49話:流れ星
このクリスマスイブの日に記念すべき50話目ですね!
ここまで長いような短いような、ちょうど2か月になり、最初に比べ少しはましな文章が書けるようになってきたのかな。そう思いたいです。読者の方々がどんな年齢、職業なのかはわかりませんが、1558人という数字に感動と、そして感謝で胸がいっぱいです。最近思うんです。高校生活男だけですごしてもいいのでは?と。あれですね、男子校にいると段々アニメやラノベ、つまり2次元が心のよりどころになってきて、中学校よりも充実してる気がします。皆さんにとってアニメとかって何なんでしょうか?それは人それぞれの考えがありますよね。まあこんな長々と前書きをかくのは初めてですが今日は記念の日なのでよいとしましょう。
はぁ、何やってんだろ。私。
二人が一つの部屋に住んでいたのは知ってたはずなのに、
いざ目の間で見ただけで胸に雲がかかったような感覚になる。
シュルガトさんはいつもああだ。
距離が近いって言うか、躊躇いとか遠慮ってものがないって言うか。
二人とも…兄妹、みたい。
それにアーグもシュルガトさんには甘いし。
あぁーもう、もやもやする!
何でなの…あの二人を見ていると私が…
「もう何?スフィア」
寮の中庭で悩んでいた私の肩をポンとその人は叩いた。
振り向くとそこにはスフィア、ではなく私の悩みの種製造機ともいえる彼が立っていた。
「星がきれいだな。ランド王国もきれいだったけどこっちもなかなかのものだ」
確かに。こっちの世界では月が青い。
まるで空にサファイアが浮かんでいるような。そんな感じだ。
「アーグ…」
横に腰かけたアーグは私の方は向かず、ただ一点、この広い空のどこかを見ている。
「俺と話でもするか」
「え…」
そういってアーグは昔を思い出すように目を閉じ、
「お兄ちゃん!こっちこっち!」
俺を呼ぶ声が聞こえる。俺の可愛い妹だ。
これは…まだ俺たちに母親がいたころか。
とてとてと俺の手を引きながら走る姿がとても愛らしい。
「雪そんなに走るな、転んでも知らないぞ」
「大丈夫だ…いたっ!うぅ…」
前を見ていなかったせいかひょっこりと生えていた根っこに気づかず派手に転んでしまった。
「ほら言わんこっちゃない」
「うわぁああああん…」
「よしよし、泣かないの。ほら、泣いてたら見えるものも見えなくなるだろ」
幸い地面はやわらかい土、ケガもない。
でも一度泣いてしまったら落ち着くまで長いのが雪の性格だ。
「うわあああん…」
「はぁ、しょうがないな。ほら雪乗って。早くしないと時間に間に合わなくなるぞ」
雪は泣きながら俺の背中に乗ってくる。
双子の俺たちだが俺も男だ。
まだ幼いとはいえ、かわいい妹のためだ力が湧き水のように出てくる。
そうなった俺は疲れなんて感じない。
そうして泣いてる雪を背中に坂道を登っていく。
ここは通称爺山。
まあその名の通り町の爺さんが朝の散歩で登れるくらいの小さな山だ。
それでも町の建物より高く、町を一望するには絶好のスポットと言える。
でも今日の俺たちの目的は町ではなく星だ。
なんでも流星群が来るとかなんとか。
それを二人で見に行こうとなったのだ。
家には今日も母親がいない、帰ってくるのも良くて深夜、
いつも通りなら朝帰りか。
貧乏の俺たちにはプレゼントはおろか、食事もままならない。
だから雪が見たいといった星は誰が何と言おうと見せてやりたい。
「雪、見てみろよ。星がきれいだ」
頂上に着いた俺たちを待っていたのは視界一面の星。
都会に近くてもこんなにきれいな星が見えるなんて…。
「うぅ…う?」
雪の目尻に溜まっていた涙を優しくぬぐってやる。
「うわああ、きれいだよ!お兄ちゃん」
「あぁそうだな」
きらっと視界の端で何かが光った。
そっちに顔を向けると、
「ゆ、雪!なが、流れ星!あっちだ!」
「ど、どこ!」
「ほらあっち!」
わたわたと首を動かし、それを探している。
じれったくなり、雪を体ごとそっちの方へ向けてやった。
「ほわあ…」
「すげえ…」
頭上を通りすぎるそれらはほかの星なんか比べ物にならないほどに、
ただきれい。そんな感想しか思い浮かばなかった。
そしてそれらも流れ終わった頃、雪が思い出したように、
「あっ!願い事頼むの忘れちゃった…」
シュンと落ち込む雪の頭を撫で、
「また一緒にこよっか」
「うん!」
その願いはその後、叶うことはなかった。
「俺の村はカエラも見た通り周りが森でさ、
母さんがよく森の奥に連れてってくれてな、星を見せてくれたんだ。
別に村でも見えるからいいって言ったんだけど毎回無理やり連れていかれてさ。
いやいやついて行っても結局はきれいな景色に魅せられて、
ああ来て良かったなって思うんだけど。
それが毎回俺が悩ん出ることがわかってるのかってくらいのタイミングで、
毎回俺に寄り添って悩みを聞いてくれたんだ。この空に吐き出せば少しは楽になるって。
だからさ、カエラも声に出してみればどうだ。
まあ、俺なんかが力になれるなら俺にも話してくれ」
「そっか、お母さん、優しいんだね。でも…うん。
どうしてかな…二人を…アーグ達を見てるとね、なんかもやもやするって言うか、
いやっ、嫌いとかじゃなくて…なんて言ったらいいかわからないけど、
私が離れていくって言うか。な、なに言ってるんだろうね!」
その目尻には涙が浮かんでいた。
「あっ…」
それを優しくぬぐってやる。
「さっきは力になるって言ったがやっぱり俺には少し難しいかもしれないな。
カエラがわからないんだ。俺だってわからない。
十人十色って言うだろ?誰かの考えなんて分かるもんじゃない。
考えを口にしたって相手が理解してくれるかも分からない。
でもいいんだよ。悩んで、考えて、それで対立したって。
なんでわかってくれないの。それを自分が思ってるなら多分相手も同じ考えさ。
それってさ、互いにもっと近づきたいってことだろ?
俺はカエラがなんでもやもやしてるかわからない。
でも俺はカエラが言いたいこともわからないんだ。
でもこれだけは言いたい。
俺はカエラともっと近づきたいし、もっと理解したい。
悩んでいるなら共有して、悩んで、少しでも力になりたい。
それが何も生まなかったとしても、さらに近づけるように努力したい。
まあなんだ、俺が言いたいのは、俺はカエラの前からいなくならないし、
離れていったりもしないってこと」
「…ふふ、わかんないや」
「そっかー…それでいいんだ」
「でもねアーグが離れていかないってことは分かったよ」
沈黙が続いた。すると、
「おいカエラ!流れ星!」
「えっ、どこどこ!」
「あーもう!あっちだって!」
俺はカエラの肩を掴み、星が流れる方へ向けた。
「わあ…きれい」
「すげえ…」
流れる星の下、二人のシルエットは心なしか近づいた気がした。
「あっ!願い事頼むの忘れちゃった…」
「はは、それならさ」
「ん?」
「また、二人で一緒に見にこよっか」
読んでくださりありがとうございます。
良いクリスマスを。




