第七十四話:スキルレベル10
誰に味方するか、出会い、偶然、運命と色々あるが
一度定めてしまうと、なかなか変えられないものです。
☆
2人目の転移者を倒してエトワールへ帰ってきて
ペコのお告げを聞き、テンションも盛り上がってきた所で新年の4日に仕事に
出れば、すでに北の大部隊50万がアリス王国へ進撃を開始したという報告だ
どうやら新年会の時点で既に進軍を開始していたらしい。
「リン、どうする?」
「オリオンの部隊はすでにアリス王国領内へ進撃を開始、戦闘中の模様です
我々は2日前に出発したダリル伯と共同作戦がよろしいかと」
「トーラスの兵数は?」
「確定ではありませんが、我らとの戦争に加え、クレタで10万を失い
2度の帝国攻めでの兵の減少は著しく、正規兵は6万程度かと」
「単独では自国も守れないか?」
「キャロルとトムの力を見るのは初めてだが期待しよう、11個連隊出撃」
「「了解」」
「指揮はリンに任せるので、思う存分やってくれ」
「はい」
アリス王国は援軍を遅れないし、スピカも南に20万いると考えると
ベガ王国あたりが妥当だが、アリス王国を優先するし、後ろも心配だろう。
「ダテ君、わたしのお告げはなんと5千人よ、参っちゃう」
「俺は8千人だぞ、まだましだと思うが」
「ダテ君も試練だったんだ?」
「2人で1万3千となると、敵兵が2万はいないと試練が達成できないわね」
「そうなるな、敵が6万では取り合いになるな」
「先に行って叩かない、味方も楽できるし」
「そうだな、そうするか」
☆
兵数18万といった所か、あの旗はスピカ王国だな
律儀に兵を12万以上送ってきたか、他人の連帯保証人になる時は
気をつけろと教わらなかったのか?
「カナデとフランは、どうする?」
「付き合ってあげるわ」
「我も地獄を見せてやろう」
ダリル伯が到着するのに2日といった所か。
「王都クラノスの南に展開している騎馬部隊を叩く」
「何故、騎馬部隊なの?」
「試練の条件は敵対する生物だ、馬も含まれるだろう」
「考えつかなかったわ」
リンが戦い易くなるしな。
「行くぞ」
「【アクアフラッシュ】12連」
「【炎獄】」
「【ダークネーベル】」
「【アストラルブリッツ】」
凄まじいな、フラン以外は射程の概念が無いのか
闇の霧も移動する分、かなり巻き込むが。
「来た!」
「どうしたの?」
「『魔力操作』がレベル10になったんだよ」
「なんだ、今頃なの?」
「サクラ、苦労したんだぞ」
最初から魔法スキルもらったやつはレベル10からスタートだからいいよな。
「やったわ試練クリアよ」
「俺もクリアしたぞ」
敵が弱く感じるな、射程の違う武器での撃ち合いは
ある意味、反則だと思うが。
「お主ら、まだやるのか?」
「どうした?」
「敵は撤退しておるぞ、10万は死んだのではないか?」
「6時間も戦っていたか」
「わたしは90よ」
「私は87ね」
「俺が86だな」
みんな上がったか、スピカの守りは薄いという事か。
「アカネの子供を置いていくので、みんなゆっくり休んでくれ」
「ダテ君はどうするの?」
「南の様子を見てくるよ」
「アオイ行くぞ」
お宝タイムだ、スピカはどの程度もってるかな?
炎だと、スピカの王都、スピカが燃えてるぞ
あの旗はエルミールの軍勢か、おれの至福の時間を奪いおって。
仕方ない、頭を切り替えて刀スキルのレベル10を目指すか?
「どけどけ、邪魔するやつは斬る」
「敵は1人だぞ」
日本で備前とか収納したかったが、警備が厳重でダメだったからな
せめてカリムの作った刀で斬ってやろう、痛みだけで済むだろう。
魔法と違って1人ずつ斬るから、効率が悪いな
一撃で3人位斬れない物だろうか?
