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音速異世界爆走記  作者: 風間サトシ
第四章
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第七十六話:ハンバーガーフィーバー


 我慢比べに負けたのは東方の国々だった

3月から雨が続き、小麦の収穫が通年の2割ほどという噂が

流れている、7月の末についにアリス、ベガ、カノープスに加え

ギラン共和国までも一斉に動き出した。



「フレイヤ、食料の補給状況はどうなっている?」

「大陸西側は去年より4割減程度ですが、旧帝国、トーラスは全滅でスピカは

去年の9割減という報告がありましたので、軍で小麦を輸送しております」


 

「輸出はおろか、自分たちの食べる分もない訳か」

 

「現在、民間での穀物の輸出規制をかけており

実質的に食料の流通が止まっています」


 飢えは反乱の最大の要因になりうるが、敵国に食料がないんだ

反乱覚悟で流通を止めたか?



「リン、敵の進撃目標は?」

「確認した分だけですと、アリス王国は10万が帝国領へ、ベガが20万をトーラス領に

カノープスが20万をベリアス領に進軍中とあります」

       

 アリス王国は我らの部隊がいるから少ないとして、他の国も半分以下か。


「ギラン共和国の様子はわかるか?」

「メルン川の上に中型船2千隻以上を並べて、静観中という事です」


 2千隻というと、40万以上をいつでも上陸させる用意があると

いう事か、メルン川か? 過去の大国の名前がよほど好きらしい。


     

「リン、王都からの連絡があったそうだが?」

「はい、民間向けの食料はオリオン、クラノスにしか送らず

敵の補給線を伸ばせとの伝達です」


 オリオン、クラノスともにかなり西よりの都市だ

そうなると東部の街は貯蓄分だけで耐えろという事か?


 これも戦争だ、仕方ないか。

 

「わかった、リン、12個連隊でベリアスのグラナダに先発してくれ」

「伯爵はどうされます?」

「アレクとロディを連れて、海路で向かう」


「了解しました、明日の朝出発致します」

           

 雨が戦局を左右する事になるとはな

キャンベルの自信作の出来を見てみるか。




しかし速いが、曲がらない、居住スペースがないときたか。

「キャンベル、もう少し余裕を見て造れなかったのか?」


「前部は魔道砲の発射装置、後部は風魔法の魔道具で小部屋6つ

用意出来ただけでも上出来じゃ」

    

 全長30メートルはありそうな射出装置と、後部のエンジン的な魔道具も

20メートルはあるな、居住スペースは家1軒程度だな。


「なんでこんなに細長いんだ?」

「魔道砲を発射する時にわかるわ」


 全長60メートルで輸送できる兵士は乗組員を除くと20人か

完全に戦闘艦だな。



 

「左前方に敵船を発見、数は大型船60、中型船が100以上です」


 敵の別働隊か? こちらはマグロン50にサメロン46だ

分が悪いか。 


「サメロン6隻で大型船を叩く、中型船は任せたぞ」

「爺さん、大丈夫なのか?」


「サメロンの力を思い知らせてやるわ」

  

「敵船、距離800メートル!」

「サメロン砲1番、4番撃ち方始め!」


 なんていう衝撃だ、地震にしたら震度8以上だな。

     

「大型船撃破確認」

「続けて、2番、3番撃ち方始め」


「キャンベル、一斉射撃はできないのか?」

「バカもん、そんな事をしたら衝撃で海に投げ出されるわ」


 15分で片づいたか、威力だけは確かなようだな。

        

「わしらも逃げ出した中型船を追いかけるぞ」

「お頭、いきますぜ」


 お前らは海賊か?


