0-4 大男の正体はまさかの……
シズクに置いてかれて、少し寂しい気分なんだが、今はそれどころではない。
何故なら、ドラゴンを吹き飛ばした大男の安否確認をしなくてはならない。
俺は倒れた大木を何本も跨ぎながら、恐る恐るその男の近くまで行った。
「…それにしても、この世界にはとんでもない人間しか居ないのか?」
なんて独り言を放った瞬間、
ドラゴンの亡骸の横で倒れていた男がムクリと立ち上がった。
俺は咄嗟に倒れた大木の影に身を潜めて様子を窺った。
男は、血と土でひどく汚れたタンクトップをパンパンっと払い、
「……よし。結果オーライだなっ!!!」
と、あちこちから出血しながらも、満足そうに歩き出した。
………結果オーライ……なのか?………まぁ結果オーライか…。
それより、今まで倒れていたから、よくわからなかったけど、近くで見るとめっちゃ身長でかいな。
250センチぐらいか?
いや、それ以上だろう。
それに鍛え上げられた筋肉が半端ではない!腕の太さなんて、俺の顔の大きさぐらいあるぞ!?
………やっぱり怪物だろ。っとやべぇなこっちに向かって来るぞ……
どうしたもんか。と悩んでいると、大男は俺が隠れていた大木を軽々と持ち上げ、
…………………目が合った。
『っうわぁぁぁあーーーーー!!?』
俺は驚きのあまり、声を上げながらしりもちを着いた。
それは大男も同じだったのだろう。持ち上げた大木をぶん投げて、声を上げた。おそらくビックリしたのだろう。
「す、すすすいません!!!俺は別に………」
俺はしりもちを着きながら、両手あげて後退る。
そんな俺を見て大男も両手をあげ、
「大丈夫だ!俺は人間だ!」
と言った。
………え。
「……えっと。あなたは?」
恐る恐る質問する俺を見て、男は優しく笑いかけたきた。
「あーわりぃね。初対面だと大体みんな似たような反応するからな。お前はさっきシズクちゃんと一緒に居た奴だよな?」
「あ、あぁ。勇者のエルって言うんだ。あんたシズクと知り合いなのか?」
「勇者エル?まぁ知り合いっちゃ知り合いだな?あれ?そう言えばシズクちゃんはどうしたんだ?」
「あいつなら、そそくさと帰って行ったよ。全く冷たい女だぜ。それと、『助けられたとは思ってないから』って言ってたぞ?どーゆー関係なんだよ?」
なんだか話してみると普通の人間な気がしてきた。
男は地べたに胡座をかいて座り込んだ。
余程の長身だ。そうして貰えると首が痛くならないで済む。
「相変わらずだねシズクちゃんは。どんな関係って言われても一回会っただけなんだけどな。」
と、首もとをポリポリ掻きながら苦笑する。
「昔からあんな感じなのか彼女は。それより、名前はなんて言うんだ?」
「あぁ、俺はコウって言うんだ。よろし……………」
そう言って、俺の顔を見て、固まった。
……なんだろう。そんなに俺の顔が珍しいのか?この世界に来て二度も同じ反応されると少し困るんだけどな。
「…………えっと?……コウ?」
約五秒程目が合うと、コウは目を見開いて、
「お前もしかしてトオルなのか?そうだよなトオルだよな!!!!お前なんでこんな所に居るんだよっ!!!」
__っ!!?
この時全身に電気が走る程驚いた。
トオルとは俺の本名である。(日本での本名)
「………えっ!?……お前誰?」
俺の知り合いには、ドラゴンを一撃で倒せる様な大男は存在しない。てか、地球上に存在しないだろ。
「ってお前ひでぇな!!だからコウだって言ってんだろ?幼馴染の事も覚えてねぇのかお前は。」
__っえ!?
「……ちょっと待て。コウってあのコウ?4日前に総合格闘技で王座挑戦して敗れたあのコウなのか?」
「そうだよ!!その俺だよ!ほら!」
と、言って地元の神社の御守りを見せてくれた。
「えぇぇぇぇぇえええーーー!!!!!?何これどゆこと??ここ異世界だよな!?」
皆さんこんばんわ。
まさかの幼馴染との再開
これはどういう事なのか?
果たしてここは異世界なのか?
次回は、少し時間を遡って、勇者エルがこの世界に来る事になった理由を語りたいと思います。
次回投稿は2日後ぐらいになります。
次回もよろしくお願いいたします!!