第五十六話:ペコ商会の特売市
人は大量の金を手に入れると、使ってしまうようだ、信用のおける
銀行のようなシステムが無ければ、それも道理だろうか?
☆
エトワールは、商品と金が凄い勢いで流通している
まさに好景気というやつだ。
去年まではいくら稼いでも、その分をキシリア商会に徴収されていたが
その枷が外れ、安定した暮らしに、明確な税制に豊作と加わり
そこにマリアの部隊の豪遊が火をつけた。
「閣下、現在、港にある船の9割程度を全て物資の輸送に使っていますが
エトワール市民の購買力が高く、追いつきませんが?」
「仕方ないな、ペコ商会が大々的な売出しを、明後日から開くだろう
そこで市民も散財して、落ち着くだろう」
「そうですね、今回の波の対策で今月の初めから、10日間だけは
商会の売上を税として計上しなくていい方針にしましたし」
「すでに大部分の農民、漁師、職人からは税が納められ、商会の多くも
この波が収まる頃には税を収めるかと」
「もう収めるのか、まだ9月になったばかりだろう?」
「カズマさん、何を言ってるんですか、もう10月になってますよ」
シャルの可愛そうな者を見るような目が痛いぜ、もう10月だったか?
「そうか、農民や漁師は事前にもらって大丈夫なのか?」
「農家も、残りの生産物で大きいのは大豆くらいですね
漁師は市場での取引額で収益はだいたいわかります」
残りは本命の商会か、税収はどの程度になるか?
「兄様、リンちゃん達の部屋割りは決まりましたか?」
「何故、リン達の部屋割りの話が出てくるんだ?」
「ご主人、やはり聞いてませんでしたか? 今日から軍務部門のみんなが
うちに泊まるって、昨日の晩ごはんの時に言ったじゃないですか?」
「なんで、うちなんだ?」
「ペコ商会の大売出しの為に人が集まったので
軍の官舎を大隊長達が勝手に貸しちゃったんですよ」
「神殿も500人以上居ますよ」
「リンたちは官舎住まいだったのか、給金は使ってないのか?」
「カズマさん、官舎だと月に小金貨2枚で、夜10時迄食事が出来て
それで食費込ですから、どうしても妻帯者以外は官舎住まいですね」
月に小金貨2枚で食費込みか、どおりで軍人志望が多いわけだ。
「うちに来るのは?」
「アレクを抜いた、連隊長ですね」
俺も男の上級士官を少しは取ってやらないと肩身が狭いか?
ということはリリーナとタチアナも来るのか、これはいいかも知れない。
「部屋は空いてる部屋を好きなように使ってもらおう、それで
そんなに人が来てるのか?」
「ご主人さま、報告では1週間前の段階で宿は満室、神殿、役場は勿論
会議室や倉庫に民家まで使っています」
「この1週間だけで入市税が銀貨20万枚を超えており」
「すごいな」
「ロキが今回は特別に、15日有効の許可証を発行して対処しています」
アニタちゃんもピンチかも知れないな、半月も満室が続くのか?
バルバラはちょっとしたセールと言ってたが。
「夜はハンナに腕をふるってもらってくれ、ちょっと用事を済ませてくる」
ペコ商会は閉まっているのか、何やってるんだ。
「バルバラ居るか?」
明後日からセールなら居るはずだが?
