第三話:異世界通貨獲得と女神との再会
人を騙すのは気が引けますが、これも世の為、私の為、カズマいざ出陣でご
ざる。
街へ潜入する為に夜になるのを待っていた、明るいと人目につくし
遅くなりすぎると最悪は門が閉まったら大変だ
服装は上はTシャツ、下はスラックス。
相棒は倉庫へ保管、その他の物はアイテムボックスに、現地のお金があれば
身分証を無くしたと言いくるめる事が可能かもしれないが
タララ預金の引き出しは日本円と数か国の地球の通貨しかできなかった。
これは俺が旅行先の空港や銀行で両替した通貨だろう。
門に何食わぬ顔をして近ずき懐中時計を左手に持ち、右手には
直径10cm位の石を1個握っている。
門番の方々の簡易宿舎だろうか、そこの窓に向かって石を投げる
パリーンという音と共にに窓が割れた。
「なんだ! 窓が割れたぞ」
周りの人たちが窓の方向に眼をむけた瞬間、左手に持った懐中時計を
窓に眼をむけた門番たちに向けてから。
「【減速、30倍、効果2分】」
小声でつぶやきながら、時計のボタンを一回押す。
その場にいた人たちは窓の方を見ている状態で止まっているように見える
どうやら成功のようである、林の中で鑑定スキルで懐中時計を見て
かなりの時間、試行錯誤した甲斐があったな。
すかさず時計を自分の体に押し付けて。
「【加速、30倍、効果2分】」
小声でつぶやきながらボタンを2回押す、すかさず街の中に向けて
門を通過、すでに閉店していると思われる商店の建物の影に移動、門周辺に目
を向けるがどうやら自分達の行動に制限をかけられた事による
違和感はないようだ。
この減速効果は対象に時間的制限をかけ倍率、効果時間
効果範囲を指定可能らしい。
現在の効果の最高値は30倍、効果時間5分、範囲指定の距離は実験中
無指定でも10m程度は範囲内のようだ。
人間振り向くのに1秒として、それが30倍になるので30秒。
俺自身には加速、減速効果の逆効果だが、1秒に4m進めるとして30倍で
120メートル進める、オリンピックに出場する機会があれば
金メダル確実だ。
わざわざ夜に街へきたのは善良市民のみなさんの既製服を
売っていると思われる店でこの街の普通の人達が着ていた服
をこっそり荷箱に入れてすぐ元に戻す。
ついでに勉強机の引き出しのような所に入ってる硬貨も
同様に入れては戻す作業を行い、いったん路地裏に撤退だ。
タララ預金の引き出し可能通貨にエルミール王国通貨と表示された。
通貨の単位はメル
引き出し可能額が2小金貨、5銀貨、2大銅貨、12銅貨と表示された。
日本円だと2万5千520円とあるから、小金貨が1万円相当
銀貨が千円札相当大銅貨は200円玉当たりで銅貨は10円ってとこか?
他にも金貨らしきものがあったので、きっと小金貨の上には金貨があるの
か。
銅貨の下は不明だ、とりあえず荷箱のパネルを操作して必要な服を注文。、
先ほど荷箱に出し入れした服が、冒険者風、商人風とあるが、貴族ご用達の
店舗ではなかったらしい貴族が着ていそうな服はなかった。
とりあえず上は綿なのだろうか学生服を思い起させるボタンが6つ
付いてる服で下はショートパンツのような薄い青色のパンツを
靴は登山靴のままだ
どうやらあまり目立たないようだ。
上下で銀貨8枚と大銅貨2枚と表示、一度荷箱に入れた物は
中古品扱いになるらしく、これでも定価の5割引きらしい
問題はこの文明レベルにおいて定価で商品を買う慣習があるとも思えない。
残高1小金貨、7銀貨、12銅貨か、小金貨だけ残して
メル通貨を引き出す。
7銀貨と12銅貨、どうやらこちらの概念では引き出し手数料は無いようだ。
☆
宿屋を探して街を歩いていると3階建てのレンガ造りの建物が見えた
看板には潮風の満腹亭とある。
階数と名前から食堂兼宿屋といった所か、中に入ってみると
8人位の人が酒を飲んでいた、ウエイトレスらしき人はおらず10才位の少女
と俺と同じ位の年の女性で切り盛りしているようだ。
俺の外見は半分の14才になったようだが、相棒のバックミラーで確認したが
中学生というよりは高校生2年程度に見える感じだ。
「今晩泊まりたいのですが、部屋はありますか?」
「ひとりかい大部屋なら一晩1銀貨、個室なら3銀貨、朝食が1大銅貨
夕食が2大銅貨、お湯が必要なら3銅貨だよ。酒は別料金だよ」
「では今晩1泊お願いします。それに朝夕の食事もお願いします」
「はいよ、銀貨3枚と大銅貨3枚だね、これが部屋の鍵、2階の4号室ね」
お礼を言いつつ清算してから、食堂のカウンター席に着く
テーブルの周りを見回してもメニューらしきものはない
壁にかかった木の札にメニューらしき物が書かれているので
居酒屋のように大声で注文するのだろうか?
