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3話:そして始まるもう一つの人生

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ありがとうございます!

やっぱり嬉しいものですね。

眩しい、ここは…?

目を開けるとそこは木製の天井で、

暖かい日の光が差し込む部屋だった。


「あぅあっあっーあぅー」


俺から発せられる言葉はとてもじゃないが言葉とは言えない。

生まれたばかりで声帯がまだちゃんとしてないせいだな。

それに涙が止まらない。


「おーおーよしよし、お母さんですよ」


自らをお母さんと名乗るこの女性こそまさしく俺の母さんなのだろう。

優しそうな黒目に流れるような黒髪はところどころ汗ばんだ顔に張り付いている。

ありがとう。

子供を産んだことはない、それがどんなに大変かなんて男の俺では想像もできないだろう。

だけど分かる。

俺はこの人の子供で、この人がこれから俺を愛し、俺もこの人を愛し、育っていくことを。


ヒョイっとお母さんの元から浮かび上がる。

お母さんのような柔らかく包みこみ、守ってくる感じとは違い、こちらは筋肉が隆起し、男の中の男と言われそうなほどの存在感を放つ逞しい男。

刈り上げられた髪に、自然の土の様な匂い、少し息をあげていることから今まさに走って戻ってきたのだろう。

良かった、良かった。

ずっとそうつぶやき、目には涙をためている。

俺は嬉しかった。

俺が生まれてきたことを心から喜び、涙を流してくれていることに。

俺はちょっとした事情で親からの愛情をもらったことがない。

だからこんな素直に感情を出してもらえることが嬉しいのだ。


「この子が俺たちとの子なんだな!

よーしよしよし、大きくなったらめちゃくちゃに鍛えてやろう!」


ジョリジョリ...。


頬でこすられ、自慢の髭がチクチクと痛い。

それに今不穏なことを言われた気がする。

めちゃくちゃに鍛える?

俺は大人になったらこんな筋肉隆々の大男になるのか!?


「あうー!あっあー!」


俺は声で、出来る限りの反撃をした。


「ほら、アーグが嫌がってるでしょ!

よしよし、痛かったですねー」


そんな言葉にならない言葉を察したのか、

母さんは親父から俺を奪い返し、優しく包み込んでくれる。

ありがとう、髭がいたかったぁ…。



そして夜。

夢の中にレグが現れた。

そしてスキルの見方を教えてくれた。

目が覚めた俺は早速教えられた通りに心の中で念じる。


(スキル)


アーグ=バーラット 0歳 

[異世界言語理解][癒し手][守るべき命]


目の前に青いボードの様なものが見える。

まずは異世界言語理解。

これは生まれたときもそうだったが、こっちの世界の言語が分かる。

基本的に種族が違っても言語は同じそうだ。

二つ目の癒し手。

これはどんな傷でも魔力を注げば治せるというスキルだ。

そして三つ目の守るべき命。

これが女神の加護でもらった物だろう。

レグも初めて見るスキルでどんなものか分からないらしい。

だが一つだけ分かるのがこれはパッシブスキルと呼ばれる常時発動しているものらしいから何かの拍子でその効果が分かるのかもしれない。



さてスキルも確認できたし、魔力操作の練習でもしてみるか。

俺の癒し手は魔力量に比例して治せる傷も増える。

それに今の俺にはそれしかやることがない。

俺は前世で魔力なんてものには触れたことがないからそれがどんなものかは分からない。

だがレグが言うにはお腹のあたりに力を入れて、あったかいと感じるものがあったらそれらしいからやってみよう。


ちゅんちゅんとどこからかスズメの鳴く声が聞こえてくる。

これがいわゆる朝チュンか?いや違うな。

昨夜は魔力操作の練習中に眠ってしまったみたいだな。

あまりできた感じはしなかったが、赤ちゃんのやることは特にない。

今日も魔力操作と行きますか。

と言いたいが、お腹が減ってしまった。

そんな俺の考えを読んだかのように母さんが部屋に入ってきた。


「アーグ、もう起きてたのね、じゃあ朝ごはんにしましょうか。

はい、ターンとお飲み」


どーんと言う効果音が似合うだろう。

いやそんなことを言っている場合ではない。

母さんの胸が目の前にある。

これはおかしいことではない。

だが中身が高校生となるとこういうものには少し抵抗がある。

でも俺は赤ちゃんだ。

疚しい考えは捨て、口をつけ息を吸う。

流れ込んでくるそれは赤ちゃんの口に優しく、体の隅々まで流れ込むようだった。


うまいな!


