第四十六話:星金貨2枚の賞金
長いか、短いかは人によるが人生には勝ち負けがあると思う
拘るつもりはないが、今回の一連の騒動は勝ち負けでは判断するつもりはない。
☆
テテで敗走して、今はダーナの街の南20キロの所にある林で待機中だ。
キムに聞いた話ではアオイと違って白鴎は夜で飛ぶらしい、あの技術バカ
が言うんだ本当だろう、今は王都に連絡を出すと読んで空を見上げている。
飛ばさないのか、国境で孤立してるんだガブリエルも心配だろう。
2時間ほどすると、上空をカモメが北に向けて飛んでいるのが見えた。
「夜の散歩か優雅だな」
「なんだキサマは……」
白鴎は2羽飛んできて、人が乗っていたので現在二人と二羽は俺が確保中だ。
カモメの方はアオイが威圧すると大人しくなった、伝令が持ってた書類
を見ると、王都とライン向けの連絡だ。
王国軍を打ち破った報告とエルミール王国の現状の報告要求、やはり辺境では
情報がないか、ベリアスの軍は来月末に引き上げるとある、それに兵力は
現在2万8千、ベリアスがかなり減って2万5千とあるな。
面白半分で買った、天狗のお面を被る。
「おい起きろ、朝だぞ」
「……キサマ、俺たちをどうするつもりだ」
「わたしはカリーナ王国のイダテン、君らに聞きたい事がある」
「カリーナの兵が、我が国へ手出しするか!」
「我らの本隊は王都へ、分遣隊がダーナ沖に停泊中だ、国王の戦力を言え」
「それは笑えるな、俺たちは新国王の部下だ、アルベルトの戦力等知らん」
こいつら何かツボに嵌ったから、笑いこけていやがる。
「なら新国王の戦力はどの位はだ?」
「そうだな、12万と言った所か」
「お前の持ってた書類には2万8千とあるぞ」
胸に手を当てて、書類を探しているようだ、今まで気が付かないとは。
「ガブリエル様の書状を奪うとは、無礼者め」
「お前らの新国王はガブリエルと言うのか?」
「呼び捨てとは許せん」
ロープから抜け出そうとするが、無理だろう、ハマーンが玉座を
狙ったのではなく本命はガブリエル候か。
「そこのカモメ、魔物なら機動倉庫に入れるはずだ、この中に入れ」
またミラに変人扱いされそうだが、白鴎に話しかけてみる。
「アオイ言ってやれ、入らなければ今晩の晩飯だと」
☆
カモメは機動倉庫へ収まり、かなり痛めつけて持ってる情報を吐かせた方々は
人生から途中下車してもらった。
俺は今、ダーナの朝市に来ている。
「安いよ、このキャベツ銅貨15枚だ」
「おい、こっちはさんまが3匹で銅貨12枚だ」
「肉は高いからこっちにしときなお客さん」
安いな、野菜は王都程度、魚は王都より安い、肉は最低で銀貨2枚か高いな
戦争中でこれか、王国軍が敗走する訳だ。
すぐ帰ってきてしまったが、ベリアスは強敵かも。
あいつらの話ではラインに兵が3万いるらしい、合わせて6万か王位を
狙うだけはある、本来なら東部の諸侯がエトワールを攻め取っている頃だ。
南部だけで11万以上で北から1万で王都をハマーンが抑えていると
計算しているなら、余裕も出るはずだ。
「おやじ、酒はあるか?」
「エールがあるぜ、銀貨6枚だ」
「それをくれ」
酒が高いがしかたないか、酒場は勝ち戦の後だからか、かなりいるな。
「しかし、ベリアスのやつらは散々だったな」
「そうだな、最前線に出てたからな、あの悪魔にかなりやられたな」
「流石にガブリエル様だな、前に出なくてよかったぜ」
「王国軍、もう反乱軍か、やつらも今頃逃げ回ってるだろうな」
「そうだな、俺達が近衛兵だな」
愉快そうに話してるな、ベリアスの精鋭は囮か、何か利益があるのか
あれだけ犠牲を払って、さらにダーナの防衛までするのか?
