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45話:結果

随分と久しぶりの投稿ですね。

私もアーグ達と同様テストが無事終わりました。

ありがとうございます。

結果?知りませんね。

「ってなことがあったのよ」


「…大変そうだな。主にリスタが」


「そうなの!二人とも急に取り乱して…水を支えるのも簡単じゃないんだからね!」


『ごめん…』


問題を起こした本人も、それをさらに悪化させた本人もばつが悪そうにうつむいた。


「まあいいけどね…いつものことだし」


いつも?最後に不穏な言葉が聞こえた気がするが…気のせいか。

ソラも一部始終を見ていたからか、あははと苦笑いを浮かべている。


しばらくの間は実技試験のことで話題は持ち切りになり、

それが終わればそれぞれ学校生活に思いをはせ、

昼食は終わった。



翌日

今日は試験の発表日だ。

と言っても、実技で合格がもらえれば入学は確定したようなものなので来る人も少ない。

来るのは貴族が9割といったところか。

彼ら彼女ら、貴族という者はどうしても他人より上に立ちたいのか。

どんな些細な事でも相手を見下してくるものが多い。

その点カエラは誰にでも優しく、それでいて努力を惜しまない。

まさに貴族のかがみだ。

貴族が皆彼女みたいになってほしい、まあそれは無理な願いか。

それが人間だしな。

そうだろ、あの時だって雪は。


「どうしたの?そんな難しそうな顔して」


リスタが唇に手を当てながらのぞき込んできた。


「大丈夫、心配するな。それより今日は合格発表なわけだが、

どうだ、自信はあるか?」


俺はそんな顔をしていたのか、今度から気を付けないとな。

昔からそうだ。

何か考え事をすると怒った顔になるって母さんが言ってたな。


「そうね、合格はしてると思うけど…昨日のあれがね」


あははと笑う彼女の顔にはやはり苦笑いが浮かんでいた。

あれだけのことをしたからな。

結果としては何事もなかったかのように会場は元通りになっていたから、

いや彼女達がしたのか。

壊したから不合格!とはならないだろう。


「私は筆記さえ出来ればよかったからね!」


メルビーが言ったように彼女の実技での実力は知っての通りだ。


「そうか」


「うん!」


「それより…それなんだ?」


俺はメルビーの手に握られているそれに指を指しながら言った。


「これ?これはお肉だよ?」


メルビーは何を言ってるのと言ったように首を傾げた。


「それは分かる。俺が言いたいのはどうやってそれを手に入れたかだ」


「うっ…そ、それは」


あからさまに慌てだした。


「それはなんだ」


俺は如何にも冷静といった感じで問う。


「えっと…アーグの……た」


「え?」


ところどころ小さくて聞こえない。

いや別に難聴になったわけではない。


「アーグのタンスにあった箱から少しだけ…」


「はぁー…」


そんなことだろうと思った。


「ご、ごめん!あの、どうしてもお金が無くなっちゃって…それで」


「一旦落ち着け」


俺はメルビーの肩を掴み、なだめる。


「どうして俺に言わなかった」


「それは…」


「俺が怒ると思ったのか?それともなんだ、少しならばれないと思ったのか?」


「えっと…」


「俺は自慢じゃないがめったなことで怒らない。

でもな、今回は許すことができない」


「うん…」


「盗みは犯罪だ。それが例え俺とかリスタでも許されることじゃない。

あれは俺たちの今後のために皆で貯めているお金なんだよ。

それがお前の食欲の為だけに使われるのは違うだろ」


「うっうっうぅ…」


「お前は少し我慢が足りない。

お前の一族は確かに体質的にそうなるかもしれないけどさ、

俺たちは少なくとも他人じゃないだろ。

一言相談してくれてもいいんじゃないか?」


「うわああああん」


「ほら泣くな、リスタ頼めるか」


「うん」


リスタは彼女を抱きしめる。


「ごめんね…うぅごめんね」


「もういい。俺も配慮が足りなかった」


「私…私はっ」


「メルビー」


「っ…」


俺は彼女と向き合い、


「今日、皆でクエスト受けるか」


「…うんっ!」


「よしっ、これからは食費代をさらに稼がなきゃな」


それに学校の寮代に学費、娯楽とか生活代とか…。

あれ、俺たちって今財政難?

