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魔障の森の魔女の物語

これにて最終回。





深い、深い、深遠の森の奥深くに一人の魔女が暮らして居ました。


魔女は、終末の旧世界という時代の数少ない生き残りでした。


魔女は失われた叡智と技術、膨大なる魔力をその身に秘めています。



その叡智はあらゆる問題を紐解き



その技術は数々の恩恵を齎し



その膨大なる魔力はすべての困難を打ち払う



時代の権力者、実力者の誰もが魔女を求めました。

その全てを手に入れるべく、あらゆる手段を講じた。



珍しき宝石を贈るもの者



地位と名誉を授けると言う者



魔女を捕らえようと禁術を使う者



脅そうとする者



美しい奴隷を渡すと言う者



いっそ魔女を殺そうとする者



生け贄を捧げると言う者



森を焼き払おうとする者



様々な者が魔女を求め、恐れ、嫌い、憧れ、疎み、崇拝しました……。

しかし、誰一人として魔女を下す者も殺せる者もいませんでした。


気紛れに魔女が力を手を貸す者もいたが、その者とて終ぞ信頼を得ることは叶わなかった。



魔女は一人、二匹の従僕たる使い魔と共に森の奥に暮らす。


魔女の暮らす森は魔素の濃さと強力な障気の影響で誰も近付けずにいました。


森には稀少な薬草と神の力が宿るとされている奇跡の泉が在り、魔女ではなく其方を求めて森に来る者も森の住人たる魔獣達に阻まれる。



魔女は誰にも従わない



魔女は誰の側にも寄りつかない



魔女は常に孤高で生きる



悠久の時を生きる偉大たる魔女。

双黒の色を身に纏う魔素と障気満ちるの森の主。



ある日、魔女の暮らす森に一人の幼き子供が迷い込んできた。脆弱な子供は森の魔素と障気、磁気によって苦しみ、悶えましたがそれでも諦めずに森の奥へと幼き子供は突き進む。


子供の目的は森の奥深くに存在すると言われている奇跡の泉でした。幼き子供は流行病で苦しむ母と兄弟、領民を救う為にあらゆる病や傷を癒やすとされている泉を求めたのです。


