20話:シュルガト
これからどんどん改良していこうと思います。
見やすくしたり、文を変えたり…します!
いきなりだが、ランド王国に住み始めて三年半程たった。
その間に俺たちは、着々とクエストをこなしていき、
目標のランクCにたどり着いた。
今ではこの王国でも少し名の知れたパーティーだ。
まあパーティー名があるわけでもないけどな。
ギルドに行けば誰かに声をかけられ、
町を歩けば誰かがお土産をくれたりする。
それくらいの知名度だ。
ある時、
いつも通りに二人に内緒で朝早くに森で特訓をしていた時。
「998…999っ……1000!っはぁ、はあ、はあ」
「…」ジー
「えーっと、次は…」
「…」ジー
(何か視線が…)
俺は視線を感じたほうへ目を向けたが。
さっ
「気のせいか…」
「…」ジー
「そこかっ!」
「あっ」
「おい逃げるな!」
「……」
ダダダダ
「嘘…だろ、はやっ!」
まあそんなことがあり、数日後、
毎日話しかけたことに観念したのか、俺の問いかけに応じてくれた。
「あの~、そろそろ顔出してもらってもいいですかね?
いざ気づいちゃうと、気になって特訓できないんですよ…」
「ん」
木々の間からひょこっと顔を出したその少女は、
まだ顔に幼さが残る女の子だった。
しかし、銀髪に包まれ、その髪をなびかす少女をただ一言、
少女というのは、その目から、その全身から出てる圧がさせなかった。
常人が見ればそんな圧には気づかないだろう。
事実、アーグはただの幼い少女としか思っていない。
(可愛い…それにしても、何もしゃべらないのかな?)
「あの、何でいつも見てるんですか?」
「君…まだ…弱い」
「っ!なんでそんなk
「でも…毎日頑張ってる」
「え?」
「私…毎日…見てる」
「確かに見てるかもしれないけど…俺はそれなりには強くなったつもりだ。
それを何で君みたいな子に言われなきゃいかないんだ」
俺は今までのことが否定された気がして、
怒りに任せて言葉を発した。
「それは…」
「そこまで言うなら俺と勝負しろ!」
「…わかった」
風が頬をなでる。
少女と対峙したアーグは、その身から出る、
何か違うものを感じた、今までアーグが戦ってきた魔獣とは違う。
何か別の物を。
「行くぞ!」
アーグが走り出す。
しかし、銀髪の少女はその場から一歩も動かない。
アーグの木刀が顔の数センチ前に来るまで。
「やばっ」
自分の特訓を馬鹿にされたせいか、頭に来ていたこともあり、
後先考えず、その少女に向けて木刀の剣先を自分の出せる全力で突いていた。
当たる直前に気づいたのか、少しばかりの冷静で思ったこと、
“殺してしまう”
殺さなかったとしても、その剣先が当たれば致命傷にはなるだろう。
そのくらいの勢いで突いていたのだ。
しかし、もうこの勢いを消すことはできない。
その事実に目を瞑った。
「遅い…」
アーグは少女のいた場所を通り過ぎた。
通り過ぎた。
その意味は分かるだろう。
アーグが自分の思わぬ力で少女をよけながら進んだのか。否。
アーグの見ていたものはアーグの幻覚だったのか。否。
少女が避けた。
ただ見て。ただ考え。ただ避ける。
それにアーグの思考が、体が追い付かなかっただけだ。
アーグは恐る恐る目を開け、少女がいないことに気づくと、
一安心したと同時に、なにが起こったのか理解できなかった。
「どこに行った…?」
「ここ」
声は背後からした。
アーグはその声に身震いが起きるような感覚になった。
到底人間の子供には出せないような、しっかりと芯の通った声に。
振り返ろうとし、瞬きをした瞬間、
少女はさっきと同じようにアーグの目の前にいた。
その動きをアーグはとらえることができなかった。
最近ではメルビーの動きが少し分かってきたというのに、
それでも、少女の動きは分からなかった。
「あなたはまだまだ遅い…」
「君はなんなんだ…?」
額に汗が流れる。
「私は…」
「はぁはあはあ、疲れたぁ…」
「アーグ…そんなものか…」
ブチ
「あぁ?俺はまだ元気だぞ!ほら次!」
その容姿でそんなこと言われたら相手が強かろうとむかつく。
「アーグ…頑張る…」
少女の正体それは、魔人。
そう自分で言っていた。
魔人それは、人間では恐怖。
かつては、人間と争い、血を流し、死んでいった。人間側も同様に。
しかし、人間側の死と、魔人側の死は、そもそも量が違った。
人間は9割死んだとすれば、魔人は1割も死んでいなかっただろう。
それほどまでに魔人の身体能力は高かったのだ。
それからというもの、人間の間では魔人は人間の敵、
そう口々に言われるようになった。
ただ俺は、
異世界から来たこともあってというのもあるが、
両親が魔人はいい人達だからと教えられたので、
あまり恐怖などの負の感情は生まれなかった。
そこまで少女が怖いとは思わなかった。
そんな俺の態度に少女が逆に驚いていたが、
と同時に安堵の表情がうかがわれた。
