表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ストーリーテラーの遺し物  作者: 水無川
第1章 少女の夢見た世界の始動
1/21

第1話 少女は既に舞台の上に


 幼い頃、大切にしていた本があった。


 お父さんがどこからか持ってきた、小さな手には少し大きかった一冊の夢物語。

 輝く光の玉に力を貸して貰って、人々は火を灯し風に乗る。水は宙に浮いて草木が絵を描いていた。そんな不思議な、魔法みたいな世界。

 色彩豊かな挿絵に目を輝かせ、話の続きを読んでといつもせがんでいた。


 だけれど時の流れは残酷で、思い出せるものは部分的になってしまった。

 彩られた世界は確かにあったと言い切ることができるのに、詳しい内容は掠れていて分からない。読んでくれたお父さんやお母さんに尋ねてみても、忘れ去ってしまったようで覚えてくれてはいなかった。




 捨ててしまったのか、誰かにあげてしまったのか。探しても見つからないそれは、実は記憶の混同が生んだ幻なのかもしれない。

 でも、それでも。

 あたしの中に遺り続けている物語は真実だと、信じていた──












 蝉の鳴く駅前に、ボストンバッグを肩から掛けた少女が降り立つ。健康的な小麦色の肌は太陽が照らされて、じわじわと汗を滲ませていた。


「ここが、これから暮らす街かー……」


 長い髪を無造作に一本でまとめた彼女は、片手に持った数回読んだだけのパンフレットを丸めてゴミ箱に投げ入れる。

 自信に満ちた顔を輝かせ、やる気に満ちた眼差しを道の先に向けた少女は、迷いのない足取りで歩き出す。




 そしてその数分後。


「小父さん、ひより……(たちばな)ひよりです。うん、着いたの。着いたんだけど。ここ、どこ……?」


 人のいない寂れた公園のベンチに座り込んだひよりは、落ち込んだ声で電話をする──いわゆる迷子になっていた。


はじめまして、水無川と申します。初めてのなろう連載です。読んでくださりありがとうございます!

遅筆なため更新はゆっくりになると思いますが、構想は出来上がっているためきちんと完走できるよう頑張りたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