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音速異世界爆走記  作者: 風間サトシ
第四章
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第六十四話:ミストラルバーン


 人間は自分の利益の為には、どの程度残酷になれるのでしょうか?



 新年会で伯爵に陞爵して、ユミルを領地に加え、内政に手を加えようと

したタイミングで反乱か、わかっていた事だが、王国中で反乱勢力の

一斉蜂起を、僅か20日程度で準備するとは?


「リン、反乱の規模はわかったか?」

 

「伯爵、ユミルからお戻りでしたか? まだ情報が錯綜していますが

旧公国領で9万以上、王国北部で6万、南部が8万以上との推測です」


 やれやれ俺の負担も大きいな。


       

「ミラとフランは一時的に連隊長権限を与えるので、ユミルに行って

兵を率いてラインへ向かう準備をしてくれ?」


「ミラが連隊長ですか?」

「わたしはあまり軍は好きになれんが?」


「この反乱が終わったらそのへんも決めておくから。頼むぞ」

 新兵6千でも、マリアの連隊3千が加わるから大丈夫だろう?


 残りは6個連隊か、ラインとラピスのどちらへ行くかだな?



 さて急いでも仕方ない、ユミルの帳簿でも調べるか?

「帰ってきておったか?」

「カナデか、どうだ街の見物は?」

「昔見た街とはずいぶん変わったが、なかなか良いぞ」


 

「気に入ってもらえて何よりだ」

「今日はトリュフチョコとウイスキーを所望じゃ」

「わかったよ、買わなかったのか?」


「前に人の街で使っていた金銭が使えなくて困っておったのじゃ」

「アイテムボックス持ちだったな、俺のやった星金貨はどうした?」


「お釣りが無いとか言うので、まだ残っているぞ」

 星金貨を使う買い物をすると思ったが、結構金使いは荒くないのか?


 使えない金銭って、いつの金だろう?

  

「悪かったな。小金貨を千枚渡そう」

「これはどの程度の価値のあるコインなのだ?」

「そうだな、上手い飯を出す店で食事が1回できる程度だな」


「もらっておこう、カズマは暇なのか?」

「忙しいぞ。敵対勢力が数万現れた、数日のうちに戦場だな」


「世話になっているし、力を貸してやらないでもないぞ」

「律儀だな、どのくらい強いんだ?」


「この身でも人に負ける事はないが、イシュタルとの戦いでだいぶ力を

使ったから、全盛期の3割ほどだな」


 人以外と戦って7割の力を封印か、どんな相手だ?

「ピンチの時はお願いするよ」



 

 さて朝か、天気もいいし頑張るか。

「伯爵、王都から反乱の追加報告がありました」

「なんて言ってきた?」


「南部方面ですが。ラインから1万がユミルに向け出兵

ラピスからは海路を兵3万5千がエトワールへ向けて出兵との事です」  

 俺の領地を狙い撃ちですか、陞爵したのが仇になったか?


「ラインはわかるが、ラピスの情報を教えてくれるか?」


「ラピスは一時期はカナンに迫る勢いで人口増加が進みましたが

領主がたて続けに代わり、レニエ侯爵家に代わってからは人口40万を

割り込む程まで落ち込んでいます」


「距離はここまで馬で10日、ラインとダーナに8日で南部最大の港を持ち

兵数は約4万を超える程度、公国戦では兵を出しておりません」


 兵が4万か? 守備に1万弱を残して進軍か。

 俺としては好都合だが、各個撃破が基本とすると先にラインの部隊を

たたいてもらうか?


「全軍すぐに出れるな?」

「大丈夫です」


「守備に2千残して、ガードナー伯の部隊を叩いてくれ」

「ラピスの部隊はいかがされます?」


「そっちは当てがあるから、なんとかなる」

「ではすぐに反乱軍討伐に向かいます」

 

 ラピス4万、ライン1万としても8万には3万足りないな 

残りの南部で俺以外に2万以上の兵を持っているのはアラン伯位だが?

 

 報告が来ると言うことは船は出航済みということか、俺相手に船で

攻め込んでくるとはレニエ侯爵というのも運のない人だ。

           


 みんな出て行ったようだな。

 

「ロキ、ライラ伯とサイモン伯というのは、今は何してるんだ?」

 

「共に白鴎で護衛だけ連れて任地へ赴いたようですが、中へ入れず

今はアルトに置いてきた兵と共にキグナスへ向かっている模様です」

     

「王国の兵の配置はわかるか?」

「はい、諸侯の軍勢を会わせるとアルトに14万、ヘルメスに10万

カナンに6万、キグナスに4万、トール要塞に4万となります」


 公国併合に伴い飛躍的に兵数が伸びているが?