「下がれ、殺されるぞ」
「死にたくない」
死にたくないなら戦場に来るなよ、俺たちが攻めてるんだが。
カウントしてはいないが、刀で2千は斬ったはずだが
なかなか武器スキルは判定がシビアだな。
「伯爵ではありませんか?」
「ニケか? スピカ攻めか?」
「シャルはグラナダで待機ですが、アレクと私はスピカ攻めです」
「頑張れよ」
「伯爵、血まみれですよ」
「あと5千ほど斬ったら休憩するよ」
斬りまくったぜ、俺の感ではあと千も斬れば、上がりそうなんだが。
レベルは87になったが、敵は投降してしまったし、武器スキルは明日だな。
京都で買った羽織が返り血で、もはや元の色がわからないな。
「ニケ、スピカの兵はどの程度倒した?」
「ベリアスの海岸線に誘い込み、ドラロン6隻で5万程度倒し、崩れた所を追撃
しながら、スピカまで攻め込みました。15万は倒したかと」
乱戦状態のまま、追撃か?
敵の扱いをどうするかだが、その辺は指令官に任せるか?
「こっちの指令官は誰だ?」
「カノープス方面がライラ伯、スピカがサイモン伯です」
会っても仕方ないし、俺は退散するか。
「俺は戻るから、トーラスでスピカ兵を12万叩いたと、報告しておいてくれ」
「戻ってしまうんですか?」
「他の諸侯の指揮下には入りたくないからな。頑張れよ」
☆
アオイが夜休憩に入ったんで、もう8時か。
リンの部隊がすでに交戦しているか
ほぼ同数とはいえ、援軍を失ったショックは大きいようだな
トーラスは防戦一方で、我が軍が圧倒的に押してるな。
10時か、このへんでいいか。
「リリーナ、みんなに兵を一旦下げて休憩に入るように伝えてくれ」
「今の勢いなら、10時間も攻めれば、攻め落とせますよ」
リリーナまで冷静さを失っているとはな。
「命令だ、兵を30分以内に下げろ」
「……はい」
俺たちだけで落としても意味ないだろう、それに半日以上も休みなく
戦ったら、兵を1割以上は失うな。
「戻ってきたか」
「伯爵、納得できません」
「リン、兵をどのくらい削れた?」
「2万程度です……」
「高速ラウス隊の機動力をまったく生かせてないじゃないか?」
「しかし……」
「いいか、我ら王国の本命は東部3カ国との決戦だ、こんな前哨戦で
兵を失ったら意味がない、都市攻めは歩兵に任せるべきだ」
「失言をお許し下さい」
「構わない、リンは最大7万を指揮する立場にあるんだ
これからは戦略的に物を見て行動してくれ」
「はい」
「では各連隊から2個大隊を出して哨戒任務、それ以外は休憩に入ってくれ」
「やっと休憩だな」
「着いてすぐに戦闘に入ったからな」
「まず飯だな」
トーラスの兵もイライラしている頃だな、期待の援軍を潰されて
数時間に渡る防戦、そしてその部隊は5キロしか離れていない場所で
お食事だ、出てきてくれると助かるが。
ミランの部隊が来たか、遅かったな。
「カズマさん遅れて悪かった」
「それは攻城兵器ですか?」
「このでかぶつを運ぶのに時間がかかってな」
「敵は我々が叩いて5万程度、スピカからの援軍はないですし
残りはベガ王国の動き次第ですね」
「それはありがたい、すぐに攻撃にはいりますよ」
「工作兵、攻城兵器を固定して、投射開始だ
一般兵は半分は休憩だ」
さすがに来てすぐ突撃なんてバカな真似はしないか。
「準備完了です」
「投射開始!」
「1番~36番まで投射開始」
あれは雷弾か、命中率は低そうだが
射程は10キロといった所か。
炎弾を使わないということはクラノスを占領して、東部の備えにする予定か。
「リン、クラノスの東部に移動して逃げる兵を討ち取るぞ」
「はい」
結局夜の2時に降伏か、俺たちがいるから逃げられないし
運がなかったな。
「明日の10時まで休憩だ」
「「はい」」
アリス王国に進軍した部隊は王都あたりに着いた頃だな。
俺たちはやれる事をやるまでだ。
「リン、トーラスの東部は街が結構ある、徹底的に焼くぞ」
「焼くんですか?」
「ベガの援軍が出てくるまで徹底的にいく」
ミーナくらいの街が5つもあるか。
「我々はエルミール王国だ、降伏するなら意思を示せ」
