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48話:親睦会

49話目です。

最近やまじょを見直しているんですがすごくいいですね。

それから何もなかったかのように、

ヘンクの登場で周りで見ていただけの野次馬は蜘蛛の子散らすように散っていった。

いつの間にか呼んでいたのか、

この国の紋章が記されている鎧に身を包んだ騎士たちが数人立っていた。

ヘンクは彼らにここら辺の警備を強めるように、と一言だけ言い、

騎士たちは去って言った。

見ているだけとは言っていたがこの国の王の息子としてやることだけはやっていたようだ。

サラムもクラスメイトの女子に囲まれ落ち着いてきたのか、

赤い目をこすりながら感謝を伝える。

それに対し女子たちは早く助けられなかったことに後悔しているのか、

謝罪の言葉を述べている。

それでも最後はどちらもメルビーの陽気な態度に感化され、笑いあった。

俺は俺でヘンクとなんで来なかったんだよ!と冗談めく言い、

それにヘンクも応えるようにすまないなぁと笑った。

シルは俺の背中に乗り、既に寝息を立てている。

さっきまでの頼りある師匠の面影はなく…仮面をつけているから面影もくそもないが。

それにしてもこのクラスは笑いあって楽しいな。


「え~っと、俺の居場所はどこですかね…」


「おお!お前いたのか!忘れてたよ。でさーヘンク」


「おい話を進めるな!俺も入れてくれー!」


「ははっ、ケリフ君は面白いね」


「ありゃ、ケリフいたの?」


メルビーもこちら側に入ってきた。


「お前ら~!」


ケリフは俺たちの態度に段々と元気をなくしてきてしまった。


(あの、あれでいいのですか?)

(エルカさん、あの人はああいうキャラなんです)

(ははぁ―…)

(でも少しかわいそうな気がしますね)

(そうですかね?あの人もあれで楽しんでるんじゃないですか?)


エルカはちらっとケリフを一瞥する。

そこにはアーグとヘンクとメルビーにすがり付いているケリフがいた。


(そうかもしれませんね)

(そうそう。気にしないで私たちも楽しみましょ)


「よーし!それじゃあ皆でアイネス先生が言った飲み物を買いに行こうか!」


『はーい!』


サラムもこの空気に慣れてきたのか、遠慮がちに返事をした。


その後はスライムジュースに自分の好きな果物を入れて楽しんでいた。

初めはメルビーが他の人の飲み物にも手を出していたが、

段々とみんなで交換するようになり、


「あの、アーグも飲む?」


カエラが小さな声で聞いてきた。


「え…」


俺の脳裏には間接キスと言う文字が浮かび、

少しの間戸惑ってしまったが相手の好意を受け取らないのも悪いと思ったし、

素直に飲みたいという気持ちもあったので受け取り、

代わりにカエラには自分の飲んでいたものを手渡した。


「ありがと、じゃあ…飲もうか」


しかし手にしてみて再度思ってしまう。

日の光を浴びて赤色に煌めくその飲み物には、

カエラが好きなのか、リンゴが細かく切られ、入っていた。

そこから伸びるストローがいやにエロティックに見えてしまう。

これがストローということもその気持ちを増幅させているのだろう。

そこ確実にカエラの口、唾液がついて…いや止めよう。

よしっ、と俺は意気込みついにちゅるちゅるとスライムジュースを口に吸いこむ。


「んっ」


シュワシュワと口の中ではじけるスライムに、

鼻から抜ける果実の甘い香りが実にいい。

たまに入ってくるリンゴの果実はシャリシャリと、

絶妙な味のバランスで今までにないくらい美味しかった。

そして、


「おいしい!…って、どうした?」


俺が一口飲み終わり、カエラに返そうとしたらそこには俺の飲み物を両手でもち、

凝視しているカエラの姿があった。

俺はキウイが好きなのでそれを入れているが…

もしかして苦手だったか?


「あぁ悪い。苦手なら無理して飲まないでいいんだぞ」


そう言ったがカエラは、嫌がる様子もなく、


「い、いや大丈夫、好きだよ!の、飲むね!」


ストローに口をつけ、ちゅるちゅるとそれをすする。

そして目を見開き、


「おいしいっ!やっぱりキウイっておいしいよね!」


「そうか、カエラのもおいしかったぞ」


「私も。でもなんでキウイ?」


「あぁそれは…俺のいも「ああああ!」おい!」


「カエラー!私にも!」


横からメルビーが割り込んで俺とカエラの物を奪うようにして飲む。


「コラ、我慢しろって言っただろ?もう忘れたのか」


ぽかっとメルビーの頭をたたく。

まったく、こいつの食い意地にも困ったものだ。



少し遡ってカエラ視点


(あの、あれでいいのですか?)


