第三十九話:ユミル防衛と衝撃ハイビーム砲
人やお金を集めるのは大変のようです、特に人は自分の意思が
あります、人が集まる街作りを目指そうと思います。
☆
翌日、ユミルの街を散策しながらガブリエル候爵に会う手段をシャルと
話しながら歩くが、どうも昨日感じたように人が少ない。
「シャルどう思う、何か候爵様の街にしては活気が足りないような気がするが」
「そうですね、人が少ないというのが気になりますね?」
「ガブリエル候爵って知ってるか?」
「いえ、私は知りませんね」
「とりあえず、ウードっていうのがどんな人間なのか探ってみるか?」
何件か店に入ったり、役場に行ったりしたが特に情報は無かった、宿屋の
主人の話通り、最近この周辺で兵士が訓練しているのは知れ渡っていた。
「兵士の集団が食堂に入るようだ、俺たちも入るか」
食堂の中は8割ほとが武装した兵士のようだ、ウードの手下かな?
とりあえず、酒を頼んで周りを伺うか。
「俺もラインに同行したかったな?」
「そうだな、ラインのほうが遥かに大きいし、人も多いだろうな」
「でもラインは領主が領地替えになったんだろう?」
「そう聞いているぞ、どこかは知らんが、何でも王都よりかなり北らしいぞ」
「ガブリエル様はもうラインに入ったかな?」
「そうだな、ラインまで10日はかかるからな」
「そうだな、兵を8千程度連れてだから、今頃戦闘になっているかも知れんしな」
「ガブリエル様が就任した訳だから戦闘はないんじゃないのか?」
「バカだな、ラインの領主を解任されて、不満がない訳ないだろう」
「そういえば、ウードも最近演習してるみたいだが
俺たちは勝手に演習してるだけでいいのか?」
「ガブリエル様からの通達だ、問題ないんじゃないか?」
「しかし、そろそろ新年だし休みが欲しいな」
「きっと、年明けには休暇が貰えるだろう」
なんか聞いたことある名前だとは思ったが、就任式でアルベルト陛下が
候爵にした貴族だったか、すっかり忘れてたぞ。
しかし俺と同じで新領地へお出かけ中か、どうも人が少ないはずだ。
少しはパーティで周りと話をしておくべきだったか?
「シャルどうやら、候爵には会えないようだな?」
「(そうですねラインですか、最悪はユミルの兵も敵になりますね)」
シャルが小声で怖いことを言うが、確かに領主がいないとなると養子殿が
指揮権を持っているのかな?。
これは最悪のパターン2の敵味方識別不能な戦いになるかもな。
この際、エトワールに引き返すもありか、まだ出たばかりだし。
「シャル、下手すると俺たちが侵略者扱いされるんじゃないか?」
「私もそれを考えていました」
「とにかく情報がここでは入らないようだ、一度王都で情報を集めよう」
「わかりました」
食堂を出て素早く移動、住民もある程度は候爵を追いかけたのだろう
人気のない所でテテに乗り込み、テリー君に会う為に王都へ向かう。
よく見ると本当にエトワールから王都の間は村とかないんだな
2時間程で王都へ到着、テテから降りて門へ向かう、登録待ちも終わったようで
すんなり王都へ入れた。
王都の中は前と同じく人の数が凄い、師走なのかな、だとすると市民も休暇に
入るのかも知れない。
アルト商会は以前のように訪問客の列は無かったが、かなりお客が多い
繁盛してるんだろうな、とりあえずテリー君に面会したい旨伝える。
だいぶ長く泊まっていたから、みんなも俺を覚えていてくれた。
来たようだな、早いな大店の跡取りにしては。
「テリーさんすいませんね、お忙しいところを」
「いえ、昼前に白鴎便が着きましたから心配していたんですよ」
白鴎便というのはかなり早いらしいな、俺も売ってたら買うか。
「本日はどんなご用件で?」
「すいません、王都を出てから色々有って、今日はガブリエル候爵と言う方に
ついて色々教えて頂きたいと思いまして」
「カズマさん久しいな、それは私が代わりに答えよう」
「……アルトハイムさん居たんですか?」
「先ほど戻ったばかりだ、エマから白鴎便が来たと連絡をもらったのでね」
まずいな、昨日連絡頼んで今日王都にいるってのは、誤魔化せるかな?
