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40話:試験〈2〉

今日一話目です。

「スフィア、いよいよだね」


ついにこの日が来た。

約10年間、私はこの日のために準備を進めてきた。


「うん、私たちならきっと大丈夫だよ。

だってあんなに頑張ってきたんだもん。

あとは全てを出し切るだけだよ」


私たちは学校の反対側、つまりアーグの入っている入口とは逆の方にいる。

あんな校訓を掲げてはいるが、結局は別れてしまうのだ。

こちらは貴族の人しか入れないので比較的人数は少ない。

それでも数百人はいるのでこの学校は相当すごいことがわかる。


「そうだね」


今まで沢山、人の前に立つ機会があったから緊張しないと思ったんだけど…

そうはいかないみたい。


「あっ、あそこに」


「ん?」


スフィアが指さした方向を見ると、

そこには一人の少女がいた。

その空間だけ不思議だ。

彼女は巫女のような服装をしている。

それに加えて彼女は狐族、この学校は獣人でも受ける事ができるのだ。

でも貴族の獣人がいるのは珍しい。

周りの人達は彼女を見て口々にこう言う。


(なんで獣人なんかがいるんだよ)

(きもちわりぃ)

(さっさと売られちまえ)


スフィアはその声に気づいていない。


「あの子可愛いね!服装もなんか不思議だけど」


スフィアは彼女を決してけなしたり、ののしったりしない。

狐族はエルフ同様、その個体数の少なさから奴隷として高く売られることが多く、

めったにその姿を人前には出さない。

だから


「ねえスフィア、ちょっと話しかけてみない?」


「え…私はちょっと」


「大丈夫、私がいるから」


「ちょ、ちょっと待って!」


スフィアは人見知りだ。

でも私が話そうと提案したとき、少しだけ口角が上がったのを見逃していない。

言葉ではああいっているが、本当は色々な人と話したいんだと思う。

でも怖いのだ。

あんなことがあれば人を疑うに決まってる。


私はその子の所に走っていった。

近づくとさらにモフモフ感が増して、今すぐ触りたくなる。

いきなり触ったら嫌われるよね…

ダメよカエラ。我慢しなきゃ。


「ねえ、あなたなま」


「なんだ人間。気安く話しかけるな」


「え」


話す前から嫌われてたみたい。

あっ、まずは挨拶からかな。


「こんに」


「黙れ。話しかけるなと言ったはずだ」


「カエラ、今は諦めよ。

また今度話せばいいんじゃない?

今はご機嫌斜めだよ」


スフィアに言われてしまった。

で、でもさっきから尻尾が揺れてるもん!

きっとうれしいんだよ!


「うっ、で、でも!」


「ほら行くよ。なんかごめんなさいね」


「ぁ」


「どうしたんですか?悲しそうな顔してますね」


「い、いやそんなことはない。さっさと行け」


「あらら、かわいい尻尾が地面についてますよ」


「スフィア…?」


「そ、そんなことは…尻尾?」


スフィアが悪い顔してる。

それに狐の子も顔が赤くなってる。


「それにあなたは誰を待ってるんですか?」


「それは…」


(ほらカエラ)

(え、今!)


「あ、あの待ってる人が来るまでお話ししませんか?」


「何故だ、お前と話すことなんて何もない」


「そうですよね、スフィア行こ」


「尻尾上がってますよ」


「うぅ、分かった、分かったから!話せばいいんだろ!

あと、後で話がある」


あれ、スフィアって策士?

それともこの子がわかりやすいのかな?

まあどっちにしろ話せるならいいか。


「話?それはいいけど。

お名前聞いても?」


「我の名はソラだ」


ソラって言うのか、かわいいなぁ。


「私はカエラ、よろしくね」


「よ、よろしく頼む」


「じゃあ!その尻尾触っていい?」


やっぱり触りたい!

今すぐモフモフしたい!


