第三話 クルー
この回から如月のクルー達が登場します。
山吹から命令を受けた5日後、経理部部長の引き継ぎ作業を済ませた天本は、地球行きのシャトルに乗りながら、これから艦長として搭乗する如月のクルーの名簿を眺めていた。
山吹は、寄せ集めだが、能力のあるクルー達だと言っていた。
全てのクルーの名簿を軽く眺め、確かに信頼の置ける能力を持っていることを確かめ、地球に付くまでの残りの時間は眠る事にした。
地球に付いて、ユーロポートの如月建造ドック内に入った天本は、そこに、懐かしい人がいるのに気が付いた。
「久しぶりだな。宮部副長」
「お久しぶりです。天本艦長」
天本に気付いた宮部勉は敬礼をした。
「三年ぶりですね」
宮部が言った。
宮部は士官学校時代の天本の二歳下の後輩である。
「懐かしいものだな。それで、現在の艦の建造の進み具合はどんな所だ?」
「もう、殆ど完成してます。後は艦長の最終チェックだけです。」
宮部はそう言うと、天本をブリッジまで案内した。
ブリッジは新造艦とは言え、基本的な構造は他の艦と殆ど変わりない。
「最終チェックをお願いします。」
宮部はそう言うと、天本にマスターキーと火器管制キーを渡した。
マスターキーは戦艦を運用するためのコンピューターの起動キーである。
火器管制キーは戦艦の兵装をコントロールするために必要なキーで、マスターキー、火器管制キー共に、戦艦が第三者に操られないようにするための安全装置である。
天本はマスターキーを艦長席のコンソールしたの鍵穴に差し込み、コンピューターを起動させる。
パネルには『ネレウス』と表示された。これが如月に新型コンピューターの名前らしい。
艦の最終チェックを済ませた天本は、ブリッジの各クルーに命令を出していく。
「白川小尉、目的地までの航路の設定を頼む」
「了解」
ポニーテールの青い髪の少女、白川美鈴から返事が帰ってくると同時にモニターに航路が設定される。彼女が如月の航海士である。
「ライエル中尉は敵襲に備えてレーダーの監視を続けろ」
「了解」
ブロンドの髪のショートカットの男性、スティーブ・ライエル観測士の返事が帰ってくる。
「アーヴィング小尉は敵襲に備えてブリッジで待機」
「了解」
ショートカットの焦げ茶色の髪の男性、スコット・アーヴィング火器管制官が返答する。
もっとも、地球は今は完全に地球軍の守りが固められており、残りの宇宙拠点も地球を守っているので、恐らく宇宙に出るまで彼の仕事はないだろう。
「アレニウス中尉、全艦放送に接続してくれ」
「了解。全艦放送に接続します」
セミロングの赤い髪の女性、ジーナ・アレニウスが全艦放送に接続する。
彼女は如月のオペレーターの仕事を担当する。
「これより本艦はニューヨーク基地へ向けて出航する。ニューヨーク基地到着までは第2戦闘配置で万が一の敵襲に備えろ」
天本がそう言い放つと同時に如月のエンジンが始動し、如月はニューヨーク基地への航路を進み始めた。