「色々あるがまあいいでしょう、候爵の件でしたな」
「候爵もカズマさん同様、ラインの領主になった訳だが直接向かわず
一旦ユミルに戻ってからラインへいくと聞いている」
「ユミルからの連絡でハマーン宰相に入った報告によると兵8千を連れて
ラインに向かったらしい、ユミルには駐留で5千残してあるらしい」
5千程度か全部敵に回る可能性もあるのか。
「まだラインに着いたとの報告はないんですか?」
「ラインからは国王就任からまったく音沙汰無しだな」
「カズマさん、ラインから来た商人の話ではかなり険悪な雰囲気らしいです」
テリー君のナイスアドバイス、これは今頃戦闘中で連絡できないのか。
どうも一方的な通信手段のせいで、情報が錯綜してるな。
エトワールより酷かったら不味い状態だ。
「カズマさん白鴎便によればガブリエル殿の救援に向かうとの事だが、向かうのは
ラインかそれともユミルかな?」
「ユミルに進行してくる軍があると部下から報告があったので」
「そうか、その話は聞いている、すでにユミルに向かって進撃しているらしい」
「トライゾンの愚か者が挙兵したようだ、数は不明だが5千以上らしい」
「現在、王国は国王就任と同時に反旗を翻した北のルーカン候にはカナンを中心に
兵2万で鎮圧に向かっている」
「それと、知っているように南のガレドン候へは王都から2万を出して進軍中だ」
「陛下はエトワールの治安回復と遠征軍の補給協力に満足している、ユミル救援に
ついても問題ない、存分に働いて欲しいとの事だ」
「有り難いお言葉です」
「トライゾンが進軍したとなれば、情報を寄越したアラン伯を中心に
トライゾンの元領地へ攻め込むだろう、本当にバカなやつだ」
バカか、退路が無いとそうなるのかな? 権力者は辛いな。
とりあえ進軍は承認頂いたようだし、補給も満足してもらったなら
引き返せないな。
「もし、ユミルで候爵の御子息が反乱に加わった場合は、どのように?」
「ウード殿か反乱軍に加勢するなら、反逆者として処分して問題ない」
「ガブリエル殿からユミルを立つ際にハマーン宰相に連絡があったようだ」
領地で反乱起されるよりもラインという街の制圧を優先したのか?
「では私はエトワール領主の義務を果たす為、ユミルで反乱軍を迎え撃つと
陛下にご伝言お願いします」
「わかった、確かに伝えておこう」
「本日は貴重な情報ありがとうございました、テリーさんもありがとう」
「では急ぐので失礼します」
「もう夜ですが、今から戻るんですか?」
「テリーさんすいません、時間がないので失礼します」
北部も戦闘があるのか? これはゆっくり内政に専念できないじゃないか。
シャルと二人で王都をを出た時は、すでに9時を過ぎていた。
今頃みんな野営中か、エトワールへは戻れないしユミルにいくか。
☆
夜の10時か本当に人がいないな、街の人もここが危ないと感じているのかも
知れないな、候爵は予想していたようだし。
宿の部屋にシャルと二人で戻ったら主人に変な誤解を受けたが気にする必要
はないだろう。
「シャルとりあえず、ウードはまだ敵対するかわからないので、トライゾンの
部隊を探りに行こう」
☆
翌日、ロキさんに聞いた街道沿いを東へ進む、相手の進軍スピードを探る為
時速100キロで進んで、1時間15分で着いてから125キロ位か。
アクレよりも先に着くか、とりあえずシャルは目立つから一度へ内の先発隊
が見える所まで連れ帰り、俺だけ、お昼近くに再びやって来た。
今頃、リンと合流してるだろう。
丁度、休憩の時間のようなので、兵士の格好で寛いでる兵士に話しかける。
「これでは、明日着くかもわからないですね?」
「その格好はエン男爵の伝令部隊か?」
「はいそうです」
「気にするな、周辺を警戒する必要はないから明日の夜中に攻め込めるだろう」
「夜中でありますか?」
「おまえ達が着く頃には、ほとんど決着が付いてるだろう」
「そうですか、ではみなさんご武運を」
あまり頑張れると困るけどな、シャルが先発隊に合流したから情報は伝わった
はずだが、このままだと不利だな、ロキの案を試すか。
周りを適当に見渡すが旗が違う部隊が結構いる、これは明日はもっと増えるか。
ロキから預かった旗をもって、先発隊と本隊の間を伝令兵を装い行き来するが
何も起こらないぞ。
本隊の近くで雑魚寝してたら、明け方近くに知らない兵士が話しかけてきた
「その旗をお持ちということはロキ殿の仲間と思っていいのか?」
「そうですね、ロキ殿は現在、エトワールよりこちらへ向かっています」
みんな来るとは思っていなかったようだ。
「わたしたちは以前からギブン公にお味方するよう進言していたんだが……」
「ロキ殿は伯爵に直談談判して奴隷落ちだ、援護が無ければ残念だが伯爵と共に
ユミルに攻め込むしかないと思っていた」
家族とかいそうな年齢だし仕方ないか?
