第七十九話:戦いが終わって
一太郎プレミアムを買ってしまいました
サクラエディターさんも大変活躍して頂きました
誤字、脱字の修正をコツコツしていきたいと思っております。
信念とは個人の希望なのだろうか?
生きてきた環境で変わる訳だから生きがいなのだろうか
考えて判るようなら、信念なんて曖昧な言葉は使われないだろう。
☆
ついに女神に強引に飛ばされた、戦争多発のヴォルホルで1つの大陸とはいえ
平和に近づく第一歩となる、大陸統一に手を貸す事が出来て非常に満足だ
転移者の言った事が気にかかるが、あまり気にしても仕方ないだろう
帰国して3ヶ月が経ったが、米は奇跡的に去年の2割減少で済んで満足だ。
「リン、王国軍の再編はどの程度進んだ?」
「兵数240万を1個大隊4百人で、1個連隊4千人、1個師団2万4千人と
なり、100個師団が編成、エルミール本国に50個師団と大陸各地に
50個師団が分散配備されました」
100個師団か、エトワール市民の4倍か
俺がこちらへ転移してきた時は各国の兵力を合計すれば400万以上いたと
考えると、半分近くまで削減したとも言える訳だが。
「リンも師団長だな」
「……閣下が、学院も出ていない私を重用して下さったからです」
学院か卒業生はキムくらいしか知らないが
指揮官クラスは学院を出た者が多いのだろうか?
「フレイヤ、食料の方は安定したか?」
「はい、米の被害が少なかったのが救いです、今では一般家庭でも
2日に1回はお米が食べられています、ペコ商会が中心になってエルミール
大陸中の商会に倉庫の物資を放出させたのが大きいですね」
「秋蒔きの小麦の時期からは雨もほとんど降りませんし
来年は再び豊作でしょう」
米の時代が来たか、キムに考えさせた醤油と味噌の時代だ
俺もこの世界に確かな足跡を残した気分だ。
「アルベルト陛下の獣人差別の禁止令と旧ギラン共和国の奴隷制度案の
見直し案も王国議会の議案で盛り上がっているようです」
王国議会か、よく出来たもんだ
本当に守るかは時の国王次第だが、これも第一歩だな。
「閣下、これをどうぞ」
「この星金貨は?」
「閣下が使った戦争時の食費の費用ですよ」
「こんなにもらって良いのか?」
「内政官で話し合って決めた額です。お受け取り下さい」
これでだいぶ俺の資金も右肩下がりから脱したか?
☆
「爺さん、また新造艦を造っているのか?」
「そんなもん、すぐにはできんわ」
「それもそうか、どうしたんだ元気がないな」
「サメロンでわしの時代は終わったかも知れんとおもっての」
「弱気な事を言うなよ、まだ空を飛ぶ魔道具も未完成じゃないか」
「そうじゃったの。あれはわしが生きている間に造れるか、疑問じゃ」
エンジンに近い物を作れたんだ、すぐだと思うな。
「そうじゃ、今日は大事なパーティとか言っておらんかったか?」
「そうだぞ、今日は潮風の満腹亭の50周年記念に加えて
アニタちゃんの15才の誕生日だ」
「坊ちゃんの趣味をどうこう言うつもりはないが、折角招待状をもらったから
には行かないとな」
「そうだぞ、俺の貴族の友人は爺さんだけだからな」
「お前さんも寂しいやつだの」
ダリルさんもベガのケトウスの領主になってしまったしな
俺にもカノープスのカエルムの領主の話が来ているが微妙だな
出世に間違いはないんだがな。
パーティは5時からだから、まだ時間があるな。
「バルバラどんな感じだ?」
「売れまくって嬉しい悲鳴というのでしょうか、金貨があふれています」
「安く卸していると聞いているぞ」
「勿論、他の商会の値段に合わせていますよ。うちは原価率が違いますから」
「その笑顔を見ていると、初めて会った時の事を思い出すな」
「そうですか、過去の事は覚えていませんので、よく判りません」
「名前も覚えていなかったから、薔薇の花を持っていたのでバルバラって
名前をつけてやったんじゃないか?」
「そんな事もあったような気がしますよ」
「始めにバラコって名前を付けたら泣いて抗議してきたじゃないか?