考えていると先ほどの少女がやってきた。
「お客様、ご注文はお決まりですか?」
「肉料理でお願い、あとはおまかせで、飲み物は水をもらえるかな?」
「わかりました。では本日の2番定食のうさぎ肉の煮込みとパンとスープです
ね」
こちらではABCではなく定食は1~5番とあるらしい、これだけ定食の種類
があり酒類があるということは食材が豊富な世界なのか?
物価が安いのか? 魚も食べたかったが海老恐怖症の俺には
安全に肉料理を指定しておいた、うさぎというのは食べた事
がないがたぶん大丈夫だろう。
「おまたせしました、こちらが2番定食です。こちらがうさぎ肉の煮込み
こちらが本日のスープ、宿泊のお客様はパンはお替り自由です」
「美味そうだね、ありがとう」
さて異世界初食材に挑戦、うさぎの肉は豚コマという感じの見た目で
味は鶏肉のような感じだ。
しかしブロイラー的な臭さは無い、当たりかもしれないな、スープはじゃが
いもを入れてじっくり煮込んだ感じのポタージュだ、水はミネラルウォーター
よりも遥かに美味しい。
食事も終わり部屋へ移動、ドライバーセットでも開錠できそうな
作りの鍵だが無いよりいいだろう。
☆
部屋に入ってベッドでくつろぐ、ベッドは2つ、きっとツインルーム
なのだろう。
他には椅子が2つと小さなテーブルが一つ、今日はお風呂はなしでいいか
寝るとしよう、お金やスキルポイントの事は明日考えよう。
☆☆
「ホホホ、一馬よまだ生きていたか?」
「おまえは幼女か」
「幼女ではないペコ神であるのじゃ」
「やはり神様の持ち物は、スキルがついていたな、ありがとな」
「わらわから強引に奪っておいて、今更遅いわ、お前の事はお母さまに報告済
じゃから、今の仕事が終わったら鉄槌を食らうがいい」
鉄槌はイヤだな。
いつごろお母さまとやらの仕事は終わるのか?
「母親の仕事はいつごろ終わるんだ?」
「30年もあれば終わるわ」
「30年か、まあそれだけあれば俺は40代後半か、それまでに多少は善行
を積んでおこう」
「殊勝じゃな、本来死ぬ予定ではなかった貴様にしてはよい心がけじゃ」
あれ? 今なんて言った、死ぬ予定はないと言ったか?。
「おい、幼女、今死ぬ予定じゃなかったとか言ったな?」
「そうじゃな、まあ貴様はすでにここへ戻ってこれないし、教えてやろう」、
「お前は実際、乗り物のみが犠牲になって
貴様は1週間程度のかすり傷で終わる筈だった」
俺は病院生活なら死んでもいいと思ったが、実際はかすり傷で済んだのか?
「まあ、見切りで幼女の空間に転送したのか?」
「その通りじゃ、貴様に襲われたのであおいこというやつにしてしんぜよう」
「まあいいだろう、どうせ元の世界に戻れないだろうしな、所でペコ神の加
護とペコの魔法と他力本願のスキルの説明を願えるかな、女神さま」
女神は1分程考えた後に話し始めた。
「加護はおろかな貴様にスキルを与える為の力なのじゃ、わが首飾りは我の力
の一部を封印したもので、他力本願は
魔法によって生成された魔道具の力を貴様のスキルに変換するのじゃ」
「ペコの魔法はわらわが地上界へ行ったときに使用した魔法が使えるのじゃ、
繊細は貴様の馬車の後ろにあった箱に魔法教書を入れておいたぞ」
そういえば荷箱の中を全部確認してなかったな、外にいたし仕方ないか?
「わざとネックレスを盗らせて、俺に恩を売るのはいいとして、女神は夢に
ちょくちょく登場できるのか?」
「お前がネックレスを持っている限り可能じゃ、暇な時にきてもいいぞ」
「後、わが顕現記念として、ふたつみっつ簡単な望みを叶えてやろう
言ってみるがいい」
貴様からお前へ修正か、機嫌が良さそうなのでお願いしておくか?
「では相棒のオートバイ、女神様の言うところの機動馬車の見た目をこの世界
でも日常的な物に変えてもらえるか?、もちろん性能を落とさずにな」
「その程度なら可能じゃ、ヴォルホルではリスが妥当じゃな、お前が念じれば
リスと馬車に変更できるようにしておいてやろう」
あと1,2個か、何がいいかな?ペコの魔法を試してないし、いつでも
これるなら、言質は取ったし緊急時や今後の為に取っておくか。
「残りはそのうち、また女神様と夢で幾度かの会瀬を重ねた後にいいかな?」
「まあいいじゃろう、ではさらばじゃ
命の軽い世界じゃ、生きていたら多少の望みは良かろう」
そして幼女は消えて、俺は夢の中で意識が消えた。