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15・復讐はまだ続く

感想の返信・対応についは、少し考えるところありまして、少しお待ちいただければと思いますm(_ _)m

「今日からド底辺人生を送ることになったマルレーネの門出を祝って、プレゼントがあるんだ!」


 と心優しい俺はとある道具を取り出した。


「あははははははは! やったーですわ!」


 マルレーネが壊れたように笑っている。

 オークのような顔をした女がこんな不気味な笑い方をしているのだ。

 周囲にいた教皇、神官共は最早枢機卿でもなくなった彼女を見て、引いていた。

 中には「次は自分の番かもしれない」といった面持ちで、震えているヤツもいたが。


「イーディス。取ってきてくれ」

「うん。分かった」


 とことことイーディスを歩いて行き、近くの棚からとある液体が入った瓶を持ってきた。

 当初の打ち合わせ通りだ。


「これはなんだと思う?」

「ポーションですわ! 心優しいアルフ様は、わたくしを回復してくれようとしているのですわ!」

「ぶぶー。間違いだ」

「ぎにゃー!」


 マルレーネにはこの真っ黒な液体がポーションに見えるんだろうか?


「お前、キレイな髪してるよな」


 改めてマルレーネの髪を見た。


 宝石がこぼれ落ちるような金色の髪。

 マルレーネ自慢の髪で、いつも手入れを怠っていなかった。

 この世界において、金色の髪というのはみんなの憧れだ。


「でもこーんなキレイな髪。今からの人生じゃ不釣り合いだよな?」


 ニイと口角を釣り上げた。


「わたくしの髪、キレイ? キレイ?」


 今から起こることも知らず、マルレーネは目を輝かせた。


「ああ——だからこうしてやる!」



 そんなマルレーネの頭上から、俺は一気に液体をぶちまけた。

 


