19話:クエスト
19話目です。
あれから半年。
俺たちは少し早いが、準備も整ったので王国に住み始めることにした。
出発するときアリサに泣きつかれたが、たまに帰ってくることを伝えたので大丈夫だと思う。(多分)
村のみんなに見送られ、ランド王国へと旅立った。
今回は俺が母さんに頼んで、クッションを作ってもらったから俺のお尻がこれ以上われることはない。
膝枕がなくなって悲しいとか思ってないからな!
荷馬車に揺られること一週間。
ついにランド王国に到着した。
これから俺たち三人で住むのか…
前世ではあんまり自分の人生を謳歌できなかったけど、
この二人となら、楽しく過ごせそうだ。
そうだな、
まずは泊るところを決めなくては…
って、もう決まってるけど。
「すいませーん」
「いらっしゃいませ!あっお兄ちゃん!」
「お兄ちゃん!?ナスカどうしたの?人違いじゃない?」
「アーグ!どういうことですか?」
「まさか、生き別れた兄妹とか?」
「そんなことない!」
「違わないよ、お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ?」
「う~ん」
お兄ちゃんって呼ばれるの久しぶりだな…
それでも、雪だけが俺の妹だしな…
「ダメ?」ウルウル
「うっ…」
「おねがい…」ウルウル
「…はぁ、いいよもう」
「やったーー!」
雪…お兄ちゃんに新しい妹ができたよ…
俺って小さい子の押しに弱いのかもな…?
「アーグ、久しぶりだね」
あ、スリエさんだ。
「来たってことは、もうこっちに住むのかい?」
「そうですね、しばらくはこっちにいようと思います」
「わかった、とりあえず一か月ずつ払ってくれればいいよ。
金貨2枚だ」
「はい、じゃあこれからお願いします」
「おねがいします」
「とりあえず、お腹すいちゃったから何か食べたいな」
「メルビー、じゃあ何か食べに行くか」
「そうですね」
「よし、出発!」
「お兄ちゃんたち、行ってらっしゃい!」
スリエさんも元気そうでよかった。
まあ、あの人が元気ないなんてあることないと思うけど…
その日は一週間の荷馬車生活からか、
メルビーの食欲がいつにもましてすごかった。
やっぱり狼人族って肉、好きなんだね…
そんな三人暮らし初日も終盤。
まずはこれからどうしていくかについて三人で話し合った。
「さて、これからどうしていくかだが」
俺気になること言っていい?いいよね?
「えーっと、メルビーどうした?」
ほっ、ちょっとすっきりした。
なんでこんなことを言ったかって?
そりゃ、
「あぁー…ぐ、お腹か…が…」
「うん、食べすぎだね」
「あはは、いっぱい食べてたからね。メルビーは」
特にあいつだよ。
リンゴみたいなやつ(こっちではチクっていうらしい)をくれるあいつ。
また俺だけにくれなかったから、リスタ達を連れてすぐに離れようとしたら、
「ちょ、ちょっと待って!俺は女の子の笑顔が見たいんだ!
お前にもやるからさ、な?」
「それって、いわゆるロリk
「じゃない!これは全世界の男が思ってるはずだ!」
とか言って、笑顔を見たいがために、
メルビーが食べ続ける限りずっとタダでくれた。
あいつそろそろ店つぶれるんじゃないか?
そんなわけで…
「じゃあ俺とリスタで決めるからな」
「うぅ…」
「そうしましょうか」
それから二人で話し合った結果、
まずはこの王国でギルドに登録して下から三番目の、
Cランクまで頑張ろうということになった。
お金も集まるし、実践の経験にもなるので良いということだ。
早速明日、ギルドに登録に行くか。
ところで、
「ふー、やっと収まってきたよ、で、これから何しようか?」
収まったのね、それはよかった。
やることはあなたが苦しんでる間に終わりましたよ。
次の日、
今日も天気がいい。
気持ちのいい朝を迎えたな。
カーテンを開け、お日様のぬくもりに身を温め。
窓から入る風の感触が心地よい。
こんないい日には何かが起こりそうだっぐえええええ
「ごほっごほっ、おいメルビー!なんで飛び蹴りした!」
「なんか気持ち悪い顔してたし、昨日のこともあるし」
気持ち悪いなんて…
俺そんな顔してたのか、慣れないことはするもんじゃないね。
ていうか、まだ昨日のこと根に持ってたんだ。
実は昨日、自分だけ話し合いの輪に入れなかったのが悔しかったのか、
俺へのあたりが強くなった…気がする。(いつも通りとは言わない)
「それにしても、飛び蹴りは止めてくれよ…メルビー早いの自覚して…」
「そうだったっけ?父さんが私より早いからつい…」
ついじゃねえよ。
二人とも常人には見えないんだからね。
ちなみにメルビーの言う父さんとは俺の親父のことである。
長いこと一緒にいたからか、いつの間に父さんと呼ぶようになった。
メルビーに初めて父さんと呼ばれた、親父の顔がきもかったのは、今でも脳裏に焼きついている。
あっ、俺もあんな顔してたのかな?
ちょっと心配になってきた…
「二人ともおはよう、朝から元気だね…ふぁぁー」
「起きたか、おはよリスタ」
朝食を済ませ、三人そろってギルドに向かった。
王国の朝も相変わらず賑やかなようで、やっぱりこの国の国王がいいのか?
