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音速異世界爆走記  作者: 風間サトシ
第三章
42/81

第四十話:ユミル防衛戦と静かな帰還


 少し前にユミルの東側が光り、凄い音が聞こえたと思ったら

ほとんど同時に防具はつけているが、ほとんどが武器を持っていない

部隊が、まったく無秩序に街へ飛び込んできた。



 兵士達はまさに凶悪な魔物に追われて逃げる子供のように

なりふり構わず逃げ惑う、そこには命令系統等は既に存在せず

みんなの顔には焦りと恐怖が見て取れる。



 私は先発隊を指揮してユミルに着いたが、ほぼ同時にユミルの領主代行が

挙兵したらしく、ユミルの街は混乱の中にあった。


 いち早く街に飛び込み、街の南地区の西よりで抵抗を続ける部隊と合流した

この部隊はウードという男が兵を挙げる事を知っていたようでいち早く

住民を南門へ誘導しながら防戦していた。


「私達はエトワールのダテ子爵の部隊です、ガブリエル候爵の援軍に来ました」


「それは助かる、約3千の駐留軍がウードと共にユミルを武力支配しようと

している、現在住民を南へ逃がすので我々は精一杯の状態だ」



☆☆


 俺がユミルの街へ入ると街の中は混乱を極めていた。

 

 住民は僅かな兵士に誘導され南側へ逃げているように見える。

 

「みんな落ち着け、とにかく南へ逃げるんだ」

「ウードが候爵を裏切ったぞ」

「ウードの兵がやって来たぞ」


 俺は住民に危害を加えようとする奴を『アクアフラッシュ』で薙ぎ倒し

ながら進む、敵主力を殲滅した後に、頭の中でピコーンと、この戦場には

似合わないレベルアップのお知らせが頭で鳴り響いていた。


 何か人を殺しても何を感じない、ただ兵士を見かけたら『アクアフラッシュ』

を撃ち込むという作業を繰り返しているだけ。


 何か夢の中の出来事のように感じる、これは本当に現実なんだろうか?


 伯爵と共に侵攻してきた兵士はただ逃げるだけで、自分の進路を妨害する者は

誰であっても殴りかかる。


 ウードの部下らしいやつらも街に逃げ込んだ兵士と戦っている。

 

「俺達の前からどけ、殺すぞ!!」

「待て、俺たちはウード様の兵だ、トライゾン伯の兵ではないのか?」


「邪魔だ死ね!!」

「とにかく西へ逃げろ、あいつが追ってくるぞ」

「次は確実に殺されるぞ」


 随分な言われようだ、確かに気がつけば沢山の兵士を無差別に殺して

しまったが、お前たちも戦争に来たんだろう。


「悪魔だ、悪魔が来た、道を開けろ!!」

「俺は死にたくない、逃げるぞ」

「俺もだ、邪魔するやつは殺す」


 俺はただ前に進むだけで敵が逃げるので、周りの声は聞き流し街の西のへ進む。

 

 先程住民が西の方から『エトワールの応援』が来たと言っていた

リンの先発隊が到着しているのだろう。


 住民は南に避難をしているので西へ進むしかない。

 

「カズマさん、大丈夫でしたか?」


「シャルか無事だったか」

「はい、つい20分ほど前に東の空が光って、すごい音がしましたが」


「たいした事ではない、それより戦況はどうなっている?」


「まだ確定ではありませんが、ウードは3千を率いて挙兵、ほぼ同時に

兵2千が住民の避難を開始したようです」


「我々はその直後に到着したようで、今はリンが主力を街の南西部に展開中です」

 ウードは約束の時間には決起できなかったようだ、たぶんほとんど自分の下へ

集まると思っていたんだろう。


「シャルとにかくリンと合流しよう、敵は混乱している組織的な行動は

取れないだろう」


 それから40分ほどでリンの部隊が見えてきた、伯爵と共に来た侵攻軍は

誰も止めないので、そのまま街の西門から逃げて行った、特にウードの部隊に

混乱を与えて。


「子爵ご無事でしたか? 敵は混乱しているようなので攻撃はしませんでした」


「それで問題ない、逃げたければ逃げればいい、俺たちはユミルの防衛が任務だ」


「どんな感じだ?」

「はい、候爵からこの事態を指摘されていた部隊がおり、現在は住民の避難活動

の援護をしている状態です」


「敵には指揮系統がないようで、我々を襲ってくる部隊は、ほとんどいません」


 ウードは指揮してないのか?