エルカさんが声をかけてきた。

ケリフを見ながら言ってるので多分そういうことだろう。

優しい人だ。

アーグから聞いた感じ、

実技試験の時はもっと好戦的で熱い性格だと思っていたけど、

話していると意外にもおっとりとしていることが分かった。


(エルカさん、あの人はああいうキャラなんです)


エルカさんは少し納得がいってないのか、


(ははぁー…でも少しかわいそうな気がしますね)


私はケリフを少し眺める。

あの三人に無視されていてまるで何かのコントを見ているような気持になる。

でもケリフの顔にはそこまで嫌な感情はうかがえない。

あの状況を楽しんでいるのだろう。



「ねぇカエラ」


皆でスライムジュースを買い、

各々好きな果物を入れて交換を楽しんていると、スフィアが私に声をかけてきた。


「どうかしたの?」


スフィアは少しだけニヤッとすると、


「いやーアーグのあれ、飲みたいなって」


あれ…つまりジュースのことだろう。


「飲む…あ、ダメ!」


「どうかしたの?私はただ交換したいなって思っただけだけど…」


「あぅ」


どうしてだろ、また頭で考える前に否定してしまう。

何で?


「そ、そうだよね。いいんじゃない?飲めば…」


そうだよ。友達同士交換するのは普通だよ普通。


「じゃあ先に行かせてもらうよ」


「やめて!…あ、いやあのね…私が先に行くよ、って思ったり…」


「ふーん。じゃあほら行った行った!」


ぐりぐりと私の背中を押してくる。

戸惑っていると目の前にはアーグが立っていた。

もうやるしかない。そう胸に決め。


「あの、アーグも飲む?」



「カエラどうだった?彼の味は?」


ほれほれと肩で私をつつきながら感想を求めてくる。

少し言い方が気になる。

はぁ、昔はこんな娘じゃなかったのに、いつからこうなってしまったのか。

ソラの時もそうだ。

いやこんな話をしても無駄なのは分かってるけど…。


「おいしかったよ。ジュースが」


「初めての味だったかな?そういえば初めてはイチゴってよく言うけどキウイだったね」


「ねえスフィア、それってジュースの話だよね?」


「あー、エルカがケリフに絡まれてあぶなーい」


「あっ、ちょっと!」


あからさまに逃げられてしまった。

うぅ、今度やり返してやる。

それにしてもさっきアーグに聞こうとしたとき何か言ってたような。

いもとか。いも…いも…芋?

まあいいか。

ほんとだ!ケリフが獣のような目で狙ってる!



あれからケリフが紐で手をぐるぐる巻きにされたり、

メルビーが食べすぎで口を紐でぐるぐる巻きにされたり、

あれ?ぐるぐる巻きにされすぎじゃない?

かく言う俺も今は目をぐるぐる巻きにされている。


「アーグ、何で女の子と二人きりでこの寮に住んでるのかな?」


俺の視界は覆われて全く見えない代わりに聴覚に集中してしまって余計にその声が低く感じる。


「スフィア!これには理由がっ…ひいい!」


顔に水が掛けられる。

その水は気のせいか何故かしょっぱい気が…。


「あれれ、言い訳ですか?なかなか強情ですねぇ」


「俺まだ何も言ってないじゃん…」


「あっはっは!いいぞー!」


「おいヘンク!そこにいるなら助けろよ!」


「何故だ?こんな楽しいこと終わらせるわけないじゃないか」


こいつ…いい性格してるな。


「ヘンクさんはいいんです。今は私と話してるんですよ?いい度胸してますね」


「ひいい!」


あの頃は…出会った頃が懐かしい。

もっと内気でもっと優しかったのに…。


「白金クラスの皆には一人一部屋振り分けられますよね?

それが何でこんなことになっているのでしょう?」


「それはだな!アイネス先生がっ!痛って!」


さっきよりも早い水の玉が飛んできた。

ん?さっきよりもしょっぱい…。


「まさかとは思いますが…アーグが無理やり…なんてことはありませんか?」


こいつ…全く話を聞かないな…。


「言わないなら…」


スフィアが近づいてきたと思ったら頭から水が垂れてきた。

しょっぱっ!なにこれ!まずいこ、殺されるのか?


「そ、そうだ!スフィア、俺の引き出しの手紙を見ろ!

そうすれば信じてもらえる!」


「ふふ、そこまで言うならいいでしょう。でも、あまりそういうことはしないでね」


「いやーアーグ君も悪い人だ。うんうん」


「何のこと?」


ていうかスフィア手紙見てないだろ? 

そして俺の目を覆っていたタオルが取られ、


「…皆いたのかよ」


そこには俺のクラスメイトがすわって見学をしていた。


「アーグ!なんでシュルと一緒に住んでるの!」


「リスタ落ち着け!だから風を起こすのを止めろ!」


「おいアーグ。流石に家族だからって…うらやまs」


「アーグ、もう12なんだよ?一人で寝れるようにならなきゃ」


「メルビー、食費を減らすぞ?」



その後なんだかんだ合って誤解は解けたが、

終始ヘンクは笑い、サラムは読書に勤しみ、カエラは…無言だった。


読んでくださりありがとうございます。

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