第七十二話:カジノ三昧
人間というものは現実から逃避したくなる事があるものです
それも自分の資産次第というのが世知辛いです。
☆
ラスベガスの大型カジノにやってきて、2人はいきなりカードゲームに
熱中しているようだが、俺は庶民的にスロットで遊んでいる。
「よし、これで1万5千ドルの勝ちだ!」
俺の『時間操作』は機械にも効果があり、減速効果でスロットが目で追える。
5時間も熱中してたか、賭け事というのは魅力的だからな
あいつらはどうなったかな、もう500万ドル使い果たしたか?
「またわれの勝ちじゃ!」
「凄いな、あのお嬢さん」
「連勝じゃないけど、千ドルチップでしょう?」
「お客様、お飲み物はいかがですか?」
「ありがとう」
チップは10ドルでいいか?
『言語理解』様々だな、前に来たときは一晩で千ドル消えたからな。
「サクラ、どんな感じだ?」
「私はダメね、100万ドル磨った所で降りたわ」
「カズマではないか、楽しい物だな」
「俺より長くやってるんだ、そろそろ部屋に戻らないか?」
「そんなにやっておったか、それでは帰るとするか?」
「だいぶ勝ったようなら、1割ほどチップを渡しておけよ」
「そなた、なかなか見事な腕だったぞ。また来るぞ」
ディーラーが何か疲れているように見えるが。
「10万ドルが、540万ドルになったぞ」
「凄いじゃないか、星金貨53枚の儲けだな」
「どの程度の価値があるのだ?」
「毎晩飲み食いしているチョコと酒を1年分だな」
「それは上々じゃな」
原価でいくと70年分だが、知らないほうがいいだろう。
「わたしはダメだわ」
「十分、浪費できたじゃないか」
「やってみると違うのよ。勝たないと悔しいわ」
「俺のようにスロットにするか、それほど上手くないディーラーを探すんだな」
あまり欲を出すと勝てないものだ。
「とりあえず食事にしよう」
もう遅いし、軽めの食事がいいな。
「お飲み物は?」
「カフェ・ラテで、それと七面鳥のソテーを3人前、お願いします」
「われは3人前はいけるぞ」
「もう夜の11時だ、食べたら寝るんだ、少量にしておくんだな」
時差ぼけのせいか、あまり眠くないな
アメリカのアマゾンでショッピングするか?
朝か。
13時だと、随分寝てしまったな。
「カナデ、サクラ起きろ」
「……まだ眠いわ」
「寝てると、いつまでも時差ぼけが治らないぞ」
今日は銃器の購入に行くか
日本のコンビニ程度あるんだ、近くにあるだろう。
「カナデ、あまり勝ちすぎるなよ」
「そのあたりは心得ておるわ」
22口径なんて買っても仕方ないから357マグナム以上か
「いらっしゃい」
「うちのチームで一式揃えたいんだが、おすすめはあるか?」
「チームの人員は?」
「8人だ」
「護身用にベレッタとメインはS&Wの44マグナムとライフルにAK-47
とショットガンにレミントンのM870で乱戦時にM60機関銃でどうだ」
「それでお願いするよ」
「8人ならM60は3丁でいいだろう、全部で9万ドルでいいぞ」
「M2とか置いてある店はあるか?」
「M2となると軍の払い下げになるな、ニューポートで軍の払い下げの品が
多く出てると噂が流れている。良ければ行ってみるんだな」
「助かったぜ、ありがとう」
俺が誰に見えてるのかわからんが、いい買い物が出来たな
ニューポートか随分離れているな。
2人はやってるかな?
「私の時代が来たわ!」
今日はルーレットか、ギャラリーが多いな。
「どうだ?」
「カズマ、昨日の借りを取り返したわ」
カナデが緑でサクラがピンクのチップか。
9時かそろそろ終わらせるか。
「2人とも、その辺にしておけ」
「残念、7時間やれば十分だろう」
「もう9時か、そうね」
この位の時間に食事をするのが一番だな。
「カナデ、明日は東の都市へ一緒に行ってもらいたいんだが?」
「よいぞ、他の街を見るのも悪くない」
「えー、もっと稼ぎたいわ」
「他の都市にもカジノはあるし、最悪は戻ってくればいいだろう」
「仕方ないわね」
人ならざる者の力で値切ってくれるとありがたい
装甲車と旧式の戦車があればいいか?
「起きろ、飛行機の時間だぞ」
「眠いわ」
「一人で残ってもいいんだぞ」
間に合ったか、アトランタで乗り継ぎか
結構早く着いたな、さすがアメリカだ、乗り継ぎ時間が短い。
「カナデ、前に裏の商売をしている人間はわかると言っていたが
このあたりに居るか?」
「そうじゃの、右前方に見えるガラス張りの建物の最上階に居るの」
もはや超能力だな。
55階建てか、警備員がいるのか。
「ご苦労様です」
誰と勘違いしてるのか知らないが、この隙に上へ行こう。
「カナデ、大きい取引がしたい、繊細は任せるぞ」
「任せておけ」
絨毯が引いてあるぞ、VIP専用か
カナデについていけば大丈夫か?
