第五十七話:波が去って
特売と言うのはいい響きです、安くなくても
ついつい買ってしまいます。
☆
我々は現在、商品取引所で商会の納税のチェック中だ。
ペコ商会の大規模セールも終わって、早2週間が過ぎて
エトワール市民の購買力増加による波も終わると思ったが。
「参りましたね。どこの商会も店を閉める機会を失ったようですね」
「アレクの言う通りね。税の徴収まで僅か1週間。商品の販売を続けながら
税の計算をするのかしら?」
「税を納めた商会は全体の2割り程度ですね」
「ペコ商会は特売市終了と共に11月まで休業と、上手くやったわね」
「ペコ商会の納税額の星金貨1240枚は破格ね」
「商会の王国での売上は星金貨で軽く1万を超えるでしょうね?」
「起業して1年で大商会の仲間入りとは」
凄いぞバルバラ。
何と言っても脱税額が凄いぞ。
フランと計算した時点で、現金で10万枚程度持っていたので
最低でも4割で4万枚か。
「納税額の予想はついたか?」
「そうですね、既に納税額は星金貨1万3千枚を超えているので
大体1万5千枚は超えるかと」
債務が無いと、税は多く感じるな、金庫には20万枚以上
あるし、好景気はやはりいいな。
街も星金貨の影響でかなり活気ずいてるな、税を納めたあとに
星金貨1枚は大きかったな。
「カリム、税は納めたか?」
「あんちゃんか、もちろんだぜ」
「いくら位残った?」
「そうだな、星金貨7枚ぐらいだな」
「ミーナにいる時に比べれば、3倍以上か?」
「そうだな。この前のセールで星金貨4枚入ったから、11枚だぞ」
「みんな儲かってるのか?」
「そうだな、俺ほどの奴は少ないが。星金貨2枚程度はみんな持ってるな」
職人は好調か。
「だがな、ちょっと困ったことがあってな」
「誰か病気か?」
「違うんだが。みんな浮かれて星金貨やガリア金貨を手に入れた
まではいいんだが、両替が出来なくてな」
「役場や商会はどうなんだ?」
「役場は手数料が金貨2枚だが金貨が不足してるようでな
商会は手数料4枚だ、ガリア金貨はその倍ときたもんだ」
「おやっさんの分だけなら、俺が両替してもいいんだが」
「トーラスとの戦以来、揉め事もないし、冒険者も金があるから
休んでるからな」
好景気の落とし穴だな、商会で金貨4枚か、一月暮らせるな。
「たまには領主らしい事でもするか。明日1日だけ無料で
両替しよう、知り合いに伝えておいてくれ」
「無料だと、みんな行くぞ」
「そうか。星金貨とガリア白金貨を手数料が小金貨2枚でどうだ」
「あんちゃん、太っ腹じゃねえか。どこでするんだ」
「そうだな役場は立て込んでるし。俺の家だな」
リン達もまだいるし、なんとかなるだろう。
「サラ、明日1日だけ両替商をする事になった。金貨1万枚と
小金貨1万枚預けておくから、頼んでいいか?」
「役場も取引所も金貨が不足してましたね」
「手数料は一律で小金貨2枚だ。ガリア大金貨は1枚でいいだろう」
「では頼んだ」
服がちょっとキツイな、成長してるのか?