 兵員輸送が目的なら4万程度叩けた事になる、幸先がいいな。




 散々な舟旅だったな、やはり陸の方がいいな。


「リン、騒がしいが敵襲か?」


「白鴎での敵の索敵報告によると、敵の総数は約90万以上で

馬で東に1日の距離まで進軍してきているそうです」


「確か、カノープスは全軍で50万程度じゃないのか?」

「どうやら食糧問題は、我々が考えていた以上に深刻なようです

民兵も動員したんでしょう?」


「ライラ伯が指揮官だったよな?」

「本日中にグラナダを放棄して、西へ撤退するとの事です」

「市民はどうするんだ?」


 

「残念ながら置いていくそうです……」

「食料はあるのか?」

「すでに本国以外は配給制なので、3日も持たないでしょう」

「仕方ない、総指揮官の決めた事だ」


「……しかし」

                   

「戦闘がないなら、移動して野営にしよう」

「……誠に申し訳ありません、食料が残り2日分しかありません」


「どうした? 2週間分は持っていったはずだが」

「……市民の惨状を見かねて、大事な食料を提供してしまいました」

  

 リンは優しいな、ライラ伯のようにはなれなかったか

俺が陸上部隊に合流して正解だったな。


「気にするな、魔法の鞄に食料はある」

「申し訳ありません……」


 泣くなよ指揮官が、リンも女の子という事か。



「ライラ伯、それでは撤退しましょうか?」

「そうね、安心して武器庫に食料は置いてきたから」


「そうでしたか」

「ベリアスで回収した軽めの毒薬を振りかけた物だけど」

       

 美人でも女は怖いな、俺の部下じゃ無くて良かったぜ。


「私はライラ伯の部隊とは別行動がよろしいかと思います」

「あら、嫌われちゃったかしら?」

 リンとは合いそうもないよな

可愛い部下の為だ、気持ちを汲んでやるか。


「ライラ伯、我々の方が機動力があるので、少し北よりに移動して

敵の行動を監視しますよ」


「そうですか、それならお任せしますわ」

            


 行ったか、兵数30万程度だな、どこまで撤退するんだろうか?

「伯爵、申し訳ありません」

「気にするな、人には相性という物がある」


「北西に20キロ行った所で野営するぞ」

「はい」



 

「残念だが、今日はパスタだ」

「伯爵、最近は固いパンだったんで、ご馳走ですよ」

「ユリアン、そんなに固いパンばかりだったのか?」


「(ここへ来るまでは普通のパンだったんですが

リンが食料を交換しちゃったんですよ)」

          

 これは戦争に勝っても恨まれそうだな。


 6万人分で、菓子をつけて1食、星金貨6枚か?

 バルバラが出発する前にパスタとソースのセットを80億セット

要求してきたが、売り切れるのか?


 食品に星金貨50万枚とは、博打うちだよな。


 


            

朝か、今日も雨なのか? これは米も危ないな。


「リリーナが当番か?」

「はい、リンを休ませるのが大変でしたよ」

 責任を感じてるんだろう。


「様子はどうだ?」

「街の東、ラウス隊で20分程度の距離まで来ているようです」

 ラウス隊だと30キロ弱といった所か。


「夜にはグラナダに入りそうだな?」

「それが、歩兵なんですが、進軍速度が異常に速いらしく

昼前には着くとの事です」


 もはや走っている状態に近いのか、荷物はないんだろうか?



 敵の監視任務なんていう、つまらない役を引き受けてしまったな

敵は街に入ったようだが、そのまま動かないし。


「よし、北へ10キロ移動して食事にしよう」

 

「伯爵、今日の夕飯は何ですか?」

「そうだな、奮発して熱々のキングバーガーを1人3個にワインを

1人1本つけよう」

「戦場で熱々のパンと肉ですか? 最高です!」

        

ダブル・ダブルのハンバーガーが18万個で星金貨7枚にワインか


「熱いから受け取ったら、すぐに離れて食べろ、ワインは食料班から受け取れ」


「チーズとソースが滅茶苦茶、美味いです」

「レタスとトマトも美味しいですよ」

「毎食、これでお願いします」


 やはりパンのほうが好みのようだな、熱くなくていいなら

毎回これでもいいんだが、俺の手間がかかりすぎる。



 しかし雨にも困ったもんだな、こんなに降り続くのは

こちらへ転移して初めてだな。


「今朝はサンドイッチか、残念」

「みんな贅沢よ」

「獣人は腹が減るんだよ」

「困った人たちね」



 敵が動かないな、グラナダを占領して満足したという事はあるまい

まさか更に増援が来るのか?