「閣下、会長なら第5倉庫におります、ご案内致します」
「会長とはバルバラの事か?」
「そうでございます」
第5倉庫か、随分商品が少ないな。
「子爵、お待ちしておりました」
「随分、人が集まっているようだが、大丈夫なのか?」
「子爵が来るのを待っていた所です、この者はベラと言って
私の補佐をしてくれています」
「ベラと申します、精一杯、務めさせて頂きますのでご期待ください」
「よろしく頼む」
「早速ですが、星金貨を3万枚用意しましたので、このリストの商品を
お願いしたいのですが?」
「3万枚分も売るつもりか?」
「今回は3ヶ月以上前から告知しており、エルミール国内だけでなく
周辺諸国やガリア勢からも購入希望があるので、売り切れるかと」
「内政官を5百人と兵士を3千人を臨時で雇いますので
受け渡しについても支障はきたさないと自負しております」
準備が十分なら問題ないだろう。
「ここで出して良いのか?」
「ベラも私と同様にアイテムボックスを持っているので」
よく見つかったものだな。
バルバラの細かいリストを甘く見ていた。
買い物だけで丸1日かかってしまった、ベラが居なかったらスペースを
確保するだけでも、5時間は多くかかったな。
「旦那様、お早いお帰りで」
「悪いが、今日は寝るので、明日の朝に起こしてくれ」
リリーナ達と食事を取れないのは残念だが、睡魔には勝てない。
☆
「お兄ちゃん、朝ですよ」
もう朝か、戦争以外では、久しぶりにコンを詰めて働いたからな
こんなシチュエーションに憧れていた頃もあったな。
「ドーラおはよう、みんなは?」
「みんな食堂で、お兄ちゃんを待ってますよ!」
フランを筆頭に、この呼ばせ方を冷ややかな目で見ているが
大食らいの居候に気を使っても仕方ないしな。
「おはようみんな、リン達と自宅で会うと違和感があるな」
「そうですね、素敵なお宅で、ちょっと羨ましいです」
「リンは軍務筆頭なんだ、買おうと思えば、良い物件が買えるだろう?」
「仕事が忙しくて、基本は寝るだけですから、官舎の方が便利ですね」
「マリアさんは、家を買うんですか?」
「ミラも言うわね、流石にこんなに大きな家は買えないわ」
「大きくなければ、買えるんですね」
「マリアの部隊の豪遊ぶりは、すでに市民にまで知れ渡っているわね」
「白状しなさいよ、どうやって儲けてるの?」
「……それは、色々ですよ」
「ハンナ、スープを持ってきてくれるか?」
「かしこまりました」
ニケは訳を知りたいようだが、タイミングが悪いな
他の部隊も、金銭的に多少余裕が出来ればな。
「みんなの部隊も商会の応援に行くのか?」
「はい、マリアの部隊以外は各連隊から1個大隊が雇われました」
マリアの部隊は金貨5枚じゃ物足りないか、最高で10日で、金貨5枚の
かなりの高額のアルバイトなんだがな。
「ご主人、今月のお小遣いを下さい」
「10月分がまだだったか? 使い切っても構わないが、追加はないぞ」
「ミラ達は毎月、金貨10枚も貰ってるの?」
「兄様のお小遣いから、出してくれるのです」
「「「いいな!」」」
「大きなセールだし、今回だけみんなにもやろう、アレクには言うなよ」
「「「「ありがとうございます」」」」
「ハンナ達も今回は使ってくれ、6人だから金貨60枚だな」
「……そんな大金、よろしいのですか?」
「自由に使える金は、あったほうが良いだろう」
「ありがとうございます」
ハンナ達は家族で月に金貨5枚だから、家族持ちの兵士より使える額は
大きいはずだが、全財産を失ったばかりだから、あまり消費できないだろう。
「お勧めは、4日後の午後だから、みんなも急いで買わないようにな」
「兄様、それでは見に行かないほうがいいんですか?」
「毎日、特売品があるし、お勧めは星金貨以上の商品だけだ」
「ご主人とお姉ちゃんしか買えないじゃないですか?」
「どうせ、休みなんだから楽しむんだな?」
「つまり、4日間で今回のセールは終わると言うことですね」
「リンは鋭いな」
「4日で金貨5枚払うとは、ペコ商会恐るべしですね」
俺も日当12万のバイトがあったら、応募するだろうな。
☆
人が多くて、これ以上進めないか、まだ1キロはあるはずだが
一体、何万人集まったんだ。
「もうすぐ3の鐘だろう?」
「まだ時計を持ってないのか、あと15分で開店だぞ」
「俺も今回の特売で、買う予定だぞ」
「わたしも買う予定よ、あんたのより、いいやつをね!」
「今回は時計以外も、凄い商品が出るらしいぞ」
「もうペコ商会の会員登録は済ませてあるし」
「俺もだ」
「今日、登録するやつは3時間以上は待つな?」
「前に行ったほうがいいんじゃないか?」
「順番を守らないと、兵士に追い出されるらしいぞ」
「待つしか無いか、しかしここからでは、商品が見えないな」
兵士3千人の威圧感は凄まじいな、みんな戦場より士気が
高く見えるぞ、4日間と聞いたか?
