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音速異世界爆走記  作者: 風間サトシ
第四章
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第七十七話:ベガ侵攻劇


 不作とは怖い物です、範囲が小さければ

他の地域から補給できるが、範囲が広いと手の打ちようがない

備蓄食料というのは重要なんだろう。



 俺たちがカノープスの王都カエルムを実効支配して2週間が経過した所で

食料を補給してきたライラ伯の部隊に後を任せて、人のいない街を通過して

現在、ベガ王国で2番目の都市とも言われる

サンデの街の南10キロの所まで来ている。


「あれはギラン共和国軍と戦っているようだな?」

「そうですね、ギラン軍は35万といった所でしょうか?」


 

「ここの兵数はどの程度と見る?」

「街の規模はエトワールより大きいですので、人口70万程度だとすると    

常備兵だけでも6万以上いるはずです」


「見た感じだと互角に見えるが?」

「ベガの方が押してますね。ギラン側の陣形がかなり崩れています」

「われの見たところではギランとやらの陣形が持つのは、4日だな」

「カナデは、そんなのがわかるのか?」

「当たり前じゃ」

   

  

 そうなのか? よく見ているな

35万を押し返すとなると、ベガ王国側は40万以上いるのか?



「リン、東部3カ国の現在の状況は?」

「カノープスはライラ伯率いる25万が駐留、南よりメルン川をアレク達率いる

部隊を含め兵員10万、船が250隻で北上中、アリス王国では暴動等は発生せず

国民全てがベガ王国へ移動した模様です。現在は王国軍25万が駐留中です」


 決戦は内陸国のベガ王国になったか? 海上封鎖されていてはアリス王国も

食糧不足でベガ王国へ逃げたか、市民も連れて逃げるとは

まともな王様のようだな。



「他の地域の戦況は入っているか?」

「オリオンに来襲した敵は持久戦に持ち込み、突撃を何度かしてきたようですが

10日で降伏、ベガのクラノス侵攻部隊は、王都アリシアより15万の増援を受け合計

25万で敵兵20万と未だに交戦中です」


 ベガの兵は食料をある程度持っていたという事か

アリス王国は50万いたはずだよな。


 

「アリス王国に駐留していた海軍はどうした?」

「ドラロン20隻とマグロン200隻がギラン共和国の王都へ、ドラロン30隻

クジロン180隻がメルン川を南下中との事です」


 ベガへの海上戦力は兵数にして20万を超える程度か?

 ドラロンとサメロンがいるから、メルン川沿いにあるベガの王都ケトウスの

攻略は問題ないだろうな、ここサンデの街も川沿いだ、魔道砲で狙えるだろう。


    

 防御重視なら丘の上辺りに街を作るだろうが、大都市となると流通の問題が

あるから、どうしても海か大河の側に造ってしまうんだよな。



「戦争に参加しないのなら、撤退したほうがよいのではないか?」  

「そうだな、リン見ていても仕方ない、ドラロン、クジロンは大型船だ

大河とはいえ速度は半分も出せないはずだ、俺たちはクラノスの援軍に行くぞ」

「わかりました」



 ダリル伯が防衛しているんだし、負けるとも思えないが

トーラスが抜かれたら、ミランそしてユミルも危ない。





「伯爵、今夜はハンバーガー食べ放題の日ですね」

「そうだな」


 カノープス王国の惨状を見て動揺した所で、特製ハンバーガーは3日に1回と

約束させたが、そのせいかみんな『食べ放題の日』なんて勝手に名前を

つけて、昼飯を抜いてまで夕飯に備えている有様だ。


 明日にはクラノスに着くというのに。


「よし、今日はここで野営だ」


 ここは前にスピカ王国へ行くときに通った事がある

クラノスまで60キロ程度だろう?


「飯だ!」

「昼から食べてないからな」

  

「俺はこの為に朝飯から抜いてるぜ」

「俺は今日は12個は行くぞ」

「私も10個はいけるわ」

   

 一体何の自慢大会だ、この食いしんぼ共め

今日はフライドポテトをつけて、個数減少に誘導するか?


