第一話 三人のパイロット
本編の始まりです。
地球軍ニューヨーク基地。
この基地に所属するSFパイロットである入江涼中尉、マーティン・ラスウェル中尉、遥・ルビンシテイン中尉の三名は訓練を終えて、休憩所で語り合っていた。
「こないだから噂になってる、ウォーダン・エレクトロニクスの新型SFのテストパイロット誰だろうな?」
ショートの黒髪に鳶色の瞳の少年、入江涼が二人に問いかける。
「ベテランの人を選出するんじゃないか?」
ショートの茶髪に青い瞳の少年、マーティン・ラスウェルが答える。
「新型SFは高価なものだし、信用の置ける人間に預けられるでしょうね」
ロングの黒髪に真紅の瞳の少女、遥・ルビンシテインが答える。
「マーティも遥も夢がないね。乗りたいとは思わないのか?」
「思わないね」
「同感」
「じゃあ、地球軍の今度の宇宙拠点奪還作戦はいつになると思う?」
「半月後ぐらいじゃないかな?」
「仮に拠点奪還作戦があった所で、私達の任務は、またこのニューヨーク基地の防衛でしょう」
過去にも地球軍は三回、宇宙拠点奪還作戦を実行していたが、その全てに失敗していた。そして、三回共、涼達の仕事は通常通りニューヨーク基地の防衛だった。
だが、涼は先輩達が戦っている中、ただ見ているだけなのは辛かった。
そしてその思いは、マーティと遥も同じだった。
基地から放送が入ってきた。
「入江涼中尉、マーティン・ラスウェル中尉、遥・ルビンシテイン中尉、司令室まで来て下さい」
「何だろな?」
司令に呼び出されるような覚えは涼達にはない。一体何の話しだろうと思いながら、涼達は司令室に向かった。
司令室に入ると、50歳程度の司令が三人を待っていた。
「君達に転属の命令だ。君達は8日後ここに寄港するウォーダン・エレクトロニクスの新造艦、如月に搭乗、同時に如月と共に運ばれる新型SFを受領、地球軍の宇宙拠点奪還作戦への参加を命ずる」
「了解しましたが、何故私達なのですか?」
遥が質問する。
「ベテランのパイロットは既に作戦部隊に組み込まれていて、動かせない。動かせる人間の中で一番優秀だったのが君達だった」
それが司令の答えだった。
「作戦の詳細は?」
今度はマーティが聞いた。
「まず、一週間で新型機に慣れて貰う。その後、宇宙へ向かい、地球軍と合流。その後の作戦についての詳細は、現地で伝えられる。」
「了解」
「たったの一週間で新型機に慣れろ、というのはかなり厳しいですね。もう少し操縦に慣れる為の時間を貰えませんか?」
涼が要望する。
「作戦開始まで20日間しかない。ぎりぎりのスケジュールなので、これ以上は時間を割く事は出来ない。機体性能についての資料を渡すので誰がどの機体に乗るかを話しあっておいてくれ。」
機体性能についての資料を受け取った時、涼はこれから忙しくなるな、とふと思った。
次回は如月の艦長の登場です。