そうか16才か、ほんとなら高校生の年齢だしな
今度、服でも買うか。
「お兄ちゃん、起きて下さい」
「お願いです、起きて」
眠いな。まだ7時じゃないか。
「ドーラ、別に朝ごはんは集まった人間だけでいいと言ったはずだけど」
「違います。門の前に凄い人がいて、サラお姉ちゃんが呼んでます」
気温が程よいので布団が恋しいな。
「どうした? 揉め事か?」
「兄様、金貨が足りません」
「昨日の金貨は?」
「すでに無くなりかけてます」
随分いるな、カリムも顔が広いな。
「サラ、魔法の鞄をだしてくれ、1万枚追加で入れておこう」
「お願いします、これが星金貨とガリア金貨になります」
「ハンナ、朝ご飯は何かな?」
「ご飯に、アジと卵焼きにサラダと旦那様から頂いた、味噌汁ですね」
「お新香と和え物というのにも挑戦してみました」
「キムのやつの作った醤油か」
「カズマは変わったものが好きなのだな」
「別にフランはパンでもいいぞ」
「パンばかりも飽きるからな。こういう趣向もいいだろう」
アニタスペシャルもいいが、やはり日本の料理がいいな。
きゅうりと大根のお新香に胡麻和えか、さすがに料理スキル7は凄いな
「食べたな、美味しかったよ」
「ありがとうございます」
「これは和食というやつで。2日和食で次がパンというサイクルで行こう」
「そうだ、市場でぶりは手に入るかな?」
「大丈夫かと存じますが」
「では今夜はぶり大根にしよう」
「なんじゃ、それは」
「ぶりの切り身と大根を煮込んだ料理だ。冬の定番料理だな」
「美味いのか?」
「醤油と米の酒がいければ、美味しいはずだ」
「米の酒か。あれは良いの帝国では作っているんだが」
「お兄ちゃん、また金貨が足りないそうです」
「まだやってるのか?」
「2万枚もあればいいか? フィーネとフローラ、この袋に金貨が千枚
入っているから、サラの所に持っていってくれるか?」
「「はい」」
そろそろ4時か。
「やっと終わりました」
「みんなおつかれ」
「市民のみなさん、凄かったです」
「ご主人さま。全部で8千程でした」
儲けだけで金貨千6百枚にガリアの換金で5百枚で
金貨2千百枚の儲けか。
「随分いたな。カリムもだいぶ声をかけたもんだ」
「リン達はどうだった。普段は兵士ばかり相手にしてるから新鮮だろう」
「職人の方はだいたい、兵士と変わりませんね」
「頑固者が多いからな」
「そういう輩は好ましいが。そろそろ税を逃れて逃げるのが出るだろう」
「やはり出ますか?」
「出来れば奴隷落ち無しの名誉を得たかったが。無理のようだ」
「どこへ逃げますか?」
「ラインから声がかかっているようだな」
「これだけ豊かなのに、金のほうが大事な人が居るんですね」
「リン楽しい仕事じゃない。男の兵士を中心に希望者を
10個大隊ほど揃えてくれ」
「了解です」
「マリアが王都方面、ニケがユミル方面、シャルが南で、リンがライン方面
リリーナとタチアナは船で逃げるやつを押さえてくれ」
「「はい」」
「船は出港の合図を出して時点で乗船していた脱税者を全員捕縛だ
周りが敵になりそうなら、脱税者を斬り捨てて構わない」
「サラはコルトと強力して、街に潜伏して機会を伺う輩の確保だな」
「はい」
甘いだけの領主と思われては、今後に不都合が出るからな
ギルドを叩いておいて、良かったな。
「マリア、王都方面の捕縛と同時に『星の盗賊団』の再開だ」
「いいんですか!」
「ペコ商会の客はもう帰ったしな。特にガードナー伯関連を徹底的に狙え
伯爵関係の扱いは盗賊相手と同様で構わない」
「うちの部隊も、張り切ってくれると思います」
「部隊の経費と盗賊団の経費は、ちゃっと分けろよ」
「ご安心を魔法の鞄を手に入れたので、それで管理しています」
「魔法の鞄かよく手に入ったな?」
「ガードナーの物資にありました」
「そうか、他の部隊も大隊を率いているから、見つからないようにな」
「了解です」
魔法の鞄か、せめて連隊で1個あればいいんだが?
「カズマ、何か良からぬ相談をしていたようだが、悩み事か?」
「ちょっと盗賊家業の話と魔法の鞄の話をしてただけだ」
「魔法の鞄が欲しいのか?」
「持っているのか?」
「持っておるぞ、欲しければ作ってやってもいいぞ」
「作れるなら、お願いしたいが」
「そうだな。1つ星金貨100枚でどうだ?」
「出来によるが、いい出来なら払おう」
前に王都で見た時は品薄に加えて、星金貨150枚だったが
お手軽に作れるのか?
「素材を出すのだ」
「大きさは自由なのか?」
「私が持てる程度なら、構わないぞ」
そうなるとビジネスリュックがいいか、背負えるから、戦闘向きだな。
「では、このバックにやってみてくれ」
「少々用意する物があるから。待っておれ」
錬成版に似た板に、何かの着色液と色付きの布か
これだけで作れるのか?
「時の彼方に彩る○○、我が意思を○○に答えん、オレールリ○ク」
見たことのない光の色だな。
「出来たのか?」
「良い出来だと思うぞ」
米を100袋程入れてみたが、余裕だな、王都で見たやつより
大きいし、容量も大きい気がする?
