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2 そんなトコまで見てたんですか?

 騎士団にはもういられない……頭の整理がつかない中、宿舎に置いてある自分の荷物を片付けていた。


 14年もここにいたんだ思い出はたくさんある……

 取り出すごとにこみ上げるものがあるが、あまり時間もかけていられない。さっさと必要なものだけまとめてしまおう。


「もうここには戻って来れないんです……よね?」

 女神が俺に聞いてきた。

 この女神、名前はラピスと言うそうだ。本人にも確認したがやっぱり大聖堂で加護を受ける時に現れた女神様で間違いないらしい。


「今日中に荷物をまとめて出てけって言うんで……」


 酷いもんだ、これまで骨身を削って尽くしてきたはずなのに、急に追放だ? その日の内に出て行けだ……?


 下っ端騎士の扱いなんてこんなもんだ。上の奴らから見たら捨て駒も同然でどうなろうが関係ないんだろうな……


「私が今まで姿を現さなかったばかりにこんなことに……」


「ん? どういうこと?」


「ごめんなさい……私臆病で……ずっとサレムさんを見てるだけで姿を現せなくて……」


 え……見てた……?

 この子ずっと俺の近くにいたの?


「ちょ、ちょっと待ってよ。ずっと見てたってのはこの部屋の中にいる時も……?」


 ラピスはコクンとうなずいた。

「はい、それが私の使命なので」


 おいおいおいおい……乱雑に置かれている18禁雑誌に目を向けた。

 まさか……イヤ……絶対見られてるよな……


 「もしかして、よく読んでいたその『女騎士、秘密の花園』って本を気にしてるんですか?」


 うわっなんだ!?

 ラピスがぐいっと身を乗り出してきた。なぜか目が輝いてるし……


「ずっと気になっていたんです! その本を熱心に見ながら前屈みになって何してるのかなって……正面を見たら見つかっちゃうんで」


 バレてるぅぅぅぅぅぅぅ!!!


 でも紙一重! 超紙一重でナニをしてたかまではバレてない! でも説明できるわけねぇだろ!

 まさかこんなところに食いつかれるとは……


「その本、女性騎士が裸で色々なポーズを取っていましたよね。もしかしてそこから人体の研究をしていたんですか?」


「へ……? あ、そうそう、そうなんだよ。この本色々なポーズが乗ってるから勉強になってさ……」


「やっぱりそうだったんですね! 他にも『全裸女騎士、危機一髪』や『誰にも言えない女騎士の秘密』とか……」


「やめろやめろ!!」


 めちゃくちゃバレてるじゃねぇか……俺の性事情が筒抜けだ……ギリギリで俺の聖剣を見られてないだけであとは大体バレしまってる……ラピスは変な解釈してくれたみたいだけど……

 とにかく話題を変更だ!


「もっと早く姿を見せてくれたらよかったのになぁ」


 何げなく空気を変えようと思って言っただけなのに、ラピスは目を潤ませ出した。


「本当にごめんなさい……私がもっと勇気を出せばサレムさんを悲しませなかったのに……うぇぇぇぇぇぇん……」


 まずい、泣かせてしまった……言っちゃいけない言葉だった。

 

「そういうつもりで言ったんじゃないんだ……」


 ラピスの肩をポンポンと叩いて励まそうと思ったけど……この娘なんて格好してるんだ。

 白い布で体を巻きつけているだけで、改めて見てみると胸の谷間とかくびれとか見えちゃってるじゃないか。清楚そうに見えるのにすごい服着てるな……これが神様の正装なのか……?


 突然、俺の部屋の扉が強くドンドンと叩かれ強引に開かれるような音がした。


「さっきからうるせーぞスマイル!」


 宿舎担当の騎士長だ……ラピスとちょっと盛り上がり過ぎてたか……


「すいません、つい話し込んじゃって……」


「話し込む? 誰と話をするんだよ……いいからさっさと片付けて出て行けよ」


 そう言うと宿舎担当は去っていった。


 クソ……ッ腹立つな、100%そっちの都合なのになんでそんな風に言われなきゃいけないんだ!


 あれ……そういえば……今、ひとりごと言ってるように思われてなかったか? 横にラピスは確実にいるのに泣き声は聞こえてなったのか……?


「神の存在は契約した者しか認識できないんです」


 ラピスが少し落ち着いたようで説明してくれた。

 だからか……他の人にはラピスの声が聞こえないからひとりごとのように聞えたんだ。


 結局、俺は神の加護を受けはしなかったが女神のラピスと契約をしていたらしい。


 色々あったせいで、追放されたショックが吹っ飛んでしまった。

 

「なあラピス、俺が騎士をやめたらその契約っていうのも切れてしまうのか?」


「ううん、そんなことありません。加護も契約も騎士団であることとは別の話ですから」


「そっか、じゃあラピスとはこれからも一緒に入れるんだ」


 ラピスの顔が一気に赤くなった。


「あわわわ、そんな急にそんな……何だか照れちゃいます……」


 やばい……かわいい……。こうやって話をしてると普通の人間と変わらないのに、女神様なんだよな。


 

「これからどこか行く当てはあるんですか?」


 心配そうにラピスが訪ねてきた。ラピス本人にも関わる話だし気になって当然だ。


「一応な……」


 白騎士団は街の警戒活動を行うのがメインだった。騎士好きの国民も多いからこれでも顔は広い。

 今の立場で話を聞いてくれる人がどれだけいるのかはわからないけど、とにかく色々当たってみるしかないよな。


 騎士団め……俺が追放されたことをフォローしてくれる奴すら誰もいなかった……

 加護がないと思っていたなりにちゃんと尽くしていたはずだぞ!

 こんな雑な扱いをしたことをいつか後悔させてやる……

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