0-3 開いた口が塞がらない!?
森の奥から『何か』が凄まじいスピードでこちらに向かって来る。
これは、目に見えた訳でも、音が聞こえた訳でも無いが、『何かが迫っている』と直感的に伝わって来るのだ。
それはシズクも、なんなら目の前ドラゴンも感じているのだろう。
俺達の視線は街道沿いの森へと向けられている。
そして、その直感は正しかった。
森の奥からゴォォォーオッ。と地鳴りみたいなのが聞こえてくると、同時に森の小鳥達がバサバサと散り散りに飛び去って行く。
そんな状況でもシズクが冷気の威力を落とす事は無く、
謎の襲撃者が姿を現すのを今か今かと待っている。
それは直ぐだった。
やがて地鳴りは轟音へと変わり、
「うぉぉぉぉおおおーーーー。」
と男の雄叫びと共に森の切れ間から一人の大男が飛び出して来た。
大男はそのままドラゴンに向かって一直線に走って行くと、
「っう。まじかっ」
ボソッと呟いたその刹那、凄まじい轟音と共に土埃が巻き上がり、目の前のドラゴンに衝突した。
もろに激突されたドラゴンはそのまま反対側の森へと吹き飛ばされ、周囲の木々を数十本程なぎ倒し、そのまま地面に崩れ落ちた。
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……………開いた口が塞がらないとは、まさにこういう時に使うのだろう。
俺とシズクはその光景をただ、眺める事しか出来なかった。
「……なぁ。今のはなんだ?」
「……あたしが聞きたいわよ。」
「……そうだよな。……ドラゴンは?」
「……だから知らないわよ。あっちに吹っ飛んで行ったんじゃない?」
気がつけばこの時、既にシズクの冷気は無くなっていた。
俺は開いた口を無理矢理閉じて、シズクに確認した。
「なぁ。俺の見間違えだと思うんだが………。」
「なによ?」
「……ドラゴンに衝突したのって……人間じゃ無いよな?」
「あら、奇遇ね。あたしもそう見えたわ。」
正直あの時は、シズクの放つ冷気で凍え死にそうだったから、自分の見間違えだと思ったのだが、
どうやら間違っていなかったみたいだ。
恐らくあの男は、ドラゴンの手前で停まるつもりだったのだろうが、シズクが辺りをバキバキに凍らせていた為、足を滑らせて転んだのだ。
しかし、問題はそこでは無い。
このあまりにも無茶苦茶な破壊力が、ただ転んでぶつかっただけだと云うのがどうしても腑に落ちなかった。
このまま帰りたい気持ちで一杯だが、事故現場を確認しない訳にはいかない。
俺とシズクは無造作に倒れた木々に足を取られながら、ドラゴンが吹き飛んで行った場所へと向かった。
そこに居たのは、グッタリと脱力して朽ち果てているドラゴン(巨大トカゲ)と大柄な男性……(多分人間)が血だらけになって倒れていた。
「なぁシズク。……あれ死んでるのか?」
「そうね。完全に死んでるわ。……ドラゴンはね。」
「あんな勢いで衝突すりゃ、死ぬよな……………ってあの大男は生きてんの!!?」
血だらけになって倒れてる男を指指して、驚きを隠せないでいると、シズクはその男の方をチラっと見て、大きくため息を吐いた。
「はぁ。まぁ結果的にドラゴンはなんとかなったし、あなたも氷付けにならなくて良かったんじゃない?」
そう言って、シズクは背を向けて何処かへと行こうとする。
「おいおい。ちょっと待ってくれよ。どこに行くんだよ?」
こんな状況で一人にされるのはさすがに心細い。
だが、シズクにとってみれば、そんな事は関係ないのだろう。
「帰るのよ。ドラゴンも片付いた訳だし、ここに残る理由はないでしょ?……あ、そうそう。あんたの名前聞いてなかったわ。」
そう言えば名乗って無かったな。
「俺の名前か………俺は 勇者エル だ!よろしくなシズク!」
と言って汚れた手をズボンで拭って、握手を求めた。
が、なぜか少し考え込む素振りを見せ、握手はせず俺に背を向けて
「随分馴れ馴れしくなったわね。自称勇者さん?街に帰ったら噂を広めといてあげるわ!それと、その男が目を覚ましたら、助けられたなんて思ってないと伝えといてくれるかしら?それじゃ元気でね自称勇者さん
。」
皮肉っぽい事を言いながら自分の馬に跨がり、こちらに背を向けたまま、ヒラヒラと手を振りながら街道の奥へと行ってしまった。
「………って!誰が自称勇者だっ!!!!」
皆さんこんばんわ。
少しだけ語らせて頂きます(笑)
実はこの作品はもう何年も前から考えていた話で、ずっと書きたかったお話なんです。
だけど、文章とかそんなに得意ではないので、中々形にする事が出来ず、ようやくストーリーが煮詰まったので今回投稿させて頂きました(笑)
作品内では語られない裏設定とかも後々には公開したいと思います。
話の内容としては、まだどんな話なのかわからないと思います。
だって序盤ですからね(笑)
完結する頃には50話は越えると思われます(笑)
気長にゆるっと楽しんで戴けたら幸いです!!
次回公開は明日となります。次回もよろしくお願いいたします!