「良い出来だ、コツがあるのか?」
「それは教えられんな」
「次を作って貰う前にミラが嘆いていたぞ。行って来い」
「どうせ指揮官に任命されなかったので拗ねているのであろう、仕方ないな」
行ったな。
「テテ出てこい、変形だ」
この3つだな荷箱に入れて、よし買えるな
俺の言語理解は知らないし、テテの能力も全部は知らないからな。
「どうだっった?」
「ちょっと活を入れてやったら、機嫌をなおしたぞ」
「良かったな」
「この鞄を色々試してから。次を考えさせてもらうよ」
「そうか、構わんぞ」
「星金貨100枚だ、あまり湯水のように使うなよ」
実験室でやるか。
道具は3つで金貨200枚か、高い物使ってるな
スキルが錬成のレベル9と時魔法の9に闇魔法の9とハイレベルだな
それと分解と結合と配合のスキルか。
まずスキルポイントを振って、錬成と時魔法と闇魔法をレベル9にして。
液体が分解で、布が結合、錬成版が配合だな。
「【他力本願】」
今年になって初めて使ったが、問題ないようだ
道具を買い直して、やってみるか?
「時の彼方に彩る闇夜の光、我が意思を讃え顕現せよ
我、祝福を持ってそれに答えん、オレールリンク」
同じように光ったな、上手く出来たかな?
米を100個入れてみたが、フランが作ったのと遜色ないな。
液体が1割減ったくらいで、あとは問題ないか、原価は袋の代金と
金貨10枚程度だな、錬金関係は、秘密を知れば宝の山だ。
しかしローラはいいとして、フランと言うのは何者だ、15才であのスキル
闇魔法が光魔法なら、まさに勇者と言っても良いレベルとスキル構成だが
本人は生きていれば名前を聞きそうだが?
やはり俺のスキルは、嫁さんになるような人間以外には
全部は教えられないな。
俺のユニークスキルも錬金関係だし、試してみるか?
「ご主人様、お食事ですが?」
「悪い。仕事が急に入ってな、明後日頃には帰るので
みんなには伝えておいてくれ」
「はい、かしこまりました」
倒れると不味いし、荒野でやるか。
ここに1人でくるのも、ミーナにいる時以来か。
錬成版を置いて、ワインに液体を垂らして、布を被せる。
「時の彼方に彩る闇夜の光、我が意思を讃え顕現せよ……」
「時の彼方に輝く月の光、我が力を讃え顕現せよ……」
「我願う、真理を示せ……【バッコスワイナリー】」
「女神の祝福、ここに示せ……【生物生成】」
「この物を……」
属性魔法のレベルを全部9にして。
「…………【バッコスワイナリー】」
出来た、SS級エリクサーだ。
眠い……。
☆
体が痛い、そうか荒野だったな
今回は女神は出なかったか?
今日は何日だ、5日までは数えていたから、2日程寝ていたとして
1週間と言ったところか。
適度に休憩を挟めば良かったんだが、熱中すると周りが見えなくなるな。
「【バッコスワイナリー】」
問題なく、SS級まで作れるな、試す相手が居ないか
伯爵製のように、偽物だったら困るな、だから毒薬に走ったのか。
とりあえず、ヒゲだけ剃って戻るか。
「フレイヤどんな感じだ?」
いつとは聞けないから、曖昧に聞いたほうがいいだろう。
「税を偽って申告した者、798人は財産没収で済ませ」
「税を払わず逃げた者が、12の商会で幹部と事実を知っていた店の者は
閣下の指示通りリンたちが捕縛、奴隷に落として王都への搬送済みです」
「残念ですが、ガリア勢の船に乗った商会の人間は斬り捨てましたが
財産は没収できませんでした」
結構居たな。
「それで、サラはどうしてる?」
「すでにシャルの部隊が護衛を努め、エトワールの税の星金貨500枚と
閣下の爵位分の250枚を合わせて王都へ送りました」
「そのまま10日後の、陛下の結婚式に出席するご予定です」
20日位経過していたか?
このスキルはどうも燃費が悪いな、子爵で星金貨250枚か高いな?
「俺のシュトラウスならすぐ着くし、2日前に王都へ行くとしよう」
「そんなにギリギリで宜しいのですか?」
「問題ないな、そんなに親しい貴族は居ないしな」
自分で言ってて痛いセリフだな、ぼっち宣言か。
久々だな王都は、内乱以来か、どうなっているのか?
355億1千万円




