第73話:年末のお仕事
人間同士の相性というのはあるんでしょうか?
許せない人間というのが存在するのはわかるのですが。
☆
地球での買い物、カジノツアーから帰って来てみれば
深刻な雰囲気、みんなで会議室で相談中です。
「敵兵、3万が北より迫っています」
「3週間前に国王が暗殺されたという噂が流れております」
「それで、何故エトワールに王国の兵士が攻めてくるんだ?」
「相手はモンブール伯が率いる兵が2万と諸侯の兵を合わせて3万です
どうやら陛下暗殺を閣下の仕業と主張して兵を集めた模様です」
怖い貴族は健在か、軍事行動を起こしてくれたほうがやりやすいが。
「モンブール伯とは誰だ?」
「モンフォール侯の一族で、コロナの戦いでは王国に味方して
コロナの北にある人口20万程度のジブリの領主になったはずです」
「エトワールが欲しいのか?」
「それもありますが、モンブール伯の奥方はレニエ侯の妹なので
閣下への私怨が大きいかと」
俺に恨みを果たして、更に領地を頂こうという訳か
そういうバカは始末しておいて欲しいもんだ。
「他の諸侯に動きはないのか?」
「はい、問題ありません。エトワールを通過しなければ
クレタ経由以外に大軍で南部へ行く陸路はありません」
これはエトワールに人が集まる訳だな。
「俺への私怨らしいし、俺とうちの居候で相手をするか?」
「敵は寄せ集めとはいえ、3万ですよ」
「魔道砲で援護してくれれば十分だ
危なくなったら下がるから、心配するな」
俺だけでもいいんだが、防衛となると抜かれる訳にはいかない
カナデには世話になったし、サクラとフランだけでいいか。
しかしやる気の感じられない部隊だな、数も2万を超える程度か?
「カズマ、わたしにやらせて」
「フランが率先して戦闘するとは珍しいな?」
「カズマ達がいない間に豊穣神様よりお告げがあったの
レベル81に到達するには試練を乗り越える必要があると」
「試練って何だ?」
「敵意ある生物を短時間で3千殺すことだって」
数千殺されて敵意がある生物なんて人間くらいじゃないか
あの女神の戦争好きにも呆れるな。
「全軍突撃!」
敵はやる気のようだな。
「みんな下がっててね」
「【ダークネーベル】」
黒い霧か、固まっているから一撃で200人はあの世行きか。
俺もいくか。
「【アクアフラッシュ】12連」
「【炎獄】」
「【アストラルブリッツ】」
カナデの魔法の射程と威力は桁違いだな。
「カナデ、あんまり敵を取らないで」
「そうか、手加減せねばならぬのか」
味方の魔道砲は60門といった所か、2万程度では相手にならんな。
1時間で終わったな、敵は5千以上は逃走したか
一体何しに来たんだか。
「モンブール伯ですね、ご同行願いますよ」
「離せ、この逆賊が!」
「そうですね、連れて帰っても仕方ない
ここで攻めてきた訳をしゃべってもらいましょう」
「カナデ、悪いがお願いできるか?」
「あいわかった」
「痛い……」
「われの目を見よ」
「……アリス王国の特使がミッターマイヤーを倒せば、大規模な援助を
してくれると約束してきたのだ」
ジュウゾウ君が裏で動いていたか。
「それだけ聞ければ十分だ、苦しんで死ね」
特別製の刀で斬ってやれば、こいつも少しは改心してあの世に行くだろう。
「カズマ、わたしはレベル83になったぞ」
「凄いじゃ無いか、3つも上がったか?」
「どうやら試練を超えると、またレベルが上がりやすくなるようだ」
経験値テーブルでもあるんだろうか?