「それでは5分後に、ペコ商会のエトワール本店移転の
記念セールを開催します」
「期日は4日間です」
「毎日、10時と午後2時に特売品の売出しを行います
4日後の午後1時に最後の大特売品を放出しますので、みなさま毎日の
ご来店をお待ちしております」
「野郎ども、金貨は持ってきたか!?」
「「オー」」
「領民君は持ってるだろうな!?」
「「「オー」」」
「特売開始だ!!」
ベラは乗ってるな、あれが地か?
「乗り込め」
「買うぞ」
「ミラは先に行きます」
「ミラはまだまだ子供だの? どうせ前の方にいる市民が掘り出し物は
買ってしまうのだろう」
「それ故の4日間のお祭りだからな、フランもさすがにもう出さないぞ」
「星金貨4枚あれば十分だ」
ちょっとやり過ぎたか? こき使ってるし、ボーナスだな。
これは1度はぐれたら、もう会いないな、夏コミには劣るが
かなり盛況だ。
「ヒルダ、買いたい物はあったか?」
「色々ありましたが、2時になるのを待ちます」
女性の買い物への入れ込みは凄いな
すでにみんなとは、はぐれてしまい、ヒルダと二人っきりだ。
金貨4枚の時計、2枚の目覚まし、小金貨で買える菓子類やチョコは
すでに売り切れか。
2時の目玉はマウンテンバイクで金貨50枚で、実演販売か?
原価が2万5千だから、200倍か、他の商品に比べると、割安感があるな
26インチの18段変速か、こちらの男性には、29インチが良かったんだが
高いのしかカートに入れたことがないんだよな。
「兄様、あの細くて速そうなのが、欲しいです」
ヒルダに頼まれると、嫌とは言えんな。
「わかった。神官として頑張ってるし、買ってあげよう」
「わーい」
☆
それから怒涛の3日間が過ぎて、最終日だ
俺は初日だけ見に行ったが、あとは部屋でのんびりだ。
「みなさん、これより大特売品の販売を開始します」
「限定品で、星金貨4枚以上の商品ですので、領民君1号と2号をお持ちの
お客様が大変お得な商品になります」
「しかし!」
「手数料として領民君を持っている市民に星金貨を1枚相当を支払えば
領民君3号のお客様でも、安く買うことが出来ます」
「今回は領民君1つにつき1個を半額で販売します、持っているエトワール市民
を捕まえて、お買い上げ頂ければ、差額で星金貨1枚以上安くなるのです」
「更に!」
「今回、領民君を貸し出して得た所得には、税がかからないと
子爵のお墨付きがございます」
「「「オー、すげえ」」」
「売り切れ次第、閉店ですので奮ってご参加下さい」
ベラめ、とんでもないことを言いやがったな?
10枚以上で買わされている外国勢は、チャンスだが。
「兵士もいいのか?」
「もちろん」
「市民を集めろ!」
「子供でもいいのか?」
「登録してあれば、勿論構いません」
「うちは生まれたばかりの子も登録してあるのだけど」
「お子さんと領民君お持ち下さい」
それから街中で暴動のような人の群れが、商品を漁る
金銭のやり取りは兵士が代行するようだ、額がでかいからな。
3時間で売り切れて
今回の特売品のセールは終わった。
市民もかなりの額を手に入れて、満足のようでなによりだ。
これでエトワールもいい意味で安定するだろう。
363億2千万円