 

「少々戦力が北に偏り過ぎてないか? 南部はどうするんだ?」

「閣下が期待されている証拠でしょう、その為のユミルの加増では?」

 期待してくれるのは嬉しいが、準備期間がないな。

  

 

「推定で敵が23万でこちらが要塞を除くと俺らを入れて37万か?」

「大丈夫なのか?」

23対37の喧嘩じゃ、煽るより懐柔したほうが良かった気がするが?


「南部の8万にしても、レニエ侯爵以外は戦力の半分程度

しか出せないでしょう? ラインも兵数2万ですが、実際は1万ですし」


「そういう物か」

「実質、南のレニエ侯爵と北部のモンフォール侯爵家の2つを潰せば

後は旧公国の敗残兵の壊滅だけです」


 仕方ないな、期待されてるかどうかは不明だが、エトワールを落とさせる

訳には行かない、北は兵数が倍以上だから余裕だろう?



   

 風が冷たいな、冬に海の上に出張とは。

 アカネとメスの子供5羽は母親家業だ、本当に産卵サイクルが早いが

次は何羽生まれるのか、6羽だから30羽を超えるか?


  

 全部で大型船が50とダーナで見た中型船が70~80程度か?

 3万5千というと、こんなもんかな。


      

 天気は快晴で陸も近いとなるとハイビーム砲だと傷がつかないから

船と死体が残ってしまうな、エトワールへ攻め込んできた船が120隻程度が

死体を乗せて陸に漂着したら、真っ先に俺が疑われるな?


 風もいい感じで吹いてるし

ペコ商会始動前に女神が言ってた、良さそうな魔法を実践で試してみるか?


  

「貴様は何だ?」

「どうした?」

「怪しいヤツが空に」

  

 会った事もないが、恨んでくれて構わないぜ。

 

「轟け【ミストラルバーン】」


「か、体が溶ける」

「助けて……」

「……寒い」


 寒くて溶けるか、一度に2隻巻き込むのがやっとだな?

 

「【ミストラルバーン】3連」

 3連というか連射が無理なのか?

 

 広域魔法ではないが、効果範囲は『アクアフラッシュ』の10倍程度と

微妙だな、加えて効果時間中は連射できないときたか、威力は申し分なしだが

戦争以外では用途は限られるな。


「【ミストラルバーン】……」


 こんなに天気がいい海上で1時間以上かかったか、工夫が必要だな。

「テテ帰るぞ」


 


 ラインの北へ70キロ位で戦闘か、敵は7千もいないな

我らは連隊の旗が10か、ミラとフランはミッターマイヤーの旗だし

2つ多いな、コルトも出てきたのか?


「ヒルダ、調子は良さそうだな?」

 

「兄様、我々は兵数3万なので、圧倒的です」

「ユミルの兵士も全部連れてきたのか?」


 

「マリアが責任を持つと言ってましたし、コルトさんの息子さんと

ハイムさんの息子さんが参加しています」


「そうか、有望そうか?」

  

「ユリアンさんという男性がコルトさんのご子息で

ロディさんがハイムさんのご子息だそうです」

 2人とも子供がいてもおかしくない年齢だ、なぜ今頃呼んだんだ?


 

 内乱は始まったばかりだ、俺も援護するか?


「食らえ【アクアフラッシュ】12連」

 やはり使い慣れた方が、やりやすい。


「伯爵、お戻りでしたか?」

「ああ、殲滅を急ごう」


 1時間で終わったか? ラインを制圧して

ラピスに向かって戦闘して、また制圧か?

    


「伯爵、ユリアンと申します。お見知りおきを願います」


 

「ロディと申します、同じくお見知りおきを願います」

「コルトとハイムの息子らしいな、城で何度か見かけたことはあるが

今までなぜ名乗らなかった?」


「父が子供を要職に押すのは、腐敗の原因に繋がると申しますので」

 

 確かにそれはあるな、今回も無能な諸侯の子孫の反乱だしな

世襲は難しいからな? 父親があれなら裏切る事はないだろう?


