第七十八話:ベガ王国制圧
強い軍隊というのは、やはり陸上部隊だけではダメなのでしょう
強い海軍、そして空軍と進化するんだろう?
☆
ベガ王国第二の都市のサンデの街を降伏させて、兵士は勿体ないが
ライラ伯にはサンデの治安維持の名目で残ってもらい、今は王都ケトウス
の南の街を占拠して軍議中だ。
「リン、ケトウスの戦況は?」
「工作員の報告ですと、1週間前にギラン共和国の軍が70万で攻め込んだ
ようですが、激戦の末それを退け王都に籠もっております」
「アレク、船の方は?」
「豪雨だったので船籍不明ですが、2千隻は撃沈、ケトウスの港と船も
完全に破壊しました」
これでベガも海上戦力は無しか、陸上兵力が30万は欲しかったが
ライラ伯がいると混乱する気がする。
「ここにある海上戦力は?」
「サメロン46隻、ドラロン30隻、クジロン320隻で、兵数21万で
マグロンは占領地に置いて来ております」
俺が実際使えるのは陸が兵数25万に船が400隻といった所か。
「わかった。明日の朝8時に降伏勧告を行い。期限は12時だが
敵兵が出てきたら問答無用で砲撃だ」
「「「了解」」」
「今日はゆっくりしてくれ」
「本当にあんなにパスタを頂いてよろしいのですか?」
「気にするな。船の上で食料が尽きたら戻らなければならない」
「感謝致します」
パスタとソースを2千百万セットで125億は痛かった
きっと経費で落ちないだろうな。
さて転移者がどう動くかだな、そもそも国王はどのような人物なんだ?
「ご主人さま、一緒に行動させて頂けませんか?」
「悪いが、敵が街を捨てて出てきたら、危険は海の比じゃない」
「でも兵士の皆さんも危険は同じではありませんか?」
「最悪、2人共死んだら、エトワールの領主が誰になるかわからん
悪いが船の上で頑張ってくれ」
ここは引けない、俺の後釜を狙っているやつはかなり多いらしい
ミラに政略は無理だしな。
「わかりました」
「シャルもサラの護衛を頼むぞ。上陸部隊の指揮はシャルだからな」
「カズマさん、わかりました」
「兄様、わたしも頑張ります」
「ミラもがんばるのです」
「わたしも船上組でいいのか?」
「敵には1人、『強奪』スキル持ちがいるからな、その対策だ」
自分の娘を守れることに自信を持てよ。
「そういえば、『強奪』スキル持ちがいるとは聞いていましたが、繊細を
聞いていませんでした」
言って良いものか、萎縮されると困るが。
「俺の推測が半分入るが、スキルの射程は30メートル程度
スキルを使われると体に悪寒が襲う、予想だが使えるのは1時間に1回程度
だと思う」
「報告にあったように、スキルとスキルレベルが知られていると
確実にスキルを奪われるんですね?」
十年以上かけて育ててきたスキルを一瞬で奪われるというのは恐怖だよな。
「多分、そうなるな」
「怖いスキルですね」
「相手は攻撃魔法に回復魔法と謎のスキルも持ち合わせている
兵士の数人は顔を知っているので、投降してもそいつだけは斬り捨てろ」
「それで私だけ、陸上部隊に編入なのね」
「そうだな、サクラが船の上にいても仕方ないからな」
「転移されたら?」
「俺たちも追いかける」
「転移魔法も使えるんですか?」
「そうなるな」
「安心してよ、転移したらすぐに追いかけるから」
「では解散だ。明日はよろしく頼む」
みんな『強奪』スキルの話の間は真剣だったな、やはり先に手を打たないと
危ういか?
朝の3時か、船上組は用意中か、4時には出港してもらわないとな
特にドラロンは足が遅いからな。
「リン、起きているか?」
「伯爵、どうされたんですか?」
「俺とサクラとカナデでケトウスの様子を見てくる
6時になったら出発して、8時に降伏勧告を行ってくれ」
「わかりました、『強奪』スキル持ち狙いですね」
「そうだ、臨機応変に頼むぞ」
「はい」
「準備はいいか?」
「ダテ君は人使いが荒いわね」
「カナデも悪いな」
「気にするな」
「距離は?」
「北に140キロね」
「やはり王都の中から移動はしていないか」
「サクラはこの距離なら転移は連続で何回できる?」
「頑張って2回ね」
となると相手も逃げれるのは2回か?
