寝ようとしただけなのに
さあ着いたぞ。
「平日なのに人が多いなぁ」
子供が、大人が、合わせて10人くらいかな、いる。
公園はさほど大きくない、普通に見渡せば距離が大体把握できるほどの広さ。いわゆる子育て補助公園。ママさんパーク。
ちなみになぜ平日だと分かったかは感覚だ。俺レベルになれば感覚で曜日は分かる。この感覚は水曜日、間違いない。
「ああああああ!」
女の子がこけて泣き出した。
「おい、大丈夫か」
俺は近くにいたし無視も出来ないから一応声を掛けてみたが、正直止めればよかった。
「あああああああ!」
「どこ擦り剥いたんだ?」
「あああああああああ!」
「ったく。ええと、膝か」
手当て出来るものは持ってないしな。親を探した方がいいかな。
とは言ってもこの狭い公園、すぐにそれらしき人は見つかった。探すまでもなかった。
「ええそうなんですよぉ~」
「やだ~ほんとぉ~?」
「そうそう、聞いて聞いてあの店の奥さんね~」
「きゃあぁ~! すごぉ~い!」
会話中かよ。ちゃんと見てろよな。
「あああああああ!」
「もう泣くなよ」
「あああああああ!」
「俺なんか親に泣かれたんだぞ? お前が泣いてどうする。親を泣かせてみせる大人になれ」
「ぐすっ ぐすっ おじちゃん、ママなかせたの?」
「ああ、そうだよ。しかも12回だ! すごいだろぉ!」
「どおしてそおなったの?」
「話せば長くなるかな、あれは高校生を卒業した後の事だ。就活中にばっくれてパチンコ打ちにいったら泣かれた」
「ぱちんこ?」
「すごいんだぞ? なんと遊びながらお金が手に入るんだ」
「すごーい!」
おお、この良さがわかるか! 有望だな。
「80パーセントのリーチで外しちゃってさ、あれが当たれば確変になって」
A「うちの子に何するんですか!」
振り向いた先にはおばさんがいた。
「この子の親御さんですか?」
子供の頭に手を置きながら俺はそうたずねた。
A「きゃあ! そんな汚い手で喪宇ちゃんに触らないでください!」
穏便に済ませようとしてるのにこのババアは。
喪宇ちゃんて。
「あの、この子怪我して」
A「喪宇ちゃん怪我してるじゃない! あなたね? あなたが触ったから怪我したのよ!」
また訳のわからん事を。
「は? いえこれはこけてですね」
B「宮本さん、どうしました?」
今度は違うおばさんが二人やって来た。
A「この汚い男が私の喪宇ちゃんに暴力振るって怪我させたんです」
「そんな事してねえ!」
話を盛るんじゃねえよ!
B「いきなり叫ぶなんて、やっぱりそうなんだわ」
C「野蛮ね」
A「大丈夫だった? 喪宇ちゃん」
おばさんB、C、A の順で喋る。
「ちがうのママ、あのね?」
A「ほら! この子こんなに痛そうにしてるじゃない!」
C「どうしてくれるの!」
B「ちょっと! 聞いてるんですか!?」
「いや、あの……」
次々と口を揃えて豪語してくるが理不尽な事だと早く知れ。
「ちょっと聞いてください」
俺はつばを飛ばしてくるAの腕を掴んだ。
A「汚い!」
手を叩き落とされました。
C「また暴力ですか!?」
「え……いや……」
そのまま罵詈雑言を浴びせられること十分。
俺は泣きそうだった。
喪宇ちゃんも砂場で遊んでるし、いつまで続くんだろうか。
とそこで誰かが通報したのか警察が来た。
「どうなされました?」
A「こいつがうちの子に暴力振るって怪我をさせたんです」
B「宮本さんの子供と宮本さんに暴力を振るったんです」
C「この二人の言っている通りです」
「それは本当ですか?」
「ち違います、僕はぼ暴力なんか振るってません、あの子だって」
B「嘘よ! 私見たもの!」
この野郎……
「違いますよ! 僕はそんなことやってませんて!」
「証言が3人分もあったんじゃねえ……それに君、その格好。もしかしてホームレスかな?」
「あ、そ……そんなことは今関係無いでしょう!」
「悪いけど君の証言は信じられないなぁ」
「ホームレスだから、ですか?」
「ん? ああ、君名前は? 後年齢と実家の場所を」
狂ってやがる、こいつらは。
「何だよ! くっそおぉ!」
「あ、こら! 待ちなさい!」
俺は全速力でその場から走り去った。
A「やあねえ、これだからホームレスは」
C「宮本さん、災難でしたねえ」
B「まったく汚らわしいわ」
狂ってやがる、狂ってやがる、狂ってやがる!
俺が何をしたってんだ! くそ! クソ! 糞!
家が無いだけで! それだけで話が下る!
理不尽だ! 不条理だ! 滅茶苦茶だ! やってられるか!
そのまま追って来る警官を振り切って、俺は疲れた心と体を路地裏で休めた。
休めた。文字通り。寝た。
結構疲労していたのか夢のひとつも見ず夜まで眠りこけた。
最後に夢を見たのはいつだろうか。
そんなことだけ考えながら。
次投稿は日時未定です。
いつになるやら……