「私は今年中には80になって試練を受けるわ、その時はよろしくね」
「サクラはいくつなんだ?」
「78よ」
☆
家も3週間ぶりだと、懐かしく感じるな。
「ドーラ、またシュトラウスが増えたのか?」
「お兄ちゃん、おかえりなさい」
「ここにいるのは、みーちゃんの子供だけですよ」
銀色のシュトラウスだったか。
「何羽生まれたんだ?」
「6月に全部で220羽生まれたけど、ここにいるのはアカネの子供と
みーちゃんの子供の26羽だけです」
27羽から220羽生まれたか。
「ご主人さま、おかえりなさい」
「留守の間は、ご苦労だったね」
「ミラも、海軍で大活躍です」
「兄様、私は司祭になりました」
「シャルは、出かけているのか?」
「お姉ちゃんは、ベリアスへ遠征中です」
南で戦争やってるのか、北と東は大丈夫なのか?
これは魚の煮物の匂いか
そういえば、最後に食べたのは京都のマックでハンバーガーだったな。
「旦那様、夕飯は鱈のクリームスープ煮込みです」
たらもこんな食べ方があるんだな。
「美味かったよ」
ほとんどアメリカだったから、肉が多かったからな
ハンナならラーメンも教えれば作れるかも知れないな。
「ご主人さま、王都の新年会はいかがされますか?」
「何日後だっけ?」
「もう1週間後ですよ」
女神が時間の流れが違うと言っていたが、10倍違うのか?
「王都は不穏な噂があるようだし、俺1人でいいだろう」
「気をつけて下さいね」
「ああ、顔だけ出したらすぐに退散するよ」
通りで鍋が美味い訳だ、もう12月だったか。
☆
自転車で城に行くか。
駐輪場がきちんとあるのか、全部で150台くらいあるな
『盗んだら奴隷落ち』か、効果ありそうな立て札だ。
「フレイヤ、俺がいない間の事をまとめて教えてくれるか」
「はい、では内政面から、エトワールの12才以上の領民君所持者は64万
ユミルが58万で10月の納税額がエトワールが星金貨2万2千枚で
ユミルが1万6千枚になります」
「星金貨3万8千枚とは凄いじゃ無いか」
「閣下の差別撤廃運動の賜です」
「軍事面は、5月に内戦の続くベリアスに3個連隊がドラロンとクジロンで
出撃し、6月の頭にはトーラスとアリス王国が帝国へ侵攻、条約切れを待って
我らも兵45万をもって侵攻した結果、9月には帝国も降伏致しました」
「帝国の領有権は?」
「アリス連合は兵15万程度、8月には駆逐して帝国領は全て我らの物です」
「シャル達はいつ頃戻ってくる?」
「現在は、ベリアスの平定も終わり、ベリアスの南の要衝のグラナダに兵20万
を配置して、スピカ王国とカノープス王国とのにらみ合いの状態です」
俺がいない間に快進撃だな、北はアリス王国と隣接、南はカノープスと
隣接したか、アリス王国が焦るわけだ。
「そうすると、現在の兵数は……3万7千か」
「いえ、5月に諸侯に兵数増加の命令が来たので、1個連隊を10個大隊に
編成を変更、更にユミル市民を中心に優秀な人員を3万6千を新規に雇い入れ
総勢、14個連隊で7万、守備兵が両都市に6千ずつを配置で1万2千おり
現在はエトワールに3万6千、ユミルに3万1千駐留しております」
総兵力が4万6千から8万2千か、給金払えるのか
ミラの言ってた大活躍というのはベリアスの事か。
あとはバルバラに様子を聞きに行くか?
また倉庫が増えてやがる。
「バルバラ居るか?」
「カズマさん、ようやく戻ってきてくれましたか?」
「問題でもあったのか?」
「商品が底をつきそうだったんですよ」
「今度は商品の幅が30倍以上に広がったぞ、見るか?」
「ぜひ」
「では一覧表を作りましたので、20万枚分お願いします」
「もう8時間経ったぞ、次にしないか?」
「ベリアスと帝国にも急いで出店しないといけないですし
商品が必要なんです」
「仕方ないな」
結局、まる5日かかったか、ベラが居なかったのが痛かったな。
マグロでも食べていくか?