「俺は『魔力譲渡』があるから、魔力が危なくなったら言ってくれ」
「ダテ君はどんだけ、MPがあるの?」
「お前の3倍以上といった所だ」
MPが32万1千もあるとは言えない、サクラの持論だと限界距離で16回程度
転移できる事になるな。
「4時に転移するぞ」
「何故、4時なの?」
「4時に転移して、逃げられても6時に補足できる。更に逃げられても
開戦の8時に補足できるからだ」
「ショートジャンプするかも知れないわよ」
「その時は、魔力の続く限り追いかけるさ」
「わかったわ」
「行くぞ」
☆
でかいテーブルに椅子が12個、どこかの部屋か。
「西に5百メートルずれたわ」
「手を貸せ」
「【魔力譲渡】」
「ほんと、あんたは規格外ね」
どうやら城内らしいな、兵は明け方なので少ないな。
角を曲がって、あの部屋か。
あの扉は王都アレシアの謁見の間に似ているような気がするが。
「(突撃するぞ)」
「(わかったわ)」
「誰だ?」
「ここは謁見の間だぞ」
「侵入者だぞ」
「死ね、【ミストラルバーン】」
「伊達か、よく来たな。食らえ」
悪寒が走ったスキルが発動したのか?
炎スキルのレベル10が消えてる、現地の人間やスキルポイントが少ない
人間なら1年は引きこもるぞ、土魔法以外をレベル10にしておいてよかった
ぜ。
「お前こそ食らえ、【アクアフラッシュ】12連」
「ダテ君、転移したわ」
「方向は判るか?」
「東に3キロ」
ショートジャンプか?
「追うぞ!」
「【グライヒ】」
「北に50メートルよ」
「貴様ら、何故ここがわかる?」
「【アクアフラッシュ】3連」
「また転移よ」
「どこだ?」
「今度は西に35キロ」
「【グライヒ】」
「ドンピシャだ、刀で斬ってやるぞ」
「痛た」
「また転移よ」
「どこだ?」
「今度は中距離以上ね、場所が出ないわ」
特製の刀でかすり傷だが斬ったから、そう簡単には治るまい
2時間のクールタイムか?
近くに人はいないようだな?
「ちょっとここで待っててくれ、5分で戻る」
「ちょっ……」
「ヒルダいるか?」
「兄様、まだ出航前ですよ」
「俺に炎スキルを授与してくれ」
「持っていませんでしたか?」
「今、奪われた」
「『強奪』スキルですね、大変です」
「追っている最中だ、大至急頼む」
「スキルポイントを使ってしまうんですか?」
「気にするな」
「わかりました、豊穣神に誓い、汝に炎スキルを授与する」
「感謝する、頑張れよ。【グライヒ】」
「ほんとに早いわね」
炎魔法のスキルレベルを10にして、今度取られたら最低1時間説は確定だな。
こんなのを持ってるやつが何人いるんだ、怖くて『ペコの魔法』の事は
誰にも言えないな。
「最初の謁見の間で炎スキルのレベル10を強奪された、気をつけろ」
「それじゃわたしのばくムム」
「他人に自分のスキルを言うな」
「いきなり口を塞がなくてもいいでしょう?」
「誰が聞いてるかわからないんだぞ」
「それもそうね」
多分、爆裂魔法とでも言いたかったんだろう、口の軽いやつだ。
「サクラ、6時半だぞ」
「ごめん、まだわからないわ」
7時を過ぎたか。
「サクラ、まだか?」
「焦らせないで」
8時を過ぎたか、最悪は開戦しているか?
「わかったわ、東に1220キロよ、でもあり得ないわ!
