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44話:試験〈6〉

45話目です。

試験二日目。

つまり今日は実技試験の日だ。

私リスタは先ほどアーグたちと別れ、魔法の試験会場へと向かっている。


「うわぁー、すごいな」


試験会場に行くには接近戦の試験、

アーグたちが受けるところの横を通らなければならない。

そこには会場に入りきらなかった受験生が退屈そうに立っていた。

そんな人たちを横目に、この学校にあるもう一つの闘技場へと向かう。


闘技場同士の場所はそこまで離れておらず、

5分ほどで着く距離だ。

こちらは接近戦の試験とは違い、

人数が比較的少ない。

その代わり、貴族が多いといったところか。

魔法は血筋も関係しているようで、

魔法を専門として使うにはどうしても基礎がなっていないと難しい。

平民の人も使えるが、それは生活魔法など、

戦闘においては役に立たないものだ。

その点私たちエルフは皆風魔法に関しては誰でも使えるらしい。

なんでも昔の…精…なんとか?

ごめんなさい、忘れてしまいました。

この話は、また今度にしましょう。


私は風魔法だけしか使えない事が少し気に病んでいましたが、

それでもスフィアに会えて、私も自分の魔法に自信が持てるようになりました。

今では私の自慢です!

あっ、あの姿は…


「カエラー!スフィアー!」


会場の入り口で始まるのを待っている二人がいました。

後は…狐さん?


「リスタ!おめでとっ、受かったんだね!」


カエラが笑顔で迎えてくれる。


「うん!二人とも…いや三人とも?」


「我はソラだ。お前は」


なんだか上からみたいですね…。


(リスタ、この子多分ツンデレだから)


ツン…デレ?よくわかんないけど…。


「私はリスタ。よろしくね」


「あぁ、よろしく頼む」


でも顔を赤らめながら手を差し出してくる姿がかわいいなぁ。

私はその手を取り、


「うんっ!」


「や、やめろ//!」


ゴーン


教会から鐘の音がなる。

その音ははじまりを表す。


「それじゃあ、行こっか」


私たちは四人、会場の中へと歩き出す。



入るとそこにはローブを身にまとった人や、

杖を振り、これからのことをイメージする受験生であふれていた。

数々の魔法が行き交う光景が目に入る。

ファイアボール

ウォーターカッター

ウィンドアロウ

それは初級も初級。

使えて数人がファイアウォールや回復魔法。

それもそうだ。

今の歳で魔法を何十発も打てる方がおかしい。

これが普通なのだ。


「ダークブレイズ!」


一人の少年が口から紫色の火を噴きだす。


おおお!


それに呼応するように試験官から感嘆の声が上がる。

少年は自慢げな顔で誇っている。

それを尊敬するような目でほかの受験生も褒める。

更に上機嫌になった少年はアンコールと言わんばかりに体の魔力を腕に集め…


黒子こくし!」


その魔法の発動と同時に少年の体が黒く染まる。


試験官の目が輝く。

(こいつは今年一番の使い手かもしれんな)

(そうだな、今年の首席はこいつに決まりでいいだろう)


リスタにはその声が聞こえていた。

風に乗ってくるものは全て聞こえる。

それがリスタの特技でもあるから。


黒子。

それは暗闇での行動がしやすくなる。

黒くなるだけだから、索敵の魔法が使える者にはバレバレだ。

しかも隠密スキルの下位。


「あの人が今のところ一番すごいみたいですね」


「これって…」


「うん、思ってたよりも…」


「すごいな!あいつ、男のくせにあんな魔法が使えるなんて!」


三人とは逆の反応をしたのはソラ。

その目には悔しいが認める。そう言った意味が込められてるような気がした。


「そ、そうなの?」


リスタがソラに聞く。


「なんだ?」


「えーっと、あれってどれくらいすごいの?」


「私も村で育ってきたから何か言えるわけでもないが、

人間にしてはすごいのではないか?

