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34話:スフィアの悩み〈4〉

34話です。

『ご馳走様ちそうさまでした!』


あんなにあったご馳走の数々も今ではもうみんなのお腹の中だ。

どれもこれも美味しいものばかりだった。

まあリスタとアリサがふざけなければもっとおいしく食べれたと思うけど…


「じゃあ私はお風呂の用意をしてきますね」


「スフィア、私も手伝うよ」


「え?大丈夫だよ、私一人でできる」


「スフィア一人だと水風呂になっちゃうでしょ?」


「あ…そうか」


この世界のお風呂は温泉が地下にある土地か、

魔法が使える人、

貴族しか入れないのだ。

だから元日本人の俺としては魔法を使える友達がいてよかったと思ってる。

俺はって?

まだスキルを持ってないからできない…。

ま、まあこれからだから!

そう考えるとうちのメンバー誰もお風呂沸かせられないような…。

メルビーは近接だし、リスタは風魔法以外使ってるところ見たことないし…。

宿ではスリエさんがやってるしなぁ。

まずいな…。


「お風呂できたよー!」


そうこうしているうちにお風呂が沸いたようだ。


「まあいっか、俺入ってもいい?」


「私も入ろっかな?」


「ダメです!アリサは最後!アーグ早く入ってきて!」


「お、おう分かった」


「ちょっとリスタ!」


「あなたは自分の家に帰ってください!」


「いいじゃん久しぶりに会ったんだし」


「ダメなもんはダメなの!」


何やらまたリスタとアリサが揉めてるようだ。

俺には関係ないけど。



ガラガラ


「あいつらっていつも仲悪いよな…。

いや、逆に仲がいいからなのか?」


「アーグ、遅かったな。

先に入ってるぞ」


「親父!?いたのかよ…」


浴槽には既に筋肉が溢れんばかりについた男がかっていた。

おい、狭ぇよ。

この家部屋はいっぱいあるくせにここは狭いからな。

今度また改造してもらうか。


「久しぶりにあったが…随分と大きくなったな…」


「…なんだよ急に」


それは、普段の特訓をしているときの親父とは別の、

一人の親としての顔に見える。


「いやなに、この前まではこんな子供だったのに、

来るたびに大きくなりやがって、ってな」


「子供だし、そんなものだろ」


こうして見ると、

親父の体には今までの戦いの中で付いたと思われる傷がたくさんあった。

逞しく、強く、努力して、成長して、今に至る。

親父の過去は分からない。

それでも俺は一人の人間として、一人の男として、この人を尊敬している。

いつもはそんなこと言わないけど、

心の中でずっと思っていることだ。

こんな人になりたい。

母さんは十分強い。

それでも母さんは、

親父に何度も命を助けてもらったと言っていた。

親父は母さんを守ってきた。

この傷はその証なのだろう。

誰かを守れる力を持っている。

誰かのために自分を犠牲にできる。

それでもスフィアやカエラのように、

助け合い、相手を信じ、その背中を預ける。

俺はそんな背中を預けてもらえるような人間になれるだろうか。

いや、願望では終わらせない。

俺はそんな人になってみせる。

相手がどんな種族だろうと構わない。

俺は俺の力で…。


「お前、学校行くんだっけか、

たしか、サマ王国の」


「そうだけど」


「そこで一番になってみせろ」


「あぁ…」


「弱き者がいたら助けろ」


親父の一言一言が俺の胸深くに突き刺さる。


「あぁ」


「努力を止めるな」


「あぁ」


「お前の大切なものを…失うな」


「っ…!」


その顔は悲しみの表情を映していた。

いつもの親父らしからぬ、暗く、惨憺さんたんとした表情。


「湿っぽい話は終わりだ。

実はな、サマ王立学園の長は俺の知り合いなんだ」


またいつも親父に戻った。


「そうなのか」


「あぁ、あいつは魔法に関してはフィルと同じくらいすごい、

いやそれ以上かもしれない」


「そんなに?」


「なんたってあいつは国から魔導士の称号をもらってるしな」


「魔導士?」


「普通の魔法が使える奴は魔法士、

その中でもD級とかA級に分かれるんだが、

その中でもさらにすごい奴が魔導士として表彰される。

ちなみにフィルはS級だ」


「へえ、魔法にもいろいろあるんだな」


「お前な…まあいい、あいつは面白い奴だから仲良くしておけ」


「分かった」


「俺は先に出るけど、お前はゆっくり入ってろ」


いよいよ受験って感じだな…。

今更諦める気なんてないけど。



「あー、いい湯だった」


俺は風呂上がりのひと時を過ごし、

自分の部屋に向かっていると。


バン!