「襲ってこないなら問題ない、指揮官はリンだ、好きにやってみろ」

「了解しました」


「みんな、これより現在の部隊編成のままウードの部隊を包囲する」


「ユミル防衛部隊は南より中央へ進軍するので我々は西より中央へ進軍し

これを包囲する、無理に殲滅を目指す必要はない」


「尚、西門よりエトワール方面へ向かった部隊は心配する必要はない」

「見た所武器もなければ荷物も持っていなかった」


 それから俺とシャルと精鋭100人位で部隊を編成して徐々に中央を目指す

ほとんど組織的な抵抗がないので精鋭100名の前には

道端の石ころのような物だ。



 うちのノリのいいバカが『爆裂の魔道士』が東より攻め上がってるとか

言いふらしたようで、街の東側は人がほとんどいない。


 悪魔よりましなので好きに言わせてあるが、シャルに言わせると

これも戦術だと言い張る始末だ。


「カズマさん、どうやら勝負あったようですね」

「そうだな、敵の指揮官が見当たらんし終わりのようだな」


 そろそろ6時か、避難民がかなり居たから随分手間取ったな、明るくなれば

住民も多少は落ち着きを取り戻すだろう。


 ウードを探して幕を降ろさないとな。

 

「子爵、ウードを見つけました」

「そうかご苦労」


 最近部下が増えたから顔を覚えられないな、兵士についていくと街の北側の

屋敷にウードはいた、右腕が途中から無くなっている、部下にやられたのか?


「兄様、敵の司令官の手当はどうします?」

「ヒルダ来ていたんだな、はい後方の衛生部隊にいました」


「どうせ、この後に死ぬんだ、必要はないな」

「こちらの被害はどれくらいだった?」


「怪我人を50人程度治療しただけで、他はほとんど住民でした」

「所でヒルダはこの戦争でレベルは上がったか?」


「お姉ちゃんも対して倒してないし、上がりませんよ」


 そうか、離れすぎていたのか?

 

「ダテ子爵とお見受けします、私どもはガブリエル候の部隊です、今回は子爵の

部隊が来てくれなければ負けていました、感謝いたします」


「我々は国王に反旗を翻すトライゾン伯討伐が主な任務ですので」

「それでウードはラインに送ることになりますか?」


「出来ればユミル防衛の英雄の子爵に処刑して頂ければ、民衆も喜ぶかと」


 俺に押し付けてきたか、養子とはいえガブリエル候の後継者候補だからな。

「分かりました、こちらでお受けしましょう」


「有難うございます」


「シャル聞いていたな、1時間後に広場で処刑だ、住民にも噂を流してくれ」

「はい、連行しろ」


 これからどうするかだな、処刑が終わればこの街で出来る事は終わりだ

勝敗は別にして、ラインも戦闘は終わっているだろうし。


☆☆


 1時間後、広場前にはかなり人が集まっていた、住民はかなり被害を受けた

らしいからな、全部で1万はいるだろう。


「ではダテ子爵の家臣、シャルロッテが今回の騒動の首謀者のウードを処刑する」

 ウードはもう諦めているようで抵抗しないな。

  

 シャルのハルバードが見事にウードの首を落とした、住民から歓声が聞こえる

これでガブリエル候にも面目が立つだろう、あとはうちの本隊だが。


「リン部隊を休ませてくれ、長居すると変な勘ぐりをするやつが出るとも限らん」

「はい、出発は3時間後でいいでしょうか?」

「そうだな、部隊に通達すると共に住民にも街を出ると通達だ」


「それと、これ以降のユミルでの全権はリンに委任するから好きにやってくれ」

「了解しました」


 俺は眠くないし、アレクの様子を見てから先に帰るか。

「シャルよくやってくれた、俺は帰るがシャルはどうする?」


「そうですね、私も早く帰れるなら帰りたいですね」

「じゃあ一緒に戻るか」

「はい、ヒルダもお願いします」

 

