25話:怒り
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カトニス王国
「失礼いたします。おっと、お楽しみ中でしたかな。
こちら森の魔女、シュルガトでございます」
「なに、そんなことはどうでもよい、
ほぉ、なかなかの上玉じゃないか、どれ…」
そう言ってカトニスの国王、
ニスフリー=カトニス=ケルセルはシュルガトに近づいていく。
「やめろ…」
シルに近づいてくるニスフリーを必死に拒み続ける。
それも、目から血が流れるほどに…
しかし、首輪の制限により、動く事ができない。
そして、ニスフリーのいやらしい顔が、シルの唇に近づく…。
まさにこの女は自分の物と証明するかのように。
「くっ…!」
が、直前で王を殴り飛ばした。
「王に向かって何をする!」
(こいつ…緩めた…?)
シュルガトはその黒いフードを被ったほうへ向いた。
笑っていた。
目が合う。
(…また制限が…)
首輪の制限が解けたのは一時的、
それも一番危ない時だけ、
この男は何がしたいのか…
「クソ、この女…お前が使えなければ即刻殺していたのに」
「ふざけるな…お前が死ね」
「おい商人、この女を地下牢に入れておけ、
後でゆっくりと調教していく」
「かしこまりました、ほら行きますよ」
また、自分の考えとは違う動きをする。
(アーグ…助けて…)
「どうしました?もしかして助けが欲しいのですか?
うーん、そうですね…いや、この話は今度で。
それよりさっきは危なかったですねぇ?」
「お前は何がしたい…」
「私はただ見てるだけですよ」
「面白いか?」
「はい!それは勿論!
ゾクゾクしますよねぇ!
私の調整一つで未来が変わるなんて!
あなたも私がちょっと遅れてたら、
あいつにキスされてましたね!
いやー、怖い怖い…あっはっはっは」
(なんなんだこいつ)
「カトニス王国…早くいかないと!」
アーグは手紙を読み、
シルを助けるためにカトニス王国に向かっている。
(なんであいつにこれ以上辛い思いをさせなきゃならないんだよ…!
あいつは一人でずっと耐えてきたんだぞ、
この森の奥で何年も…何十年も、
もしかしたら何百年かもしれない、
それくらい一人でいたんだよ…
これからは俺がいるからって思ったのに…
また俺は、守れなかったのか…?
あいつが逃げれないほどの何かがあるんなら、
俺にはもう無理なんじゃないか…?
ダメだ…助けなきゃ!俺がやらないと…)
「あれ、あの家に入っていったね」
「あそこって誰の家?」
「そんなのしらないよ」
「もしかして、恋人かもね…」
「カエラ!それ詳しく!」
「ちょっとリスタ‼落ち着いて、冗談だから!」
この子、アーグ君のこと好きなんじゃないの?
それにしてもやっぱりあの人に会うと、
お兄ちゃんを思い出すんだよなぁ、
胸がどきどきするっていうか。
「あっ、でてきたよ」
「カトニス王国…早くいかないと!」
「ん?メルビー今なんて言ってた?」
「カトニス王国…とか言ってたぞ」
「よく聞こえるわね…」
「まあ私は耳だけはいいからね」
「カトニス王国…カエラ、分かりますか?」
「分かるよ、この森を抜けた向こうの国で、
情報が何も入ってこないから、そこの国がどんなところかは分からない。
行った人が帰ってこないからね…」
「行ってみよ…」
「リスタ…?」
「どうして?どうせすぐ帰ってくるんじゃない?」
「いや、なんか嫌な感じがする…行かなきゃ」
「でも、一回王国に帰りましょ?
私も王族だから、一言は言わないと…」
「それにこの格好だしね…」
「っ…!わかった。でも準備できたらすぐに行こ。」
ランド王国からカトニス王国までは森を直線に突き抜ければ、
約二日で着く。
しかしそれは馬車の話、
今のアーグが本気で走れば一日もかからないだろう。
不安と焦りに心を支配されていながらも、
今自分にできることは走るしかないという現状に、
さらに焦りが増す。
それからか、既にアーグの頬や腕に、
木で引っ掻いたような跡ができていた。
それでも止まれない、
止まってはいけない。
魔獣が出てくる、
それも、昔のアーグだったら苦戦を強いられたような魔物だ。
この森は奥へ行けば行くほど魔獣が強くなっていく。
しかしこちらはシルの特訓に耐えきっている男だ。
その程度の魔獣では足をいちいち止めなくても対処はできる。
それから日が暮れ、
そして朝が来た。
アーグの足はすでに限界を迎えていた。
そこへ身体強化をかけて何とか立てているのに、
ペースを落とさず走っているので、
いつ骨が折れてもおかしくない状態になっている。
今のアーグだからできること。
昔のアーグだったらすでに諦めていたかもしれない。
嫉妬しただけで、自分の強さを求めることを辞めたのだから。
「はぁ…はぁ…あれか…」
日が出てきてから3時間ほど、やっとカトニス王国が見えてきた。
しかしそのランド王国とは違う、
遠くから見ても活気がないその国に、
アーグはその拳を強く握りしめた。
門には兵隊が立っており、外壁も飛び越すには高すぎる。
ここは、門を通るしかないようだ。
「おい、そこのお前、何をしに来た」
「私は、旅をしているものです。近くを通ったのでぜひ一度見ておきたいなと…」
「その年でか?」
「こう見えても私、20は越えてますよ」
真っ赤な嘘だ。
「そうだったか、それは失礼したな、
ではどうぞ楽しんでください」
そういって兵士は歓迎の笑顔とは別の、
これから起こる何かを楽しむかのような笑顔をアーグに向けた。
周りにも兵士がいたが、その者たちも同様な顔をしていた。
何人かは、その事実から目を背けるように、
苦しいような顔をしていた。
(なんなんだこの国は…
さっきの兵士といい、この町の活気といい、)
そのまま門の中へ入っていった、アーグが目にしたものは…
道の真ん中で倒れている男の子。
家の窓から憐れむような、
助けを求めているかのような目でアーグを見る夫婦。
アーグの心には怒りが湧いた。
「大丈夫か!今治してやるからな、[回復]」
男の子の打撲痕や切り傷が癒えていく。
「おにい...ちゃん...ありがと」
「いいんだよ、こんなこと...誰がやったんだ?」
「兵隊さんたちが来て...守ってくれる人もいたけど目の前で殺された、それで、殺した兵隊さんが殴ってきて...」
あいつらか...っ!
脳裏には先ほどの嫌な笑顔が浮かぶ。
そして、目を背けた兵士がなぜ何もできないのかも悟った。
「そうか...でももう大丈夫だ、俺がなんとかする」
いつのまにか近づいてきたのか、町の人々が周りに集まっていた。
「あなたは...」
「俺はただの旅のものですよ、それよりこの子をお願いします」
こんな国にシルを置いていけない...
この人たちを守りたい。
俺はその足を城へと向けた。
読んでくださりありがとうございます。




