14話
気付いたら中々続けられている自分が居た。
自分エライ(^ー^)ノ笑
あの後僕は属性の適正検査を終えて買い食いをしながら家に帰った。
そこで、ジンさんとの鍛錬の時間まで1人で魔法の鍛錬をしようと思い、水の入った桶を持って秘密の場所にやって来ていた。
ここなら心を落ち着かせて出来るからだ。
「よし、まずは水からやってみよう」
僕は水の桶に手を入れて魔力を流してみた。
「…全く反応しないなぁ…」
10分程魔力を流してみても何も反応しない、今度はイメージをしっかりとしてやってみる。
(水が流れて動く様にどんどん球形になっていく…なっていく…)
「ん?揺れてる?…手が震えてからだよね…はぁ、やっぱり直ぐには出来ないか…」
今度は20分程試行錯誤をしながら魔力を流してみるけどこれといった反応が見られない。
「うーん…何がいけないんだろ?やっぱり教えてくれる人が居ないと駄目かなぁ…」
更に30分程やってみて何も反応が無いことを確認すると、僕は風の魔法に切り替える事にした。
「よし!こっちご本命だ、風って少しイメージし辛いけど母さんの子供なんだ、僕ならきっと出来る!」
魔力を体の外に出して風を感じ、それに沿うように魔力を添える。
母さんを思い浮かべながら、母さんならどんな風にしたんだろう?
母さんなら僕に教えてくれただろうか?
僕は浮かんでは消えていく母さんのイメージを振り払いどうにか魔力を浸透させようと頑張ってみる。
殆ど効果が無いまま暫くの時間が過ぎた。
日の沈む空は茜色に変わり反対側を見ると紺色の空が侵食し始めている。
本当は、1日で出来るとは思っていなかったけど、どうしても早く魔法も習得して、少しでもアイリス様の役に立てる様になりたいと思っていた。
それに母さんとの繋がりであると思える風の魔法を1日でも早く習得したかった。
(風が吹く…僕の周りを優しく風が……
…母さん、お願い僕に力を貸して…
母さんとの思い出も無い僕だてけど、母さんの様に上手く魔法が使いたいんだ…)
夕日が殆ど沈んだ頃、僅かばかり残る茜色の光に僕は照らされ諦めたような、でも諦めきれない、そんな顔をしていた。
(…僕にはやっぱり出来ないのかな…母さんを覚えてすら居ない僕に、母さんは力を貸してくれないのかな…)
夕日が沈みきる寸前暖かな風に包まれた気がした。
暖かくて、どこか安心する…そう、それは僕は知らない、でもきっと母親に抱かれたような安心感のある温もりだった。
自然と涙が頬を伝う、母さんなんだろうか?きっとそうじゃ無いんだろう…でも、僕にとってこれ以上無いくらい嬉しかった。
「母さん…僕は貴女の子供で居ても良いですか?…父さんが愛した、僕を産んでくれた貴女を、貴女の事を覚えてすら居ない僕を息子と呼んでくれますか?」
また離れていくんじゃ無いか…僕はそんな風に不安に包まれる。
(ああ、きっと側には居てくれないだろう…でも、僕を貴女の息子で居させて下さい、僕に母さんと呼ばせて下さい)
「???」
優しい風が頬を撫でた気がした。
どこか慈しむ様な感じで頬を撫でられた気がした。
「母さん…母さんに会いたいよ…」
僕は会った事も無いけど、家族3人で暮らしたかった。
日は完全に沈み、辺りはすっかり紺色の世界だ。
自分が1人取り残された…そんな気がした。
それから僕はジンさんとの鍛錬の為に広場に向かい鍛錬を終えた。
「アラン、今日はちょっと動きが悪かった気がするな、何かあったか?」
心配してくれたジンさんになんでも無いと答える。
「そうか…、冒険者は自分の調子を整えるのも仕事のうちだ、休める時に休めよ。
明日は依頼をするからな今日はゆっくり寝て明日に備えとけ」
そう言って去っていくジンさんにお礼を言い僕は家に帰り眠った。
翌朝、何時もより軽めの早朝鍛錬を終えると
ジンさん達が待つ場所に向かった。
「おはようございます。」
「お、アランおはよう!」
「おう、じゃあ行くか」
軽く挨拶を交わした僕らはそのままギルドに向かう、ギルドに着くとスライムの核の採取と言う依頼を受ける事にした。
受付に持って行くとそこにはシャルルさんがいた。
「おはようみんな、今日は依頼を受けるの?」