「女将さん、赤マグロのステーキを2人前ね」
「わかったよ」
食事はサンドイッチだけだったからな。
「坊ちゃんじゃないか? 久しぶりだな」
「キャンベルか、お前も飯か?」
「船の設計図を王国へ売り渡した代金が星金貨千5百枚あるからな」
「ボロ儲けじゃないか」
「9割はエトワールの金庫の中だぞ、ボロ儲けは坊ちゃんの方だろう」
「俺の給金は月に星金貨1枚なんだよ」
「もっともらえばいいだろう、金庫の中は凄いことになっているはずだぞ」
そうだな、居候の小遣いだけで消えるからな、増やしてもらうか。
「新型艦は何隻になった?」
「軍に納めた分だけで、マグロン180隻、クジロン80隻、ドラロン16隻だ」
「随分作ったな?」
「スピカ王国から上質な木材が安く手に入ってな、コストが2割は下がったな」
内陸国だから、木材を売っても船舶での攻撃は関係ないということか。
「お待ち、赤マグロのステーキね」
結局、アメリカでもマグロは食べなかったな。
やはりマグロは正義だな、これに鰻と松茸の3点は食の頂点に君臨してるな。
「王国でも新造船を作っているのか?」
「俺の聞いた話じゃ、クジロンとドラロンを中心に作っているようだぞ」
「ドラロンは腕の良い職人が揃ってないと難しいだろう?」
「わかってるじゃねえか、その通りよ、船体にしても魔道砲にしても性能に差が
でるだろうな、王都じゃクジロンを400隻ほど作ったらしいぞ」
兵士の増員命令に大型の軍艦の作成か、大陸統一を目指しているのか?
「じゃあな、この本を渡しておく、よく読んでおいてくれ」
「なんだ、この分厚い本は?」
「空を飛ぶ船の、設計図と、その説明だよ」
「そりゃまた凄いぜ、年末年始で読破するぞ」
「女将さん、お勘定」
「小金貨1枚と銀貨6枚ね」
「値段下げたのか?」
「マグロンの水揚げだかが多くて、赤マグロの卸値が下がっているのよ」
「これで庶民でもここに通えるようになるな」
さて明日は新年会か、行かなくてもいいんだが。
朝か、一応王都に行ったという事実だけ作っておくか。
「ダテ君、準備はいい?」
「サクラも出かけるのか?」
「わたしにも昨日、招待状が来たのよ」
「つまり、おまえのスキルが必要とされているという事か」
「そうみたいね、面倒だわ」
☆
ほんとに『グライヒ』の魔法は便利だな、王都へ一瞬か。
「サクラ、衛兵が俺たちを捕縛しようとしたら、帰るぞ」
「いいの、王様に反抗して?」
「国王が俺を糾弾するというなら、俺の忠誠も終わりだ」
元旦だけあって人は並んでないが、衛兵の数が前の3倍はいるな。
「ミッターマイヤー伯爵だ、招待状はあるが、無理に入りたいとも思わない」
「どうする?」
「隊長に指示を仰ごう」
「ミッターマイヤー伯爵、失礼しました、中へどうぞ」
「すんなり通してくれたわね」
「俺たち2人は有名だからな、飲み物と食べ物には手をつけるなよ」
「まるで敵国ね」
人が増えたな、去年に比べて3カ国併合したからな
兵が増えれば、指揮官も必要という事か。
「なんか誰も話しかけてこないし、視線が痛いわ」
「そうだな、一応出席したし、帰るか?」
「爵位剥奪の発表があるかもよ」
「その時は、その時さ」
「帰るので、ドアを開けてくれないか」
「ミッターマイヤー伯爵とサクラ様ですね、宰相閣下がお呼びです」
アルトハイムさんか。
小さな部屋だな。
「カズマさん、お久しぶりですね」
「これは宰相閣下、お久しぶりでございます」
「やはり、嫌疑をかけた事を恨んでおいででしたか?」
「いえいえ、嫌疑をかけられて、兵を2万程度送られた程度……」
「あれはカズマさんに策謀を巡らせている諸侯をわざと暴発させたの
ですが、お気に召さなかったようですな」
策謀を巡らせるか、確かに返り討ちにできて楽にはなったが。