 

「わかった。2人の軍への参加を認めよう、父に負けずに励んでくれ」

「「はい」」



「リン、早急にラインを落とすぞ」

「ラピスの軍はいかがされました?」


「なんとか追い払った。ラインを落としたらすぐに向かう」

「りょうかいです」


 3万以上をなんとかなったで、納得してしまうリンも肝が据わってるな。

     


 高速ラウス隊、普通のも混じっているが、1時間でライン到着だ。


「ラインの住民と兵士に告ぐ、先発の兵士1万は殲滅した

30分以内に開城し投降しなければラインを焼く、我々は正規兵3万だ!」


 どうするかな? サイモン伯とやらが、気に食わないやつなら

面倒だから焼いてしまうんだが?


   

「アレク、サイモン伯って知ってるか?」

「……確か、ミーナを治めていたはずですが」

 アニタちゃん達と入れ替わりにミーナに入った領主だったか?


 ミーナの兵数は1万に満たないから、どこかで活躍したのか?


「時間だ!」

「魔法隊攻撃用意」


『ま、待って下さい、住民は降伏します』

「黙れ、我々は降伏せんぞ」

「そうだ」


「リン、兵士を殺せ!」


「全軍、抵抗する者は殺せ。進め!」

「前進!」

「先陣だ!」

  

 気合いが入ってるな、俺は静観するか?


 街中に逃げ込むなら最初から抵抗するなよ、10倍の兵力差で2時間

も時間を取られてしまった、その代わり兵士の掃除もおわったが。



「よし、ミラとリンとニケの部隊は休憩に入れ、ユリアン隊は休憩部隊の護衛

ロディ隊は敗残兵を奴隷に落とせ、残りは主要施設の制圧と調査だ」


「「「はい」」」

    

リリーナとタチアナはこの街出身だし、奴隷に落とす作業は無理があるし

マリアは土地勘がある、アレクとシャルはタフだしな。


 

  

 夜の作業で手間がかかったが、奴隷は300人程度だったので

比較的スムーズに進んだな。


 1部隊につき、6時間の休憩だけだ、もう少し休ませてやりたいが

どうにも潜在的な敵勢力の3万が気になる。


 

 翌日の3時に街の完全制圧終了、6時までに反乱分子の住民も捕縛して

奴隷落ちが終わった、奴隷は全部で4千を超えるか?



「伯爵、熱いですよ」

「占領地でゆっくり朝食というのも悪くないな」


「食料も補給できましたし、金庫も押さえました。残りは奴隷の処遇ですね」

           

「最低2個連隊は残さないといけないな?」

「そうですね、誰にしましょうか?」



「……伯爵、私たちを残して頂けないでしょうか?」

「リリーナとタチアナか?」

 

 王国軍のならず者部隊にここが占拠されたのと、俺たちの占拠を重ねて

見ている節があるが、共にラインに夢を見た同胞か? 

 

「ロディ、2人は元はここの住民だった訳だが、おまえが決めてみろ」

「私が決めるのですか?」

   

「指揮官は常に冷静な判断力が求められる」


「お二人の部隊はライン出身の方が多いのですか?」

「……はい、そうなります」


「そうですね……」

「ではアレクさんとミラ様の部隊を残して、指揮官だけ

お二人に任せるという案はいかがでしょう?」


 

 悪くないな。

「アレクどうだ?」

「そうですね。たまには他の部隊の指揮もいい経験になります」


「それで決定だ。1時間後に出発する」

「「はい」」

     



 朝に出たのにもう3時か、高速ラウス隊に慣れると感覚が狂うな。

      

「みんな30分休憩したら、攻め込むぞ」

「降伏勧告はどうします?」

「エトワールへ先制攻撃を狙った輩だ。殲滅する」

「はい」



「カズマ、もうわたしは指揮しなくていいのか?」

「面倒なんだろう?」


「いや。これはこれで面白いぞ」

「なら続けてみるんだな」


「ミラ、指揮はフランにやらせるから、後方でヒルダと待機だ」

「ご主人、りょうかいです」

      

 時間だな。

「全軍に伝える。近寄ってきた者は斬り捨てろ、離れている相手には

武器と防具の解除を伝えろ、返答なき者や建物に逃げ込む者も殲滅対象だ

女と子供以外は殺すつもりで乗り込むぞ!」


「「「オー」」」


 相手はガードナーのような新任領主ではないから

ある程度の人望もあるだろう?