「アーグはよく飲みますねー、早く大きくなるんですよ!ふふふ」


「たわー」


「あら、わかってるのかしら、アーグは頭もいいんですね!」


あぁ、母さんが女神に見えてきた、この幸せにずっと身を包んでいたい…。


「アーグ!父さんが来たぞ!」


呼んでねーよ‼

なんかすごい足音が聞こえてたからなんとなくわかってたけど!


[火球ファイアーボール]!」


それは魔法だろう。

母さんの手のひらに赤色に光る玉の様なものが現れ、そこから生まれた火の玉が親父向かって飛んでいった。

それは見事親父に命中し、親父は死んだ。


「フィル、いきなりはやめてくれっていつも言ってんだろ」


死んでなかった。

これはいつものことらしいな。

元気ピンピンだ。


「アーグにご飯あげてるの!いきなり入ってきたのはリックの方でしょ!それにあんな大声出して」


「それは…」


「見るだけね、もう、それと見たらすぐ仕事もどってくださいよ、北東に一ついますからね」


「そうだったな、じゃあアーグまた後でな」


台風かよ…。

そう思うほど一瞬の出来事だった。

結局母さんに打たれに来ただけじゃん。

…もしかしてそれが狙いか?

いや、そんなことはないよな…。


「じゃあそろそろ、母さんも家の仕事に戻りますね、いい子にしているんですよ」



その日の午後

俺が魔力操作の練習をしていると、

玄関の方から話声はなしごえが聞こえてきた。


「フィルー、リサだよ」


「あらリサどうしたの、こんな時間に」


「うちの娘と、出産祝いに来たんだよ。おめでと!」


「もうリサっありがと!」


「アリサもありがとね」


「フィルさん、おめでとうございます!」


「もう!いい子に育ったんだから!」


ん?リサとかアリサとかなんとか…聞こえてくる。


扉が開いた!?

そこから現れたのは小さな女の子。


「私アリサ=ルビン!よろしくね!」


声から分かる。

この子は活発な子だろう。

俺も一応赤ちゃんながら挨拶をしておこう。


「あうー、たわー」


「挨拶してくれたの?君はいい子だね!」


笑顔がとても眩しい。


「お母さん!アーグがあいさつしてくれた!」


「あらよかったわね、私も挨拶しておこうかしら、

アーグ君アリサの母親でフィルの古いころからの友人のリサよ、よろしく」


「うぅーー」


「あらかわいい」


「じゃあリサと私は向こうでお茶でもしてるけど、アリサはどうする?」


「アーグと話してる!」


「わかったわ」



それから俺はアリサに延々と話しかけられたが、

魔力操作に取り組んでいてあまり内容は覚えていない。

しかしアリサの笑顔が素敵だなと思ったことだけは覚えている。

あとずっと魔力操作の練習をしてたおかげか少し自分の中の魔力を感じることができた気がする。



それから俺は1歳になり、相変わらず魔力操作をしているが、

最近ではかなり多くの魔力を感じることができ、それらを操ることができてきている。

そして相変わらずアリサは毎日のようにうちの家に来て俺を見ては、

話したり顔を見てにこにこしたりしている。

本当に純粋でかわいい。


それからしばらくたち、こっちの世界では成長速度が速いおかげか、俺は足で立つ事ができるようになった。

そして一つの魔法を覚えた。

それを俺はこう呼んでいる。


[身体強化]


名前をつけることはあまり関係ないといったけどやはり名前を付けたくなるのが厨二心ってもんだろう。

それにイメージはきちんとしている。

体の強化したい部位に魔力を集める感じだ。

手に集めればそこが強化され、足に集めれば今の俺でも少しだけ走ることが出来る。

1年間魔力操作をしていたおかげで体の中の魔力の操り方も分かり、今ではかなりの量の魔力を感じる。

生まれた頃に比べたらかなりの成長だ。



「たっだいまー!アーグー、おーよしよし」


親父のリックは相変わらず俺の頬に髭をこすりつけ、

俺の生命力が削られている気がする。

そのたびに癒し手を使っているのも練習の一環だ。


読んでいただきありがどうございました!

また次の話もお楽しみに!

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