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いつか君へ…  作者: 半纏少尉
決意の刻 2章決意と見習い冒険者
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16話

昨日の夜は少し休んだ後に家に帰った。

余程疲れていたのかベッドに入ると直ぐに寝てしまていた、やっぱり初戦闘の緊張感が効いたのだろうか?


それはさて置き、今日の早朝鍛錬が終わった時、カイルが今日は林で気配察知の練習をするとの事で朝食を食べてから林前の旧練兵場に来る様にジンさんが言っていたと僕に言った。


カイルと分かれてから1人朝食を取り、防具や武器を装備して旧練兵場に向かった。


「来たな、カイルにも言ってたように今日は気配を読む訓練をする。

昨日のウルフを発見出来ない様じゃダメだ奇襲される事は相手に先制攻撃を許す事になる、もし相手が強敵だったら?

それだけで誰か死ぬかもしれない。

それに野営の見張りをする時お前だけだったらどうだ?

夜の魔物は殆どが気配を隠す事に長けている、他の仲間が寝てる所を奇襲され全員道連れだ。

だからこそ気配を読む事は絶対に必要な事なんだ。」


確かに気配を読めないと奇襲される事が多い、まだまだ野営をするつもりが無いとはいえ普段でも気配を読めないとそれだけで昨日みたいにいつの間にか囲まれている可能性が出てくる。


「まぁそう言う事だ、これは生き残る為の必須技能だからな、何が何でも覚えて貰うぞ?

まず訓練の仕方だが、まずお前らが林に入って散策をする。

そこを俺が気配を消して近づいて攻撃する訳だが…まぁ最初のうちは無理だろう。

気配を読むのに大切なのは魔力や、周りの空気、微かな音、匂い地面の振動、挙げるとこんなもんだがその全てにきを配りつつ散策何て相当熟練した斥候でないと出来ないもんだ。

だから殆ど消せない匂いと魔力これを探りながら歩いて貰う。

これが出来れば駆け出しの冒険者としてやっていけるだろうから慣れた頃に他のも覚えて行くと良い。

じゃあ始めるぞ、今日は方法を体に覚えさせる為に昼食もこの干し肉と堅パンだ、どんな時だろうと気を抜くなよ」


そう言って渡された食糧が入った袋を持って林に入って行く。

入る時に身体強化の嗅覚を少し強めて匂いを、心を鎮めて魔力を感じようとする。


木々の匂いと隣に歩くカイルの匂いを感じるけど、自分のでない魔力を感じるのが難しくなかなか上手くいかない。


「アラン、魔力感知なんて出来ないんだけど出来るか?」

「無理だよ、近くのカイルすら魔力が感知出来ない」


暫く林を散策していると急に後ろから吹っ飛ばされた。

「いっ‼︎」「ぐっ⁉︎」

カイルも飛ばされたみたいで蹲っている、飛ばされた方を見ても誰も居なかった。


「今のジンさんだよね?怪我をしない程度に手加減して攻撃する余裕がある位、僕等隙だらけだったんだね…」

「あぁ…、本気で魔力感知を覚えないとまずいな…」

「そうだね…どうやったら出来るんだろ?」


怪我も無く痛いだけで終わった攻撃に少しの恐怖とそんな隙だらけなんだとガッカリ感が押し寄せて来る。


その日の鍛錬はジンさんの気配を読む事すら出来ないまま終わった。


ジンさんとの鍛錬に気配察知が加わり1カ月程がたった。

季節が冬に入り朝から寒い日が続いている。


魔力感知は全く出来ないままで殆ど進展が無い。

魔法も同様で中々成果が出てこない、攻撃魔法が出来る様になるんだろうか?


休み休み依頼を受け続けて薬草採取やグラスウルフの討伐を少しずつこなしていき、実戦にも慣れてきた。


慣れてきた頃が危ないとジンさんに毎回言われるので、その度に僕とカイルは気を引き締めている。


気配察知の訓練では嗅覚と聴覚を強化する事でギリギリのタイミングでジンさんの攻撃を避ける事に成功する様になって来た。

魔力感知はどうすれば魔力が分かるのか、感じると言うのが、イマイチ理解出来ないでいる。


魔力感知について行き詰まり最近は鍛錬と依頼の時以外はその事ばかりを考えている。

今日もジンさんの鍛錬の後に1人であの崖に向かい魔力感知を習得しようとしていた。


(どうやったら魔力感知出来るんだろう…感じる、ねぇ…

あれ?適正検査の時に色にして見る事が出来るんだから、頑張ったら出来るんじゃないかな?)