「今日はクラリスが当番か?」

「はい」


 あいかわらず口調が冷たいな。

「昨日の食事は量が多くなかったか?」

「いえ、あの倍はあっても食べられます」

「クラリスは食いしんぼさんだな!」


 ダメだ、間がもたないぞ。

「敵は街から出たか?」

「偵察隊の報告では出ていません」


「雨が続くな?」

「雨は好きです」

    


 結局、今日も相手に動きはなしか

敵はこちらの15倍だ、攻め込めないしな。



「伯爵……」

「ルナか、どうした」


「(隊長がんばって)」

「(みんな期待してますよ)」

                 

「今日の晩ご飯も昨夜のハンバーガーを頂けないでしょうか?」

「ルナがお願いするなら、構わないが」


「量を増やして欲しいな!」

「ルナはそんなに食べられるのか?」

「昨日の倍くらいなら、なんとかいけます」


 部下に頼まれて、断れなかったようだな

別に無理して食べるものでもないんだが。


「わかった、冷めるから1回に2個ずつ渡すから

欲しいやつは何回でも並べ。その代わり絶対残すなよ」


「はい、ありがとうございます」


 ルナのかわいさに負けて、また調理班に編入か。         

            

 

 敵が動かないなら、明日だな。


「いいか、一度に2個だ、それ以上欲しいやつは

食べ終わったら、列の後ろに再び列べ」


 忙しいな、そういえばこいつら、どの程度食べるんだ

ドーラでさえ、俺の3倍食べていたしな。


「ほら、もたもたしてないで、受け取ったらすぐに離れろ」

「貴様、もう5回目じゃないのか?」

「伯爵が何度でもいいと、言ったじゃありませんか」

「仕方ないな」



 疲れたな、60人ヘルプがいるとはいえ、受け渡しだけで2時間か。

 1億9千万も減ってやがる、あいつら8個も食べたのか。



「伯爵、グラナダの街で煙りが見えますが?」

「夜はラウス隊の動きも鈍い、明日様子を見に行こう」


 たき火で暖を取るほど寒くはないはずだが、何やってるんだ?



 雨だが仕方ない、進軍するか。


「全軍、街の様子を見に行くぞ、敵が3万以上でてきたら撤退だ」

「「「はい」」」



 敵が出てこないな、まさか全軍で休息中か?


「伯爵、街が燃えていますね」

「住民と揉めたか?」


 小雨だから、延焼はしていないが。


 兵の姿が見えないな、街の東方面も監視していたから

大規模な撤退なら気がつくはずなんだが。


「報告します、敵兵多数が倒れています」

 毒入りの食料に手を出したか。


「大隊単位で街の調査を行え」

「はい」



 馬はライラ伯が連れて行ったが、動物がまったくいないな

たった2日でゴーストタウンだな。



「伯爵、市民の生き残りに話を聞いた所、敵が来襲して武器庫の食料を

見つけて食べた所、夜半に次々と兵士が倒れ、それを市民の仕業として

街の住民を殺しまくった上に火をかけたそうです」


「敵兵の数は?」

「死亡数はわかりませんが、まともに動けるのは2千もいないかと」


 そんなに腹が減っていたのか、確かに不作で港や船も襲っているから

魚も捕れないだろうが。



「伯爵、敵兵よりカノープスの内情を知る事が出来ました」

「よく、しゃべったな?」

「パンを渡したら、喜んでしゃべってくれましたよ」

「それで」


「国内の小麦は全滅で、備蓄用の穀物が1ヶ月分を切った所で

今回の軍事行動を起こしたとの事です。加えて飼料もないので

家畜もほとんど食べ尽くした模様です」


 8割減と聞いていたが、小麦は全滅か?