「今度は王都へ進軍だな」
「明後日にも船で出るようだな」
「陸路だとラインの部隊の手柄を横取りしちまうからな」
「そうだな、東のバカな貴族は今頃王都へ進軍中だろう」
「ラインの部隊と王都へ着いたら、追い出すがな」
「前祝いだな、ガブリエル様に王位を」
「オー」
俺も一緒に歓声に混ざるが、もう勝ったつもりだな
しかし海路で王都か、書面には書いてなかったな、ここで襲撃しようと思ったが
海で襲ったほうがホクホクだぜ。
船は200人は乗れそうなのが250近くありやがる、いつから用意
してたんだ、候爵になる前からか俺より余程、先が見えているな。
それに居場所がまったくわからん、宿も取れないから船底に潜伏して待つか。
☆
忍耐だな、見つかったら大変だから船倉で乗員の会話に集中。
結局その日は収穫なしだった、朝の5時だと随分早いな
もう出港か、兵士の格好で海を眺めると俺の乗る船は後発組のようだ。
すでに200隻以上の船が前を進んでいるらしい。
「王都までどれくらいだ」
「そうだな風もいいし、12日位じゃないか」
「ラインには家族がいるからな、大金が入ったら驚くぜ」
「そうだな、今回は報酬だけで1人星金貨2枚だからな」
「星金貨か、見たこと無いな」
「あるやつの方が少ないだろう」
「そうだな、ハハハ」
候爵はかなり景気がいいようだな、どこに隠してあるのか、それとも
国庫をあてにしてるのか。
「今回もベリアスの連中が先陣か」
「そうだな、あいつらはよく働くからな」
「そうか、頑張ってもらおう」
周りの船がだいたい50で、その前方に本隊と先発隊か、船はほとんど
残ってなかったし、200以上か、ここに200人近くいるから4万か
本命の候爵が見つからないが、これを迎え撃てる船団はないか。
周りの兵と共に食事をして、くだらない雑談に加わりながらまる1日が過ぎたが
大将の話がは出ない、明日の夜明け前にやるか。
☆
この船に乗ってるのは片付いたな、しかし弱いなベリアスの兵とは違うな
そろそろ夜明けだな、結局2日無駄にしたな、テテで船団の先頭を追いかける
今回は民間人が居たら、運が無いと諦めてもらうしかない。
ベリアスは精鋭だ、降伏勧告なんて3流な仕事はできない。
「テテ行くぞ、ハイビーム砲発射」
敵は逃げられない徹底的に叩かせてもらう、1時間で殲滅終了だ
後方部隊が逃げたのでかなり手間取ったな。
☆
ここがみんなが逃げた街か、みんな寝てるなもう着いてから
1日は経ってるはずだが。
「おい、アレク起きろ」
「……子爵、お怪我は?」
「問題ない、みんなはどうだ」
「はい、あれから昼夜に渡って後退して昨日、この街へ着きました」
「そうか、こっそり幹部をここへ集めろ、俺がいるとは言うなよ」
「わかりました」
1時間かけてやっと来たか、何やってんだか戦争中だぞ。
「みんなご苦労」
「子爵、戦況はどうですか?」
「ダーナの反乱軍は大方片付けた、大将は見当たらなかったな」
「大方といいますと?」
「そうだな、4万以上か、今なら士気がある部隊1万あれば落とせるぞ」
「それは凄いですね、どうやったんですか?」
「朝までゆっくり寝てたやつには秘密だ」
こいつら俺が働いていたというのに、寝てたな。
「おまえらはどうする、そろそろラインから王都へ兵が出るぞ」
「そうなんですか?」
「ほら、これが書状だ」
リンが奪って書状を読み上げ、みんなで聞き入る不安な様子が伺える
王都が攻められて、エトワールも襲われるとあるからな。
「子爵、もうエトワールは?」
「3日以上前の情報だが王都はカナンより兵が出て鎮圧、東部の反乱軍は
エトワールで激戦の結果殲滅に成功。
ダーナも既に主力はいない、北の方はカナンの守備隊の奮闘を期待だ」
「そうすると残すはラインの軍だけですか?」
「リン、そうなるな」
「さて伝え終わったし俺は行くぞ、みんなはエトワールへ戻れ」
「ラインの押さえに回らなくていいのですか?」
「時間的には追いつけそうにないし、敵は士気が高そうだ、勝てば兵士1人
につき星金貨2枚の報酬がでるらしい」
「凄いですね、2枚ですか」
「断っておくが、俺は出す気はないぞ」
「そうですね、エトワールの税収を超えそうですね」
「今言った事はどうせ諸侯は信じないだろうから、別れて帰還するんだな」
「いいんですか?」
「ああ、負けたと信じて盗賊に落ちる程度なら今後邪魔になる
最悪は俺たちの敵に回るだろう、ベリアス兵は強力だ」
「リン、いつ戻れる」
「そうですね、今日出れば、10日程でしょうか?」
「エトワールに帰ったら宴会の用意でもしておこう、あまり気苦労するなよ」
俺はみんなと強引に分かれてアオイに乗って街を出た。
☆
またまたアオイの夜間休憩に付き合い、野営を挟んで翌日の夕方に到着。
ラインの街へ来てわかったが、なんだここはエトワールよりでかいな。
拡張工事が終わっても追いつけるかどうか、こんなに大きい街だったか
兵はあまりいないようだが。
酒場では兵がいないので、みんな会話が弾む
星金貨の話が話題をさらっている、俺もピンチの時は金の力を使うか
候爵の行方はわからないな、本当にいるのか?
