11話
試験sideアランです*\(^o^)/
「よっしゃぁぁー!」
合格を言い渡されて雄叫びを上げているカイルを見ながら僕は考えていた。
(…カイル絶対この試験の事分かって無かったよね?ターニャさんが合格って言った時キョトンとしてたし…
ってそんなことよりターニャさんだ、殆ど受けに回っていてあんまり分からなかったけど実力と継戦能力と判断力を見てる感じだな…
これは最初から身体強化で行くべきだよね、途中までは普段通りで、最後に思いっきり身体強化をして撃ち込めば良いかな?)
自分の中で大体のプランを練りながら僕はターニャさんの所に向かって行った。
「アラン、普段通りやれば合格出来るぜ!これに合格しないと見習いになれないらしいけど大丈夫だ!」
…やっぱり分かって無かった。
「うん、大丈夫だよ…それより後で冒険者見習いとしての心得とか有ると思うからしっかり聞いといてよ?」
少し不安が残りながらも、カイルに注意だけしてターニャさんに向き直る。
「よし、カイルは向こうに行ったな。
あの子を見てると実力は大丈夫そうだけど一応ね、試験をしないと駄目だから…じゃあ始めようか?」
そう言ったターニャさんに頷くと僕は剣を構える。
マン・ゴーシュを前に片手剣を後ろに置く構えだ。
前に置いたマン・ゴーシュで即座に敵の動きに対応して、その後を追う様に片手剣を打ち込む為の構えだ。
「始め‼︎」ターニャさんが僕の構えたのを見ながら告げた。
開始と同時には動かずターニャさんの呼吸を読もうとする、けど流石に冒険者としてやっていただけあり読めない。
僕は体勢を維持したまま駆け出した。
「シッ!」囮のマン・ゴーシュを振るい相手が弾いた所を狙う。
剣先でマン・ゴーシュを弾かれそのまま根元だけを動かして片手剣を弾かれた。
(それ位分かってた、よっと!)
弾かれた勢いを利用して剣を振るう、軽く後ろに下がる事で躱されてしまうが距離を開けまいと追従する。
「流石ローランさんの一人息子だ、その歳でよく双剣を使い熟している。
それに身体強化もだな、要所、要所で強化するポイントを変えてるんだね?
そんなことは出来ない冒険者の方が多いんだよ?」
連撃の間にそんなことを口にしているターニャさんを見てギリッと歯噛みしてしまう。
(まだまだ余裕そうだな!もっと上手く技を繋げ無いと…)
そう思った時にターニャさんの剣が飛んで来た、僕はそれを受け流しながら距離を取ってしまう。
「今のは減点だよ?考えるのも良いけどね、でもローランさんなら、さっきのを受け流しながら上手く反撃しつつ相手を封じ込めてるよ?」
そんな風に言うターニャさんを見ながら冷静に考える。
(今のはきっと挑発だ、父さんが凄いのは僕が一番良く知っている。今は無理でもいずれ僕は父さんを追い越すんだ。)
まだまだ技術が拙いのは分かっているからこそ、今は全力を出すべきだと判断して身体強化を最大にする。
今はこれをすると身体強化のポイント変えが出来なくなるから全身にかけた。
「ハッ!」
「‼︎⁉︎」ターニャさんは予想外の速さに驚いて僕の攻撃を横に飛んで躱した。
僕は着地と同時に地を蹴ってターニャさんを追う。
「リャ‼︎」連撃を重ね、打ち込んでいく内に段々余裕を取り戻して行くターニャさん。
「…ッ、まさか、ここまでとは、ね!
身体強化をそこまで有効に使えるなんて驚きだよ。
これで9歳なんだからこれからが楽しみだ」
僕の剣を途中で弾きバックステップで距離を取りながらそう言った。
(…やっぱりそこまで甘く無いよね…でも一瞬でも余裕を奪えたんだからこの作戦は成功かな?)
僕はターニャさんの言葉を聞きつつ思考していく。
(次はどうする?これ以上今の僕には出来ることが無い、後は終わるまで打ち込み続けるしかないか、なっと‼︎)
考えながらも僕は果敢に攻め込む、右から左から、上から下からと色々と手順を変えながら打ち込み続けた。
ギ、ギンッ!なんとか弾かれた剣を手放さずに居たけど体勢を崩してしまい僕は尻餅をついた。
「ここまで‼︎アラン、良かったよ。
アランも合格だ、最初に相手を観察したのは良かった、でもまだまだ経験が足りないね。
上手く相手の呼吸を読める様にならないとダメだよ?
それから身体強化を2段階に分けたのは良かった、双剣の相手にタイミングを掴ませにくい戦い方に合っていたよ。
ただ、後はそれも使い分けながら出来る様になれるともっと良くなるね、私も少し焦ってしまったよ。
試験官をやっていて焦るなんて無かったから私にとっても良い勉強だった。」
そう言ったターニャさんは僕とカイルを見てこう言った。
「2人共良く聞いておいてね?