「ダメだ!これは私が認めた人しか触らせない!」


「え、でも…」


「ダメなものはダメだ」


ちぇ、触りたかったな。


「じゃあ耳」


「ダメだ」


厳しいなぁ。


「じゃあ一緒に行こ」


「ダメ…それならいいぞ」


「いいんですか、誰を待ってたんでしょうね」


「お前はうるさい!お前の名はなんだ」


スフィアは何で怒ってんだろ…?

さっきからソラに対する当たりが強いような。


「私はスフィアです、ところで、誰を待ってたんですか?」


スフィアがにやにやしてる。

たまにこういうところあるよね。


「そういえば昨日行けなくなったと言っていたのを思い出した。

だから来ない」


「ふふ、そういうことにしましょうか」


「スフィア?」


「どうしたの?早く行こ!遅れちゃうよ」

(カエラが私を置いてソラの所に行ったからなんて言えないよね)


「…そうだね、ソラも行こ!」


「お、おい待て!」


周りからは終始罵倒の言葉が聞こえていたが、

私はそんなもの知らない。

他人を馬鹿にする人なんて興味ない。


私たちは三人とも同じ部屋での試験となった。

筆記の試験も問題なく解けたと思う。

そして休憩となり、

皆でご飯を食べてるとき、


「ああああああああ!」


「ん?」


遠くの方から女の子が叫ぶ声が聞こえてきた。


「何かあったのかな」


「なんだろうね、それにしてもソラのお弁当美味しい!」


「ふふ、そうだろ。我が作ったんだぞ!」


「おいしいけど、明らかに一人分じゃないのは気にしないほうがいいかな?」


「うぅ、我はお前が嫌いだ!」


ソラが悔しそうな表情をしてる…。

あんまりいじめないでよ?スフィア。


「そうですか、カエラ、あーん」


「あー…うん。美味しい」


そういえばさっきの声、どっかで聞いたことあるような。

アーグ達、出来たかな?

今度会ったとき聞いてみよ。


試験の発表は今日の午後行われる。

なんでも今からこの人数の答案を確認するとか。

教師の皆さんも大変そうですね。

空いた時間はスフィア、ソラ、私の三人でこの学校の中を探検することにした。


「本当に広いね、この学校」


そこは想像以上の広さだった。

例えるなら、東京ドーム何十個分とかだろう。

ありとあらゆる施設がそろっている。


「なんだあれは!あんなもの見たことがないぞ!」


「ソラ、もうちょっと静かにしてもらえませんか?」


「私の村では見たことがないのだ!少しくらい良いだろ!」


ソラは初めて見る建物にすごく興奮している。

その証拠に尻尾をはち切れそうなくらいブンブン振っている。

本当にわかりやすいなぁ。


「あれ、ソラって村から出たことないの?」


「ん?あぁ、言ってなかったな、我は村での暮らしが窮屈でな。

それで何も言わずに出てきたのだ」


「そうだったの!でもよくここまでこれたね」


狐族はすぐに捕まってしまう。

だから私は彼女が一人でここに来たことに驚いているのだ。


「我が普通の人間に見えているからだ。

先ほどの話に戻すが、何故お前らにはこの尻尾が見える」


普通の人間?


「尻尾?なんで見えるって言われても…ねぇ、スフィア?」


「他の人には見えてないの?」


「見えていないはずだ。

そうしなければ襲われるからな」


「そういわれてもね?見えるものは見えるし…」


「そうだね…うーん。わかんないかな」


「まあいい。お前らは我を奴隷にする気はないようだしな」


「そんなことするわけないじゃん!」


奴隷なんて…するわけない。

ただ、友達でいたい…。


「もしソラがそうなりそうなら私が助けてあげるよ」


「スフィア…お前はいいやつなのか?」


「どうだろうね」


スフィアも悪そうに見えて、ソラのこと心配してるのかな。

ソラにだけ当たりが強いけど。


「あっちにも行ってみない?」


「おお!あれはなんだ!」


ソラに何かあったら私が必ず助ける。

だってもう、友達だから。


読んでくださりありがとうございます。

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