「それでご用件は?」
「陛下は大陸統一を決断された、次の目標はアリス王国で
すでにオリオンに兵50万を集結してある」
「用意周到という訳ですね」
「そこで商談だ、アリスガワを殺して頂きたい、報酬は金にはお困り
ではないようだから、カズマさんに策謀を巡らせる諸侯は今後
こちらで始末するという案では如何かな?」
「そんな約束をしてよろしいので?」
「陛下の許可は頂いております」
「生きたままの状態がお望みですか?」
「生死は問いません、その場で殺して頂いて結構です」
貴族の付き合いをしないで、不穏分子を抹殺してくれるというのは
いい案だが、アルトハイムさんが信用できるかだが。
「わかりました、最後に一度だけ陛下を信じてみましょう」
「それはありがたい、頼みますよ、少額ですが費用を用意
しましたのでお使い下さい」
「それでは吉報は手紙でお知らせします」
アルト商会での初商談並みに疲れたな。
「良かったの、あんなに敵対心丸出しで?」
「最悪は俺の手で王が替わるだけだ」
「覚悟があるならいいけど……」
「サクラ、有栖川の居場所はわかるな?」
「ちょっと待ってね……」
「北東に1120キロね」
「アリス王国か」
「早めに終わらせて雑煮でも食べよう」
「どうやって行く?」
「アオイで外に出て、そこからはバイクだな」
「バイクに乗ったことないし、2人乗りは苦手なんだけど」
「特別製だ、3時間もあればつく」
☆
ついたか、城の中にいるとは、少しは警戒心が芽生えたか。
「ダテ君、バイクが空をとぶなんて」
「特別製だって言っただろう」
「距離は?」
「北に3キロね、城の中だわ」
「サクラはここで待ってろ、最悪は車で逃げろ、その場合は例の
ポータルで落ち合おう」
「ここまで来て、1人」
「中には精鋭が5千はいるだろう」
「そうね、待ってた方が良さそうね」
こちらも新年会か、次の敵対国だ、適当に殺しておくか。
「誰だ、招待状を見せて頂こう」
「【ミストラルバーン】」
居たか、ワインなんて飲んでいやがる。
「【アクアフラッシュ】12連」
「敵襲!」
「近衛兵、敵を排除せよ」
「伊達か?」
「有栖川、運がなかったな」
「アリス王国につけば、望みのままだぞ」
「残念だが、俺は今の生活に満足してるんでな」
「俺はお前を探している転移者の居場所を知っているぞ
俺を殺したら……」
証拠は必要だし、首だけもらっておくか。
俺を探している転移者か?
ユニークスキルを手に入れた時に女神が言ってたな
サクラじゃなかったのか?
まあいい、殺戮とご褒美タイムの時間だ。
「テテ変形だ」
「貴様」
「こいつを殺せ」
「食らえ、ハイビーム砲」
有力者1万程度と兵士2万も殺せば、復興するのに時間がかかるだろう。
国庫はここだな。
「【アクアフラッシュ】3連」
「さすが大国だ、帝国の2倍はあるか?」
あまりの至福に我を忘れて、財宝をあさってしまった
3時間以上かかるとは国庫恐るべしだな、ベガ王国はさぞあるんだろうな。
「サクラ、居たのか?」
「兵に囲まれたのよ」
「車はどうした?」
「BMWの新車よ、傷を付けられたくないわ」
「そんな理由か?」
「レベルが80になったわ、これであとは試練だけね」
「俺も80になったぜ、試練はアリス王国になりそうだな」
「このまま試練に挑戦したいけど、女神のお告げが必要なのよね」
「すぐにお告げがくるだろう」
「乗れ、戻るぞ」
☆
アリシアへ着いたか。
「衛兵の方、この箱をアルト商会のテリーさんに渡して欲しい」
「中身は?」
「陛下の命を狙った暗殺者の首だ」
「首だと!」
「ミッターマイヤー伯爵からだと言え」
「伯爵でしたか、失礼しました」
さて帰って正月気分を味合うか。
残高:472億