扉が開き。


「え?グエっ」


バン!

閉まった。


俺はいつの間にか部屋の中にいた。


「スフィア、なんだよ…」


そこでまっていたのは水色の髪を揺らした少女。


「今日は一緒にいてって言ったよね?」


スフィアはいつもの敬語を使わなくなったようだ。

仲が深まったのか?

それならよし。

今めっちゃ睨まれてるけど、中は深まった。うん。


「あはは、そんなことも言ってたな。

で、どうした?」


「どうしたじゃないよ!今日は…一緒に…よ」


終わりに連れて声が小さくなっていく。


「え?」


「だから!今日は一緒に寝てって言ってるの!」


そんな涙目で言われても…。


「男が嫌なんじゃないのか?」


俺はすぐに答えは出さない。


「違うよ…あの時はそういったけど…あの男が怖いの。

今も見ているかもしれない…そう思うだけで体が震えるの」


息が荒くなり、正常を保っていられないようだ。


「分かった。スフィアがそうしたいなら」


彼女を一人にはしない。

彼女の言う通り、そいつは今も近くで見ているかもしれない。


「うん…ありがと」



「狭くない?大丈夫?」


今俺はベッドの上で女の子と二人きりでいる。


「大丈夫だから俺は気にするな」


俺はできるだけ無心でいた。

そうしないと色々やばいんだもん!

女の子特有のいい匂いとか、

リスタとメルビーとちょっと違うなとか。

やわらかいものが当たってるなとか。

思ってないから!全く!これっぽちも!


「そう…じゃあ、おやすみ」


「あぁ、おやすみ」


俺は羊を数えることにした。


(羊が一匹、羊が二匹、羊が…この羊やらかいなぁ…)



うぅん…。

なんか体が重い。


「なんだ?布団が盛り上がってるけど…」


スフィアは…隣にいるし、って近い!


「じゃあ…」


俺は恐る恐る布団をめくりあげた。


「…おい、なんでお前がいるんだ」


そこにはここにいるはずのない、

その年齢に似合わない容姿の銀髪の少女が眠っていた。


「…アーグ…おはよ…眠いからまだ寝る」


「寝るな!俺の上から降りろ!」


「うるさいなぁ…むにゃむにゃ」


「だから!あーもう!」


俺は仕方なく布団から出た。


「アーグさん…随分と小さくなりましたね」


スフィアはまだ寝ぼけているのか…。


「髪色も変わったみたいだし…」


「スフィア、俺はこっちだ」


スフィアに現実を知ってもらおう。


「こっちって…え!アーグ!じゃあこの子は…シルさんですか…なんでここにいるの?」


俺も同じこと思ったわ。


「朝起きたら俺の上にいた」


「…不思議だね」


「そうだな」



時は過ぎて朝食

「ちょっとアーグ!この子は何!」


朝からアリサの叫び声はきつい。

シルが来たということはつまり俺の膝の上で食事しているということ。


「アリサ…諦めてください。

前にその子をどかそうとしましたけど絶対に離れませんから」


「そんなことないでしょ…うーん!」


「痛い痛い!やめて!」


「ほんとだ…」


「ね、何でいるのか知らないけど…」


「そうだよシル、何でいるんだ?」


「来ちゃった…」


「なんだそれ…」


「シル、久しぶりね」


「ん…もぐもぐ」


挨拶くらいしてやれよ…。

母さんが少しかわいそうだぞ。

ん?なんで知ってるんだ?


「おいア…」


「うるさいです。食事中は静かにしてもらえませんかね」


また親父が母さんに連れてかれた。

今のは早かったなぁ。



それから一週間ほど村に滞在し、

また来ると約束してランド王国へと帰っていった。

親父を見たときは驚いていたが、

兵士さん達もこの村が気に入ったようで良かった。

読んでくださりありがとうございました。

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