「敵兵を殺して、1カ所に集めろ」

「伯爵、敵兵は腐敗が激しく、我らが病気にかかる可能性があります」


 ベリアスの薬品は副作用までありか。


「仕方ない、生き残った市民に食料を2週間分渡して、王都へ向かわせろ」

「食料がそんなにありませんが?」

「俺がパンを用意する」


       


 生き残りは4万程度か、食パンを14袋で我慢してもらおう。


「敵兵の殲滅作業が終了しました」

「早かったな?」

「敵は動く気力もないようで、訓練以下でしたね」


「グラナダは放棄する、我らはカノープスへ向かうぞ

アレク達とライラ伯に白鴎で伝令を送っておけ」

「了解」


 食料を求めて農業国のベリアスに来たのだろうが、運が無かったな。


 


 

 荒廃した街だな、大きさはエトワールの3倍はありそうだが。

「リン、ここがカノープスの王都なのか?」


「はい、王都カエルムのはずですが……」

「とにかく調査だ」

「はい」



 これはグラナダと同じような状態か

今回は毒は関係ないが、かなりの建物が打ち壊されている

市民による暴動が起きたと考えるべきか。



「伯爵、子供が居たので、少々曖昧ですが話を聞けました」

「大人はいないのか?」

「見当たりませんね」


「何と言っていた?」

「軍がベリアスに向かってすぐに、貴族の備蓄用の食料を狙って一斉蜂起

食料も半月分程度しかなかったので、かなりの備蓄があると噂のベガ王国へ

住民が移動したと言っています」


 ベガは大国で港もないから備蓄が我が国と同じように多いのだろう

しかしカノープス市民のほとんどがベガに向かったか?


         

「伯爵、国庫を調べましたが、何も残っておりません」

 暴動は怖いな、みんな持っていったか?


 

「生きている老人のグループを発見しました」

「話を聞こう、連れてきてくれ」


 

 みんな痩せているな、食べてないのか?

「情報を提供してくれるなら食料を分けるが、どうする?」

「お願いします」


 150名程度か

「サンドイッチを450個ほど渡してやれ」

「はい」


「おお、パンだ」

「野菜と肉も入っているぞ」



 まだ食べれるという顔をしてるが、一応話せる程度には回復したな。

「ではここ数ヶ月の様子を話してもらおう。報酬は食料だ」

   

「はい、3ヶ月前に今年の麦は危ないと噂が流れ始め、配給制に移行しましたが 

7月になってみれば麦は全滅。備蓄用食料も既に有力者達によって

消費されており、2か月も持たない状態と発覚しました」


「それで反乱を起こしたのか?」


「はい、各街より備蓄用の食料を求めてカエルムに住民が集まり

40万程度は豊作と噂のベリアスの侵攻に随伴しましたが、その3日後に

残りの市民800万による一斉蜂起が起きて……」


「老人と子供を残して、財宝を奪ってベガへ移動した訳だな」

「……そうなります」


「現在のカノープスの兵力は?」

「近衛隊以外の全兵士はベリアス侵攻に向かい、国内には兵士はいません」


 情報が伝わるのは兵士の方が早いからな、先にベガに向かったか

ベリアス侵攻に命を賭けたかのどちらかだろうな?



「話はわかった、街の生き残りはどの程度いる?」

「たぶん、老人と少年を中心に千人ほどかと」

 

 小さい子供は死んだという事か。


「千人が1ヶ月程度、食いつなげる食料を置いていく。計画的に食べろよ」

「ありがとうございます」



 どうするか? 俺たちが一番に来たようだし

適当に報告しておくか。


「ジョゼ、王都へ白鴎便でカノープスの王都を占領したと報告してくれ」

「戦っていませんが、よろしいので?」

「気にするな、判断は王都でするだろう」

「はい、すぐに文書にまとめます」



 2年連続で豊作だったエルミールでも備蓄食料は1年分程度だ

ベガ王国にどの程度の備蓄用の食料があるのか?


 ギランがここにいないと言う事は、あいつらもベガの食料が目当てか?


残高:445億と金貨20枚


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