 真っ黒な液体が髪に浸透していく。


「鏡も見せてやるよ!」

「わたくしの髪が……くろ、いろ、になっていきますわ……あは、あははははははは!」


 さらに壊れたように笑い出すマルレーネ。


 そうなのだ。

 このマルレーネにぶちまけた液体は『カラーペイント』と呼ばれるものである。


 本来、建物や道具に色鮮やかに塗るための道具だ。

 この液体には微量な魔力が含まれており、ペンキといった塗料よりも剥がれにくくなっている。


 さらに液体は下まで染み渡っていく。

 例えば草にこの液体をぶちまけると、地面の下まで染み渡っていくため、成長して伸びていってもまだ色が付いたままだという。


「どうだ? 真っ黒な髪だ! どこにでもいる真っ黒な髪! 嬉しいだろう?」

「わたくしの髪が黒になった! わたくしのキレイな金色の髪が黒になった! 今まで見下していた庶民と同じ色になった! あははははははは!」


 表情は笑っているが、マルレーネは目から涙をこぼしていた。


 なかなか器用なヤツだ。


 さらさらしたマルレーネの髪が黒色になっただけではなく、見るからにガシガシになっていく。

 本来カラーペイントは人体に使うものではないのだ。

 髪なんかに使ってみろ。一瞬で痛んでしまい、これからいくら手入れをしても追いつかないだろうな。


「本当にこの部屋はなんでもあるな! 今まで悪魔審判と称して、被害者で遊んでいたのが想像出来るよ!」


 このカラーペイントが審判室にあるのも、今俺が考えたようなことをこいつ等もやってたんだろう。

 自業自得だ。


「さて……マルレーネも壊れたし。そろそろ聖堂の中に信者達も入ってきそうだな」


 大聖堂の扉はもう決壊寸前である。

 ぶち破られ、信者達がここに流れ込んでくるのは時間の問題だろう。


「じゃあ俺、もう行くよ!」


 と俺は神官共に手を振って、ここから出て行こうとした。


「アルフ。どこから逃げるの?」

「秘密の通路を知ってる。こうなることは分かっていたから、予め他の神官に教えてもらったんだ。脅迫してな」

「成る程」

「まあ俺が通った後は、入り口は封鎖させてもらうが」


 弱くなっている神官共では、俺と同じルートを辿って逃げることは不可能なはずだ。


「今から信者達が流れ込んでくるけど、頑張ってくれ! なあに、本当にイーディス神のご加護というものがあったら、生き残れると思うよ!」


 絶望で顔を暗くしている一人の神官の肩を、元気づけるようにポンと叩いた。


「ああ……イーディス神よ。我を……我だけでもいいから、助けたまえ」

「そんな自分勝手なヤツにイーディス神は微笑まないよ」

「うん。その通り。アルフみたいに慈悲深き優しい人じゃないと、わたしは笑わない」


 とイーディスがぼそっと言った。


 あっ、そうそう。

 忘れるところだった。


 俺はマルレーネに近付き、とある魔石を発動させた。


「もっともっと苦しめ。俺の経験した底辺はこんなもんじゃない」

「——! あははははははは!」


 壊れたマルレーネでは俺の言葉を理解出来るんだろうか。


 まあいっか。

 ()()()()()()()()()()んだからな。


 マルレーネの狂ったような笑い声を聞きながら、俺は脱出用の通路へと急いだ。


 ◆ ◆


「アルフ。これであの聖女への復讐は終わり?」


 秘密の通路はじめじめと暗い場所だ。

 街の外の森まで通じており、結構長くなっている。


 上から信者の怒声と、神官共の悲鳴が聞こえてきた。

 極上の音楽であった。耳が浄化されていくようであった。


「そんなわけないよ」


 俺はイーディスと通路を歩きながら、復讐について話す。


「でも、あそこで聖女は殺される。そうなったら、聖女にもう復讐は出来ない」

「最後、俺がマルレーネに使ったのは緊急脱出用の転移の魔石だ」

「えっ?」


 イーディスが目を丸くする。


「この魔石を使用すると、死ぬ寸前で魔法が発動して脱出出来るんだ。主にダンジョンに行く冒険者達がよく使っているな」

「どうして……? あのクソ聖女に情けをかけた?」

「俺が? そんなわけないだろう! イーディスは面白いことを言うなあ」


 イーディスの頭を撫でた。


 この魔石。死ぬ寸前に発動する、というところが肝だ。

 これからマルレーネは死にも等しい断罪を、信者達から受けることになるだろう。


 死にたい死にたい……死んだ方がマシだ。

 ああ、やっと死ねる!


 そう思った瞬間に、俺が仕込んだ魔法が発動。

 死ぬことが出来ず、大聖堂から脱出してしまうのだ。


「しかもその魔法にはなレベルがあってな。どれくらい死ぬ直前……なのか決めることが出来る。ギリギリまで戦いたい、という冒険者もいるからな」

「うんうん」

「その中でも俺が定めたレベルは……最高レベル10! 体中の血という血が吐き出され、自分の意識もなくなってきた頃に……発動する。それまでマルレーネはその恐怖に耐えなければならないんだ」


 ああ!

「助けてくれ」「許してくれ」と叫んでいるマルレーネを想像すると、鳥肌が立ってくる。

 もっとも、今の壊れたマルレーネはそういうまともな言葉を発することが出来るのか、と考えると少し疑問だが。


「それでも」


 イーディスが不満げに続ける。


「死なない。あの聖女は死なない。それは助けたことになるんじゃ?」

「なるほど、そういう見方もある。だがな、イーディス。俺はあいつをかんたーんに殺さなーい。もっともーっとあいつが苦しまないと、俺の気が晴れない」


 殺してくれ、と叫びながら生ゴミを漁るような。

 そーんな底辺をマルレーネにもっと味わわせてやる。

 マルレーネをあれだけボコボコにしても、俺の心の渇きは潤せなかった。

 ちょっーっとはマシになったけどな。


「どうだ? イーディス」

「わくわくする」


 さて、そろそろ通路を抜けそうだ。



「アルフ。次はどうするの?」

「もう決まってるよ。あの脳筋頭お花畑頭パーの女戦士をやる」



 次のターゲットは——女戦士サラ。


 お前だ。

これで二章の聖女編は終わりです!

ただ聖女をメインにするのは終わりですが、彼女の苦しみはまだ続きますし、描いていくつもりです。

つまりアルフが彼女を殺さなかったのは、これ以上の苦しみを味わわせたかったから…です。


次は女戦士編になります。


「ここまで面白かった!」「女戦士編も読む!」


少しでもそう感じていただいたら、嬉しいです!

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