「リンが総指揮だ、存分にやれ」

「はい」


「魔法隊、北門へ攻撃開始」

                      

敵は1万もいないはずだが、抵抗するつもりのようだな?

 敵も粘る、市民も協力してるとなると、魔法師の魔力が先に尽きるな。


「伯爵、まだ前に出るのは危険です!」

 

  

「【ミストラルバーン】」


「体が……」

「……寒い」

   

 やはり城壁の内側まで効果があるようだな?

  

「死にたいヤツは補修作業を続けろ【ミストラルバーン】」

 至近距離で撃ち込むと城壁まで溶かすとは?

      

「全軍突撃!」

リンの号令で全軍2万4千の突撃だ。


 主力の全滅を知らされた住民ははじめの内は信じなかったようだが

連絡が取れない報告が伝わると、一気に降伏したな

兵士は抵抗を続けるか、僅か6千程度でよくやるもんだ。



 相手には関係ないが、こちらは2日連続の制圧戦だ

少しでも抵抗するバカは永遠に眠ってもらうしか無い。

    

       

もう日付が変わって2時か。?

「レニエ侯爵、いい加減に降伏して頂けませんか?」

「私は国王を絶対に許せん、降伏はせんぞ、わしの兵もな」


「周りの皆さんはどうですか? もう侯爵に何を言っても大丈夫ですよ」

「我らも侯爵と同じ気持ちだ」

「そうだ出て行け、国王の番犬め!」

 そうですか、折角紳士的に対応していたのに。


「残念ですよ、現実の見えない方々には失望しました

番犬のやり方をご覧下さい」


「うわっつ、う、腕が……」

       

「痛いでしょう、腕を斬られるのは」


「頭が痛い……」

「助けてくれ」

「やめろ――」


 どうした? 腕を斬られて錯乱したか?

「来るな、寄るな……」

「殺してくれ」

        

「貴様、侯爵に何をした?」

「貴様らに言う必要はない」

 俺が知りたいぜ、カナデのやつが適当にくれたから、なまくらかと思った

ぞ。

     

「おまえも斬ってやろう、侯爵と同じ境地を味会わせてやるぞ」


「暗い……」

「助けてくれ」


 みんな怯えてるな、俺も怖いぜ。

 解除方法とか聞いてないし、しばらくの間、痛みを味わってもらおう。



「マリア起きたか?」

「はい、3時間だとすぐですね」

「ニケの部隊と交代だ」

「盗賊稼業の方が、楽ですね」

 戦争中に寝れるだけありがたく思って欲しいが、2日連続だからな。


 1連隊が睡眠に入ると、2個大隊の護衛が必要だからな。

      


「伯爵、敵兵の殲滅が終わりました」

「リン、拠点制圧と奴隷落ちの作業に入ってくれ」

「わかりました」

 もう5時すぎか。

 

「カズマ、さすがに疲れたので寝るぞ」

「まて、リンの部隊に護衛依頼をだしてからだ」

「面倒だぞ」

  

 どの部隊が休憩を取ってるのかわからなくなってきたな。

               

「伯爵、制圧終了しました、残りは住民の奴隷落ち作業だけです」

「アレク、よくやってくれた、引き継ぎをして休め」

「ありがとうございます」


 8時か、昨日はラインで朝飯を食べていた頃だな

攻略開始から16時間以上経ったか。


       

 だいたい終わったな、奴隷落ちは2万人以上か?

 随分抵抗したもんだ、ライラ伯は大丈夫だろうか。

             

「ヒルダ、一番寝てない部隊はどこだ?」

「リンちゃんの部隊とニケの部隊かな?」


「リンとニケの部隊はエトワール防衛を任せる、ただちに帰還せよ」

「いいんですか?」

「構わん」

「「帰還します」」


 これで6個連隊か、そういえば侯爵はどうした?


 あれ死んでる、自害したか?

 

「どうして死んでる?」

「お助け下さい、なんでも言うことを聞きます」

「おねがいします」


「うちの指揮官に知ってることを残らず白状してもらうぞ

嘘をついたら侯爵の二の舞だ」

「嘘をつかない事はお約束します」


 

 どうして死んだのかわからないが、運がなかったんだろう。


 さて部隊の疲労も激しいし、どうするかな?

          


352億6千万


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