「そうだ、スライムの核の採取とついでに薬草を採取して帰ってくるつもりだ」
シャルルさんとの会話をしながらジンさんは依頼票とガードを渡した、それを見て僕とカイルは慌ててガードを取り出し提出する。
「依頼の受注は完了したわ、スライムの核って事は今日は西側ね、前回の南側と違ってそこまで定期的には魔物の掃討をして無いから魔物が多いの、だから気を抜かずにしっかりと依頼をこなしてね?」
僕とカイルはシャルルさんの言葉で気を引き締めて警戒をする事にしてガードの確認をしてからギルドを後にした。
西門は他の門の中で一番堅固だ、西側はカリス王国があり、戦争に対する備えからそうなっている。
門の警備も一番多く警戒用の櫓には常に2、3名の兵士がいて西側を見ている。
西門を抜けて、街道を外れて30分程歩いた頃に何かを見つけた。
「おっ、いたいたあれがスライムだ」
僕はその不定形の生物を見る。
物凄くゆっくりと進みながら草の上でモゾモゾと蠢いている。
ジンさんが近付いて行ったので付いて行くと全く警戒していないようで、モゾモゾとしたままだった。
「これがスライムだ、こいつらは基本的に無害どころか動物の死骸や魔物の死骸を食らってくれるから案外有益な所がある。
こいつらは、攻撃手段なんかありゃしねえし、核の採取は本当に基本的な依頼だ。」
そう説明を入れてからジンさんは徐ろにスライムに手を突っ込むと核を掴み引き抜いた。
僕らが驚いているとジンさんは核を握りながら僕らを見て言う。
「スライムの核はこいつらが食った後に溜めている物を集めた物で、何を食ってようが同じ成分になるらしい。
さっきみたいに手を突っ込んで取っても特になんの反応もないから、めちゃくちゃ簡単な依頼だ。
ただ、核が大きくなり過ぎると段々分裂して増えてくるから、増えすぎないように注意が必要だな。
取り敢えず核を持ったスライムを探して集めるぞ、途中で薬草を見つけたら前教えた様に採取しておけよ?」
僕らは離れすぎない様に意識しながらスライムと薬草を探して行く。
暫く進み薬草を幾つか採取した時にスライムを見つけた。
モゾモゾと蠢いているその中心位に核がある。
僕は意を決して手をスライムに突っ込んだ。
(なんかひんやりしてる?ちょっと気持ちいいかも…)
核を掴み引き抜くが、スライムは変わらずモゾモゾ動きながら食事を取っている。
「ま、まぁ核が取れたし、次を探そう」
なんとも言えない感覚に囚われたけどそれをふり払う様に次の場所へと向かった。
2時間程した頃にジンさんの所に集まって核と薬草を確認する。
「核が15個に薬草が3種5束づつ位か…核があと5個必要だな、じゃあ少しここから離れるか」
そう言ってからまた30分程進みスライムを探す、何匹か見つけたけど核が小さすぎてあまり使えない。
ようやく依頼分の20個を集め終わる頃にはひるの時間をだいぶ過ぎていた。
「ふう、やっと終わったな。
そうだ、スライムの生態には他の魔物と共生したりする事がある。
魔物の集団の住処にはスライムが居て汚物の処理なんかしながら住んでるんだ。
その昔ドラゴンと共生していた事があったなんて話も聞く。
ドラゴンと言えば縄張りに入る物を容赦無く葬る筈なんだがスライムは別だったらしい」
まぁ眉唾ものだか、なんてジンさんは言っているが僕は思う。
(スライムってめちゃくちゃ凄く無いかな?ドラゴンとかにも敵対されないし体に手を突っ込まれてもまるで何も感じてない…どうやって倒すんだろ?)
「ジンさん、スライムってどうやって倒すんですか?」
「簡単だ、炎で炙れば良い、それだけでこいつらは蒸発して消える」
僕の疑問にジンさんは簡潔に答えた。
(お、思ったより対処が簡単だ…火の魔法使いなら簡単に対処できるんだね…)
「よし、じゃあ今日の昼メシはこれだ」
そう言って取り出したのは干し肉と堅パンと水筒だった。
「そのうち野営なんかもするが、いつもいつも料理をして美味い飯ばっかり食える訳じゃねぇからな」
そう言って僕らに配ってくれ昼食を3人で周りを警戒しながら食べた。
「それじゃあ今日はここまでだな、街に帰って報告しに行くぞ」
僕らは昼食を終えて街に帰る為に警戒しながら歩いて行った。