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22話:危機

では本日の1話目どうぞ

4年が経ち、私たちは10歳になった。

この4年でスフィアはすごく伸びた。

やはり闇などの属性はからっきしなのだが、

水魔法になると、とたんに別人のように強くなる。

タナマさんに言われた水魔法に関しては、魔力が許す限り、

すべて使えるようになっていた。

私と魔法の打ち合いをして、水だけという条件を付けられたら負けてしまうだろう。

それほど強くなった、がんばった。

でも私は負けるわけにはいかないから。

例えスフィアだとしても。




「今日もタナマさんの特訓はすごかったね」


「あの人魔法使いなのにあの動きは意味わからないよ…あはは」


今ではスフィアも城に住んでいる。

私達の仲がとても良いからと、お父様が城の一室をスフィアの部屋にしてくれたのだ。

スフィアの部屋にもベッドはあるけど、やっぱり二人で話しながら寝たほうが楽しいよね。


「そういえばカエラ、あの噂知ってる?」


「噂?」


「そうそう、この前ほかの冒険者が離してるのが聞こえて、

なんでも私たちと同い年の人たちがランクCにあがったって」


「へぇー、すごいね」


「ラビストさんに聞いたら、この王国に住んでるらしいよ?

今度会えたらいいね」


「そうだね」


「えぇー、なんか興味ない感じ?」


「そんなことはないよ!ただ、ある人を思い出して」


「ある人?」


「ううん、なんでもないよ!」


「ふーん、まあいいや。

そうだ、明日タナマさんの特訓も休みだし、久しぶりに依頼受けよ?」


「いいよ!」


「ありがと、おやすみカエラ」


「おやすみスフィア」


ランクCか、すごいなぁ。

多分アーグ君だよね、リックさんもここに住むって言ってたし。

いやだな。

何で私よりも強いのかな?

足りない。




「はい、じゃあ二人ともけがには気を付けて。

最近森に強い魔物が出てるって情報があるからね」


「分かりました。忠告ありがとうございます!ラビストさん」


「行ってきます!」


そういえばタナマさんも森に調査しに行くって言ってたな。

このことかな?

タナマさんが出なきゃいけないって、相当強いよね…

出会わなきゃいいけど…



「あっちにいるよ!」


「わかった」


二人のコンビプレーで着々とクエストをこなしていき、


「[ウォーターカッター]」


今最後の敵の首をはねた。


「お疲れ様。[解体]」


「何度見てもすごいね、その解体。私にはできないよ。どうやって手に入れたの?」


「あはは、天から?」


「なにそれ、まあいいや、結構森の奥まで来ちゃったね。

依頼も終わったし、今日はもう帰ろっか」


ぐおおおおおお!


「なに…今の声…」


「向こうに何かいる…」


私の索敵には何匹もの魔物が一匹から逃げるようにしているのがわかる


「これって、まさか…」


「やだな、そんなわけないじゃん!」


「そうだよね…」


いや多分そうだ、言わないけど私にはわかる。

この魔獣のやばさが。

誰もそれに近づこうとしていない。


ドスッドスッドスッ


「カエラ…何か来るよ…?」


「あぁぁ、」


私は死を覚悟した。

これはダメだ。

今の私たちでは何もできない。

少しなら動きを止めたりすることはできるかもしれないが、

それでも倒すことは絶対にできない。


この世界には魔獣の中でも変異種という者がいる。

その魔獣だけ他の個体と比べても明らかに力の差がある。


この魔獣はそれだ。

鑑定しているからわかる。

逆にそれ以外の能力は分からない。



「カエラぁ、もう駄目だよ。足が…動かない…」


「私も…」


なんて情けない。

前世でも守ってもらってばかりだったのに、今回も誰かを守れないのかな。




…それは嫌だ。

スフィアだけでも守らなきゃ。


「スフィア逃げて。」


「カエラ…?」


「私が時間を稼ぐ。その間に逃げて」


「そんなの…無理だよ…」


そいつと対峙する。

それだけで足がすくんで、震えてしまう。

それでも、


「来い!お前の敵は私だ!」


「グルルルルル…」


その凶器的な口から発せられる低い唸りだけで膝から崩れ落ちてしまいそうな。


消えた…?