「よし、今日はポテトをおまけに付けるぞ」

「感謝です!」

「なんでも来いです」


「受け取ったら、5秒以内に列から離れろよ」

「「「はい」」」


 現金なやつらだ、また2時間調理係か。


「伯爵、手がしびれてきました」

「パンを渡しているだけだろう?」

 

「男の人は背が高いから、渡すのが疲れるんですよ」

「仕方ないだろう、リンが女性兵士に配給をして欲しいという

バカげた要望を受け入れてしまったんだから」            


「それは、そうなんですけど……」

「机に列べている俺も疲れるんだぞ」

「はーい」


 一度に20個購入して、魔法の鞄の中に直接放り込んで

左手で鞄の端を持って机の上に落としていく作業は中々に疲れる

右手のスマホで注文出来なかったら大変な作業だ。


 ポテトをつけるのはもう辞めよう、手が痙攣を起こしそうだ

机に列べる作業を他の人間にやってもらいたかったが

俺が鞄に触れていないと、魔法の鞄に放り込む作業が出来なかったからな。


   


「終わりましたね」

「私たちも食べましょう」

「われは20個はいけるぞ」

「ジョゼも頑張ってくれたな」


「部下だけにやらせる訳にはいきませんから」

「さすがです、連隊長」

「そうです、男どもときたら」

「トム連隊長は7回来てたわね」

「クラリス連隊長も6回来てたわよ」

 

「あの無表情な顔で手だけ出されると、ちょっと怖いわね」

「あれでも連隊内では、意思疎通が出来てるそうよ」

「とても真似できないわ、ジョゼ連隊長の部下で良かったわ」

   

 みんな女の子だな、おしゃべりが好きだな。


「ところで伯爵の鞄の中身は、容量も凄いし、中身も冷えないんですね」

「そうだな、完全な時間停止状態だ」


「そんな魔法の鞄は聞いた事もありませんが?」

「ダンジョンの宝箱から出た品だからな、連隊長の鞄とは違うんだよ」

「そうなんですか」


 ハンバーガーが500万個以上も入って、時間停止なんていう鞄があったら

星金貨10万枚はするだろうな。


 この食費は本当に経費で落ちるんだろうか? カナデ以外を船に残してきて

正解だったな、連れてきていたら疑われていた所だ。



 これはテルテル坊主でも作らないと不味いレベルだな。


「今日も雨じゃの」

「今年は作物は壊滅的な打撃だな」


「伯爵、偵察部隊が前方5キロに敵部隊を発見しました」

「敵の数は?」


「どうやらテントを張って休憩を取っているようで

正確な数は不明ですが、テントの数から推測すると6万以上はいるかと」


「リン、連隊長に通達、9時20分ちょうどに魔法師による一斉攻撃を仕掛ける」

「了解です」


 時計を売っておいて良かった。


 

「3,2,1撃て」

「【アクアフラッシュ】24連」

「【アストラルブリッツ】」

「「「【ウインドアロー】」」」

「「【ダークアロー】」」


 こんな所でお昼寝とは、バカなやつらだ。

      

 これはボーナスタイムだな、本当に寝てやがった

ここで6万削れるのは大きい。


「敵が北へ逃亡を開始しました」

「クラノス近辺に本隊がいるんじゃないのか?」


「追撃だ!」


「【アクアフラッシュ】12連」

「【アストラルブリッツ】」


 反撃してこないな、何故だ?


「敵が四散しました。大隊で分かれたと思われます」

「ここまででいいだろう」


 だいたい4万程度は討ち取れたか?



「クラノスは強奪依頼だな」

「エルミール王国旗が揚がっていますね」

「ダリル伯に会っていくか?」



 方面指揮官になると簡単に会えないのか? 不便な物だ。


 帰ろうかな。


「カズマさん、久しぶりですね」

「ダリルさんもお久しぶりです」

「ガリア大陸に行っていたとか?」

「い、一応見聞を広めるために」


「こちらは3週間以上の魔法の撃ち合いで魔力が切れていた所です」

「こちらへ来る途中で6万ほど休んでいたので、4万程度倒してきましたよ」

 

「それはありがたい、敵も魔力切れで休んでいたんでしょう

これでクラノス周辺は安泰です」

「それは良かった」


 あいつら魔力切れで休んでいたのか、普通テント張って休むか?