「失礼するぞ」
「我が社へようこそ」
「今日は大きな取引がしたくて来たぞ」
直球すぎて怖いな。
「ご予算は?」
「そなたの提供できる最大の品を用意して見せよ」
「……そうですな、ミサイル駆逐艦などはいかがですか?」
「もっとでかいのはないのか?」
思案顔だな、イージス艦でもあるのか?
「少々埃を被っておりますが、特別の商品が一点ありますよ」
「それをもらおう」
「では見に行きますか」
車で40分以上かかるとは、どこまで行くんだ
このまま始末しようとか、ないよな。
「ここです、汚れているので気をつけて下さい」
ほんとに散らかってるな、人の出入りがないのか?
「本当にお買い上げ頂けるのですか?」
「無論じゃ」
「艦橋部分のシートを取り去れ」
「了解」
おいおい、これは空母じゃないか?
「これは極秘ですが、ニミッツ級の11番艦で
もう2年もここで解体待ちの状態の船ですよ」
「悪くないが、ちゃんと動くのか」
「もちろん、現役の船と比べても遜色はないですし、原子炉も健在
タービンも絶好調ですよ」
確か10番艦までしか配備されてないはずだが、アメリカは何がやりたいんだか。
「そうか、これだけでは使えないのではないか?」
「そうですね、スーパーホーネットではないですが、F-18を60機と空中給油機
を2機とアパッチを10機付けましょう」
「陸上兵器もつけてくれぬか?」
「そうですね、旧式ですがM1A2戦車と高射砲をおつけしますよ」
「いくらじゃ?」
「……そうですね、380億ドルでいかがですか」
「解体待ちだったのではないのか?」
「では320億ドルでは?」
「われの目をよく見るのだ!」
「私は善良な神の信奉者でございます、弾薬や燃料、装備品も満載して
お届けします、金額は160億ドルで結構でございます」
こうやって値引きさせていたのか、神を語るとは凄まじい能力だな
「よし、その値段で良いじゃろう、即金で払う故、動くようにしとけよ」
「2ヶ月は頂きませんと」
「2週間で用意せよ!」
「かしこまりました、用意してみせます」
「カズマ、金をだすのじゃ」
「では160億ドルです。ご確認を」
「キャッシュですか?」
「そちらもでかい売り物じゃ、そのほうが何かと良かろう」
「そうでございますな」
残金8百億弱になってしまったな。
原子力空母が入るのか? カナデは大きさを見て買ったんだ
持っていく術があるんだろう。
「今日はこの街へ泊まるとして、明日はどうする?」
「折角、東海岸まで来たんだし、ニューヨークに行かない?」
「確かデジタル式のカジノがあったな」
「デジタル式とはなんじゃ?」
「人が居ないんだよ」
「それはダメじゃ、醍醐味がなかろう」
確かにディーラーがいないとカナデの力は発揮できそうにないな。
「ダテ君、転移でアトランタまで行って、そこからニューヨークへ行かない
買い物したら、夕方の便でラスベガスに戻りましょう」
「カナデどうだ?」
「買い物も悪くないな」
「それで行くか」
☆
昨日は疲れたな、転移したら搭乗時間まで10分しかなかったからな
ニューヨークかまさに大都市だな。
「みんなはどこへ行くんだ?」
「タイムズスクエアね」
「カナデはどうする?」
「同じでよいぞ」
買い物も金が潤沢だと楽しいもんだ。
さて小物はほとんど買ったし、俺も車でも買うか?
「お芝居やってる、カナデ見に行こうよ」
「お芝居なぞ、そんなに面白くないであろう」
「いいから」
悪くなかったが、似たような題材の作品を見たことがある気がするな。
「感動したぞ、芝居を見尽くそうぞ」
「そうなの?」
結局1週間、ニューヨークでお芝居三昧か
俺は有意義な買い物が出来たからいいが。
銃に車に日用品まで300億も使ってしまった
どうも空母購入で金銭感覚が無くなったな、元々盗賊稼業で得た金だしな。
「ではラスベガスに戻るぞ!」
「「オー」」
ラスベガスは24時間活気があるな、俺も娯楽施設でも作るか
やるなら競馬あたりだな。
「今日は負けているのか?」
「たまには相手に花を持たせないとな、精神がもたんだろう」
できればサラ達も連れてきてやりたかったが、魔法の世界と機械の世界では
戸惑ってしまうだろうな。
「折角、アメリカに居るんだし、七面鳥の丸焼きを食べましょう」
「食い切れるか?」
「われが食べきってやるわ」
「では注文するぞ」
大きめのを持ってくるとは、ぎりぎりで食べ切れたな
俺にはハンバーガーが一番合うな
欧米のハンバーガーの旨さは別格だな、日本でも売り出せば売れるだろうに。
「今日はこのホテルも最終日じゃ、勝ちまくるぞ」
「がんばってくれ」
俺はブラックジャックで惨敗したから、またスロットでいいか。
「なかなか好調だ」
「来た!」
「これで2万ドルの儲けだ」
人が群がっているな、トラブルか?