 それからヒルダを探して西門に向かうと、サラが部隊を100名程引き連れ

現れた。

「サラ、本隊はもう着くのか?」

「ご主人さま、リンから我々が優勢の報告を受けましたので、現在はアレクが

捕まえた兵士を奴隷に落として王都へ送るそうです」


「遠くまで逃げてないなら、ユミルに連れてくればいいんじゃないのか?」

「どうも捕虜が奴隷に落ちてもいいが、ユミルにだけはどうしても戻りたくない

と言うので仕方なく、私達だけ報告に来ました」


 よほど俺と会いたくないらしい、嫌われたもんだ。

「会えて良かったよ、俺たちは帰るがサラはどうする?」


「みんな引き上げるんですか?」

「いや、全軍の指揮はリンに預けてきた、帰るのは俺たちだけだ」

「では私も戻りたいです」


「わかった、部隊にリンの所へ報告に行かせてくれ、外で待ってるよ」

「はい、15分程度お待ち下さい」


 それからサラは部隊に戻ったので俺たちはユミルの門の外へ出て

10分で帰って来たサラと合流した。

「ヒルダ、悪いが荷箱の中だ」

「兄様、酷いです」

「すぐ着くから、我慢してくれ」

「わかりました、昨日から何も食べてないので、兄様のおごりで沢山食べます」


 そういえば、俺も食べてなかったな。

 

 俺たちはテテでエトワールに向かう。

 

☆☆


 流石にエトワールは街へ直接入れない、街も人が多いし、人が並んでるしな。

 

 諦めてテテから降りて歩いて空いてる東門から中へ入る。

「ご主人、帰ってくるのが早いですね」

「ああ、リンに任せてきた、部隊にも損害はない」


「では街のみんなに伝えておきます」

「よろしく頼む」


「俺達はこれから昼食を食べに行くから、またな」

「ミラもいくです、伝言は城の衛兵に言っとけば伝わるはずです」


 食いしん坊さんは健在か、まあいいか。

「じゃあ、みんなでマグロ食べに行くか?」

「兄様、賛成です」

 

 それから俺たちは再び港の有名店に来た、名前はカモメ亭、俺が密かに援助

している店だ。


「女将さん、赤マグロあるだろうね?」

「あるよ、5人かい?」

「ああ、例のやつをおねがいするよ」

「はいよ、待ってておくれ」


 テーブルに着き、周りを眺めると更に繁盛しているようだ。

「カズマさん例のやつとは」

「赤マグロの刺し身だ」


「はいよ、おまたせ赤マグロの刺し身と魚の盛り合わせだよ」

 来たか、年を跨がず刺し身を食べられるとは。

 

「兄様これは?」

「赤マグロと鯛とたぶんヒラメじゃないかな」

「美味しいんですか?」

「ダメならステーキを頼んでもいいぞ」


 刺し身を見ながらヒルダが周りのテーブルを見回す、2つのテーブルは

刺し身を食べているようだな。

「では頂くか、みんなは好きに注文してくれ、俺のおごりだ」


 美味いな流石に醤油様だ、焼いたのもいけるが、やはり俺は和食派だな

冷凍物じゃないマグロは初めてかもしれないな。


 鯛とヒラメも美味だな、魚料理はいろいろ進化していくかも知れないな。

「兄様、おいしいです、特にごはんと合います」


「そうだな、パンと刺し身は無理だな」

「お姉さんお替り」

 ミラはもう食べ終わったのか。

 それからみんなからお替りが入り、40分ほど食べまくった。

 

「美味しかったよ」

「いい食べっぷりだね、あんた達は」

「まる1日食べて無かったからね」

「そうかい、全部で金貨2枚だね」

 俺もだいぶ食べたが、こいつら食い過ぎだ、乙女じゃないのか?

 まあ赤マグロの新鮮なのを指定したんだ、安いと思うべきか。

 

「ご主人、もう食べれないです、馬車で戻るのも面倒です」

 ミラもだいぶ贅沢な生活に慣れてきてるな、どこかで締めないといけないか。

 


 城で仕事をしてるとロキが会いたと言ってきたので会うことに。

「この度は伯爵の軍を打ち破ったと聞きました、おめでとう御座います」

「悪いが、どうやらロキの知己とやらは寝返らなかったので、生死も不明だ」


「そうでしたか、役に立たないなら問題ありません」

「友人ではなかったのか?」

「いえ、前に領地で何度か話をしただけですので」


 友達という訳ではないのか、それは良かった、生きてても奴隷落ちだからな。

「それで用というんは戦闘の結果が聞きたかったのか?」


「いえ、子爵が言われた商会の設立の目処が立ちましたのでご報告に」

「流石に手際がいいな」

 

