貴方に復讐を
とある高校の屋上。
基本的には閉鎖されているが、部活動での特権で使用できることが多々ある。
その中で、人を待っているのか動かない影がひとつ。
トントンと階段を登る音が扉の方から聞こえ、待った?との高めの声が響く。
「部活中じゃないの?誰もいないけど…。で、用事って何かな?」
幼い高めの少女の声がまだ日の高い青空に響く。
風で少女の長い黒髪が揺れる。
「いや、用事というか、伝えたいことがあって。」
その少年の言葉に少女は怪訝な表情を浮かべる。
少年は、意を決したように続きの言葉を紡ぐ。
「俺ずっと前から好きだったんだ」
沈黙が空間を支配する。
少女は、ずっとこの言葉を待っていた。嬉しさで一杯になるが、その感情を表には一切出さずに、困惑した表情で彼に聞く。
「どうして?」
「どうしてって、勉強できるし、優しいし、それに可愛いし。」
そこらの男よりは自分は格好良いと思うし、という言葉は彼の心の中にとどめたが。
少女は困惑の表情を浮かべたまま何も言わない。
それに焦れたのか最後
「付き合ってください。お願いします。」
「嫌です」
すぐの反応だった。
「…どうして?」
彼は驚いたようにぱちぱちと目を瞬かせている。
どうしてもこうしてもない。
「どうして、ね。君はどうせ気にするのは外見と周りの噂のみ。見た目が悪ければ人じゃないような扱いをするようなやつが幸せになれると思ってるの?」
少女は言い募る。突然のことで彼は何も言えない。
「散々散々人をいじめて蹴り飛ばして殴り飛ばしたくせに」
「なんのことだよ!俺はそんなこと…」
「してないっていうの?」
少女はそういい、彼を突き飛ばす。
小柄なはずの少女の力とは思えないほどの大きな衝撃が彼を襲い、フェンスの方まで吹っ飛ばされる。
「まさか…でも、アイツは………」
呻くように彼は呟いた。
「希田春歌は死んだはず?って」
少女はニッコリと笑って問いかける。
「すっごい痛かったよ毎日毎日陰口言われて殴られて。バレないような場所ばっかりで。いざ訴えようとしたら車に撥ねられて。一回車の事故にあったことはあるけどその時は本当に軽症で済んだんだからどんだけ殺す気だったか実感したよね。」
ノンストップでしゃべり続ける少女を止めるものは誰もいない。
「死んだら、終わりだと思った?私は貴方だけどうやっても許せなくて。だから…」
私と同じ目にあっても文句は言わないよね
その日以降、少女と少年を見たものはいない。
ただ、2人の人間が消えてもその学校では何事もなく日々を刻み続けている。
ーーー
「ありがとうございました。これで未練無く先に進むことが出来そうです。」
長い黒髪を揺らした少女は言う。
「いえいえ、中々に面白かったですよ。こちらとしても復讐劇を見るのは楽しいもので。さて、対価としては、貴方の記憶と貴方がもし未来へと生まれ変わった時の少しの幸運をいただきますがお間違えないですか?」
いつの間にか少女の横には影があった。狐面をし、着物のを着た男が煙管を懐から出しながら問いかける。
「はい、大丈夫です。彼に言う機会と復讐する機会を下さり本当にありがとうございました。もし、また会えたらお願いします。」
少女は狐面に微笑み、その場から消えた。
「記憶をもらった以上二度と会うことはないでしょうけどねぇ…。まぁ面白いものも入ったし良しとしましょう。」
少女からもらった少年を見やり、ニヤリと笑う。
「復讐屋、ご利用いただきありがとうございました」
yの方です。初投稿です。まだ分からないところだらけですがよろしくお願い致します。sが投稿してみようとのことで対抗して作成してみました。まさかテーマがかぶるとは思ってなかったです。