1-1 冒険の始まり!?
神様に仲間達と再会したいと願い、異世界にやってきてすぐ幼馴染のコウと再会出来た俺だったが、なんとも複雑な気持ちでいた。
だって、そもそも異世界で再会するなんて夢にも思ってなかったからだ。
「コウお前、なんでこんな所に居るんだよ!?」
俺が質問すると至って真面目な顔付きで、
「だから、あのトカゲを追って来たんだよ。」
「ちっげぇよ!そうじゃなくて、なんでこの世界に居るんだって話だよ。」
コウは泥団子を捏ねながら、俺の顔を覗きこんだ。
「わりぃわりぃ。まぁ色々あってな。実のところ俺もまだこの世界の事や、なんでここに居るかはわからないんだ。トオルこそなんでここに居る?それより久々の再会だろ!なんか別の言葉があってもいいんじゃないか?」
「あぁ、久しぶりだな。見た目はアレだが、相変わらずって感じだな。それと、この世界で俺はエルだ。」
「エル?なんでエル?」
「そんな事どうでもいいだろ!俺はついさっきここに来た……というか、飛ばされたんだよ。」
するとコウは、泥だらけの手で地元の神社の御守りを指差して、
「お前、ここに行かなかったか?」
_っ!?
「もしかして、お前も行ったのか?」
「なんだよっ!俺、神様に選ばれし者だと思ってたけど、他にも居たのかよ。」
ガックリと肩を落とすコウ。
ただ1つ理解出来たのはやはり藤崎神社がこの世界と何か関係しているのは間違いないみたいだ。
だとすれば、コウはなんの願いで転移させられたのだろうか…?
「コウはなんの……」
その時だった。森が急にざわつき始めた。
コウは耳を澄ませる様な素振りをすると、俺の事を急に持ち上げた。
「お、おい何をす………」
次の瞬間コウは俺の事をぶん投げた。
俺は空中へと放り出され、そのまま街道の地面に…
「ちょ、ちょ、うわぁぁぁあーーー。」
ぶつかる寸前でコウが俺をキャッチした。
「ふぅ。危なかったな。」
と涼しげな顔で言った。
「ふっざけんなっ!てめぇ!!殺す気かっ!」
「あぁ?ちゃんとキャッチしただろ?」
「そういう問題じゃねぇだろっ!」
全力で抗議する俺に対してコウは苦笑を浮かべながら
「わりぃわりぃ。まぁでも結果オーライだな。」
と、言った。
「一体何が起こったんだ?説明してくれよ。」
「あぁ、多分あのトカゲ野郎の死体の匂いに釣られて魔獣達が食い散らかしに来たんだろ。」
「ま、魔獣!?なんだそれは?」
「あの、トカゲ(ドラゴン)だって魔獣だよ。俺もよくわかんねーけど、世話になってた村の村長が物知りでな。分かりやすく言えばモンスターみたいなもんだな。」
まぁ此処は『異世界』な訳だし、モンスターが居てもおかしくはないだろうな。
それに最初に会ったシズクって女も魔法みたいなの使ってたしな。
「そうか。そんで、コウはいつから此方の世界に飛ばされたんだ?」
「わからん。でも少なくとも20日ぐらいは経ってるんじゃねぇか?」
「20日っ!?いやだってお前4日前に試合に出てただろ!?俺テレビで観たぞ?」
「はぁ!?なに言ってんだお前。此方の世界には時計が無いからハッキリはわからねぇけど、間違いなく20日ぐらいは此方で生活してるぞまじで。」
どういう事だ?
俺は間違いなく4日前にテレビの中継を観ていた。
しかし、コウがこんな無意味な嘘を付くとは考えられない。
もしかしたら、俺はしばらく意識を失っていたのか?
考えるにしろ今は情報が少なすぎる。まずは情報を集めるのが先決だろう。
「……この時間のズレに関しては今考えても答は出ないだろう。それより、お前『勇者』になれって言われなかったか?」
「勇者?そんな事言われてないけど?そう言えばお前さっき勇者エルだとか言ってたな。俺もまだ行った事ねぇんだけど、この街道の先に スラヴ って云う街があるらしいから、そこに行けば何か分かるんじゃねぇか?」
コウが指差す方へと目をやったが、街どころか、森しか見えない。
「スラヴ?えっと……そこまで行くのにどれくらい掛かるんだ?」
コウは自身の長身を生かし、高いところになっている木の実をもぎ取って頬張ると、
「ん?馬車で半日は掛かるらしいぜ。」
「その木の実俺にもくれ。小腹空いちゃってさ。歩きだと1日以上は掛かるって事か。」
コウはもう1つ木の実をもぎ取り俺に渡した。
「そうだな。んで、お前には何か勇者としての力とかあるのか?」
俺も木の実を頬張りながら
「それが何にもわかんなくてさ、お前のその怪力はいつからなんだ?」
「この世界に着いたら、こんな姿になってて、正直俺も驚いてるんだよまじで。」
元々筋肉バカみたいな奴だったとはいえ、アンドレザジャイアントも顔負けってぐらいの巨体になって驚かない訳ないだろうとも思いつつ、ここに突っ立ていても仕方ないので、森の新鮮な空気を肌で感じながらスラヴへと歩みを進め始めた。
「もしかしたら、俺にも何か特殊な能力あるのかな?」
「そんなの俺に聞かれてもわからねぇよ。」
「ま、そうだよな。それにしても遠いな。どこか途中に宿とか無いのか?」
「だからそんなの俺に聞かれてもわからねぇよ。」
「……今大体何時ぐらいなんだ?」
「だーかーらー、そんなの俺に聞かれてもわからねぇよ。」
「………………お前使えないな。」
ボソリと呟くと、前を歩いていたコウが勢いよく振り返り、俺に拳を振りかざそうとする。
「はぁ!?てめぇその言い方はねぇんじゃねぇか?まじで。」
俺は慌てて両手を挙げて
「わ、悪かったって。そんな怒るなよ。」
「なにビビってんだよ。マイケルだよマイケル。」
と言って大笑いするコウ。
昔のコウならビビる事もなかったが、さすがに今の姿で脅されれば誰でもビビるだろ。
「ま、マイケル!?」
「ジョーダンだよ冗談。」
「………あーね。」
…………………。
そんな他愛ない会話をしながら、俺達は森の街道をスラヴへと向かって歩いて行くのであった。
皆さんこんちには!
ようやく一章の幕開けですね。
これからどんな仲間達と、どんな冒険をするのか?
次回はいよいよメインヒロイン登場!?
次回もよろしくお願いします。