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26 降臨

 リューガルの動きが止まった。


 ラピスの呼びかけに反応したってことなのか……? それにしても「りゅーちゃん」って……


 それよりラピス……これまで激しく動いちゃってたけど大丈夫だったか?

 

 顔をチラ見したがまだ目を閉じてて呼吸も粗く苦しそうだ。

 リューガルと知り合いだから苦しい中で助けてくれたのだろう……


「ガウ」


 リューガルが攻撃を止め降りて近寄ってきた。

 目的は当然ラピスみたいだ、俺の背中でぐったりとしてるラピスをじっと見たり、匂いを嗅いだりと何やら確認している。

 逆立っていた毛も落ち着いて、綺麗な白色に戻っている。ラピスの声ひとつで我に返ったみたいだ。


「ラピスのこと何かわかるのか?」


 まずラピスを確認できるだけでリューガルは普通じゃない、やっぱり神に関係するモンスターなんだ……


 ひとしきり確認を終えるとリューガルはラピスから数歩離れて上空を見上げた。


「ウオオォォォォォォォォォ…………ン」


 遠吠え? こんなときに何を……?



「ほいほい、聞こえとるよ」


 どこからともなく声がする……


 姿はどこだ?


 空の何もない空間にピシッと亀裂が入り穴が空き、そこからヌッと白髪のじいさんが顔をだした。


 白い布を体に巻きつけている、ラピスと同じ服装だ。


 この人は神様なのか……?


 高貴な威厳的なものはあまり感じない、気に良さそうなじいさんにしか見えないけど……


「ほっほっほ……疑うのもわかるがお察しの通り私は君達から『神』と呼ばれる存在じゃ」


 ん……俺は何もしゃべってないのにバレてる……疑ってるのが顔に出てたから? それとも感情が読まれたのか?


「いえ……疑うなんてことは……」


 リューガルはこの人に向かってピシッと座り服従の構えを見せている。

 確かシロナちゃんがはじめに神様とリューガルとは何かしらの関係があるようなこと言ってたもんな。


 だとしたら本当にこの人は神様……


 こんな場面で会えると思わなかった……でもよかった、本当に会えるなんて……

 まぁまずはとにかくラピスのことだ……


「あの……」


「よいよ、言わずとも知っとる」


 そう言うと神様は身軽な足取りで俺の背負っているラピスに顔を寄せた。


「ふ〜〜む……」


 何やらじっくりと観察をしてる……

 見てるだけで具合とかわかるのかな……?


「ラピス、大丈夫そうですか?」


 ちょっと見てもらうつもりでいたはずがかなりの無理をさせてしまった……これで悪化でもしてたら俺の責任だ……


「ほっほっほ……なんてことないのぉ、これは神が天界から降りたときに起こる酸欠のようなものじゃ」


「酸欠?」


 まぁ確かに苦しそうに息切れを起こしてたけど……


「天界とこちらじゃ空気が違うからの、はじめてこちらにくると順応しきれず多くの神がこうなってしまうんじゃよ」


「それって……このままラピスはどうなってしまうんですか?」


「うーむ……ごくまれじゃが悪化して死んでしまう神もいないことはないがのぉ……」


 それほど大事ではないと言いたげな雰囲気だ、放っておけば治るってことだろうけど……


「死んでしまうこともあるんですよね? 何かやってやれることはないんですか?」


 万が一でも死んでなんか欲しくない、そんなの絶対にダメだ!


 俺の顔をみて神様はニヤリと笑った。


「ほっほっほ……簡単なことじゃ、契約をした人間が空気を送り込んでやればすぐにも治るじゃろ」


「えっ!?」


 ちょっと待てよ……

 空気を送り込む……?


「それってその……人工呼吸的なこと……ってことですか?」


「うむ」


 神様が嬉しそうにコクンと頷く。



 えええええええええぇ!!


 ちょっと待ってくれよ、こんなところでやれってか!?


「俺は……俺はいいですけど……ラピスは、そんなことされて嫌なんじゃ……」


「ほっほ……なら止めればよかろう、助けられるのは君だけじゃがな」


 ぐっ……さっきはそうそう死ぬもんじゃないみたいなこと言ってたくせに……

 俺はもちろんラピスを助けたい……


 しゃがみこみ、おぶっていたラピスの頭を膝に乗せた。


 相変わらず表情は青く具合が悪そうだ……

 神様にがきたことにも気付いてないだろうな……


 そうそう死ぬことはないっていうけど、運悪くラピスがそのごく少ない方の一人だとしたらどうする……

 俺がちょっとキス……じゃなかった、人工呼吸をするだけでラピスは助かるんだ。


 はっきり言って俺はしたいぞ!


 でも寝込んでる、ラピスの唇を勝手に奪っていいのか?(おっぱいに顔は埋めたけど……)





 ダメだ……悩んでても決められない……


「すいません、もしこれで俺がラピスに嫌われたら、契約ってやつはどうなるんですか?」


「さてな……それも含めて君が判断するんじゃ」


 神様はゆらりと宙を漂いながら俺の問いを受け流した。


 ケチだな、神様……

 ヒントもくれないのかよ……それじゃどうしたらいいんだよ……


 どうしたらいい?


 嫌われるなら、このままラピスが苦しんでいてもいいのか?


 違う……


 神様はアドバイスをくれないんじゃない、すべてひっくるめて俺に受け止めろって言ってるんだ。


 は……腹を括るしかない……


 俺はラピスに……女神様にキスをする。

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