「しかし、敵の攻撃は苛烈を極め、休む暇も無く続いたので

我らも8万程度の損害を出してしまいましたので、痛み分けですね」


 30パーセント近くやられたんじゃ、すぐに進撃とは行かないな。


「現在、ベガ王国の王都ケトウスの情勢は不明ですが、サンデではベガとギランが

40万規模の戦闘中です」


「我らも体勢を整えたら向かいますよ」

「わかりました、我々は明日ベガに戻ります」


 よく知らない街の防衛なんて、やはり損な役回りかも知れないな

当面は北と南の部隊が動かないと陸上部隊は我々だけか。




 雨の中いったり来たり、俺たちは何やってんだろうか。

 カナデが4日で崩れると言っていたから、その後に戻るか?  

          

「今日も来た来たハンバーガーの日……」

「このうっとおしい雨も特製ハンバーガー様の前には霞むぜ」


 期待してもらって嬉しいが、困ったもんだ。


「今日の食糧班のヘルプはタチアナの部隊か?」

「はい、みんな期待しているので頑張らないと」



 他の有名店のハンバーガーもあるが1個10ドルするんだよな          

ダブル・ダブルを一度食べたらマックじゃ物足りないだろうし。


「受け渡しを開始するぞ」

「「「はい」」」


「並んで下さいね」

「任せとけ」


 慣れてきたのか2時間は切るようになってきたな

俺は2個あれば十分だが、7回並ぶヤツの気持ちが理解できんな。


 昨日でカナデの予言した4日だから、到着予定の明日の昼頃にはギランの

連中は追撃を受けているか、船で逃げているかのどちらかになる訳か?



 

 今日は珍しく晴れているな

雨も降りそうにない、久しぶり新生ラウス隊の本領発揮だな。


「伯爵、総員準備が整いました」

「では進軍しようか」



 

 サンデの街の周辺にいる軍はベガの部隊が少数か、ギランの軍は逃げたか?

 さて、減っていたとしても30万はいるよな

どこから手をつけるか、陸上部隊が来るのを待つか?


「伯爵、アレクの部隊から伝令です」

「通してくれ」


「報告します。昨日メルン川で戦闘中の艦船を2千隻以上の撃破に成功

アレク連隊はサンデの港を徹底的に破壊したのち、ギラン共和国の沿岸部に

攻撃を加えに向かいました」

   

 2千というと、ギランの船とベガの船の両方という事か?

「船の船籍はわかるか?」

「それが雨でしたので、大型船が600以上に中型船が千5百隻以上との報告が

観測員から上がっております」


 大型船はベガ王国だな、ギランはベガとの戦闘で5百隻減らされたのか

それともすでに5百隻以上退避していたのか?


「わかった、戻ってくる予定は聞いているか?」

「失敗しても明日の朝8時にはサンデに戻ってくるそうです。加えて報告が

あります。南のライラ伯の部隊も明日の朝に到着予定です」

 


 ライラ伯は美味しい所に必ず現れるな、問題はアレク達だな

大河と言っても長江のような川幅ではない、広い所で8キロ、狭い所で

6百メートル程度だからな。


「伝令ご苦労。食糧班から食事と酒を受け取って休んでくれ」

「ありがとうございます」

           

 追撃戦だとすると、船に全員乗せないで出航したとしても1隻300人以上乗って

いるとすると、20万近くは削れたか。


 北に馬で8日の位置にあるというケトウスの状況が判らないが

ドラロンを主力とした艦隊なら海戦では負けないだろう、問題は転移者だな。


        

「みんな状況が変わった、10キロ西へ戻って本日は休憩にする」

「やったぜ、休暇だな」

「酒でも飲むか」


「よし、明日はライラ伯の部隊と合流する、合流中はハンバーガーは出せないので

本日は特製ハンバーガーを出すぞ」


「やったな」

「休暇の上にご馳走か」



 戦術的にはライラ伯の部隊と合流して、サメロン砲で砲撃だよな

しかしサンデにはどの程度の市民がいるんだろうな?