ま、まあまだ蓄えがあるし…。


「うんっ!ありがと!」


「そうそう、メルビーは笑ってる方がいい。

これから変えていけばいいんだ」


「そうだね、メルビーが変わらなかったら、私たち置いて行っちゃうからね」


そして一つの壁を乗り越え成長していく。

他人に壊してもらうんじゃない。

隣を素通りするんじゃない。

自分の力で越えていく、

決して楽はしてはいけない。



時は流れて結果発表の時間だ。


ゴーン


試験と同様、教会の鐘が時を伝える。

それと同時に周りに緊張の空気が張り詰める。

そこには貴族もいれば少なからず平民もいる。

しかし誰もが同じように周りを敵として見ている。


ここで一つこの学校について説明を加えておこう。

この学校のクラスは上から

白金、金、銀、銅の四クラスだ。

そしてそれぞれ10人、15人、20人、25人。

クラスごとに魔法で受かった者と近接で受かった者がいるが、

その能力のせいか、上位クラス、

つまり白金や金には魔法で受かってきた者が多く入ることになる。

それで魔法を使える生徒は近接しかできない生徒を見下し、

近接の者は魔法を使える生徒を憎む。


「よっ、アーグ」


一人の男が俺に話しかけてきた。

俺の男友達と言えば一人しかいないわけで、


「おおケリフ。お前も来てたのか」


「まあ後でクラス見ればいいって言ってもやっぱ気になるだろ?」


「そうだな」


「おいアーグ」


「なんだ?」


ケリフの声が一回り下がった気がする。


「その子は…」


「え」


「その子は何なんだよおおお!」


ケリフはその子と言いながら、リスタに近づいていく。

リスタは驚き、怯えたような表情で俺の袖を引っ張る。


「おい、あんま怖がらせるな近づくな気持ち悪い」


「…最後のは関係ないだろ」


「リスタ、こいつはケリフだ。

実技試験の時に知り合いになった」


「え…お前あの時は友達って…」


「気のせいだ」


決してリスタを怖がらせたからとかじゃない。


「そう、だったの。私はリスタです。よろしくお願いします」


リスタはそう言いながらも俺の背中に後ずさりしていく。


「くっ、まあこれからだよな!」


周りがザワザワし始めた。

教師と思われる男性が一つの大きな石の前に立ち、詠唱を始める。

それは皆から見えるほど大きく、

そこには名前が刻まれている。

それは歴代の首席と次席の名だ。

文字が刻まれていく。


首席 アーグ=バーラット

次席 カエラ=ランド=マナトリカ


「…俺?」


刻み終わると教師が次々と出てきて紙を貼りだしていく。

端から首席なんて狙ってないのか、皆続々と紙の方へ流れていく。


「アーグ!すごい!」


「首席だって!白金クラスだね!」


少し離れたところに生徒達がごった返している中、

俺たち五人はポツンと残されていた。


「アーグ…お前凄いな。俺も見てくるわ!」


「私たちも行ってきます。メルビー行こ」


俺はあっけにとられていた。

確かに自信はあったがまさか首席入学とは。


「おめでと」


俺の背中で寝ていたはずの彼女が小さく祝いの言葉を口にした。


「あぁ、これは予想してなかったな」


「アーグ」


「ん?」


今度は女の子の声だ。


「カエラか、次席おめでとう。すごいな」


「あはは、アーグに言われると皮肉に聞こえるよ」


「そう、だな。信じられないけど」


「でもあれが真実って語ってるよ」


カエラは刻まれた文字を指す。


「それに、あんなことしたんだから、ね」


「あんなこと?」


「ほら、実技試験で」


あぁ、確かにあいつはランクAだったな。


「でもそれならシルは?」


「んうぅ」


「嘘…だろ」


「どうしたの?」


カエラが不思議そうな顔をした。

それもそうだ。

シルは「ん」と「う」言ってないのだから。


「俺の答案を写して調整したらしい」


「ん?どういうこと」


思い出してほしい。

あの時シルは一瞬消えたこと。


そして俺はカエラにそれについて包み隠さず説明した。


「うわ、すごいね。シュルちゃんって」


「ふふ」


「いや褒めてない。カンニングだろ」


「むぅ」


「ばれなきゃいいって…まあそうだけど」


そうか、試験官にばれてないからいいのか?

あー、もういいや。


「じゃあ無事白金クラスになったことだし、

クラスの人見てこよっか」


「そうだな」


俺は一呼吸置き、シルを背中に乗せて歩き出した。



読んでくださりありがとうございます。

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