26話:城の中
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途中何人かのケガを治療しながら城門まで来た。
当たり前だが門の前には、王国の兵士が何人も立っている。
そいつらは門番の役割をしておらず、
オセロやら、トランプやら、
挙句の果てには酒を飲んでいる奴もいる。
この国の民とは違い、
金に困っているようにも見えない。
そいつらは俺が来たことに気づいたのか、
ニヤっと笑うと、
「ここは君がくるような場所じゃない。
ゴミは、早くゴミ箱に帰るんだ」
ゴミ箱?何を言ってるんだ...
「あぁ、なんか臭くなってきたなぁ、
ここら辺臭くないか?お前ら、なあ?
早く行ってくれないか?」
クセーゾ!
隊長の言う通りだ!
早く帰れ!
こいつら...
「ちょっと王様に用があるんですが...」
「テメェみたいなガキが何を言ってるんだ?
あぁ?せっかく丁寧に返してやろうって言ってんだからよぉ」
周りの兵士たちも笑ってる、
中には目を背ける兵士もいるが...
「あー、もうキレた。
お前が早く帰らないのが悪いんだからな?」
そう言って隊長と呼ばれた男は俺に拳を下ろした。
「あ?なんだお前」
その拳を片手で受け止める。
正王国の兵士がこんなものかと思った、
メルビーのほうがよっぽど強いぞ。
朝から酒を飲んでればそうかと一人納得し、
そいつをゴミを見るかのように睨んでおいた。
「……っ!おいお前ら、やっちまえ!」
そいつは怖気づいたのか、額に汗を流しながら部下に命令し、
それに答えるかのように周りの兵士は武器に手をかけた。
おいおい、俺はまだ子供だぞ?
こいつら…本当にゴミだ。
隊長が手を下すまでもねぇ!
ちょっとずつ痛っぶてやらぁ!
すでに酒が回ってるようで、顔を真っ赤にしながら近づいてくる。
バタバタ…
一瞬の出来事だった。
この場にその動きを感知でき者はいないだろう。
一応目を背けていた奴らは残してあるけど…
あとはこいつだな。
「や…やめてくれっ!なんなんだお前は!
そうか、女か?女ならいくらでもくれてやる!
だから命は!命だけはたっ…ひっ!」
俺は隊長ののど元に剣先を当てながら言う。
「お前は本当に…ゴミだなっ!」
俺は剣を振り上げ首寸前で止めた。
じょぼぼぼぼぼぼ
「お漏らしなんて汚ねぇよ、あーあ、くさくなってきた」
こんな奴のせいで殺人鬼にはなりたくなかったから、
気絶してくれてよかったわ。
とりあえず嫌味を言っておかないと、
怒りで暴れだしそうだ。
「あのー、あなた様は…?」
「俺か?俺はそうだな、旅の者ってことで」
「そうでございますか、本当にありがとうございます。
私たちでは手を付けられなかったので…」
ブツブツと独り言を発している俺に、
兵士のうちの一人が話しかけてきた。
「まあそれはしょうがないですよ、
あいつら何かしたら殺してきそうな感じでしたもんね」
「すでに私たちの仲間のうち何人かは殺されてしまいました。
この国の王は女を選んでは捨て、
その捨てられた女はこいつらの物となってしまいます。
その女達を助けた仲間はもうすでに…」
心底嫌な奴らだ。
「私たちにはこの国を救う力がありません。
あなた様なら、必ず…お願いします!
この国を救ってください!」
そうして一人の男が跪くと、
周りの兵士たちも同様に跪いた。
「そんな、頭を上げてくださいよ、
俺にできるかわかりませんが、できる限りのことはします」
この国を見てきたので答えは決まってる。
「ありがとうございます」
その兵士は目に涙を浮かべながら、
感謝を口にした。
「その前にさ、ここに昨日銀髪の女の子が連れてこられなかったか?」
国を救う前にシルが優先だ。
この間にも何をされているかわかったものじゃない。
「そうですね、申し訳ありませんが、
私たちは下の者ですので…では、王女様のところへ案内いたします」
「王女?誰だ?」
「王女様は王家の者の中で、唯一この国の民を守ってくださるお方です。
あの方は食事を民に配ってくださったり、
王の弱みなどを探してこの国を救おうとしてくださっているお方なのです。
なので、連れてこられた者の場所ももしかしたら」
王家にもそんな奴がいるのか…
「では案内をお願いします。
兵士と会っても俺が対処するんで、
なるべく早くお願いします」
「分かりました」
そうして、俺たちは城の中へと入っていった。
コンコン
「失礼します」
「どうぞ」
俺たちは今一つの扉の前にいる。
その扉は、周りにある物とは違い、
少し装飾が多いように見える。
「失礼します。こちら旅のお方です」
そこには、とてもきれいな10代半ばというくらいの少女がいた。
しかし、その顔には疲れが現れ、
目の下には遠くからでもわかるほどの隈ができていた。
「旅のお方ですか…名前をうかがっても?」
声にもハリがない…
「王女様、私はアーグでございます」
「アーグ、ではあなたは何か用で?
私は忙しいのよ」
「王女様、もしかしたらこの方なら、
この国を救ってくださるかもしれません」
「ほう…」
「王女様、こちらに銀髪の少女が連れて来られたはずなのですが、
どこにいるかわかりませんか?」
王女様はその顎に手を当て、
「銀髪…もしかして、シュルガト?
と呼ばれる方ですか?」
「そうです!」
「その方は多分地下の牢屋にいるかと、
もしかしたら、今日はすでにおとう…
いやニスフリーのところに連れていかれてるかもしれませんが、」
そういって、悲しそうにうつむいた。
「分かりました。兵士さん牢屋の場所は分かりますか?」
「牢屋なら!ついてきてください!」
兵士について行き出ていこうとしたとき、
「待って!」
王女様に呼び止められた。
「どうかしました?」
「あの…私も連れて行ってもらってもいいか?」
「いいのですか?もしかしたら戦闘になりますよ?」
「そこは大丈夫だ、民を守るために日々の稽古は怠っていない。
それに、あなたならやってくれそうだしな、あのニスフリーを」
手を強く握りしめながら決意を口にした。
この人は…優しい人だ。
この人が先頭に立てば、この国は良くなるかな、
そう思い、
「じゃあ、行きましょう。時間が少ないので」
「あぁ」
宣言通り、王女様は強かった。
そこら辺の兵士なら一人でも余裕で対処できていた。
良い兵士と悪い兵士もわかるようで、
俺が殴りそうになった相手をかばうときもあった。
普段から顔をあわせて近況報告をしているようで、
すぐにわかるそうだ。
そして数分後、
地下牢に着いた。
そこには捨てられた女性なのか、
ボロボロになって、服も着せられていない女性が、
手枷を付けられ横たわっている。
それも何人も。
「大丈夫ですか!今治しますからね!
[範囲回復]」
「これは…っ!」
「広範囲の人々を回復させるスキルです。
それより早く出してあげてください!」
俺はそれよりも…
「シル!どこだ!いるなら返事をしてくれ!」
牢屋は何十個もあったが、シルの姿はどこにもなかった…
「くそっ!王女様、俺は王のところに行ってきます。
その人たちを安全な所へ」
「でもっ…」
「あなたなら守れるでしょ?それに俺なら大丈夫ですよ。
戻って来ます」
「……わかりました。では、あいつをお願いしますね」
その目には恨みや憎しみが込められているようにも見えた。
読んでくださりありがとうございました。