兵士の先陣はもう昨日には王都に向けて出発しているようなので
宿を取り休む、エトワールまで12日以上はかかるだろう。
今日は本隊か、門を抜けるのを眺めていたが、数は2万程度だろうか?
みんな妙に明るい、そんなに自信があるのか
見送る家族もお別れと言うよりは出迎えと言ったムードだ
これで永久の別れかも知れないのに。
指揮官クラスは見かけたが総指揮をするようなレベルの者は
いない、頭脳派の指揮官か、翌日が後発の部隊の出陣だ
数は5千、知ってる人間はいないな。
噂では先発隊が1万だと3万5千か多いな、ユミルからも
出るのか? ユミル規模でも無理すれば1万出せるな。
「みんな出陣した、今回は兵士の無事を祈り飲もうぜ」
「オー、飲もうぜ」
不安を忘れるためかも知れないが、この街は完全に陛下の敵だな
街を出てエトワールへ一時帰還だ。
流石のテテだ夜には戻ってきた、夜間は動かない怠け者とは違う
夜に集めるのは酷なので俺も休息、翌日に情報をみんなで共有。
「みんなどんな感じだ」
「お前さんの話だと3日前にラインを出てる事になるから」
「最速で9日、いや10日後じゃろう、本隊が12日後といった所か」
「ユミルは兵が少ないようなので、2千といった所か」
「リン達が戻ってくる方が早いが合わせても数が足りないな」
「子爵、良いでしょうか?」
「フレイヤ意見があるなら構わんぞ」
「街に来た移民の話を聞くと、ほとんどが歩兵と聞き及んでいます」
「ここは機動力のある部隊でユミルの部隊を先に叩いては?」
「コルトどうだ」
「そうだの、子爵と機動部隊4千でユミルの兵を叩くか」
「上手く行けば、ユミルの兵が投降するかも知れんしな」
「では行くか」
「そうじゃな、先発隊がユミルに向かっている可能性もあるしの」
「そうなると指揮官がいないな」
「総指揮はおまさんが取るし、1千以下ならうちの若いやつでも
なんとかなるだろう、今鍛えないでいつ鍛える」
少々内政官獲得に走り過ぎたか。
「ではラウス隊が先に出るぞ、出発は1時間後に東門だ」
集まったのは1200のシュトラウス部隊、かなり集まったな
俺が留守の間に頑張ってくれたようだ、カモメもいるし。
「では出発する、今回は指揮官養成も兼ねている実力を示せ」
「「「オー」」」
☆
翌日昼過ぎに敵発見の報告があった、推定2千5百で
攻撃を受けることを想定してないとの事、どうやら既にエトワールは
落ちていると思っているらしい、斥候を騎馬部隊に送り、敵の後方に回って
夜を迎えた。
日が登る僅か前に敵の野営地へラウス隊の奇襲敵を翻弄して一撃離脱
を繰り返して混乱を誘った、そこに騎馬隊が突撃、敵を挟んで
遠近から攻撃を加え、1時間で敵が投降した。
時間がないので、ユミル兵に王都の様子を伝えた所、4割が完全に投降
残りは奴隷落ちだ、投降した兵に奴隷落ちの手伝いをさせた。
今度は主力と戦ってもらうからな、俺の悪名は響いているようで
4割の兵は快く作業に励んでくれたよ。
騎馬兵と投降部隊はエトワールへ戻し、ラウス隊はユミルへ、夜には到着し。
「ユミルの市民に告げる、我々はエトワールの正規兵である、今回ガブリエルは
我々の救援の恩を仇で返した、市民に問う、反逆者として生きるか
国王に従うか、8の鐘で返答がない場合はユミルを焼く」
さてどう出るか、相手には本拠地のラインがあるから、最悪はラインへ
みんさんを強制引っ越しだな。
そろそろ時間か、やはりガブリエルは人徳もあるか。
「エトワールの兵士の方に返答する、我々は反逆者の汚名を着るつもりは
ない、ここに国王派につくことを約束する」
どうやら先発隊の一部がここに来るというので夜間交代で休息を取り
ユミルで待機、反乱も警戒したが、ウード鎮圧が効いているようだ。
今回の作戦は非常に簡単で先発隊が入って来たら内側に新たに建てた
城壁の間に挟んで焼き殺すという簡単な案だ、敵に情報不足という油断があり
味方の街へ到着という隙を付く、アコギな戦法だ。
翌日の昼に来た敵の斥候を捕縛、ユミル市民を偽装した兵が
相手を誘導する。
「火を放て、魔法師隊攻撃、弓を持つものも攻撃しろ」