「みんさんご家族は?」
「親族はみんなラインに向かわせた」
あれ、戦場になっているのでは? 仕方ないか選択肢が無いからな。
「みなさんはご協力頂けると仮定した場合、全部で何人程度ですか?」
「仲間と兵士を合わせて250人だ、少なくて済まない……」
「いえ、この状況で援護頂けるなら、問題ないです」
「我々はすでにエトワールから精鋭7千でユミルに向かっています」
全部精鋭じゃないけど。
「それはかたじけない、我々はどうすれば宜しいか?」
「そうですね、どの程度でユミルに着くかご存知ですか?」
「今日は食事が済んだら出発、馬の休憩以外は休まずに行軍予定でユミルの
手前の村で最後の休息を取ってそこから夜の間にユミル落とす予定だ」
「それは、ユミルに内応者がいると言う事ですね?」
「そうだ、ウードも今日の7の鐘でに挙兵する予定だ」
そうか夜に挙兵して、そこに伯爵達が雪崩込むのか。
アレクは間に合わないか?
「わかりました、では夜に本隊を襲いますので
敵の部隊が村で睡眠を取ったら、その隙にトライゾン伯の始末をお願いします」
「チャンスが無くて無理だと判断されたなら、お好きにどうぞ」
「はっきり言って、みんさんの援護が無くても問題ありません」
「いいのか、ユミルが落ちるぞ」
「わたしは国王派でエトワールの人間です、少数でユミルを防衛する義理はない」
悩んでいるが、こればっかりは仕方ない、主君を裏切るんだ覚悟を見せて
貰わないとな、みんなはどこまで侵攻するつもりだったんだろう?
「兵が起き始めたようです、みなさんの運が良ければ、また会いましょう」
「……こちらもみんなで相談するよ」
ロキには悪いがこいつら使えないな、エトワールへ編入も考えたがダメだな。
兵もみんな起きて朝食の用意が出来たので、まあ俺も食べていくか。
参ったな干し肉かそういえば初めて食べたな、『荷箱通販』があるから
食べたこと無かった、ハムと比べると美味しくないな、俺たちも
部隊の食事を改善しないといけないか。
「よし、ここで馬の休憩に入る」
「ふ~疲れたな」
「朝からほとんど休み無しだからな」
「次の休みには村に着きそうだな」
「村って言っても、もう人は居ないんだろう」
「ああ、そう聞いてるぜ、ウードってやつが気を利かせたらしい」
「今回は楽勝だな」
そろそろ5時かウードは本当に動くか。
それから進軍して村らしき所に着いたので最後の休憩だ。
これまでの感覚からいくと、2時間程度休むつもりか、どこで襲うか?
ロキの知り合いを助ける義務が無ければどこでもいいんだが
ウードが動くのを見てからでいいな? 本隊も疲れたのか本格的に寝てるし
あいつらが本気ならこの村で決起するだろう?
出来なければ縁が無かったという訳だ、残念だ。
3時間経ったか、俺が伯爵に近寄っても問題無かったし諦めたか、つまり
王都を目指すつもりだ。
「みんな出発だ」
「おう、俺たちが先陣だな」
「ユミルは豊からしいからな、やるぜ」
俺も行くか、周りと徐々に距離を取り、部隊の後方に回る。
それから1時間でユミルが見えたが、どうやら街で火災が起きている。
全軍で急ぎ向かうようだ、昼から数えたが総勢1万5千程度か、結構いるな。
俺は部隊から完全に離れて林の中でテテに乗車した、さてガーンファミリーの
ようにはいかんよな、武装してるしテテでひき殺すのも時間かかるし。
行くか、もう先陣の部隊はユミルに20分程度だろう。
最悪は2万相手か?
後方からゆっくり近づく、幼女の言葉と力を信じてみるか。
「いくぞテテ、俺たちの晴れ舞台だ」
なんかテテが『わかったぜ』と言った気がしたが、市民は巻き込めないしな。
「なんだおまえは、どこかの部隊か」
「気にするな、お前らは知ってもすぐに意味はなくなるさ」
「変な乗り物に乗りおって、あいつに弓をを放て」
テテ少し空に浮いた状態だ、攻撃してくるがバイクに当たって跳ね返る。
「残念だよ、運が良ければ生き残れるぞ」
そこで俺は事故に会う直前からいじっていなかった
ライトのボタンをハイビームにした。
凄い音と共に光の波動が目の前を照らす、昔の軍艦の砲手というのはこんな感じ
だったのだろうか?
気がつくと、前方には多くの人が倒れていた。
一度に2秒程度、光の砲弾を撃ち込めるらしい。
戦果が光でよく解らないので、5回ほど撃ち込んでみた。
先陣の兵士は射程外のようで、ユミルに入った、俺の周りは静寂が包む。
俺の周囲の兵士は、誰も倒れたまま動かない。
近くの兵士に近寄って脈を計ってみると、どうやら死んでるみたいだ。
熱エネルギーではなく、光魔法のような効果か、ペコは本当に凄いな。
射程が短いとか、そういうレベルの話じゃないな、これは味方が居たら
使えないな、暫く封印か。
周りを見渡し、ゆっくりユミルに入る。
残高:130億4千万と金貨66枚と押収した金貨