「子爵が経営者だと解らなくする為にエルミールと少々交易がある西の大陸の

カリーナ王国の出資と言う事で王都に出店して、そこからカナンを経て

エトワールに出店予定です」


「それで問題ない俺の個人資産から金を渡しておこう」

「星金貨で3520枚と貴金属だ、これで問題ないか」


「はい、それだけあればすぐに計画を進められます」

「では任せた期待しているぞ」


「ペコ商会をすぐに上位商会にしてみせます、ご期待下さい」


 ギレンと神殿で盗った分、魔道具等を残して全部だしてしまったな

俺がいつまでも持ってるより使ってしまったほうがいいだろう。


 ペコのマルム教徒は増えているが、女神の名前も広げてやろう。

 

 だいぶ食べたので、戦闘の疲れがでたので休む、今は兵がいないからな。 

 

☆☆




 数日経過して、みんなも帰って着て、政務も一段落ついたので

今日は刀を引き取りに行くか。


 エトワールも20日程度でかなり活気が出てきた、物の価格も安定してるし

市民も増えてきたが、商人風の旅人が多く感じる、今まで街の出入りだけで

小金貨3枚と銀貨6枚かかったのが銀貨1枚の超激安だからな。


「おやっさんいるか、刀出来てるか?」

 呼ぶと出てきた、まだ客が来ないんだろう、店はあるけど看板さえないし。

 

「あんちゃんよくきたな、もう出来てるぞ」

「早いな、暇なのか?」

「わかってねえな、こっちは店を買ったからって、すぐに仕事出来ないんだよ」

「元々鍛冶屋じゃないからな、ならよく出来たな」


「この街で仕事してた仲間が手伝ってくれてな、助かったぜ」

「本格的に仕事にかかるのは、やはり年が明けてからか?」


「そうなるな、俺はなんとかなるが、ダンの方は大変そうだぞ」


 アニタちゃんの危機だと。

「あんちゃんの紹介もあって物は大方揃ったんだが、いきなりあんな大きい宿屋

の経営だからな、準備が大変そうだ」


「そうだな宿屋は鍛冶屋と違って、客が多いからな」

「俺も最優先でダンの宿で使う道具の作成を手伝ったんだが、まだ納得できる

包丁とかは出来ていないな」


 ちょっとでか過ぎたか、でも一生もんだからな。

 

「そうだ、おやっさんの子供はいくつだ」


「やらねえぞ」

「いつくれって言ったんだよ」


「10才と下は6才だったかな」

「そうか来年から試しに読み書きに計算と簡単な勉強を教える、学校を始める

予定だ興味ありそうなら聞いてみてくれ」


「学校か高いんだろう?」

「最初は、週に2日で月に銀貨2枚で始める予定だ」

「かなり安いな、やっていけるのか?」


「別に貴族や商会の家族を対象にしてる訳じゃないから、その辺が妥当だろう」

「俺の子供が学生さまか悪くないな」


「今まで行ってなかったのか」

「もちろん、年に金貨10枚だからな、俺は払えるがみんながな……」


 アニタちゃんは学校行かないであれだけ出来るとは凄いな。

 


「フレイヤ、学校の準備は出来たか?」

「場所は街に10箇所で教える者も引退した商人を中心にほぼ揃いました」

「年が明けてから徐々に始めると既に市民には通達済みです」


「週2日でいいんだな?」

「はい王都の幼年学校が3日ですので、今まで学校に行く習慣がない人から子供を

集めるので、労働力の低下を考慮すると妥当かと」


「慈善事業で始める訳ではないですし、年齢は制限無しで、時間は朝2の鐘から

4の鐘迄、希望者が多い授業は加えて1つ選択可能でいいかと」


 4の鐘で終わって、教師の賃金を払える講習だけ1科目追加か、妥当だな。

 

 教える方もご老体がメインだ、午後2時頃に帰れれば文句は出まい。

 

「分かった、取り敢えず1年はやってみよう、浸透しないなら中止だな」


「今年も終わりだが、他に予定はあるか?」

「年末にマルム教の神殿で大規模な祭りが開催されます」


「わかった、参加希望の者は休みで問題ない、参加させてやってくれ」



 

 さて、東部と北部と南部は戦争中か、あの幼女は本当に戦争好きだな。

 

 しかし戦争が多いな、来年で国内平定できるか。


残高:130億4千万と金貨64枚


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