「カズマさんの名前のセンスに絶望を受けた瞬間でしたね」
「ベラには話したのか?」
「こんな恥ずかしい話、他人に話せるわけないじゃありませんか」
恥ずかしいという気持ちはあるんだな、
バルバラも食糧危機を救った功績で男爵だからな、女じゃなかったら
今頃は子爵に陞爵していただろう。
「さて、行くとするか、また一昨日みたいに星金貨20万枚程
商品を出してくれとか言われたら困るからな」
「ちょっと待ってて下さい」
どうしたんだ、慌てて。
「お、お待たせしました」
「なんだこの袋は」
「魔法の鞄ですよ」
「そうなのか」
「ペコ商会もエルミール大陸全土に支店を開き、本店に準備金が星金貨50万枚
各支店に星金貨5万枚の王国一の大商会になりました」
「それで、今まで請求されませんでしたが、準備金以外にも緊急時の資金を
差し引いて、星金貨200万枚が入っています、お受け取り下さい」
「良いのか、そんなに受け取って?」
「カズマさんが始めた商会ではありませんか」
「……そうだが」
「まだまだ躍進は続きますよ、見ていて下さい」
「わかった、ありがたく頂いておくよ」
ちょっと寄ったつもりが大変な物をもらってしまったな
バルバラにペコ商会を任せて正解だったな。
☆
飾り付けはもう終わっているのか?
「カズマ君遅いわよ」
「クララさんじゃないですか」
「お爺ちゃんに招待状が来てたから参加させてもらったわ」
「キムもよく来たな」
「美味い物が食べれると聞いてな」
「ではわたしから一言」
「かリム堅いぞ」
「やかましいわ、ダン50周年おめでとう
アニタさんもお誕生日おめでとう」
「「「パチパチパチ」」」
「おやっさんもちゃんと挨拶できるじゃないか」
「あたぼうよ」
「アニタさんのケーキ入刀でパーティの開始だ」
「さあ、アニタ」
「お母さん」
ケーキカットが終わったか。
「おめでとう潮風の満腹亭、おめでとうアニタさん」
「カズマお兄ちゃんありがとう」
アニタさんは言いにくいな。
みんな飲んでばかりだな、俺はまず食べるか
さすがに料理スキルレベル8の腕はさすがだな。
五目ご飯まであるか、米が本格的に普及していると実感するな。
水は相変わらず美味い、日本は不味かったんだな。
「アニタちゃんに乾杯」
「満腹亭万歳……」
酔っ払いが増えてきたな、もう8時か
こちらの世界では、お開きの時間を過ぎているな。
帰ってきたか。
「ただいま」
「旦那様おかえりなさいませ」
「ハンナ、悪いが酔いを覚ましたいんで味噌汁を一杯お願いできるかな?」
「ご主人さま、ご機嫌がよろしいようですね」
「今日はアニタちゃんの誕生日だったからね」
「ご主人、またお小遣いを忘れてますよ」
「明日あげよう」
「兄様、寝たら如何ですか?」
「カズマさん、その方がいいのでは?」
「味噌汁を頼んだから飲めば、酔いも覚めるさ」
「わたしは寝るぞ」
「フランちゃんおやすみ」
「ダテ君、気になる事があるんだけど」
「明日みんな聞くよ」
酔っている状態で複数の人間と話すのは、結構疲れるな。
「旦那様、しじみの味噌汁です」
「シジミは好物なんだよ、よく覚えていてくれたね」
「ありがとうございます」
人生の最後は味噌汁で締めたいと言った人がいたというが
シンプルな言葉だが重みがあるもんだ。
酔っているのかな?
少し寝てしまったのか、もうすぐ12時か、寝るか。
「カズマ」
「カナデ、改まってどうした?」
「そろそろ時間じゃ」
「そうだな、寝ないとな」
「われは2ヶ月も持てばいいと思っておったが、お主の心は結構
鍛え上げられているようじゃな」
「どうしたんだ?」
「お前はベガで忠告を聞かずに転移者を殺した、あれはお前の肉体の一部
だったのじゃ、お前はわらわの『アストラル・カレイドスコープ』の効果の
副作用で一時的にこの異世界に留まったが、時間じゃ」
「何の時間なんだ?」
「最後に話したい相手はおるか?」
「今日は初めて会った人たちと色々話せた、満足だよ」
「そうか」
「ペコ神よ、時間じゃ」
なんだこの光は?
