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46話:入学式

46話です。

白金

アーグ=バーラット

カエラ=ランド=マナトリカ

ヘンクース=サマ=クリセル

リスタ=バーラット

スフィア=ラック

ルーファ=サラム

ソラ=モク

ケリフ=カラヘルム

エルカ=スチルベ

メルビー=バーラット



クラス発表から時間が経ち、

あのごった返していた集団も少しずつ緩和されていった。

これに加えてシルが例外で白金クラスに入っている。

何故かは知らないが同じクラスならなにかと楽だろう。

例年は貴族だけが白金クラスに入っていたが、

今年は俺たち平民からも多く白金クラスに所属することとなった。


「なあ…」


掲示されていた紙を眺めていたらとなりの男に話しかけられた。

この男も同様に紙を眺めている。


「なんだケリフ」


振り向きもせず、ただ淡々と聞き返す。

どうせ大したことでもないだろう。

だってケリフだから。


「エルカ=スチルベってあの人だよな」


あの人?

そういわれても俺は情弱だからピンとこない。


「誰だ?」


「ほら、実技の時に俺がCランクの冒険者って紹介しただろ。

あの人だよ」


Cランク…あぁ、あの人か。

確か和風チックな少女だったか。

持っていた武器も刀で印象に残っている。


「あの人か。で、それがどうしたんだ」


「どうしたって…おまえ!あんな可愛い人と同じクラスなんだぞ!

こんな機会は滅多にない!それを…まさかお前…っ!

既にリスタちゃん達とやってるのか!

お前、いくらかわいいからって…近親そ「だまれ!」う…」


ケリフがこれ以上口を開くと危ないことになりそうだから口をふさいでおく。


「それ以上言ったらお前のないことないことエルカさんに吹き込んでおくぞ」


「それは嘘じゃねえか…。すまん、浮かれてた」


ケリフは少しばかりオーバーに肩を落とす。


「ったく、分かればいい」


「それにしてもお前の家族多いな。

バーラットが半分くらいを占めてるぞ?」


確かに、言われてみればそうだ。

リスタとメルビーは分かるとして、

シルもバーラットにしていたのは驚きだ。

まあそれと言って悪いことはないからいいんだが。


「そこはあまり深く掘り下げないでもらえるとありがたい」


色々と複雑と言えば複雑だからな。


「おうよ!親友」


「俺はいつからお前の親友になったんだ」


「え?会った瞬間だろ」


ケリフはとぼけたような顔をしていたが本人にとっては本気なのかもしれない。


「ねえアーグ」


ケリフとは反対側にいたリスタが不思議そうに話しかけてきた。


「きんし…むぐっ!」


「リスタ、それ以上は女の子として言ってはならない。良い?」


リスタは口を押えられているので首を縦にコクコクと振った。


「はぁ、お前はやはり親友ではない」


「なんでっ!」



クラスの確認も終わり、

一応首席ということもあり、学校長の部屋にお呼び出しされている。

親父の知り合いと聞いてはいるが、

緊張で汗が止まらない。

そうしているうちにもたもたと時間は過ぎ、

ようやく意を決して部屋の中に入ろうとしたとき。


「早く入りなよ。扉に鍵はかかってないよ?」


中から若々しい声が聞こえてきた。

思いもよらない問いかけに胸が一瞬ドクンとなるが、

俺は扉をゆっくりと開けた。

そこには…

誰もいなかった。


「え?」


と、咄嗟に横へ避ける。


「はっはっは、流石首席だな。よく気が付いた」


声のする方、つまり先ほどまでは誰もいなかったはずの椅子に座っている男。

青年の男の方を向く。


「俺が避けなかったら死んでましたよね」


俺の立っていた場所には一本のナイフが刺さっている。

それは床に半分以上がめり込んでおり、

明らかに殺しにかかっている。


「まあまあ、あれくらい避けなきゃあいつの息子を名乗る権利はないからね」


あいつ。俺の親父のことだろう。

ジャックさんからは面白いと言われたけどこれは笑えない。

危うく死ぬところだったぞ…。

それにこの人って母さんと同じくらいすごい魔法使い?魔導士って言ってなかった?

思いっきり物理攻撃してきたんですけど。

魔法使いなら魔法をぶつけてくればいいのに…。

などくだらないことを考えていると、その人は俺の目をしっかりと見つめて、


「まあはじめの冗談はこれくらいにして、まずは入学おめでとう。

と言っても君にとっては楽そうだったしね。

なんせあの筆記で満点を取ってくるくらいだし。

本当に君はあいつの息子なのか?

あいつ戦闘に関してはすごいが頭はポンコツだった気がするけど」


「そこは否定しませんね」


「はは、そうか」


「はい」


この人と話していると何か俺の中をのぞいてくるみたいで少し苦手かもしれない。

でも面白いというのも少し分かる気がする。


「ふむ、君の能力は…それは隠蔽でもしているのかな。

あまりに低すぎる気がするんだが」


嘘だろ…。

まさか俺の隠蔽魔法を見破ってくるとは思わなかった。

これを見破るのは相当な実力者ということか。

…親父の知り合いって全員すごそうな気がしてきた。


「少しのぞかせてもらうよ」


「え?」


俺は隠蔽を見破られるのは百歩譲ってよかったんだが、その更に上をいかれるとは…。


「なかなかだねぇ。もしかしてシュルガト君に稽古でもつけてもらったかい?」


「っ!それは…」


この人…シルのことも知っているのか?