3回目でこんな距離を転移するなんて」
「6回に分けて飛ぶぞ」
「無理よ、200キロ以上は一度行った事がないと絶対に無理
ショートジャンプは感で距離感が掴めるけど長距離は
最悪ランダムジャンプになってしまうわ」
そうか、成田へはサクラも行った事があったのか。
「テテ出てこい、変形だ」
「乗れ、行くぞ」
「乗ったわ」
「われもじゃ」
☆☆☆
「行くぞ、これが正真正銘の音速の異世界爆走だ!」
☆☆☆
なんだここはジャングルじゃないか、そもそもギラン共和国の東端まで
250キロ程度のはずだ。
居たな、サクラの話の5倍以上じゃないか
まだ隠しているスキルが複数あるのか?
1つ目がユニークスキルの『強奪』で2個目は転移が使えるから
魔法系だとすると、3つ目も強力なスキルなんだろうか?
。
「こんにちは名無しさん。鬼ごっこも終わりだ」
「伊達ーー。貴様らは、何故俺についてこれる?」
「『強奪』スキル使って見ろよ。その時がお前の最後だ」
何故、鑑定様でもこいつの名前が見えないんだろう。
「俺を殺したら一番困るのはお前のはずだろう?」
「俺の知った事じゃないな」
「それだけの力を持っていて、この世界に未練はないのか?」
「未練なんて、その時にならないとわからないな」
「俺を殺せば、お前も死ぬ事になるぞ」
「お前を生かしておけば、俺はどうせ死ぬだろう。だから同じだよ」
「日本みたいな面倒な世界より、ここのほうがいいはずだ
力があれば王にも成れる。この異世界がヴォルホルが」
「確かに貧乏からは抜け出せたな」
「そうだろう」
「だが、俺は俺の信念に従う。たとえ妄想だと言われてもな」
「教えてやる、俺は大国ベガの国王だぞ。そう陛下ってやつだ
お前に国を1つ与えよう」
「だからどうした?」
「伊達、お前の命も狙わないと約束するぞ。勿論魔法契約で約束だ」
「心が動かないな、俺は頭があまり良くないから判らないが
たとえ妄想と言われようと、自分の信念はどんなに
素晴らしい物とも交換する気はない」
「俺の心とお前の体は繋がっているんだぞ。知らないのか?」
こいつついに狂ったか、俺は両親に捨てられてから
ずーと1人でやってきた、お前に判って溜まるか。
「死ね!」
「カズマ、我からも一度だけ聞くぞ、本当に殺すつもりなのじゃな?」
「カナデ、その通りだ」
「そうか……」
「われも本当に面倒事に巻き込まれた物よ、これは限りなく大きな貸しじゃぞ!」
「汝、ここに封ずる、【アストラル・ホロスコープ】」
「うあー、やだ、俺は王だぞ……」
なんだ、この経験した事のない頭痛は
痛いとか、そんなレベルの話じゃないぞ。
☆
「……君」
「ダテ君」
サクラか?
「俺はどうなった?」
「6時間も起きなかったのよ、死んじゃったかと思ったわ」
「そうか」
「なんじゃ、期間を少し延ばす事は出来たようじゃ
残りを存分に生きてみよ」
「よくわからないが、あまり日本人を殺したくないからな
助かったよ」
「もう4時か、王都へ戻ろう」
「テテ行くぞ」
☆
帰りは音速は出せなかったな。
戦闘が行われていない、エルミール王国の旗が立っている
勝ったのか、降伏したのか?
「リン、居るか?」
「伯爵、お帰りでしたか?」
「どうなった?」
「8時に降伏勧告をして9時に降伏受諾、正規兵12万余りの奴隷落ちも既に
終わっており、本日12時にギラン共和国も条件付きで降伏したと報告が
ありました」
「そうか、ついにアルベルト陛下の大陸統一か!」
「条件とは?」
「軍の解散と全面的な武装解除を認める代わりに
国王の命1つで全てを忘れて、即時停戦と緊急の食料援助です」
国王の首1つで全てチャラか?
実害はないわけだし、それで十分かも知れないな。
食料不足に加えて、別働隊の攻撃と大国ベガの敗北が効いたようだな。
ついにヴォルホルにも平和が来たか。
まさに、真っ白に燃え尽きたという心境だ。
297億と金貨20枚