「これで2人目か?」
「あの嬢ちゃん、もはや修羅だな」
「10万ドルチップなんて、俺初めて見たぜ」
「レイズ5枚上乗せじゃ」
「俺は更にレイズ5枚だ」
「コール」
「われはフォーカードじゃ、われの勝ちのようじゃの」
「なんて引きだ、神業だな」
「俺はこれで失礼する」
「お嬢さん、私とブラックジャックで勝負しませんか?」
「副支配人?」
「良いじゃろう」
副支配人自ら回収に来たか。
「では一度の勝負でよろしいですか?」
「構わんぞ、全額賭けようではないか」
「全部で千枚で1億ドルですね」
「そのようじゃな」
110億かけるって、自分の金じゃないとはいえ、強気だな。
「いかがですかな?」
「まあまあじゃな」
「ヒットしないので?」
「無用じゃ」
「親は15だぞ」
「凄い、5を引いて20だ」
「残念じゃったな」
「ブラックジャックじゃ」
最終日だから、容赦なしか。
「副支配人?」
「俺も当事者だったら、倒れる自信があるぞ
確か2・5倍の払い戻しだったな」
「娘、チップを寄越せ」
「は、はい」
「次に来るときまでに鍛えておくのじゃ」
カナデは満足そうだな、相手が哀れに思えてきたよ。
「次があるかわからないが、もうこのホテルの宿泊はできないな」
「勝負は時の運じゃ、やつも勉強になったであろう」
あとは空母を受け取って終わりだな
結局ほとんどアメリカで過ごして終わったな、大勝軒や二郎にも
行きたかったな。
ほんとに2週間で用意したとは、準備出来てたのか?
「カナデ様、受け渡しの準備はできております、このまま地球の裏側まで
戦争に行けますよ」
「ご苦労」
「配備は日本ですか、イスラエルですかな?」
「余計な詮索は無用じゃ、アメリカに害になるような事はせん」
「それを聞き、安心致しました」
日本に配備して欲しいが、色々うるさい議員や団体がいるからな。
「ではわたしの目をよく見るのじゃ」
「何をしたんだ?」
「我らの記憶を消したのだ。売った記憶は残っておる、問題なかろう」
「これ入るのか?」
「こやつには魂がある。今から主をカズマにするぞ、気合いを入れろ」
古い物には魂がこもると聞いた事があるが。
「そんな事できるのか?」
「われは、ダンジョンの支配者じゃ、魔物とさして変わらん」
「汝、名前を与える、メテオライトじゃ」
「カズマに忠誠を尽くせ、さすればこんなあばら屋ともお別れじゃ」
「パーン」
砲を撃ちやがった、これが合図か?
「これでこの大きな船とそれに載っている機械も意思を持った
お前の下僕じゃ、今後これに載せた機械も同じようにお前の下僕になる
丁寧に扱ってやるのだぞ」
凄いな、空母を自動操縦か、無敵じゃないか
落とし穴がないといいんだが。
「機動倉庫の容量を少し増やしてやろう、それで入るだろう」
「わたしもアイテムボックスが欲しいな?」
「増やすのと新たに与えるのではまったく違うのじゃ
そなたらの言う所のスキルポイントのような物を使うのでダメじゃ」
「カナデちゃんのけちんぼ」
「メテオライト、機動倉庫に入れ」
入ったよ、全長300メートル以上の空母が
満載だから排水量10万トンくらいあるだろうに。
「さて、あとはニューヨークでお芝居三昧で締めるか?」
「ダテ君、ネットで買った京都の家を見てから帰りましょう」
「カナデはいいか?」
「十分楽しんだし、それで構わないぞ」
「では最後は日本に戻るか」
☆
京都に自宅か悪くない。
「ダテ君も京都で良かったの?」
「行方不明扱いだからな、持ち家なら家賃払わずに済むしな」
「お隣さんね」
「良かったのか、死ぬまで使わないかも知れないぞ?」
「自分と家族のお墓のあるこの街が良かったの、カナデちゃんの効果
のお陰で母の旧姓の武田桜で住民登録できたし
20億円口座に入れておいたから。メンテも完璧よ」
豪勢な自宅だな、運が良ければ、使う事もあるだろう。
「二郎にラーメン食べに行こうぜ」
「二郎、あそこは量が多すぎるのよね」
「あの独特な味は料理スキルが高くても中々出せないからな」
並んでるな、40分待ちといった所か。
「ダブルで野菜もりもり、にんにく、脂ね」
「変わった呪文じゃの?」
「変わった店なんだよ」
さて食べるぞ。
「光が」
せめて一口。
帰ってきてしまったか、残念。
「なんか寒いわね」
「そうだな、まだ5月だろう」
「閣下!」
「フレイヤじゃないか、久しいな」
「緊急事態です」
「どうした」
残高:472億円