「まさか?」
☆☆☆
久しぶりだな何もない空間よ。
「テテはついてきてくれたか」
「おーい、幼女どこだ!」
「えーいうるさい、結局ここへ戻ってきたか?」
「それはこっちの台詞だぞ、何故もどってきたんだ?」
「お主に随分前に忠告したであろう、お前を探している転移者を探せと」
「おい、それも面白いかもしれないと、言ってなかったか?」
「そうだったか」
「もう戻れないのか?」
「これも手違いでな、お前が最後に転移したであろう。本来は向かう世界も
安定した世界のはずだったのじゃが、強制的にヴォルホルに送ったせいで
肉体がお前が最後に殺した転移者と入れ替わってしまったのじゃ」
「それじゃ、今までの肉体は?」
「一応30年ほど持つように設計された仮の肉体じゃ
お母様の怒りに触れて滅びると思っておったからな」
はじめから寿命は30年だったのか、まあそれなりに楽しめたか。
「精神だけ残っても仕方ないな、天国行きのバスは出てるのか?」
「……それがな」
「まさか地獄行きなのか?」
結構、人を殺したからな、快楽の為ではないが。
「本来は天国へ送ってやりたかったのだが、厄介な事になってな」
「なにか起こったのか?」
「そこからはわれが話そう」
「カナデじゃないか、お前も転移者だったのか?」
「バカもん、違うに決まっておろう。貴様にかけた
『アストラル・カレイドスコープ』の効果がここへ来てやっと判った」
「効果というのは異世界に一定期間残れる効果の事じゃないのか?」
「あれは副作用だと言ったはずだが」
カレイドスコープというとなんだろうな。
「われもあのスキルを発動させるのは、……500年ぶりくらいかの
繊細を忘れてしまったわ」
自分のスキルの繊細を忘れないでくれよ。
「とにかくお前の心は善と出た、それもかなり上位の善じゃ
時期はわれとペコの波長が合った日になるから、いつとは確約できんが
他の肉体にお前の魂を刻んでしんぜよう」
「あれだけ人を殺しておいて、セレスのカレイドスコープで善と出るとは
お前もたいした器だの」
「女神様、どの程度で復活できるんですか?」
「早ければ地球時間で1ヶ月程度、遅ければどうなるかわからん」
「魔物に転生とかなら、おとなしく天国行きがいいんですが?」
「そんな事にはたぶんならんと思うぞ。確定ではないがな」
「その間はここで座禅でも組んでいろと?」
「そんな事をされていても迷惑じゃし、わたしも仕事がある
地球に行っておれ」
地球で観光して、新たな肉体でどこかの異世界か。悪くないかも知れない。
「お前、ワンと吠えてみよ?」
「ワン」
「変なプライドも無いとは、お前の信念は本当に簡単には揺るがないようだな
それも一興、教えるつもりは無かったが1つ教えてやろう」
「ペコ、あまり教えるのは良くないのじゃ」
「セレスがあのようなスキルを使わなければ死んでおったのだ
この際、些細な事はよいではないか」
ペコとセレスはどっちが偉いんだろうな。
「忠告とはお前の好きな金の事じゃ、地球に飛ばされた時点でヴォルホルの物は
残るが、金銭はゴミになってしまう、今のうちに地球の通貨に変えておけ」
「言っちゃった、カズマは少し金の苦労をさせたほうが良いのに」
「セレスもカジノとやらで盛り上がっていたではないか」
「それもそうね」
苦労は日本でしたつもりだが、奴隷並みの苦労を味わえと
言う事か、それは嫌だな。
「カズマ、そういえば願いが1つ残っておったな。どうするかの?」
「そのままで、次があったらお願いします」
「そうか、たしかに言質は取ったぞ」
「カズマもバカね、復活させてと言えば聞いてもらえたのに」
そんな抜け道が用意されていたのか、神様も侮れないな
心の声が筒抜けな状態だから、後出しじゃんけんだが。
「その殊勝な心がけに免じて、地球旅行の分をチャラにして
また願いを2つに戻してやろう」
「女神様ありがとうございます」
宝くじで1等を当てたより大きい報酬だな
俺って女神運が良いのかも知れないな。
「いいのか現在午後11時55分じゃ、残り時間はあと5分じゃぞ」
「うあっ」
「残金が300億にフレイヤからもらった星金貨と
バルバラからもらった星金貨にクラノスとトレミーで強奪した分を
入れて。忘れてはいけないベリアスの分だ」
300億+200億+20兆+35兆+55兆+160兆で270兆500億だな
日本の国家予算を超えたか。
信用通貨だけが適用外か、財宝も結構あるしな
さあどんとこい。
こう考えるとバルバラのくれた星金貨200万枚は国家予算に匹敵するんだな。
「ペコ商会に栄光あれ!」
「さらばサラ、さらばエトワール、さらば少年の日よ」
人生で言ってみたかった台詞を最後に1つ言えたぞ。
「時間じゃ、会える日を楽しみにしておるぞ!」
「【昇華】」
「【アストラル・カレイドスコープ戒】」
「セレス、何をするのだ……」
俺の記憶はここで消えた。
ここまで読んで頂いて本当に感謝の言葉しかありません
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皆様のご活躍を願って、かもめ亭の赤マグロのステーキを1人前おごりたい気分です。