まああったことないけど、これからしばらくここに住むんだし一度くらいあってみたいな。
そんな他愛もないことを考えながら今の自分の幸せを感じ、少し胸が温かくなった。
宿から、ギルドはそう遠くもなく、10分程度で着く。
今日の受付は…ラビストさんじゃないけど…
なんか似てるな。
「おはようございます。初めて見る顔ですね。
冒険者への登録でよろしいでしょうか?」
「はい、三人分おねがいします」
「分かりました」
「あの…ラビストさんってわかります?」
「ラビストは私の妹ですよ」
「妹さんでしたか!」
確かに似てるわけだ。
「私はラビルテ」
「俺はアーグです」
「私はリスタ」
「メルビーだよ」
「君たちが…ギルド長から聞いてるよ、すごいねその年で」
「二人が強いからですよ、俺は大したことはありません」
「アーグ?」
「.......」
「そんなことより、ラビストさんと髪の色が違いますね、なんか正反対です」
「ふふ、よく言われますよ。では今カードを持ってきますね」
ラビルテさんはラビストさんと同じで肌は真っ白なのだが、
耳から髪まで真っ黒なのだ。
そして際立つ赤い目。
まあ、二人とも美人なのは変わらないけど。
「お待たせしました。ではこちらに魔力を流すか、血を一滴おねがいします」
俺は魔力を流せるし、リスタもできるよな、メルビーは…
「痛い!アーグ治して!」
「なにしてるんだ!お前魔力流せばいいだろ![回復]」
メルビーの指の傷が癒えていく。
「いてて、ありがと。私身体強化はできるんだけど、魔力を扱うのはちょっと苦手で…」
「だからって、こんなに流すことないだろ…」
「ちょっと間違えっちゃった。てへっ」
あぁ、ほっといたら本当に危ないな…
こういうときに癒し手を持っててよかったと思う。
「てへじゃないよ…今度から気を付けてよ?」
「うん」
「えーっと、終わりましたね」
ほら見ろ、ラビルテさんも驚いてるだろ…
「はい、大丈夫です。なくした場合は銀貨5枚ですのでなくさないよう気を付けてください。
あちらのボードにクエストが貼ってありますので、そこから自分のランクに合った物を選んで私に持ってきていただければ、クエストを受けられますので。三人はランクFです」
俺たち三人はラビルテさんに言われたとおりに、
壁に貼り付けてあるボードから、
クエストを選んでいる。
「うーん、どれにしようか」
「そうですね、初めてですし悩みますね」
これは、メルビーの機嫌をなおすチャンスなのでは?
よしっ
「めr
「メルビーが選んだら?昨日は話し合いに参加できなかったしね」
うおおおい!リスタ~、それはないよ…
「そうだね、どっかの誰かと違って、リスタは優しいね」
俺も言おうと思ったんだけどね…
「うん…メルビーが選んだほうがいいと思う…」
それからメルビーは悩みに悩んだ末、
ゴブリンの討伐と、植物採集に決めた。
「うん、初めてのクエストだし、無難でいいんじゃないか?」
「私が選んだんだから当たり前でしょ!」
「はいはい、ラビルテさん、これおねがいします」
「ゴブリン討伐と、オオハコの採集ですね。
失敗しますと、罰金がありますので、期限以内にお願いいたします」
「分かりました、ではいってきます」
王国を出た俺たちは、指定の場所の森に行くことにした。
途中でメルビーが、ゴブリン討伐と、採集に分かれようと言ったが、
「ダメだ!」
「なんで?」
「二人を置いていくこととか、ましてや、一人だけおいていくとかできない。
俺が一緒にいる」
なんてことがあり、まずは三人でゴブリンを討伐することにした。
実際、俺はもう二人を置いていくなんてしたくない。
「[索敵]」
北に三匹いるな…
正直ゴブリン討伐は俺の索敵で見つかれば終わりなので、簡単に終わった。
一方の、オオハコの採集だが、それがなかなか見つからず、
苦戦していると…
ザワザワ…
周りの木々が揺れだした。
「なんだ?ちょっと騒がしくなったけど…」
「二人とも、あっちです」
「リスタ?」
そのままリスタに連れられ森の奥に入っていくと、
そこは一面オオハコの群生地だった。
「これは…」
「リスタ、どうしてここがわかったの?」
「う~ん、なんて言ったらいいかわからないけど、
植物たちがこっちって言ってくれてるような気がして…」
「植物の言ってることが分かったのか?」
「はっきりとは分からないけど、少しだけなら…」
すごい…これがエルフの力なのか。
また、助けられたな…
「じゃあ、ちょうどクエストも終わったし報告に行くか」
ギルドに帰るとラビルテさんが唖然としていた。
まあ、俺らがオオハコの葉っぱを大量に持ってきたからなんだけど。
「こんなに…すごいです!」
「リスタのおかげですよ」
オオハコの葉っぱは、ポーションの作成に使えるようで、
いくらあっても困らないらしい。
「お疲れ様、初めてのクエストだったけど無事できたね」
そんなことで、今日は少し豪華な夕食と共に、瞳にふたをした。
ぐええええ!
「なんだよ!メルビー!」
「なんでアーグはいつも床で寝るの?」
「そんなのベッドが一つだからだろ?」
「アーグは私を話し合いに入れてくれなかった罰として、これからはみんなで一緒に寝るから!
拒否はなしだから!そんなことしたらこれからずっと口きかない!」
「メルビー…ありがとう」
やっぱり、メルビーはやさしいなぁ
読んでくださりありがとうございます。