しかし幼き子供はその脆弱さ故か、途中で力尽きてしまう。


死を覚悟した幼き子供は、しかし、森の魔獣に喰われることはありませんでした。



幼き子供の側に一羽の黒い大きな鳥。



まるで夜闇を閉じ込めたかのような、黒と酷似する濃い──それは濃い紺色をさらに濃くしたかのような黒色の鳥。


幼き子供が茫然とその鳥を見詰めていると森の奥から枝葉を踏みしめる音がする。


その音は段々と幼き子供のいる方へと近付いてくる────。



 バサリ



羽音の音が幼き子供の耳に入る。

黒き鳥とは色違いの白き鳥が飛んでくる。


そのすぐ後に現れたのは森の主。

黒き鳥よりも尚深く濃い純粋なる双つの漆黒。

見たこともない容姿と緩やかな衣装を身に着ける不老の魔女。




初めて眼にした魔女の姿に、幼き子供は恋に落ちた。




魔女は幼き子供の無垢なる願いに、自ら調合した薬を授ける。白き鳥を森への出口の案内に付けた魔女は、幼き子供の前から立ち去った。


魔女から受け取った薬は母と兄弟、領民達の病をたちどころに癒やし。人々は笑顔で満ち溢れた。


幼き子供は再び森へと足を踏み入れる。それは母の為でも兄弟の為でも領民の為でも無い。ただ恋した魔女に会いたいが為。


最初こそ魔女は見向きもしなかったが、幼き子供が少年となり、青年となる月日の間。途切れることなく会いに来る彼の者に、何時しか頑なな魔女の心も綻んだ。


魔女と青年は心通じて互いに思いやりながら共に穏やかな日々を過ごしていた。


しかし、そんな穏やかな日々は長くは続かなかった。青年の暮らす国が隣国と戦争を始めたのだ。


その戦争で兄弟を亡くした青年は国の為、領民の為、家の為に戦場に赴くことになった。


青年は魔女に別れを告げた。

魔女は悲しみ、青年と共に行こうとするが、そんな魔女を青年は止める。



『貴女が外へと出たのなら、周りの者達は皆貴女の力を求めるでしょう。


その叡智を


その技術を


その魔力を



皆、際限なく求めるでしょう。

だから貴女は外に出てはいけません。下手をすれば貴女の存在が災いとなってしまうかも知れません。私は貴女がそのような辛き目にあって欲しくありません』



魔女は嘆きます。


青年は苦しみ、悲しみながら恋した魔女ひとを抱きしめる。



こうして魔女と青年は離ればなれになってしまいました。


青年が去って暫くの後、魔女は自らの胎に命が宿っていることに気がついた。


そして十月十日を経て魔女は自身と瓜二つの女の子を産みました。


戦争が終わっても、青年がどうなったのか魔女にはわかりませんでした。そして魔女は子を産んでから体調を崩し、何時しか寝込むようになりました。


使い魔の二匹の鳥も、魔女の小さな娘も心配します。


されど彼等の祈りも届かず、魔女は月日を経るごとに弱っていった───。


魔女は娘に告げる。  



『私が死した後は森を出なさい。貴女は外に出て世界を広げなさい。あの人の残してくれた愛しい娘。幸せになりなさい。生きていく上で必要なものは、すべて貴女に遺していくから───』



魔女は娘に外で生きていく上で必要なものをすべて受け継がせました。



その様子を見届けて、魔女は静かに息を引き取った。



永き、永き、悠久の流れに生きた偉大なる魔女はその生涯に幕を降ろした。


娘の父がどうなったのかも知ることなく。



永く連れ添った二匹の従僕との別れ



初めて恋した青年との別れ



愛しい娘との別れ



離別の苦しみに嘆き悲しむ魔女の大切な者達。

されど魔女は、その全てを抱き締めて微笑み逝った。











これは何時の日にか語られる



       ────魔障の森の、魔女の物語。




これは何時の日にか語られる



       ────魔障の森の、魔女の物語。






「…………何? これ??」


『魔障の森の魔女の物語………。まあ! 素敵ですは~~♡ 流石は主様。世界に広まる物語の主人公となるなんてぇ~』


『クネクネするな気持ち悪い! 大体何なのだ? これは……!!』


『そうね~~。どうせなら『皆幸せに暮らしましためでたし、めでたし』ってーーー! 幸せオーラたっぷりの物語にして欲しかっわ~~~』


『其処ではなかろう! ショウ!!』


「幼き子供が少年から青年へとなる月日……………………紫の上計画か? 私、別にショタコンじゃないんだけど………………つか私、子供、産むの? へぇーーー」


『主様も其処ですか!?』


『夢がないですわー。主様ーーー』


「ショウは雄だけど女子力高いよね」


『えへ♡』


『貴様は少しはしっかりしろ!! 雄でありながら………気色悪いわぁ!!!』


『ひっ、酷い……! 主様~~チョウが苛めます~~~』


「チョウ……。ショウは心が女の子なんだから。人(鳥)の在り方はそれぞれなんだから………」


『それは……そうかも知れませんが………。しかし……!! くうぅ!!』


『あら? わたくし、心もちゃ~~んと雄ですわよ?』


「『………え゛?』」


『恋愛対象は~~~雄ではなく雌ですわ♡』


「『え゛ぇ?!』」


『ふふふ♡』












衝撃の新事実、最終話にて、発覚。

特に需要は無いですね……。


このネタ、出す暇がなかったので此処で出してみたけど………う~~ん。


魔女は物語になると知っても反応薄だし。チョウは過剰反応だし。ショウは………ねぇ?



今までお付き合いしてくださり、ありがとうございます。


「聖女は死して魔女が生まれる」はこれにて終了。


余力がありましたら番外編でも書きます。

またお目にかかる日を祈って。



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