「我らにはスピカ王国とベガ王国がついてるぞ」
「侵略者には屈服せん」
スピカはもう占領されている頃だが、まあいい。
「全軍、略奪を許可する、その後は街を焼け!」
「「「オー」」」
どうせ、ベガ王国が出てくれば、撤退するんだ
せいぜいベガに不信感を持ってもらおう。
「伯爵、5つの街と3つの村の殲滅を終了しました」
「残りは徹底的に焼き尽くせ」
「はい」
ベガ王国の兵が出てこないな。
朝になったか、自分で命令しておいてなんだが
よくここまで焼いたな。
「伯爵、ベガの兵が約8万こちらへ向かっています」
「わかった」
15万は向けてくると思ったが、以外に少ない。
「魔法の射程ぎりぎりから、機動力を生かして攻撃するぞ
決して近寄るなよ」
「了解」
「ベガ軍来ます」
「【アクアフラッシュ】12連」
「【アストラルブリッツ】」
「【炎獄】」
「【ダークネーベル】」
「「「【ウインドカッター】」」」
70万も兵を保有する国にしては弱いな
魔法師が少ないのか。
様子を見てくるか。
「サクラ、突っ込むぞ」
「えー、2人だけ?」
「危なくなったら逃げるさ」
「わらわ達はいいのか?」
「魔法で援護してくれるだけで十分だ」
「行くぞ」
突っ込むなと指示しておいて、なんだが
相手の動きが鈍すぎる。
「【ミストラルバーン】」
「【炎獄】」
斬りまくってやるぜ。
3時間経ったか、ひと当てして戻るつもりだったが
このまま勝てそうだな。
斬って斬って斬りまくる。
「来た!」
「どうしたの?」
「ついに武器スキルがレベル10だぞ」
「そうなの、一応おめでとう」
まあいい、敵は敗走か?
敵に少しダメージを与えたら帰ろうと思っていたが
タイミングを逸したな。
「少しだけ東へ進むぞ」
もうベガに入ったはずだが。
「敵兵発見」
やっとお出ましか、兵は15万といった所か
一緒に出てくればいいものを。
「私は神に選ばれし神の使いだ
貴様ら、自信があるなら、保有スキルを言ってみろ?」
そんな事を言うバカはいないだろう。
「わたしのスキルは……」
「痛いじゃない」
「サクラ、お前がそこまでバカだったとはな」
「相手は転移者よ?」
「だからだ、相手は『強奪』のスキル持ちだぞ」
「ご、強奪っていうとスキルを奪うやつ……」
「多分、そうだろうな」
「『強奪』とはなんじゃ?」
「カナデ、相手の持っているスキルを知っていれば、それを奪えるんだよ」
アリス王国に転移者がいたんだ、大国のベガにも居ると思ったが
強奪スキル持ちか、どの程度の頻度で使えるかだな。
「ちょっと俺とカナデで様子を伺ってみるよ」
「【アクアフラッシュ】12連」
「【アストラルブリッツ】」
攻撃してこないなら、このまま行くぜ。
「食らえ【ダークアロー】」
「【ホーリアロー】」
連続で別系統の魔法を撃ってくるが、そんなに脅威じゃないな。
「【アクアフラッシュ】12連」
一瞬、悪寒みたいなのを感じたが、スキルに変更はないな
ランダムで『強奪』スキルを使ってきたか。
指揮官らしいが、随分近寄ってきたな、スキルの射程が低いのか?
「所持スキルを言え!」
「バカが、言うわけないだろう」
「【ミストラルバーン】」
高位の回復魔法も使えるのか? 厄介なやつだ。
こちらは連戦で疲れている、このあたりで引くか?
「全軍撤退するぞ」
「よろしいので」
「敵の本隊は50万はいる、無理しても仕方ない」
「全軍、撤退する」
『魔力操作』もレベル10になったし、撤退の援護をするか。
「【アクアフラッシュ】24連」
敵を引き離したか、面倒なやつがいたもんだ。
「伯爵、これからどうされますか?」
「クラノスで一晩休んで、エトワールへ帰還するぞ」
「まだ戦争中ですが?」
「相手は3カ国の大国だ、一度で勝てるような相手じゃないさ
トレースとベガで20万近く打ち破ったんだ、それで十分だ」
「『強奪』スキルの事を各部隊に伝令を飛ばして、周知しておいてくれ」
「はい」
アリス王国方面はだいぶ進軍できたと思うが、長期戦だな。
残高:471億と金貨20枚