見ていた感じ、あの男が今のところ一番すごいのだろう」


三人は顔を見合わせた。


(私たちって結構危ないのかな?)

(いつもタナマさんが指導してたからね…)

(あれを見たらね、なんか、ね)

(でも抑えて落とされても嫌ですしね…ほどほどに行きましょう)

(そうしよう)


リスタ、カエラ、スフィアの中で今日は少しだけ力を抑えてやることが決まった。

それを不思議な表情でソラが覗く。


「お前ら、何の話をしているのだ。

早くしなければ順番が遅くなる」


「そ、そうだね!」


リスタは受験生達を見て、少し残念に思ったのは口にしない。



「ふふふ、我の出番が来たようだな」


ソラが胸を張りながらリングへと上がっていく。

まるで私が一番とでもいうように、自信満々の表情で。


「ソラ!頑張って!」


カエラが会場全体に届くかのような大きな声で応援をする。

そんなカエラに手を振り、


「スフィア!お前が驚いても知らないからな!」


「はいはい」


スフィアにはキリっとした目で睨む。

二人への態度がまるで違う。

何かあったのか。

そんな私も、小さいが聞こえる声で応援した。


毎年魔法の試験ではランクDもしくはCの冒険者が雇われ、

試験官として採用される。

その理由は簡単。

魔法の試験には大して期待をしていないからだ。

この学校は実のところ、筆記の試験はすごいのだが、

実技に関しては少し甘めといったところか、

まあほかの学校に比べたらはるかにレベルは高いのだが、

リスタのようなものからすれば低く感じてしまうところもある。

それでもここの学校を卒業するころには一人前になっている。

それは教育、設備、人材。

その他もろもろの力を使い、生徒の能力を伸ばすからだ。

授業が辛く、卒業前に辞めてしまう生徒も多いらい。

ここ数年で一番すごいと言われた生徒はタナマさんだとか。

あの人は入学早々期待の新人やら希望の星やら言われ、

それが嫌で学校をやめたらしい。

それでも約10年前のことだ。

ここ数年と言ってタナマさんが出るのなら魔法に関しては期待しないのもおかしくはない。

それも最近ではさらに生徒のレベルが下がったと試験官の間では言われている。

一方の接近戦の試験では、

その人の体質に関係がない、努力すれば伸びるので毎年数人は星がいるようで、

魔法に比べても試験官のランクが高かったり、

設備が充実しているといった差がある。

そこは気になるほどでもないので特に言うことはない。


そろそろソラの試験が始まる。


静かに息を吸う。

いつものソラとは違う、

澄んだきれいな声が響く。


[断絶だんぜつ]」


そしてソラが手を伸ばした先、そこに置いてあった麦人形が斜めに滑り落ちる。


ソラのが受ける試験。

それは魔法の試験の一つ。

麦人形を相手に、自分の好きな魔法を撃ち、

どれくらいの破壊もしくは切断ができたかによって合否を決める仕組みだ。

破壊や切断の仕方は勿論魔法のみ。

魔法なら何をしてもいいし、どんなやり方でもいい。

結果が全てを決めるのだ。


麦人形は既に人の形を保っていない。

上半身は地面に落ちている。

その切断面はきれいに、滑らかに。

とても刀や剣ではできない切り口だ。


「…合格だ」


「やった!」


ソラが合格という言葉に無邪気に飛び跳ねる。

そして私たちのもとに帰ってきて、


「どうだ!これが我の力だ!