まず間違い無く君達は、同年代でトップクラスの実力を持っている。
だからと言ってそれに慢心せず努力を続けていく事、才能に甘えたり今の実力に胡座をかいているとそれ以上は伸びないからね…
今をもって、君達2人は見習い冒険者だ‼︎
決して無理をせず、ギルドの一員として、冒険者として、そして何より自分にとって、恥ずべき事の無い様にこれからを過ごして欲しい‼︎
それじゃあ2人共おめでとう‼︎これからシャルルから色々と説明があると思うから頑張ってね」
ターニャさんの訓示を胸に刻み、お礼を言ってターニャさんを見送った。
「2人共、おめでとう。今日からあなた達も見習い冒険者ね、ジンに色々な事を教わりながら実力を付けていって。
あなた達が活躍するのを期待しているわ。」
そう言いながらこちらに向かって来るシャルルさんは、僕達を見た後に取り敢えず剣を直して来るようにと言った。
「これで俺は冒険者になれるんだな、後半年が待ち遠しいぜ!」
「そうだね、僕も待ち遠しいよ…でもその前に色んな事を学ばないと駄目だからね、カイルは特にしっかり勉強してよ?」
「うへぇ…イヤ、でも冒険者に必要な事だよな、無理矢理にでも頭に詰め込むぞ‼︎」
僕達は剣を直しに行きながらそんな会話をしていた。
僕達がシャルルさんの所に向かうと付いてくる様に言いながらギルドの受付の奥にある部屋に向かった。
部屋には何か光る玉が置いてあり僕とカイルが何か分からずそれを見ていると説明してくれた。
「これはね、その昔ギルドの創始者が賢者様に作って貰った魔道具のコピーよ。
元となった魔道具とそのコピーを作る魔道具が冒険者ギルド本部にはあってね、一人一人違う魔力を基にしてギルド員を判別しているの。
これを使って登録する事で全てのギルドにあなた達の情報が行き渡るわ、これが有るからこそ冒険者ギルドは多くの国に支部を持ち、ギルドカードは身分証としても使えるの。
さぁ、登録してしまいましょうか?
まずはあなた達の使う武器を記入してとじゃあカイルからね、手を触れて魔力を通して頂戴」
そう言われてカイルは緊張した面持ちで手を魔道具に置いた。
魔道具の光りが一瞬強くなり戻った。
「…出来たわね、じゃあ次はアランお願い」
僕は前に出て魔道具の上に手を置いた。
魔力操作の要領で魔道具に魔力を流す、すると強く光ってから元に戻った。
「…よし、じゃあ先に表に戻っておいて。
カードの発行に少し時間が掛かるから出来たら持って行くわ。
その間にジンと相談して受ける依頼を探しておいたら?」
シャルルさんの言葉通りに僕らはジンさんの所に戻って行った。
「おう、登録を終えたみたいだな…じゃあ今日の受ける依頼でも探して待っとくか」
掲示板の所に向かい依頼を物色する。
ランク別に分けられておりF〜Dの依頼が並べられている。
僕はFの依頼を見てみると街のゴミ拾いから引っ越しの手伝いを始め街中の依頼が多く置いてあった。
その他にも薬草採取やスライムやゴブリンの討伐、子守ウサギの肉の採取など様々な依頼があった。
「ふむ…やっぱり教えるなら最初は薬草関連だな、これとこれとこれ…くらいだな」
そう言ってジンさんは徐ろに幾つかの依頼書を取り僕らを呼んだ。
「今日はこの3つの依頼を受ける。
この依頼の薬草は近場に生えているんだ、もう今日は昼を過ぎてるから簡単なもんにしとくんだ」
僕とカイルはジンさんが持った依頼書を覗きこんだ、カイルは所々しか読めないみたいで唸っている。
「はぁ…カイルお前はちゃんと文字を読める様になれ、これも冒険者になるなら必要だ。
知らない内に損をしちまうぞ?」
カイルは少し顔を青くして「勉強しなきゃいけないのか…」なんて呟いていた。
「お待たせ、アラン、カイルギルドカードが出来たわよ」
「はい!」「お、やっと出来た!」
僕とカイルはそう言って受付カウンターに駆け寄った。
「じゃあ説明するわね、このカードは特殊な金属で出来ていて登録した本人が魔力を通す事で情報が表示されるの。
本人の名前と武器とランク、受注中の依頼そして登録した支部が出てくるわ、本人以外が魔力を流しても持ち主の名前しか出てこないから、それを利用して亡くなった冒険者の確認に使ったりもするのよ。
無くしたら大銀貨1枚再発行に必要だから絶対に無くさない様にね?」
そう言って渡されカードに魔力を流すと言われた通り名前と武器とランク、そして登録支部が出てきた。
ただランクがGとなっておりこれが見習いって意味なのかな?と考えながら見ていた。
「…ちゃんと表示されたみたいね。
見ての通りランクがGなのは見習いって意味よ、そのランクだと例えどんなに簡単な依頼でも1人では受けられ無いから注意してね?
ランクの説明は簡単ねF〜Aそして本当にギルドに貢献した人に贈られるSの7段階あるわ、Gは見習いだからランクとして考えられて無いの。
だいたいF、Eが駆け出しD、Cが中堅B、Aが一流Sは超一流って所ね。
これは世間一般の目安だから必ずしもそうだと言う訳では無いんだけど一応覚えて置いてね?以上が見習いになる上での説明よ。
他にもルールだったりあるんだけどそれはジンから聞いて頂戴、冒険者側から聞いた方が必要な部分が分かりやすいから」
シャルルさんにお礼を言った所でジンさんがやってきた。
「シャルル、今日はこれを受ける受注してくれ」
「薬草採取3種類か初日には妥当な所ね。
じゃあ3人ともカードを出して頂戴」
カードを出し手続きを済ませカードに受注した旨が書いてある事を確認する。
「じゃあ飯食って行くか、昼は俺の奢りだ登録祝いだから遠慮せず食えよ」
ジンさんの言葉に甘えながら酒場の席に向かいつつ、冒険者になった喜びを噛み締めていた。