そう思うと同時に激しい痛みと木にたたきつけられている私。

感覚的に防御魔法を使ったが、それでも何本か骨は折れたのは確実だ。


「カハッ!」


口に血の味が広がる。


「カエラ!」


「ま…だ、大丈夫…」


それでも、私はそいつに向かった。

スフィアが逃げれるように。


また消えた。


それから私は何度も木にたたきつけられた。

正直言ってこいつなら私を瞬殺できるだろう。

それでも倒さない。

痛みつけることが楽しいのか、はたまた違う理由か。

私にはわからないけど、スフィアが逃げれる時間があればそれでいい。


でももう体が動かない。

せめて最後は、スフィアのクッションになれるように…

私はスフィアの体を抱きしめた。

震えるからだを抱き、思った。

また、失うのか…


「スフィア、大好きだよ…」


「カエラ…もうしゃべらないで…私も大好きだよ…」


(これでいい…せめてこの子が生き延びられるのなら、私は喜んで命を差し出そう。)





(お兄ちゃん…助けて…)


そして、私たちに無慈悲に腕が振り下ろされた。






キンっ


え?

恐る恐る目を開けた私の前に見えない何かがある。

そして、散っていった。

その先に見えた、黒髪の少年、銀髪の少女。


「よく頑張ったな、もう大丈夫だ。[上級回復]」


暖かい…


「セリフがくさい…早く倒して」


「うるせぇよ!ちょっとは格好つけさせろよ!」


あはは…なんでだろ、安心するな。

なんか、疲れちゃった…

もう…眠い…


「そのまま寝てろ、起きたころには終わってる」


そんな気がする。


「だから…くさい」


「おい!」






「エラ…カエラ!」


ここは…


「スフィア…よかった…生きてたんだね」


目の前には涙を流すスフィア。

そして気持ちの良い風。

ランド王国を見渡せる丘の上に、私たちはいた。


「あの人は…?」


「顔が見えなかったから、分からないけど、助けてくれたんだと思う…

起きたときにはもういなかった」


「それは…?」


「起きたときに隣にあって、ギルドに出してって手紙が…

多分さっきの魔獣の魔石」


「なんで自分で出さないんだろ」


「分かんない、不思議な人だね、あはは」


「そうだね、私たちももっと強くならなきゃね、うふふ」


ただの会話なのに、何故か笑顔があふれた。





そのあと、例の魔石をギルドに提出したらギルド中が大騒ぎになった。

ジャックさんにどうやってこれを手に入れたのか、としつこく聞かれたが、

寝て起きたら隣にあったということにしておいた。

まあ実際そうだしね。

タナマさんには泣かれて心配された。

やっぱりあの魔石はあの魔獣の物だったらしく、

最近森を騒がせてる本人らしかった。


そんなことは正直どうでもよかった。

私達の中では助けてくれた男の子が誰かという話でもちきりだった。

初めは、ランクCになったパーティーの子かと思ったが、あそこのチームはたしか、

女の子二人と男の子一人だから違うということになった。

でもあの声聞いたことあるんだよなぁ、まあいいや。

今は少しでもあの人に追いつけるようになりたいしね。



「そういえばさ、カエラってサマ王国の学校行くんだよね?」


「そうだよ」


「私も、行っていいかな?」


「そんなの…いいにきまってるじゃない!」


「ありがとっ、なんかもっと一緒にいたくなっちゃって」


「もう、スフィアったら可愛いんだから!」


スフィアも変わったな、前はこんなに自分の思いをだすことはなかったのに。


読んでくださりありがとうございました。

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