01 変わり者の自己紹介
どうも、自分の名前はセン・ラインボルト。貴族位は返上した筈だった。
その筈なのだが昇進した。何故だ。
自己紹介をしよう。
自分は二ホンと言う国の知識を持ったまま生まれてしまい、最初の頃は苦労した。
しかしそれらの知識を幼少の頃から親に良い所を見せたいと言う子供心と親孝行の心と後は自己満足の為に全力で使用した結果実家が凄い事になった。
国内の権力的に。
それも王族越えも目じゃないぐらいに。
しかもその権力の9割を十にも満たない子供が得たと言う事実。
それらを実感し、納得し、飲み下した子供がまず思った事は一つ。
『このまま行くと国が崩壊する』、と言うモノ。
一貴族が力を持ち過ぎた結果国盗りが起こって大惨事なんて創作話も自分からしてみればいつ起こるか気が気で無かった。
実家が権力に固執するような所じゃなくて良かったと切に思う。
お陰で奇麗に周りを巻き込んでから没落出来たのだから。
一体何をやったかって?
まあ簡単に説明すると。
『膨れ上がり過ぎた自分の家の財産と権力を王家に引き取って貰った』
ただそれだけの単純な話。
ただ自分が気付いていなかった事がある。
その利益を生み出したのは誰だったのかを忘れていた事。
そして自分は何処までも演技が下手だと言う事を認めなければならなかった。
今となってはもう遅い。遅いどころか終わっている。
二ホンと言う前世の知識に引きずられた結果がこれだ。
「先輩!いえ、センさん!」
「ああもう口を開くな『復権王女』!」
「いえ、聞いてもらいます!」
色々な物を作った。
色々な物を整備した。
色々な発想を披露した。
そして色々とやり過ぎた。
「何故悪役として去ろうとした所で引っ張り戻すのだ!」
「あ、先輩は最初から面倒見の良い人で通ってましたよ」
「何ィ!?」
それらを踏まえた上で叫びたいと思う。
「何故っ、こうなったのだ……っ!」
セン・フォン・ラインボルト。
ラインボルト家の長子として生まれ、幼少より『多彩な知識』を以て侯爵家の発展に寄与する。
幼子では持ちえない筈の知識に関する噂も多々出回るが嘘か真か『前世持ち』と言われている。
そしていつ頃からかおかしな言動を周りに見せ続けるようになり、そして唐突に王都から去った。
ラインボルト商会を王家にそっくりそのまま渡し、
ついでとばかりに溢れ返った家の財産を使い潰し、
国内にあった切り捨てるべき貴族と言う膿を一族丸ごとの取り潰しに追い込み、
そしてその騒動の責任を取ると言って貴族位を返上した変わり者。
そんな彼の事を皆こう評した。
「変わり者」だと。