ふと思いついた事を試しにやってみる事にした。

魔力を目に集めると、視界がぼやけ始める。


(…魔力は見れるんだ、魔力は見れるんだ)

自分に暗示を掛ける様に心の中で言いながら魔力を集め続ける。


一瞬、世界が切り替わった。

見えている風景が一変した。


木々が放つ魔力と多分虫たちが持っている僅かな魔力だろう、儚げな光が辺りを飛び交っている。


様々な色彩に溢れていた。赤、青、緑、黄の4色をベースにそれが見事に調和されている。


地面から土と水の魔力である黄、青を主体に僅かな赤が発光しているその光達を包む様に緑の魔力が飛び交いまるで踊っている様だ。


生命、非生命問わずが調和されている魔力を放ち、様々な情景を時間と共に見せていた。


「…あぁ…綺麗だ…」


美しさに息を飲み、涙が出そうになる。

どれ位そうしていただろうか?時と共に移ろい行く景色を見つめ続け、僕は目に集めていた魔力を霧散させた。


僕は家に帰ってから気付いた、全く気配察知になっていないと。

満足感と少し不貞腐れた感を残しながらその日は眠りに着いた。


次の日の朝早朝鍛錬の時に僕は試しに魔力を見ながら魔力を感じる訓練をするとあっさりと出来る様になった。

曖昧だったイメージがしっかりと出来て目を瞑っても隣にいたカイルがわかった。


まぁ、実際は魔力を隠蔽すらしていない状態だから出来たとは言わないんだけど、それでも大きな一歩だった。


僕はそれから一日中使い続ける事で魔力感知の習熟に勤め、それと同時に魔力視野(魔力を見る状態の事)を強化するために魔力の練りから込めるバランスなどを試行錯誤した。


この時自分の魔力を見ながら魔法の鍛錬をする事で、今迄と違い段々攻撃魔法の習得に近づいていける様になった。


鍛錬中のジンさんの攻撃を段々と防げる様になり、ジンさんを見つける事が出来る様になって来た。

カイルは少しコツが掴めて来た状態らしくまだ危なっかしいけどジンさんが両方に合格を出し「後は習熟するだけだ」と言った。


早朝鍛錬のランニングを少し減らし隠れんぼの要領で1人が気配を消してもう1人が見つける(気配を消して近づいて攻撃もあり)訓練もした。

最初は気配を読む事が出来る事で直ぐに見つける事が出来たけど、音のしない歩き方や魔力の抑え方や隠蔽方法をジンさんに聞いて今では中々良い勝負が出来るようになっている(僕が勝つのが多いけどね)。


気配察知の訓練を始めて2カ月がたった。

ジンさんとの約束の時まで後3ヶ月と少しと言ったところだ。

野営の訓練と他の依頼(今迄スライムの核や薬草の採取、グラスウルフ討伐ばっかりだった)をする為に東に半日程行った先にあるドルルト大森林に行く事になった。


ゴブリンの討伐の話しを聞いたシャルルさんにまたジンさんが冷たい目で見られていたけど、理由を説明して渋々納得させていた。


初めて人型の魔物のゴブリンを相手にするんだ、今迄に無い緊張感と不安、期待を胸に抱きながらその日に備える事にした。


いよいよゴブリン討伐の日がやって来た。

僕もカイルも、緊張していたけど動きが悪くなる程では無い。


野営用の道具をジンさんから貰い(寝袋と厚めのマントだ)依頼を受注する。


東門から出て半日程歩み続けて大森林と形容するにふさわしい場所の目の前に来た。

ここまでの道程は特筆すべき場所も無いくらい至って順調に進んで魔物に襲われる事も無く来れた。


「よし、なんとか日が沈み始める前に着いたな、先ずは野営地の設営だ。

あっちに森から流れている川がある筈だからそのそばで野営するぞ。

アランとカイルで川の側の草を刈って、このテントを張ってくれ」


そう言ってジンさんは背負っていたリュックからテントを取り出した。


「俺は森の中に入って焚き火用の薪集めと簡単な食糧を取ってくる」


ジンさんが行ったのを確認して川の方に向かう。


「今日は森に入んないんだな?」

「そうだね、歩き通しだったし野営もしなくちゃいけないから、早目に休んで明日からゴブリン討伐をするんじゃ無い?」


森と川から程良く離れた場所の草を刈り野営地の準備をする。

テントを建てる時思ったより難しく時間が掛かったけどなんとか建てる事が出来た。

建て終えるとジンさんが子守ウサギを何羽かと果実を少し取って来ていた。


ジンさんの指示に従い僕とカイルは火をおこして夕食の準備をした。

夕食が出来た頃には日が沈み辺りに灯りは焚き火のみとなっている。

夕食を食べながら僕らは明日についての話し合いをしていた。


「…明日から森の歩き方を学びながら探索してゴブリンを討伐する。

だが此処はいつもみたいに街の中じゃ無いからな、夜は交代で見張りを立てて夜襲に備える。

順番はアラン、俺、カイルの順だ。

基本的に真ん中が一番しんどいんだが今回は俺がやる。

お前らが他の奴と組む時はそこら辺も考えて見張りを組めよ。」

串焼きにしたウサギと、果実を齧りながら話し僕らは頷いた。


夕食を食べ終えるとジンさんとカイルは早々に眠りに着いた。


僕は1人になり焚き火を眺めながら魔力感知をし、魔力視をしていた。

パチパチと音を鳴らしながら火は燃えていてその周りを火の魔力が覆いそこから逃げる様に水の魔力が上に飛んで行く。

火を手助けする様に風の魔力が吹き込み、土の魔力が土台となりそれを支える。


何も無いまま時間だけが過ぎて行き交代の時間になったのでジンさんを起こしに行くと既に起きており、僕に代わって見張りに向かった。


(明日はゴブリン討伐だ頑張らないと…)

僕は直ぐに眠りに着いた。

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