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75話:合宿〈7〉

もうすぐ春休みお終わりですね。

テストがあると思うと憂鬱です。

「メルビー!」


メルビーの姿は狼族特有の大きな耳、青と白のグラデーションの尻尾を持った狼に戻っていた。

耳についていたはずのイヤリングは魔石の部分だけ外れていた。

それが原因で元の姿に戻ったのだ。

今のメルビーの姿を見られたらまずい。


「リスタ、水中に空気って持ってけるか?」


「あ、うん![空気玉]」


リスタが空気中に集めた空気の玉が海中に入っていく。

それは割れることもなく、メルビーの周りを満たす。


「はぁはぁ、ありがとう。助かった…」


俺もリスタに用意してもらった空気の玉を顔の周りに持ってきてもらい、メルビーの元に泳いでいく。


「メルビー、今は時間がない。指を出してくれ」


「分かった。…これでいい?」


出された指に青色の魔石が施された指輪をはめる。

海の中に差し込む光が魔石に反射してそこに海の魚が集まってきた。


「うわぁ…きれい。あはは、くすぐったいよ」


「これはすごいね!ルカ、見て見て!」


「アリス、暴れたら逃げちゃうよ」


いつの間にか現れたアリスとルカは魚を追いかけううまく海の中を泳いでいる。


「アリス、ルカ、お前らいつからいた?」


「ん?今来たばっかだよ。アーグがあんなに大きな声で叫ぶから何事かと思ったよ。

あれ、メルビーちゃんそんな指輪つけてたっけ?きれー!」


今来たばかりなら…、バレていないだろう。

バレていたら真っ先にその話をしてきそうだしな。


「そうだよね!これ、さっきアーグにもらったんだ」


海の中で空気の玉を頭に付けた5人が踊る。

透明度の高いこの海ではお互いの顔が良く見える。

だがそこにエルフの顔も、狼人の顔もない。


「リスタ、この魔法すごいな。海の中でも息ができるなんて」


「そ、そうかな?ありがとう」



浅瀬に戻ってきた5人のもとに他の皆も集まってきた。


「アーグー、私たちも混ぜてっ」


「スフィア、いいぞって俺が言うこともないけどな。皆で遊ぼうぜ!」


俺たちはその後浜辺で魔法を打ち合ったり、泳いだり、普段サマやランド王国でできない事をした。

俺とケリフ、ヘンクとアリス、ルカは約束通り魚釣りをしに行った。

ここで取れる魚は地球で取れる者とは違い、全ての大きさが桁外れだった。

だがこちらにも魔法と言う地球にはなかった武器がある。

身体強化やヘンクの雷の魔法で一度引っかかったら逃すことはなかった。

小1時間ほどで24匹の魚が釣れた。

今日の夜ご飯はこれで決まりだ。

久しぶりに俺が料理をふるまうのもいいかもしれない。

雪と二人で暮らしているときにたまに教えてもらったんだ。


「おーい、みんなー!どれくらい採れた?ってすご!こんなに採れたの…」


メルビーが走ってきた。

と思ったら、俺たちがとった魚を見て目を輝かせている。

こんなメルビーだ。

これだけじゃ足りないだろう。


「もう一狩り行きますか」


「おー!」


それから俺たちは釣りまくった。

それはもう釣りまくった。

魚は最初につった数の3倍にはなっただろう。

これでメルビーには腹いっぱいたらふく食えるだろう。



「あ、アーグ達戻ってきた」


「おーただいま。見ろ、こんな取れたぞ!」


ケリフは取った魚を高々に上げ、仲間に見せる。

ぴちぴちと跳ねる魚はどれも新鮮で、とても美味しそうに見える。

アリスの使った氷系の魔法でほとんどの魚を新鮮な状態に保っているのだ。


「おぉ、今日の晩御飯は豪華になりそうだね!」


「スフィア、スフィア、今日の晩御飯はお魚かな?楽しみだね!」


「どうどう、カエラがそんなに興奮するって珍しいね」


「だってひさし…。魚って初めて食べるからね」


「ランド王国には海ないからね…。その分今日はいっぱい食べようね。

それじゃあそろそろ晩御飯の準備しよっか」


「うん!」


男子は機材などの準備、女子は食材の準備だ。

だが男子の準備はそこまでない。

だからやることは既に終わってしまった。

話は誰が一番強いかということになった。

特に一番燃えているのはレイとケリフ。

俺はそういうことに興味はあるが、今は俺の料理の腕の見せ所だ。

女子が料理を作っている学食のキッチンに来た。

料理の得意なカエラやルーファ、ファセットさんが率先してみんなを引っ張っていっている。

だからかキッチンには美味しそうな匂いがこれでもかと充満しており、俺の空腹を促進させて来る。

俺の存在に一番に気づいたのはヴェノムさんだった。

その手には何かの液体が入った瓶を持っており、フライパンに流し込もうとしている。


「あら、アーグ君。もしかして何か手伝いに来てくれたのか?」


「ヴェノムさん。そうなんだけど、俺はもう必要ないかな…何入れようとしてんの?」


「おお!これか、これは毒ではないから安心してくれ。私特性の元気が出る液体だ。今日は皆よく体を動かしたからね。それと、私のことはぜひヴェノムと呼び捨てにしてくれて構わない」