スフィア!我の力に腰でも抜かしたか?」


「いや、立ってるよね?」


「む…我は合格した!そんなこと言ってお前がどうなっても知らんぞ!」


ぷんぷんと言い、合格者が優先して座れる席へと行ってしまった。


「あれ、なんの魔法だろうね。

風魔法ではなかったけど」


切るなら風魔法だと思ったが、どうも風魔法には断絶という魔法はきいたことがない。

リスタの勉強不足かもしれないが、

彼女は風魔法なら肌で感じる事ができる。

だから確信を持って言える。


「水魔法でもないよ、あんなにきれいには切れないしね」


スフィアもウオーターカッターなどの切断系の水魔法は使えるが、

その場合、エフェクトとでもいうべきか、

水が飛んでいくのだからだれでも分かる。

しかしソラのそれにはなかった。

ただ麦人形が何かに切られたようにしか見えなかった。

決して姿の見えない、何かに。


そんな中、一人だけはそれが何なのか理解する事ができた。


([断絶]...)


[断絶]

空間を断ち切る。

切れない物はない。

人間には使えない。


(人間には使えない、か)


「そんなことより次私たちの番だよ」


カエラは自分がそのスキルについて知ったことを口にしない。


「あっ、えーと、最初はカエラから?」


「そうだね、一番前にいるし」


「分かった、ほどほどに行ってくる!」


カエラは元気よく飛び出していった。


「あれ?なんだっけなー」


「どうしたのリスタ?」


「えっとね、アーグが確かフラ…フラグ?って言ってた気がする」


「んー?わかんないけど、なんとなく嫌な気がする」



「お願いします!」


カエラが受けるのは先ほどの少年が受けていたのと同じ、

自分の魔法をアピールするものだ。

これは迫力があれば点数が入るので、カエラにとってかなり楽と言える。


「はぁ、さっとやってくれ。どうせ大したこともできないだろ?」


プチン


カエラの中で何かの切れる音がした。

まるであの時のように。


「…[業火]」


「ん?」


「あっ、遅かったぁ…」


スフィアが泣きそうな声を出しながら耳を抑える。


「[防音]!」


リスタが自分とスフィアの周りに空気の密を作り、

音を最小限に抑える。


それと同時、

爆音が会場に響き渡り、

リングが燃え盛る。

それはスキル名同様、

まるで地獄の業火に包まれているようだった。


会場で見学しているものの中にはあまりの爆音に失神しているものや、

中には失禁しているものもいる。

それは試験官も例外ではない。


「わわわわわわわわわ…」


「スフィア…?」


スフィアがその火を見ていつもの落ち着きをなくす。

それもこの至近距離で見ているから。


「[大海]!」


空から大量の海水が降ってくる。

それも塩分濃度の異常に高いものだ。質が悪い。


「だめええええ![エアレイヤー]!」


リスタが叫び、空気中に空気の層ができる。

そして、


「逃げてーーー!」


空気中にその大量の海水を抱えたまま、

空気の振動を最大限にして、会場に叫ぶ。

その声につられるまま受験生は叫び声をあげながら逃げる。

失神していたものもその声に起き、

その場を逃げる。


「うぅ、何でこうなるのぉ…重いよぉ」


そこはまるで地獄だ。

業火ならまだしも、

上には海水、下には炎。最悪だ。


海水は塩分濃度が異常に高い。

それが少しでも体内に入れば体調が悪くなるだろう。

大量に摂取すればそれは死につながる。

それを恐れてリスタは抑えている。


「あっ、ごめん」

「私ったら何をしているの!」


二人も正気に戻ったようだ。

会場には既に4人しか残っていなかった。


「お前達!何者だ!」


そこにはソラもいる。


「もう…だめぇ」


『え?』


三人の声が被る。

上からは大量の海水が降ってくる。

絶体絶命の4人、肩を寄せ合い、


「[結界]」


ドドドドドド!


4人に降りかかる。

しかし、彼女達は濡れなかった。

それもそのはず、カエラの結界によって守られている。


「あぁごめんなさい!すぐ直すから」


スフィアが結界から少しだけ手を出し、

水の塩分濃度を下げていく。

数分後。


試験官が他の人も呼び、

戻ってきたころには水浸しのリングが残っているだけだった。


読んでくださりありがとうございます。

すいません、テスト終わるまでかけそうにないです。

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