それはいいとして能力が全て見えているとなるとまずい。

これではリスタ達が…。


「はは、あまり根ほり葉ほり聞くのは良くないね。

私の名はアイネスだ。よろしくね、アーグ君」


「あ、はい。よろしくお願いします」


俺は差し出された手を握り返した。


ぶううううう。


ん?


「ぷぷぷ…あっはっはっは!簡単に引っかかるね!

気に入ったよ君!」


「はは、そうですか…」


はぁ、なんかめんどくさそうな人だな。



それから俺はアイネスさんと世間話というか、一方的な昔話をされた。

そしてキリがよくなったのか、


「それじゃあここら辺で終わりにしようか。

明日は入学式もある。準備をしなくてはならないからね。

あっ、気になってるようだから言っておくけど、

私は君の家族を売り飛ばそうとか考えてないから安心してくれると良い。

この学校でそのようなやからがいたら私にすぐ相談してくれ」


やっぱり、心の中を見透かされていて嫌な感じだ。

でも、


「ありがとうございます。少し安心しました」


俺の家族を守ってくれるのはとてもありがたい。

それがここでの一番の問題だったからな。

いくら俺の隠蔽魔法があるとはいえ、

アイネスさんみたいに見破れる人がいるかもしれない。

その時の力は少しでも多い方がいいだろう。


俺はその部屋を後にした。


「あっ!明日の首席スピーチ考えといてね!」


「先に言ってください!」


最後に見たアイネスさんの顔が一番楽しそうだったのは口にしないでおこう。



「生徒代表アーグ=バーラット」


「はいっ!」


長アイネスに名前を呼ばれ、俺は71人の代表として席を立つ。

視界は人で埋め尽くされている。

それは生徒だけではない。

貴族や商人、中には他国の王族までいる。

それだけこの式には意味があるということだ。

ここで将来有望な人材に目をつけ、生徒は応えるようにアピールをする。


「サマ王立学園生徒代表アーグ=バーラット…」



「いやーアーグ緊張しすぎだよ!途中カミカミだったし」


笑い声が耳に響く。

俺のスピーチは終わった。

いわゆる二つの意味で終わったというやつだ。

初めは良かったものの、

段々とその人の視線に耐えられなくなっていき、

終わって自席に戻った瞬間倒れてしまった。

後でリスタに聞いたが会場はざわめきであふれていたらしい。

なんでもあんなに使えない首席は初めてだ。

これではサマ王立学園の恥だそう。

それもそうだ。


「それにしてもあの言いようはひどいよ。

アーグだって頑張ってたのに…夜遅くまでブツブツいってたもんね」


「っ!聞こえてたのか…」


俺は昨日、本番で失敗しないよう原稿を作ったのだが、

いかんせん前日に言われたものだから案の定このありさまだ。


「ふふ、隣の部屋ですからね。

でもそろそろこっちに戻ってきたらどうですか?」


「リスタ、今日から俺たちは寮生活だぞ。しかも一人一部屋の」


そう、白金クラスには一人に対して一部屋が与えられる。

金額も一年で金貨一枚だ。

これならクエストを何回かこなすだけで良い。

まあその分実力を伸ばせということだろうけど。


「あ、そうだったね。それじゃあサラムとももう寝れないのか…」


「そういえばサラムも白金だったよな。

それなら毎日会えるだろ?

それに一緒に寝たいなら頼んで寝ればいいんじゃないか?」


「私も行きたい!」


「そうだね」


そして俺たち四人は扉を開く。

部屋の広さは一般的な学校と変わらないくらいだ。

それでも11人という人数だからそれなりに広い。

俺たちに気づいたケリフが声をかけてきた。

教室には俺たち以外の7人は既にそろっており、それぞれ自己紹介をしていた。

ルーファはいつも通り名前だけで終わったらしく、今はもう一人で読書にふけっている。


「おっ、アーグ!…それじゃあアーグたちも来たことだし、

改めて簡単に自己紹介といこうか」


そこで声を一番に声を挙げたのは我らがケリフ。

その明るく、物怖じしない性格からかクラスの中心的な存在に見えた。


「俺は平民出身のケリフ=カラヘルム。

使う武器は大剣が主だ。家が農家だから植物に関しては任せてくれ!

それに…エルカさん!この花をどうぞ!」


そう言ってケリフは手に持っていた花束をエルカさんに差し出した。

対するエルカさんは困惑したような表情で、


「えー、私に…かな?」


「はいっ!」


「あ、ありがとう…」


エルカさんは黒髪を腰まで伸ばしており、おっとりとしたような声だ。


「ははっ、ケリフ君は実に積極的だね。

おっと、私は初対面だね。

私の名前はヘンクース=サマ=クリセル。

一応この国の国王の息子だが普通に接してくれると嬉しい」


ヘンクースと名乗る男は俺の手を取り、


「よろしくね」


にこっと笑った。


「あぁ、こちらこそよろしくな。

俺の名前はアーグ=バーラットだ。

アーグと呼んでくれ」


「ははっ、私のことはヘンクで構わないよ。

お嬢さん方もよろしくね」


ヘンクは貴族らしからぬ態度だな。

カエラみたいな感じでとても接しやすい。

俺にとってはそうしてくれるとありがたい。

それにしても俺がこうして教室で大勢の人と話してるなんて何年ぶりだろう。

もしかしたら初めてかもしれないな。

でも…とても暖かい。


各自の自己紹介が済み、

それぞれの特技や実家、ケリフのエルカさんへのアタックなので時間が過ぎていった。

そんな中、ルーファは終始読書をして会話に入ろうとはしなかった。


俺たちが談笑をしていると、急に扉が開けられた。


読んでくださりありがとうございます。

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