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東方開拓都市イスカの民話集

夢見る浜

作者: 笹本廉太郎

大陸南側の海岸に、夢見る浜という浜がある。

さわやかな海風に大きな実をつけたヤシの木が揺れる風光明媚な場所ではあるが、この場所で昼寝をすると、皆一様にとある同じ夢を見られるのだという。

かつて、この場所には一人の青年が住んでいた。

彼は若くありながら町一番の武芸者としても知られており、近辺で魔物の目撃などがあれば仲間を集め、率先して討伐にいく。

そんな青年だった。

そして、彼には思い人がいた。

彼は町のために魔物を討伐すると疲れを砂浜で波の音を聴きながら癒し、娘はそんな彼に一言でも声をかけようと夜の浜を散歩していたのであった。

ある日の事である。

夕焼けの浜で休んでいた彼は夢を見た。

娘と結ばれ、幸せな家庭を作る夢を。

しかし、平民の彼と権力者の娘とは身分違いの恋であり、そんなことがあるはずがないと彼は頭をふった。

しかし、ちょうど同じ頃浜に遊びに来ていた娘も遊び疲れからかうとうとしてしまい、同じ夢を見たのだという。

それが二人が言葉を交わすきっかけとなった。

町の勇者ご体を癒す間の少しだけの会瀬。

しかし、ある日のこと、青年が血まみれになって町へ運ばれてきた。

野に出没した魔物と戦い、魔物は打ち倒したものの深手を負ったのだ。

虫の息だった青年は浜辺へつれていってくれと苦しそうに告げた。

青年の負傷を聞いて権力者と娘が来たとき、浜に横たえられた青年はもう長くないことは誰が見ても明らかだった。


町を救ってくれてありがとうと声をかける権力者と青年の怪我を見て絶句し、泣き崩れる娘。

泣き崩れる娘に青年は息も絶え絶えになりながら告げたのです。


私はこの浜で、この海で眠りにつきます。

ですが、あなたが望むなら、願うのならこの場所で夢の中で出会えるでしょう。


こう、言い残し青年は眠るように息を引き取った。

それからというもの、この浜で眠りについたものは一様に同じ夢を見るようになったという。

正装をした若く力強い青年と、その腕に抱かれるドレスを着た嬉しそうな娘の姿を。

それから100年あまりたった今でもこの夢は見られるのだが、ここ最近になって内容が変わってきているのだという。

夢を見たものの話では、いままでの二人の若い夫婦の夢ではなく、幸せな家族の夢なのだという。



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