これからどうされるつもりなんですか?」


「ふっふっふっ……」


 長年白騎士団で培ってきた人脈って奴が俺にはあるんだ。こうやって簡単に家を借りられたようにな!

 そこからうまく成り上がって騎士団にいた時よりも大金持ちになってやる!


 ずっと思ってたことだ。どれだけ頑張って働いても貰えるのは国からの一律支給の給料だけだった。

 騎士団にいたおかげでこの国まわりのことは大概知っているんだ。うまく立ち回れば絶対に騎士だった頃よりも儲かるはず!


「まぁまずは、なんでも屋ってところかな……」


 得意なものって言われると困るけど、特別苦手な事もない。

 街の人にも顔が知られてるし困った人の助けにでもなって徐々に街に浸透していこう。

 


 玄関からトントンとノックする音がした。


「さっそくお客さんですか?」


 ラピスか嬉しそうに飛び跳ねた。


 おいおい、さすがにできすぎだろ。

 

「宣伝も何もしてないんだぞ。お爺さんが忘れ物でも取りに戻ってきたのかな」


 昔ながらのボロい引戸をガラガラと開けると、その先には若い男が立っていた。


 「えーっと、あなたは確か街の外れで農業をやってる……」


 白騎士団時代に何度かあったことのある奴だ。こいつは何かあるごとに因縁をつけてくる騎士嫌いの奴だった……

 住民の情報網はバカにできないからな……もう俺がここに住むことを嗅ぎつけて文句でも言いに来たか?


「あっ本当にいたんだ、スマイルさん」


「スマイルじゃなくて俺はサレムだ……いきなり何の用だ?」


 もう俺は騎士じゃないし、騎士の文句を言うならちゃんと騎士達に言ってくれ。ついでに俺が追放された文句も付け足して貰おうかな。。


「前からずっとあんたらに言ってるんだけどさ、俺の畑の近くにモンスターがいるんだよ。怖いから退治してくれよ」


 ああ、そういえばこの男、前にもそんな事を言ってたっけな。あれは赤騎士団に引き継いだはずだけど。


「赤騎士団は来なかったのか?」


「来てないよ。ずっと相談してるのにあんた達何もしてくれないじゃないか!」


「そう言われても俺はもう騎士じゃ……」


 待てよ……ここで俺が解決すれば騎士よりも有能だってアピールになるんじゃ……


 フフフ……名案だ! これを解決して名をあげてやる!







 念のため剣を持って男の言う畑に向かうことにした。

 男本人は怖いと言い、そそくさと帰ってしまった……


「さっそく依頼があるなんて順調ですね!」


 ラピスってポジティブだな。それとも10年も話せなかったからおしゃべりできるだけで嬉しいのかな。


「確認しに行くだけだけどな。危険なモンスターなら赤騎士団が始末してるだろうし」


「その……赤騎士団っていうのは何なんですか?」


 へっ? ラピス知らないのか? ずっと俺を見てたはずなのに。


「クーガの騎士団には『白』『黒』『赤』『青』と4つ種類があるんだ。それぞれに役割があって白は街の警戒活動をやって、赤は街外れや遠征して危険なモンスター討伐を行ってる。さっきの依頼者から話を聞いてたから俺は赤騎士団に話をしたんだけど……」


「なるほどぉ、赤騎士団がちゃんと倒したかを確認しに行くんですね!」


「そもそもあの依頼者の冷やかしかもしれないけどな」


 白騎士団にいた頃なら、他の騎士団のやった結果なんて確認しにいったら怒られるだろうけど、今はもう関係ないしな……確認だ確認。


 依頼者の男の畑はこのあたりのはずだ。のどかな段々畑はあるけど、こんなところにモンスターなんているのか? やっぱり冷やかしか……


「サレムさん、あれ……」 


 ラピスが指差した先には人間の3倍はある背丈で棍棒を持つひとつ目のモンスターがうろついていた。

 えーっと確かあれは『レッサーサイクロプス』。

 ひとつ目巨人種のモンスターで、かなり高ランクな種族だぞ。あんなモンスターがいたらそりゃ怖いだろ。何やってるんだよ赤騎士団は……


「どうします、サレムさん?」


どうしますじゃないだろ、俺が叶う相手じゃない……


「逃げるぞ……見つかったら……あっ!?」


 ラピスが魔法を唱えてる……


「え……っ、まずかったですか?」


 火の玉がレッサーサイクロプスに向かっていく。


 ボフっと音と共にレッサーサイクロプスが火に飲み込まれたが、無傷でこちらに振り向いた。


「えっ! 効かない!?」


「サイクロプス系のモンスターには魔法が効かないんだ。それより近づいてくるぞ……」


 いきなり大ピンチじゃないかこれ……

 1件目の依頼で死ぬのなんてごめんだぞ……


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