俺にはこんな子が、人間と争うなんて思えなかった。
少女の名前はシュルガト。
「シルって呼んで…」
シルと会話して分かったことは、
こいつは多分俺よりも相当歳がいってる。
なのにその容姿というのはよくわからないが、
魔人がみんな長寿らしい。
そのほかにも、あまりしゃべらない。
この前、シルの家に行かせてもらったが、森の奥深くにあった。
理由は自分が魔人ということもあるが、
人と話すのが苦手なため、見つからないようにここで、こっそり暮らしているらしい。
一人で暮らすのはさみしくないか?と聞いたが、もう慣れたといっていた。
そして強い。
まあ人間と魔人だからというのもあるが、
それでも雲泥の差ほど実力が離れている。
実は、シルは魔力とは別に、空気中に存在する、魔素というものを感知することができ、
それのおかげで特定のスキルがずっと使うことができるそうだ。
だが、魔力で使えるスキルは使えず、魔素で使えるスキルも長年生きてきたが、
一つしか使えないと言っていた。
長年って何年だよ…
ってことで、シルは俺の師匠として、
まずは基礎から、そして最終的には魔素を自由に操ってもらうといっていた。
正直言ってシルの特訓は辛い、親父のよりもだ。
以前の俺だったらもうあきらめていた。
それでも、レグの言葉に考えを改められたおかげで、
もう俺はあきらめないと心に決めた。
それからというもの、
朝、夜が明けぬうちからシルに会いに行き、
シルの特訓を受けに行った。
何故、俺をずっと見ていたのか。
それはただ、長い年月を一人で過ごしていたら、
近くで訓練する声が聞こえてきたから、
少し興味が出てみていたら見つかったらしい。
他にも理由はあるらしいがそれはまた別のお話。
「でも…アーグじゃなかったら…話せない…」
その言葉に俺は不覚にも鼓動が早くなった。
その特訓の甲斐もあってか、
ステータスが上がっている。
アーグ=バーラット 10歳 Lv58
HP:6782
MP:1540
ATK:3465
DEF:2670
AGI:6845
スキル
索敵 絶対防御 身体強化 斬撃 鑑定 癒し手
久しぶりに見たけどすごく上がってる。
でも、数字にして見ると強くなったことが実感できてうれしい。
それから時間があればステータスをみる、ということをしていたら…
「アーグ…見すぎ…やめる」
はい、シルに言われちゃいました。
「力…過信しちゃだめ」
だそうです。
ギルド
「アーグ、そろそろ12歳だよな?」
「あと2年もすれば」
ちなみに今俺はジャックさんと話している。
「そうか、じゃあ学校に行ってみないか?」
「学校…ですか…」
「同い年の強い奴を知れば自分を高められるだろ?」
「それもそうかもしれんせんね」
「それに、この王国の姫も学校に行くらしいぞ。
しかもお前と同い年」
「そうですか…」
「どうだ、行ってみないか?
世界を回る前に人脈を作っておくのもいいかもしれんぞ」
「分かりました。一回帰ってリスタ達に聞いてからにします」
リスタ達はこの三年半で随分と人に慣れた。
今では一人でも町に行けるというが、俺がさせない。
でもこれを機会にみんなで学校というのもいいかもしれないな、
クラスとかがわかれれば、俺もリスタとメルビー離れができるかもしれない。
「ってことでどうだ?行ってみるか?」
「学校ですか…人生一度ですし、行ってみるのもいいですね」
「私も行ってみたいぞ!」
以外にすんなり行くことが決まった。
「でも試験に受かるかどうか…」
「私も…」
まあ不安はあるよな、
俺も前世の試験は緊張で答案用紙が手汗でびちょびちょになったのを覚えている。
まあ、報告に一回ジャックさんのところに三人で行った。
「なので、みんな学校に行こうと思います」
「そうか」
「で、どこの学校ですか?」
「それは、サマ王国のサマ王立学園だ」
「サマ王国…聞いたことありませんね」
「そりゃ、ずっとここにいればな」
「難しいですか?」
「この世界で一番難しいといわれている。
そこを卒業すれば将来は確実だな」
「世界一ですか…」
「強くなりたいならな、そのくらいは行っとかなきゃな。
試験は、筆記と実技だ。
実技はお前らだったら問題はない」
「問題は筆記ですね」
正直言って俺はこの世界に来てから、勉強をしたことがない。
だから、どんなものが出るか全くわからないのだ。
「どんな問題わかりますか?」
「言うと思って用意しといたぜ」
「……これは」
(まじかよ!高校レベルじゃん!これなら楽に行ける!だてに勉強はしてなかったからな)
「なんですか…これ…」
「うわぁ、もう駄目だ…」
二人とも嘆いている、が。
「二人とも俺に任せろ。2年もあるんだ、余裕だよ」
それをシルに話したらなぜかシルも行くことになった。
俺としては学校にいる間も特訓ができるからいいんだけど…
年齢は…大丈夫か!あはは
ばれなきゃ犯罪じゃないよね。
読んでくださりありがとうございます。