「我らが単独行動時以外は出せないメニューだ、味わって食べろ」

「「「オー」」」


 こいつら軽いな。

「今日はユリアンの部隊が当番か?」

「女性の連隊長の部隊にだけやらせるのは問題があると

部下から指摘されまして」

「それも、そうだな」

          

 今日は1時間半で終わったな、新記録だ

俺はなんと戦っているのか、わからなくなってきたな。



 決戦の日だというのに、小雨ですか?


 

「バーン」

「ドカーン」

 なんだこの音は?



「リリーナどうした、この音は?」

「どうやらサメロンの砲撃が始まったようです」

「俺はまだ命令してないぞ」

「ライラ伯の命令ではないでしょうか?」


「ベガでの指揮権は俺に一任するという通達が伝わっているはずだが?」

「わかりません」


「とにかく、発光弾を打ち上げて砲撃を辞めさせろ」

「はい」


 やっとやんだか、30分は砲撃が続いたな。

          

 全く何やってくれてんだか、ベリアス、カノープスと任されて

増長しているのか?


「おいそこの兵士、今回の砲撃の命令を下したのは誰だ?」

「……ライラ伯ですが」

 やはりライラ伯だったか。



「ライラ伯、ベガでの総指揮は私にあると通達が伝わっているはずですが?」

「知りませんでしたわ、うちの伝令員にきつく言っておきます」

 

 この女狐め、白々しいぞ。

「とにかく、降伏勧告を先に行います」

「そんなに手ぬるい方法でよろしいので?」

「敵は主力を失っていますし、市民の数も軽く100万を超えていますので」

「承知致しましたわ」


 まったく、リンの気持ちが少し理解できたぞ、違った意味で。


「リン、降伏勧告だ。期限は本日のお昼までだ」

「期限を過ぎた場合は?」

「先ほどの砲撃を夜まで続けると言ってくれ」

「市民が多数いると思われますが」

「だらだらやっていると、ライラ伯に指揮権を奪われるぞ

それでもいいなら、明日まで待つが」


「降伏勧告をすぐにしてきます」



 11時半か、まさか戦う気か?

 こちらは我らが6万、ライラ伯が10万だが、川沿いに陣を張っている

砲火の中を突撃してくるつもりか?


    

『我らサンデ市民はエルミール王国軍に全面降伏する旨をここに伝える』


 やっと降伏したか、市民を巻き添えにせずに済んで助かったな。



「我らの要求は正規兵の奴隷落ち、市民の暴動の禁止だ、もし破った場合は

今後ベガ王国内では一切の投降及び降伏を許さない」


 悩むか、自分達だけではないからな、実質ベガ王国の市民を奴隷落ちか

皆殺しにすると言っているような物だ、無条件降伏だからな。


「1時間だけ再度、考慮する時間を与える」


「ミッターマイヤー伯、そんな生ぬるい方法でよろしいので?」

「いいんですよ、心を折れれば十分ですからね」


 俺に落ち度があったら、ベガでの指揮権も自分に任せるように王都へ連絡

するつもりか? こういう人間はいずれ反乱を起こすんだよな。



「協議の結果、降伏を全面的に受け入れる事になりました

サンデ市民500万には寛大な処遇を約束して頂きたい」


 カノープスからの難民の半数以上はここに来てるのか。


「わかりました、我々は次にあなた方の王都へ攻め込みます、降伏勧告は事前に

行う予定ですが、覚悟はしておいて下さい」


「わかりました、王都も我ら同様に食料がかなり減っているでしょう

穏便に対応して頂ければ、降伏するはずです」


 転移者が穏便に降伏するとは思えないが。


「わかりました、正規兵を外に出して下さい」

「……それは」

「我々がサンデの中へ入ったら、人数的に不利になります

正規兵の奴隷落ちと市民の武装解除は絶対条件です」


「……わかりました」



 やっとサンデ攻略が終わったか、次は王都か

きっとアリスの避難民を合わせると、市民だけで1千万はいるんだろうな。


 気が重いな。


423億と金貨20枚


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