「じゃあヴェノム。その、元気の出る液体って何からできてる?」


「気になるか~?」


俺のその質問を待っていたかのように口角を上げると、俺は木かなければよかったと後悔することとなるほどの素材を使っていた。

でもそれのおかげでヴェノムの実力も少し分かった気がする。

素材と言うのが中々に難しい魔物からとっているものもあり、彼女曰く、一人で行くことが多いとも言っていた。

薬や毒の知識がありながら、彼女は身体能力にも自信があるらしく、彼女にナイフを持たせたら暗殺者としても行けるとレイが言っていたのを思い出す。

もっぱら、彼女はそんなことに手を出すよりか、毒を研究する方が楽しそうにしそうだ。


「おっと、話過ぎてしまったようだね。料理がほとんど出来上がっている。

アーグ君、運ぶのは手伝ってもらおうか」


「それなら任せておけ」



久しぶりに食べる魚料理に感動を覚えながら、クラスメイトの料理の腕が中々なことに驚いたものだ。

次に機会があるなら俺の料理もぜひ食べてもらいたい。

俺が少し目を潤ませていると、真向かいに座ったレイが話しかけてきた。


「アーグ、お前さっきまでヴェノムの奴と話してたよな」


「あぁ、ヴェノムって面白いよな」


俺のその言葉に目を見開いたレイ。

そんなに変なことを言ったつもりはないのだが?


「お前すごいな。俺は入学してからあいつと話したことがあるのは3回くらいだぞ。あいつは男と話すことって少ないからな」


気に入られたな。そう言われた。

俺が話しているときはあまり男嫌いには見えなかったから他に何要因があるのだろうか。

まさか毒に強そうな男とは話すみたいな…。

俺は彼女のモルモットにされるのかもしれない。

今もたまにちらちらとヴェノムに見られている。

彼女の目に俺はどんな風に映っているのだろう。

そう考え始めたら怖い。

こんなことを考えるのはやめよう。

今は食事に集中することにした。


しばらくすると俺の左側に座っていたスフィアが話しかけてきた。

ちなみにこの座り順に意味はない。

早く来た人から奥から座っていったのだ。


「アーグ、私今日大発見したよ」


「急だな。何を発見したんだ?」


「実は、私海の中を泳げんだよ」


「それは良かったな。かなづちじゃなかったってことか」


「かなづち?分からないけどそういうことじゃないよ!海の中で呼吸できたの」


スフィアから放たれたその言葉は衝撃的な物だった。

驚きすぎた俺はスフィアの喉を触ったり、手を見るなどしてしまった。


「な、なにしてんの!急にそんな…」


「あ、すまん!そういうつもりじゃなくてだな!もしかしたら…」


「もしかしたら?」


「あー、スフィアが水系統の魔法しか使えない事と何か関係あるんじゃないかと思ってな」


本当に言おうとしたことは違う。

スフィアが人間じゃないってことだ。

リスタがエルフのように、メルビーが狼人のように、スフィアも何か別の種族なのかと思ったのだ。

でも彼女にそんなことを言って無意味に傷つけるかもしれない。

それに彼女の両親は普通の人間だった。

リスタやメルビーにしているように何かで隠しているってこともない。


「確かにそうだね」


「どんな感じで呼吸できたんだ?」


「んとね、今呼吸しているときと同じ感じだよ」


「そうなのか、俺は海の中じゃリスタに手を貸してもらわないと呼吸できないからな。本当にスフィアには水に関して勝てることはなさそうだな」


「ふふ、ありがと。あ、そういえば海の中で不思議な物見つけたんだよね。なんか洞窟みたいな?怖くて行けなかったけど」


「洞窟!洞窟があったのか?」


「う、うん。今日のアーグはなんか積極的だね」


洞窟、もしかしたらアリスの言っていたそれと同じものかもしれない。

そうだとしたらぜひ行ってみたい。

でもそれには少し準備が必要そうだな。

リスタの空気玉がどれくらい続くのかとか、スフィアの協力が得られるかとか。

この合宿、楽しくなってきたな。


読んでくださりありがとうございます。

ついにユニーク数が3000を突破しましたよ!

ぜひ今後も呼んでいってくださるとうれしいです。

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