「キサマらガブリエル候を裏切るか」
「俺達を置き去りにした候爵に義理は無い、どれだけ市民が死んだと思ってる」
随分取り残された恨みがあるようだ。
俺は気をつけよう。
「反撃しろ、城壁が邪魔で後続部隊と連絡が取れません」
俺たちが魔法師隊8百、ユミルの弓部隊3千の猛攻と火と壁で敵は
為す術もなく殲滅されていく、ガブリエルラブのあいつらの投降を許せないので
徹底的に叩く、夜の7時に殲滅完了。
「俺たちの勝ちだぞ」
「カブリエルめ思い知ったか」
「勝どきを上げろ」
「「「エイ、エイ、オー」」」
盛り上がってるので敵の情報を持って俺1人で南へ
アオイは休憩時間なので馬を借り一度外へ出て、そこからはテテだ
敵はユミルから40キロの所で野営していた、明日にはユミルか。
近づき『アクアフラッシュ』で攻撃開始、夜に光魔法は映えるな
敵は約5千、先発隊はどうやら半数ずつ別れたようだ。
だいぶ切れ味が落ちた剣で斬りつける、主力は魔法だ
夜間で自らの勢力圏という事もあり、奇襲は成功、敵は士気が高く
1時間経っても向かってくる、8割程度討ち取った所で
やっと逃走という勇敢な所を見せてくれた。
「みんなラインに逃げるぞ」
「爆裂だ逃げろ」
「あいつはやばい」
これで諸侯がどう動くか未定だが敵主力は2万5千だ。
夜のうちにユミルに戻り、みんなに戻るよう指示をだして
俺だけ気合の乗ったアオイでエトワールへ戻る。
☆☆
途中でガブリエルの部隊ではない軍を発見した。
「わたしはエトワール領主だ、君たちの敵は誰だ」
「ダテ子爵だ、ここで殺せ」
また敵ですか、陛下は人気がない、人気がないのは俺か。
「運がないやつらだ、【アクアフラッシュ】12連」
毎度お馴染みの先制攻撃を加える、どうも偶数じゃないと攻撃の間が
持たいない、4方向に3発ずつ撃ち込む定番戦法だ。
「ダメだ、爆裂にはやはり勝てん」
「投降するか?」
何言ってるんだ、俺1人でお前らを奴隷に落とせう訳ないだろう。
全部で6千位か倒したら、四散していった。
追っても意味がないのでエトワールへ帰還だ。
「カリムいるか?」
「おいもう営業時間はおわりだ」
「刀ないか、敵が来るぞ、お前の家族も危ないぞ」
「何を、仕方ない、待ってろ」
奥に行くと刀持って来やがった。
「おやっさん、あるなら言えよ、一体どんだけ斬れない刀で戦争してると
思ってるんだよ」
「ちょっと新しい試みを試していてな、まあ使ってみな」
「ありがとよ、幾らだ」
「大小合わせて、金貨50枚でどうだ、じゃあこいつらの修繕含めて60枚な」
「今度もまた酷いな、なんだこれは剣か」
「刀スキルで使える特別性なんだよ、頼むぞ」
「仕方ねえな、やっといてやるぜ」
夜中から戦い、昼に戦い疲れた。
「子爵起きて下さい」
「フレイヤか、優しく起こしてくれよ」
「みんな集まってますよ」
仕方ないいくか。
「みんな早いな」
「もう2時過ぎです」
「そうか、それで話とは」
「カナン近辺で戦闘があり、王国軍が勝利したと報告がありした」
「これで後はガブリエルのみか」
「それと白鳳便の報告では敵本隊は5日後にエトワールに到着予定との事です」
「早いな」
「本日より街の外周に臨時城壁を建てます」
「わかった、敵の予想兵力は?」
「先発隊を壊滅出来ましたが、諸侯と敵本隊はと後続部隊は合流して約4万」
「こちらは城壁守備は住民に要請、兵士は攻撃に専念します、リンの部隊が
戻ってきたと仮定して兵力1万5千です」
「わかった、城壁の建設部隊と斥候以外は十分休息を、この戦は疲労で勝敗が
決まるぞ、住民にも休息を徹底してくれ」
「「「はい」」」
そうなると俺が敵を疲れさせないとダメか。
ヘトヘトとまでは行かなくても、睡眠不足にしないとな。
俺は翌日より、朝昼夕になるとアオイで突撃して『アクアフラッシュ』を
浴びせるを毎日繰り返した、夜は安眠だが
2日目の夜だけ夜中の2時に襲った。そして
会議から3日後にリン達、遠征軍が帰還、離脱者なしだそのまま休息を取らせ。
会議から5日後、敵4万がエトワールの南東20キロに到着。
エトワール防衛戦の開始だ。
残高:66億3千万と金貨55枚




